2015年12月19日土曜日

TPPについて思うこと ④

(U.S. FrontLine誌 2015年12月20日号 掲載分、一部加筆あり)

日本にとってアメリカとの取引が大半となるTPPは、取り返しが付かないリスクだらけであるにも関わらず、日本政府が推進しようとする理由を理解するために、メリットとして挙げられていることを、前回ほんの少しだけ掘ってみました。

するとGDPが10年間で3.2兆円(年平均200億円程度)増える代償に、農林水産物生産額は、安価な輸入品に市場を奪われるため、3兆円減になるとか、米市場の大半の関税率は既にかなり低いにも関わらず、「輸出企業が関税撤廃により価格競争力が増し、海外進出しやすくなる」など、子供騙しとさえ感じました。

そもそも日本企業の米市場への参入障壁は、関税よりも文化や価値観、言語の違いへの理解・順応力であり、製品企画力やマーケティング力から、韓国など競合に比べ、致命的に劣っているのが問題な上、日本はずっと内需で回ってきた国なので、元々輸出の割合も低く、必要性を考えるとメイクセンスしません。

バッカーを見れば、誰の為かがわかる

選挙の際に、政策の主張をテレビCMなどで流していることがありますが、あれだけで裏の意図まで理解するのは不可能です。CMなので必ず主張者に都合の良い伝え方になっており、実態には程遠いからです。しかし大枠を手っ取り早く理解するには、主張のバッカー(支援者)を見ると簡単で、出資企業や団体を見れば、誰にとって利益があるのかは明白になります。

メディアもまた、ある種のバッカー(広告主や視聴者層)の好む脚色した内容を、ただ垂れ流しているに過ぎず、結果、必ず左右に偏っています。中立風を装っているか、時勢に合わせて、人々が聞きたがっていることに寄せる、風見鶏タイプかのどちらかがほとんどで、予め根底の偏りを きちんと認識した上で、情報を吸収する術を身に付けないと、プロパガンダの餌食になるだけです。

比較的安全に情報を得たければ、数少ない中立ソースを見るのが簡単で、ウィキペディア(Wiki)やアメリカであればfactcheck.orgの様に、両側からの書き込みが許されるものだと、極端な主張が中和され、結果として中立性の高いソースとなります(Wikiは変更履歴が確認できるので、稀にトピックによっては、両側の攻防まで確認できて面白いです)。

TPPのバッカーは誰なのか?

政治は最低でも、10年以上のスパンで見ないと実像は見えてこないと、昔パートナーに教わったことがあるのですが、正にその通りで、wikiを見ていくだけでも、大枠でTPPのバッカーはアメリカだと誰でもわかります。20年くらい前から年次改革要望書、日米経済調和対話などと名称だけ変えながら、日本へ様々な分野での規制緩和など公然と要求を突きつけていた経緯があり、今はそれがTPPという名称になったに過ぎません。

因みに以前の日本の郵政民営化のバッカーは、実はアメリカの保険業界だという暴露本もありましたが、wikiを見れば「簡保を郵便事業から切り離して完全民営化し、全株を市場に売却せよ」と米国保険業界より要求され、協議も重ねられていたとあるように、今回も背後に米国の各産業界がいることくらいの察しはつきます。

Common CauseというNPOのレポートによると、米国の各産業界から、何と昨年だけでも法的に公開義務のあるものだけで、6億5800万ドル(800億円以上)のロビー活動及び賛成議員を当選させるためのキャンペーン費用が投じられていたとか。

出資企業は各種企業系農業団体をはじめ、大口で分かりやすい所では、遺伝子組み換えの種を製造・販売する、悪評高いモンサント(バイオ化学)を始め、エクソンやシェブロン(石油)、ファイザー(製薬会社)、大型チェーンリテールのウォールマートやターゲット(小売)、シティグループ、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス(金融)などが名を連ねていますが、彼らは一体何のために、大金を投じていると思いますか?

政府がメリットすらまともに説明できないTPPを推進する理由は、米国産業界からの要求だと考えれば、全て辻褄は合います。

アメリカで失敗が既に証明されていたレーガノミクスのパクリ(アベノミクス)を今更導入したことも、メディアがそれに好意的であったのも、集団的自衛権、特定秘密保護法が制定されたのもしかりで、メディアコントロールで表面化され難いだけで、戦後からの日米関係をwikiなどで辿れば、今も米国の支配下にあるのは明白で、従米政権ほど長寿で逆は短命であったのも、偶然ではなく必然だとわかります。小泉政権で一気に加速した植民地化は、安倍政権で完成となるでしょう。

日本はいまだ植民地であるという真実をひた隠しにし、対等であるかのような振る舞いや、国益のためと称して国民を翻弄し、搾取構造を幇助されるのは受け入れ難いです。TPPの実態は安全保障ともセットの日米関係問題であり、果たして選択肢が与えられているのかも怪しいとはいえ、少なくとも国民に真実が浸透し、簡単に操作されなくなるだけでも抵抗力は段違いです。事実TPPにせよ、唯一まだやめさせることができるのは国民なのですから。

政府のプロパガンダ戦略としては、”もう決まってしまった。”、と強引にでも国民の関心をそぎ、諦めさせるという手法をとっているようにもみえますが、騙されないで欲しいのです。戦後から現在まで、アメリカからの要求に対して日本がとってきた行動を見る限り、まともに抵抗できる立場すらも政府は持ち合わせていないと考える方が現実的ですが、国民が異常な従米政権へダメ出しをすることで、間接的ながら、ようやくアメリカに対する抵抗力を持ち得るのです。

本稿の連載を気がつけば7年間、パートナーの連載時代からは10年、読者の皆様には駄文にお付き合い頂き感謝致します。多忙の為、とりあえず半年間の休載を頂きます。

2015年12月4日金曜日

TPPについて思うこと ③

(U.S. FrontLine誌 2015年12月05日号 掲載分、一部加筆あり)

前2回では、TPPが日本にもたらす未来を知りたければ、今現在のアメリカを見ればよいこと、そして 投資の妨げとみなされる、関税以外の非関税障壁を撤廃させられることでの影響も甚大で、食の安全規制への制約や医薬品・医療費の高騰、公的国民健康保険制度の無効化をはじめ、隠れた様々なリスクを事前に全て把握して、完璧な対策をとるなど不可能であること、更にISD条項という、投資家の損得のみが争点で(例え国民に害があろうが)投資家だけを保護するためだけに存在し、国内法より上で負ければ上告もできない制度の怖さに加え、審議機関も米国寄りでアメリカは無敗、更にはラチェット規定という、一度TPPが始まれば退路は絶たれることなどについて触れました。

要するにアメリカとの取引が大半となるTPPは、想像しきれないほど危険度も高く、取り返しが付かないリスクだらけなのに、それでも日本政府はなぜ推進しているのでしょうか?

メリットは、一体何?

一応、安倍政権の2013年での試算では、TPPにより日本は農林水産物生産額が(安価な輸入品に市場を奪われるため)3兆円減で、経済全体では3.2兆円増でした。政府も認めている通り、数字的にみても、農林水産業に大打撃を与えることは自明で、先進国でも既に致命的に低い自給率を更に下げさせ、被間接支配状況を更に悪化させる見返りとしてのGDP僅か0.2兆円増が、メリットということでしょうか?

ちなみにこれはTPP発効10年後での話なので、年平均僅か200億円増程度でしかなく、それこそ私が昔関わった、中企業の某クライアント1社の年商にすら遠く及ばない額ですから、メリットの前提から既に意味不明なのです。

また「輸出企業が関税撤廃により価格競争力が増し、海外進出しやすくなる」という政府の主張も詭弁で、勿論日本の優れた工業製品などの輸出で、ニッチな分野では多少有効に働くかもしれませんが、そもそも米市場の大半の関税率は既にかなり低い上、日本企業のアメリカ進出案件と多々遭遇してきた経験上から言わせて貰えば、技術力があっても、“値段が高いから売れない”、など単純な話ではないケースがほとんどです。

米市場の参入障壁は関税ではない

米国市場において、日本企業の一番の参入障壁は文化、価値観、言語の違いへの理解・順応力で、製品企画力やマーケティング力からも、韓国をはじめとする競合に比べ致命的に劣っており、結果売れないし、生き残れないのです。製造品、農産物の輸出は更に顕著で、日本製である必要性もなく、BestBuyの主要家電で日本製品を見ることの方が珍しくなったくらいに、市場で負け続けているのはなぜか? ということです。

成功している企業は、正しい市場・需要・ターゲット分析を経た製造企画や、日本のスタンダードが通用しない自覚と異文化への理解や尊重があり、日本側の本社機構も不必要に介入しないなどの特徴が見られます。言葉の問題にしても、日本育ちであれば、英語が堪能であっても、文化的背景をも踏まえた言語的正解を、本来なら理解できるはずもないのですが、積極的にアメリカ社会に入り込んで苦労を重ね、その高いハードルを越える人も中にはいます。しかし残念ながら、こういう企業や人材が本当に少ないのが現実です。

言語の障壁の例外として、逆に1年近く日本語版しかなかったのに、ネコを集めるアプリが、アメリカ人の間でも既にブレイクしていましたが、要はTPPが米国進出の何かを勝手に後押ししてくれるわけではなく、ほとんどの場合、企業側の努力や理解、或いは独自性や創造力などが結局の ところ決め手となるはずです。

TPPに参加する真の動機は?

勿論、リスクのないビジネスなどありませんが、日本の農業を破綻させた上で、医療、保険などを始め、想定不能な広範囲のリスクに晒されるのに見合うリターンが見えてこないのは不可解ですよね? そもそも、日本はこれまでも内需で回っていた国であり、輸出割合も非常に低く、日本政府の公式発表をほんの少し掘っただけでも、辻褄が色々合わないわけで、TPPに参加している真の動機が果たして何なのか、疑問に思いませんか?

次回でこのTPPの話を締め括ると共に、あまりに多忙なため、私の本誌での連載を暫くの間お休みさせて頂きます。今回、IT侍が扱うテーマには不相応だったかもしれませんが、どうかご容赦ください。日本を離れて14年、アメリカに住んだことで、それまで見えていなかった日米の良い点・悪い点に色々と気づくことができました。

ちなみに国として日本の良い、優れている点だと私が実感したのは、所得格差の少なさ(極端な一人勝ちを生みにくい、平均社会構造)、リーズナブルな公的保険を含む健康保険や医薬品、医療制度、終身雇用(従業員の会社へのロイヤリティの高さ)、国内テロが起きる危険性の低さ、食の安全規制、関税による国内産業の保護政策、地域社会の存在などです。

ただ同時に日本の良い点が、年々損なわれていく様も見てきたのですが、TPPはその集大成といえます。さすがに黙っては見ていられなくなり、節目のテーマに選びました。

2015年12月2日水曜日

TPPについて思うこと ①

(U.S. FrontLine誌 2015年11月5日号 掲載分)

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の合意がいよいよ近いという報道がされています。TPPについては、ご承知の方も多いかとは思いますが、一応念のため簡単に補足すると、関税の撤廃や、各国の様々な分野での安全基準や規制やルールの統一などにより自由貿易を推進する協定で、シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4カ国で始まったのが、アメリカ、オーストラリア、マレーシア、ベトナム、ペルーが加盟交渉国として加わり、更にメキシコ、カナダ、現在は日本も交渉に参加しています。

TPPは対象分野がとにかく広く、農産物や工業品、製造品などの輸出入に留まらず、保険、金融、医療、公共事業、建築、電気通信、投資、知的財産権など、ありとあらゆる分野に関係しているので、貿易協定とはいえ、人々の生活に直接様々な影響を及ぼすことは必至です。それだけに賛否両論があり、現時点でメリット・デメリットを100%証明できる人はいないでしょう。

TPPでこの先日本に起こることは
現在のアメリカを見れば分かる

TPPのメリットとしてよく挙げられるのが、関税の撤廃により衣食住に関わる多くの商品が安く購入できるようになることですが、これはその通りでしょう。但し、もしもそれが例えば日本に現存する八百屋さんやスーパーマーケットに並ぶ食材、あるいは個人経営でやっているような家具屋さんや雑貨屋さん、文房具屋さんなんかに並んでいるものの値段が単に下がるというような想像をされているのなら、近未来の現実的な様相はかなり違っているでしょう。

そう言い切れる根拠は、アメリカの現状を見てきたからです。規制を緩め、積極的に市場を開放していった(自由貿易を推進した)結果、中国製に代表されるような、品質はもとより安全基準なども極めて怪しい安価なものが大量に流入することになりました。

当社で運営しているオンラインショップの新規商材を求めて、ラスベガスの大規模な見本市へ何度か足を運んだことがあるのですが、品数は確かに多いのですが、大半は言葉は悪いですが、本当にゴミ屑のようなものばかりで、消費を煽り続けた国の末路を目の当たりにした気がして、パ ートナーと共にげんなりした経験を何度もしました。

消費者の購入先も大変革を遂げます。近年は生鮮食品をも扱い大型グロスリーストアを脅かしているアマゾン、ウォルマートやターゲット、あるいはステープルズやホームデポなんかをイメージして頂ければ簡単でしょう。

大手リテールストアは、徹底したサプライチェーン・マネジメントに加え、売れ筋は自前で製造して供給できるようにし、圧倒的な価格のアドバンテージを築き、市場に価格破壊を起こし、その強靭な企業体力を武器に、買収も重ねながら、相手を潰す目的で採算割れ需要無視で競合エリ アへ過剰に出店し(相手を飛ばした後は、自社も閉じるか価格を吊り上げ)、スモールからミッドビジネスなどあっさりと淘汰していきました。

関税撤廃で輸入が促進され、国内の製造業がダメージを食らう位までは日本の人達も想像できていると思いますが、販売・流通構造も、今のアメリカのように完全に塗り替えられることも覚悟すべきです。

極端な淘汰で失業率も増え、生き残るのは利益性、合理性をひたすら追求する超大手のみで、その劣悪な労働環境は、ワーキングプアと呼ばれる人達を大量に生み出し、この層がまた安価なものを消費して支えていくわけですが、そもそも“安く大量に消費するのが素敵なこと”というのも、 消費を必要とする大手の洗脳作戦でした。

経済誌も盛んに「モノが安く手に入る」とTPPのメリットを語るのも、彼らの母体や広告主を考えれば当然の主張なわけですが、消費者を欺くチープなプロパガンダですね。

要はアメリカ化の国際市場展開の話

結局のところTPPは、多国籍の大手企業関連の超富裕層(俗に言う投資家や経営者など所得水準的にトップ1%)によるアメリカ国内の支配を、日本を含めた世界市場へ拡大をさせる、いわば経済植民地化の動き以外の何者でもないわけで、彼らにとっては多大なメリットで、国家的には何 か数値的に多少ポジティブに働くかもしれませんが、99%の一般市民にとっては、搾取される生活環境が更に悪化するだけだと、アメリカを知っていれば容易に予測できます。

無意味にひたすら消費を煽り続けながら、一方でそれを販売する大型店舗側も、安価で都合の良い労働力を得て、本当に一握りのトップのみが莫大な利益を継続的に得るという搾取構造を、私は経済植民地化と呼んでいます。

なお本稿の基本テーマと何の関係が?と思われそうですが、私が仕事上で経験してきたことで、TPPの実像の理解に役立つ部分があり、実際にアメリカで生活している方々なら、ご理解頂けることも多々あると期待しています。

TPPについて思うこと ②

(U.S. FrontLine誌 2015年11月20日号 掲載分、一部加筆あり)

前回TPPが日本にもたらす未来を知りたければ、今現在のアメリカを見ればよいこと、そして農産物や工業品、製造品などの輸出入に留まらず、保険、金融、医療、公共事業、建築、電気通信、投資、知的財産権など、ありとあらゆる分野に影響するTPPは、“関税の撤廃で消費者は安くモノが買えてハッピー”というような単純な話ではなく、トップ1%の富裕層のアメリカ国内支配で実践してきたビジネスモデルを、日本を含めた世界市場に展開させようとする動きそのものであり、流通するモノ自体の危うさに加え、流通・販売構造をも大変革させ、スモール、ミッドビジネスをあっという間に淘汰した後、一部の超大手に市場を占められるようになるのを覚悟する必要があることについて、お話ししました。

非課税障壁も狙われる

関税以外にも、市場への参入障壁となるものはすべて、自由貿易推進が原則のTPPでは狙われることになり、こちらの影響も甚大で、例えば日本では現在義務付けられている「遺伝子組み換え」の表示も、販売上(日本市場参入のために投資した側には)不都合に働くという理由で、規制を撤廃させられるか、あるいは今後そういった国民の安全を考えた規制を強化した場合に、投資家の参入障壁になったとして、国が損害賠償請求される可能性などは有名な話です。

医療制度・環境への影響も深刻で、懸念が色々ある中、まずは医薬品の価格が上がります。日本の場合、今までは国が価格を決定する制度だったため、リーズナブルな価格で提供できていましたが、これは製薬会社にとって多大な参入障壁ですから、制度変更させられるわけです。

製薬会社はTPPによる知的財産権条項も武器に、安いジェネリック医薬品を締め出し、好き勝手に値段を上げられるので、いきなり50倍になるとか、現在のアメリカで現実に起きていることが起こり得るのです。

また薬代の高騰で、今でも財政難の国民健康保険(公的保険)ではカバーできなくなり、(現在まではほとんど認められていなかった)保険適用内・外の併用診療と営利企業の医療機関経営の解禁から、医療費も高騰し、公的保険の適用範囲を限定的にし、それ自体の有効性を奪い、民間保険の需要を増大させるというシナリオが浮かびます。

これもアメリカの現状そのもので、最終的にお金のある人のみが、高額の保険料と治療費と引き換えに、まともな医療を受けられるという世界へ突入させられることになります。

ポイントは、こんな例など氷山の一角でしかなく、こういったリスクをすべて事前に把握し、交渉上で万全な策を練るなど不可能であり、例えばファイヤウォールのポート全開で一部フィルタを足して安全と謳うようなものです。(どこのポートが攻撃されるなど予測不可能なので、本来はポートを一旦全部閉じた上で、必要なポートだけを限定的に開けるのが、セキュリティ上での鉄則といえます。)

投資家の損得だけがすべてのISD条項

TPPの巨大リスクで有名なのが、ISD条項(InvestorStateDispute Settlement)やラチェット規定ですが、ISD条項は、投資家と国との紛争を、世界銀行内の機関である国際投資紛争解決センター(ICSID)で裁くというものです。

この機関は、最高裁より上位で国内法をも飛び越える存在で、例え国益のための政府の政策であっても、争点はあくまでも投資家がどういう経緯で損失を被ったのかでしかなく、国民ではなく投資家のためだけに存在するISD条項は、主権の侵害になると言われています。例えば、脱原発を発表したドイツが、海外の投資企業に提訴され、多額の和解金を支払わされたのは記憶に新しい話です。

ラチェット規定は、後戻りを許さないために、仮に一度開いた市場を縮小しようものなら、多大な賠償で賄わせる等、現実的にそういうオプションを絶つものです。

百戦錬磨の相手に丸腰?

世界銀行は、出資額の多いアメリカが一番影響力を持っており、総裁も米国出身者からという慣例で、その機関内のICSIDも勿論米国寄りで、最初から中立ではなく、上訴制度もない上、密室裁判となります。事実として、これまでISD条項でアメリカが訴えられて、負けたことはないとか。

これに対する安倍政権の答弁で愕然としたのが、「過去に各国との貿易協定でISD条項はあったが、日本が訴えられたことがない」という論旨です。訴訟もないだろうから契約内容など重要ではないとでも言いたいのでしょうか?

元々何らかの信頼関係があるから商談があり、それでも想定外の訴訟に備えて契約書が存在するわけで、昔よく聞いたような、契約書もなく数億円のシステムを発注して、後で泣き寝入りしているダメ日本企業を彷彿させられました。

また本来ISD条項は、法整備の甘い発展途上国との取引で、自国の投資家を守るためのもので、本ケースは訴訟大国アメリカとの取引がメイン。日本企業の米市場進出サポートでたまに遭遇する、日本流儀が通用するという幻想を抱いたやば~い案件と被ります。百戦錬磨の相手に未経験者が丸腰でどんな戦いができるというのか…(続く)

2015年11月22日日曜日

Facebookでエンゲージメント率を高める② Engagement!

(U.S. FrontLine誌 2013年8月5日号 掲載分)

前回、SNS(オンラインコミュニティ)の1種であるFacebookにおいて、ビジネス系ページでファン(Like)を募っていくハードルと、ファン獲得後もそれらをビジネスに活用する際のハードルについてお話ししました。

SNS上でユーザーの反応の度合いを示す「エンゲージメント」という指標があり、Facebookでいえば、1つの投稿に対して、(Likeされた数 + コメント数)÷ファン数で計算される「エンゲージメント率」を高めていけないと、結局のところファンがいても大して生かす道はありません。

ミュージシャンや有名人などのページのファンは、常に彼らからの投稿を待ち望んでおり、むしろ何かを宣伝されたがっているくらいで、エンゲージメント率は極めて高く、正にビジネス系ページが目指すべき所といえます。

ただ特に大企業ほど、できるだけ無難で大衆受けすることを考慮する傾向にあり、担当者もリスクを取りたがりません。結果、特徴・個性のないページになりがちで、Facebookに代表されるSNS全般で、多くの企業が今ひとつうまく活用できない、大きな要因の1つになっていると思われます。

自社のカラー・スタンスを明確にする

Grey Pouponという、古くからあるマスタードのブランドが、Facebook上などで、一時的に話題をさらっていました。アメリカで6月はゲイ・プライドの月とされ、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの人々が、自己の性的指向や性自認に誇りを持つべきという考えから、毎年各地でパレードや催しものが行われます。

企業もこれらの運動を積極的に支持するところもあり、例えばGoogleはこの期間で、ゲイ・コミュニティの象徴であるレインボー色の画像を表示するなどして祝っていました。

Grey Pouponは今年、自社のFacebookページ上でゲイ・プライドの月を祝う投稿をしたのですが、それに対して賛同・反対するユーザー間で論争が起きました。その投稿に対して数時間内にLikeは約2万人、シェアは約3万7千人、コメント数は約1万9千になり、いわゆるFacebook 上での口コミが発生しました。

Grey Pouponといえば、アメリカ人なら誰もが知っているCMがあります。運転手付のロールス・ロイスに乗った金持ちの紳士が、車中で食事をしていて、信号待ちでたまたま横に並んだ車の後部座席の紳士から、窓越しに「Grey Pouponありますか?」と尋ねられ、「もちろん!」と気前 良くこのマスタードを手渡しする、というものです。

これを少しアレンジした、男性が窓越しで手を握った画像と、「6月は(ゲイ)プライドの月だけど、むしろ1年中祝うことをお勧めします。なぜなら、プライドと良い趣味の味覚は、季節に限定されないので」というテキストを投稿したのでした。

反対派は同性愛に批判的なコメントをいろいろ書き込んだ上、「顧客層を失うことになるぞ」と騒いでいるわけですが、企業側はまった動じることなく、クールにスタンスを示していました。

死にかけたブランドの再生

Grey Pouponは歴史こそありますが、近年は死にかけたブランドと言われているそうです。しかし今回の騒動でいろんなメディアにも取り上げられ、若い人にも再度知られるきっかけとなりました。

昨年はオレオクッキーが、同様のことをして話題になっていました。調べたところ、実はどちらも親会社は同じだったので、元々そういう社風なのかもしれません。

もちろん、この意思表明で失ったファン・客層もいたはずですが、それより得たファン・効果の方がはるかに大きかったのではないでしょうか?

中小企業だからできること

先のマスタードの会社は決して中小ではないのですが、大手が苦手とすること、できないことにあえて注目して、比較的自由度のある中小ならではの差別化を考えていくことは、FacebookなどSNSにおいて、ファンの心をとらえ、高いエンゲージメント率を得るのに、非常に有効な手段となり得ます。

ちなみに我が社で運営しているレッグウェア専門のオンラインショップのFacebookページのファンが、5万人以上(現在は10万人以上)になったと本稿で前にお話ししましたが、過去にやはり同性愛者に関した話題で、明確に擁護するスタンスを示す投稿をしたことがあったそうです。

もちろん反対派からのネガティブな書き込みもあり、若干Likeは減ったそうですが、それ以上に増えたLikeの方が多かったようで、そもそも差別主義の顧客を失うのは、悔いにはならないですし、エンゲージメント率も高くなったそうです。

タイムリーな話題で、つい先日、連邦最高裁で「結婚防衛法」と呼ばれる、結婚は男女間のものと規定する条項を違憲とする判決が下されました。これにより同姓婚でも同等の権利が得られることになるそうで、不景気ながら世の中、良い方向には向かっているなと思いました。

[もっと詳しくソーシャルメディアマーケティングについて知りたい方はこちらも参照ください: ソーシャルメディアマーケティングが必要な理由]

2015年11月19日木曜日

Facebookでエンゲージメント率を高める① Engagement!

(U.S. FrontLine誌 2013年7月20日号 掲載分)

Facebookは一種のオンラインコミュニティ(SNS)であり、そこには商用・個人含めて色々なページが存在しているわけですが、各ページをLikeしているユーザーは、それぞれのファンと呼ばれます。

実際にページを開設してみれば誰しも経験すると思うのですが、企業やブランドといったビジネス系のページでファン(Like)数を増やしていくのはなかなか大変です。

超有名企業で、それをLikeすることがそのままその人のアイデンティティを表しているかのようなもの、例えばスターバックス・コーヒーやApple社とか、あるいは好きな小説や漫画、テレビ番組、音楽といった趣味・娯楽系のページなら、ユーザーが自らページを探し出して、勝手にLikeしてく れる可能性もありますが、一般のビジネス系では、残念ながらそんな都合の良いことはなかなか起きてはくれません。

Likeを多く獲得できているビジネス系のページは、単に大企業でファンが多いからそうなっているなどと誤解されているかもしれませんが、大半は広告やプロモーションなど、何らかのお金や労力の伴った企業側担当者の努力があり、やっと得られる成果なのです。

このファン獲得の段階でも十分ハードルは高いので、うまく行かず苦悩しているケースも多々あると思いますが、覚悟を決めてある程度のお金と労力を費やせば、時間は掛かるかもしれませんが、絶対に乗り越えられないものではないと思います。

多数のファンがいても、うまく生かせない

ただそうした努力で獲得したファンベースがあっても、ビジネスにうまく生かせるか(つまり何らかの売上に変換できるか)、といえば、これまた別の話で、再び苦悩している企業もかなりあると思います。これが2つ目のハードルです。ビジネス系ページのファンは、前述のとおり、半ば強引に ファンに仕立て上げたような人たちです。

通常はその企業への関心度も低く、当たり障りのないようなトピックを投稿しても、当然Likeやシェアなどの反応は薄く、宣伝や広告なら、なおさら寒い状況になります。むしろそれが続くとユーザーからうざいと思われ、次回から投稿を非表示にされるか、最悪はLikeを取り消される可能性す らあります。

一方ミュージシャンや有名人などのページには、忠誠心のあるファンが集っており、例え第三者的にはどうでもいいと感じる投稿でも、ファンたちはそれらを熱望しており、むしろ何かを宣伝されたがっているくらいの状況といえます。マーケティングをしていきたい企業側からすれば、それこそが探し求めていた理想のSNSといえます。

エンゲージメント率が低ければ、意味がない

ソーシャルメディア上で、ユーザーの愛着・関心・反応の度合いを示す指標として「エンゲージメント」という用語があり、「エンゲージメント率」は、反応数÷ユーザー数で計算されます。

Facebookでいえば、1つの投稿に対して、(Likeされた数+コメント数)÷ファン数です。(シェア数も加味するケースもありますが、Likeした上でシェアする人も多いからなのか、一般的にシェアは含まずに計算する方が多いようです)。

例えば1万人のファンがいるページで何かを投稿して、350人がLikeをし、50人がコメントを書けば、エンゲージメント率は4%ということです。

ソーシャルメディアマーケティングにおいて、もちろんファン数は絶対に必要ですが、このエンゲージメント率を高めていけないと、結局のところ、ただの一方通行の宣伝にしかならないわけです。

ビジネス系が目指すべき所は、先のミュージシャンや有名人などのページのように、ファンたちが今か今かと次の投稿を心から待ち望んでくれているような、エンゲージメント率の高いページということです。

エンゲージメント率を高めるには?

ファンの関心を引ける、面白い・インパクト・話題性のある投稿を頻繁にするのが、もちろんエンゲージメント率を高める1つの確実な方法ですが、これはかなりしんどい作業です。

企業側もファンに飽きられないよう、社内でSMS管理者を用意して、随時何かを投稿させるようにしているところも増えてはきました。

ただ特に日系企業など、ネット事情をあまり理解していない担当者が管理していると、ネタが尽きてどこかで出回っていた古いネタをそのまま流用しているだけで、ユーザーはカビの生えた周知の話題を見せられ続け、完全に退いてしまっているのに、企業側はおそらくそのことに気づいてもいない、という寒い光景もたまに見かけます。

手を抜けることは限られています。ではどうすれば良いのか? という話なのですが、次回、シンプルながら使える1つの手法をご紹介します。

[もっと詳しくソーシャルメディアマーケティングについて知りたい方はこちらも参照ください: ソーシャルメディアマーケティングが必要な理由]

2015年11月15日日曜日

採用のコツ⑥ 無償トライアル2 Hiring the Right Person, Part 6

(U.S. FrontLine誌 2013年5月5日号 掲載分)



前回、当社の場合は面接で好感触だった応募者に、無償ながら実際の業務に近い内容を数時間程度、トライアルとして、オフィスに来てもらい実際に行ってもらう制度があることについて、ご紹介しました。

この制度は、採用前のある種のお見合いみたいなもので、実務のイメージや仕事場の雰囲気なども事前に確認できるので、応募者にもわりと評判が良いものです。

またトライアルでは、簡単なトラップをいくつか仕掛けておくことで、応募者の潜在的な可能性、危険性、性格、PCの基本的なスキルなど、かなりしっかりと確認できるので、もしもこのような試みを実践されていない企業があれば、採用担当の方にも、自信を持ってお勧めしたいくらいです。

なおうちで発生する雇用のほとんどは、アメリカ人の採用になっているのですが、例えば同じように日系企業がアメリカ人を採用する際には、言語的な問題もあると思うので、特にこのトライアルのように、事前に一定の基準で評価できる制度は、有益ではないかと思っています。


さて、前回はオンラインショップ関連のポジションでの話をご紹介しましたが、今回はインターネットマーケッター関連での話です。ちなみにこの表現だとかなり広い範囲の職種をまだ指していることになるのですが、読者の方で想像しやすいところでは、自然な検索結果でウェブサイトを上位表示させる、SEO技術者であるとか、検索エンジンでキーワードに連動させた広告(PPC)の管理や最適化を行う人、というところでしょうか?

ちなみにFacebookなどSNSの管理者もこの類に入りますし、オンライン広告、もしくはバイラル(口コミ)マーケティング用に、何らかの画像、動画、テキストなどを作成する、コンテンツクリエーターも、ある種この中に入ります。実際に求人をすると、これら職種の完成形(シニアレベル)の人の応募はあまり多くなく、他のキャリアを築いて来た人が、新たにこのフィールドに興味を持ち、転職を希望しているパターンが結構あるように思います。中には元弁護士とか、過去にエミー賞をとったことのある元TVプロデューサーとか、ほんとうにさまざまですが、まだどういう世界なのかよく分からないけれど、漠然と興味を持たれている印象も多く見受けられます。

無償トライアルでは、クリエイティブライティング、PPCの基礎テスト、SEOライティング、SNSの応対シュミレーション(ブランドマネージメント)など、その時の求人状況や相手をみて、内容を選んで実施しています。

ちなみに各PCは、リモートで完全にモニタリングできるようにしており、必要に応じて応募者の行動を誰かが確認しているのですが、聞いた話で、こんなエピソードがありました。

ある応募者の話

その人は、前職がGoogleのクオリティーレイターという仕事の下請け会社に勤めていたということでした。

Googleの検索結果における各サイトの表示順位は、アルゴリズムと呼ばれる、彼らの非公開のルールでサイトを機械的に評価し、順位付けをしているわけですが、この「クオリティーレイター」は、人間が、実際に上位に来ているサイトを、ガイドラインに沿って手動で評価し、検索結果の品質評価をする仕事のことで、Googleが2005年より実施している試みです。

実際には、何人ものクオリティーレイターが決められたレポートを提出し、そこからいろいろな審査・承認のプロセスを経ていくようですが、結局、Googleもコンピュータだけでは追いつかず、人間の手を借りて、検索結果を構成しているということです。

経歴としては、インターネットマーケッターのポジションへの応募者の中では、わりと妥当な路線だったということもあり、多少期待はしたのですが、結果として、クリエイティブライティングのセンスがまったくないという、パートナーからの評価でした。


そしてその上で、わずか数時間のトライアル中に、当の本人は友達に向かって、「採用されるの、ちょろいよ」みたいな主旨のメールを(モニタリングされていると知らず)送っていたらしいのです。

ちなみに面接時から「簡単にできる」的な発言を簡単にしてしまうような応募者には、特に注意が必要で、大半は仕事を単に1つのタスクとしてしか見ていない人が多いのですが、まさにそんな感じでした。何より、自分の出来の評価・分析がまともにできていないのでは、その先が大変でしょう。さて、本シリーズはこれで以上ですが、仕事で採用する側、される側ともに、何らかの足しになれていたら幸いです。

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2015年11月14日土曜日

採用のコツ⑤ 無償トライアル1 Hiring the Right Person, Part 5

(U.S. FrontLine誌 2014年4月20日号 掲載分)

前回は、どういう根拠で自身がとるべき給与を考えているのかを、応募者に質問することで、その人の仕事に対する自覚やスタンスが確認できることや、収益と経費をできるだけクリアにすることで、本人の純利益への貢献度を明確に認識できるようにするという考え方を、私が日本にいた時代に勤めた会社内で確立したことについて紹介しました。さらに、日本の会社時代に真の成果報酬制度を設けさせ、社長より給与をとり、稼いだお金で私自身が起業できたことについても触れました。



採用(結婚)前の“お見合い”

我が社では面接の感触で、可能性を感じた方には、もれなく無償トライアルをオファーすることにしています。内容や長さは、募集している職種により変わってきますが、おおむね2~3時間で、無給ですが、オフィスで本番に近い仕事を実体験してもらうという制度です。

具体的には、例えばショップのカスタマーサービスや出荷担当のポジションであれば、仮想の顧客からの問い合わせに対して、どのように電話やEメールで応対するのか?とか、仮の注文に対して、商品をピッキングするところを実際にやってもらうのです。

勿論、いきなり本番の仕事はさせられないので、実際には予めこちらで用意した疑似体験的シミュレーションになるのですが、その人が潜在的に秘めた可能性や危険性、性格までも、かなり見事にキャッチできるので、この制度をもし採用されていない企業があれば、自信をもってお勧めしたいです。

また、この無償トライアルは、応募者の方からしても、かなりリアルに近い仕事のイメージを持てるため、本人にとってもフィットしそうな仕事・職場であるのかを容易に実感できることから、多くの方から良い制度だと褒めていただいています。

トラップも仕掛けておく

この関連の仕事には、私はあまり関与しておらず、多くはパートナーから聞いた話ですが、うちの場合は特に、正直さとディテールケアができるかに重点を置いており、それが如実に現れるようなトラップをいくつも仕掛けているそうです。また応募者にもあえて、うちが特にこの2点を重視していることも念入りに何度も伝えてから、行っているそうですが、合格点を取れるのは、10人に1人という感じのようです。

電話応対では、事前に読んでもらったショップのポリシーを、どれくらい注意深く見ていたかとか、あまり知識のないことを聞かれた際の対処の仕方とか、軽い人間性の部分まで垣間見ることができるそうです。

Eメールは、基本的な綴りや文法力から、PCの基本操作、ビジネスマナーの習得度まで、シンプルながらかなり明確に浮き彫りになるようで、文法レベルなどの問題は、それまでに受けた教育や環境が大きく影響しているので、一から直していくようなトレーニングは、中小企業では現実的に不可能に近く、事前に応募者の基礎力を把握することは重要といえます。

30分で6つの返信メールを書いてもらうのですが、できる人ほど、始める前に「どの位の時間内でやればいいのか」を聞いてくるそうです。

大半の何も聞かずに始める人たちには、残り15分の時点で伝えるそうです。全部をまともには終えられないと悟った人が、残りを雑に終えたり、1つのレスに最後まで固執したりと、やはり性格が出るそうです。

本当のポイントはプレッシャーの中での、時間を切らした本人の自己責任のとり方を観察しており、例えば確認作業のために、追加の時間を恐縮しながら交渉してくる人なら、実はOKだったりします。またワードのスペルチェック機能をきちんと使うかなど、初歩的ながら、過去の職場での習慣なども把握できます。

商品のピッキング作業も、甘く見る人が多い反面、100点を取れる人は少ないようです。ただあるクライアントさんが、オンラインショップにおいて、出荷作業が一番重要だと仰っていたのですが、私にこの表現はかなり刺さり、的を射た話だとも思っています。

勿論、注文が入るためには、色んなマーケティングをし、露出・集客に労力とお金を費やさなければ何も始まらないと、本稿で何度も触れましたが、そうした努力でせっかく得た注文も、最後にミス出荷をしてしまうと、一瞬で利益が吹っ飛んでしまう上、顧客不満足をも募ってしまい、すべて水の泡となるからです。

またトライアル時にはミスが発覚した際、それを指摘することで、応募者がフィードバックをうまく受けられる人かを見極めるというテーマも隠れています。ちなみに学歴の高い人ほど、逆ギレしてくることがたまにあります。

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2015年11月2日月曜日

採用のコツ④ 適正給与 Hiring the Right Person, Part 4

(U.S. FrontLine誌 2014年4月5日号 掲載分)

前回は、ある応募者を例に、問題の認識・分析能力や、会社における自分の存在価値とゴールを追求する姿勢についてお話ししました。今回も、面接時での話です。

給与は、実は応募者の言い値でもOK

応募者も採用する側も、給与やベネフィットは大きな関心ごとのはずです。私が面接する際には、「給与はいくらでもいいですよ、いくらほしいですか?」と尋ねることがよくあります。これはトリックでも何でもなく、実はまじめに本音として聞いています。

ただ勿論、補足すると(その人のパフォーマンスにより、人件費を差し引いても、会社に利益が十分にもたらされるのであれば)給与はいくらでもいいです、という意味です。

この質問も、応募者の自覚や労働スタンスを確認する上で、結構有効だと思っていて、勿論皆さん、希望の給与というのはあるものです。経営側も、できることなら、人も羨むような高給をみんなに支給して喜んでもらいたいし、感謝されたいというのが本音です。ただ現実として、それでは収支的に見合わないことが多く、何らかの制限があることの方が多いと思うのです。

例えば応募者が「給与は××くらいほしい」と意思表明してくれれば、次はその金額を算出した根拠を尋ねます。

回答として、業界的な相場だからとか、前職と比較してとか、自分に必要な生活水準からとか、根拠は様々だったりしますが、この質問をしている真の意味は、「あなたは、今、自分がいくらの価値があると考え、会社に対して金銭的にどんな貢献ができると考えているのか?」を聞いているのです。

給与は、どこから来ているのか?

前回の話とも被るのですが、なぜ会社がその人に給与を支払っているのかを、厳しく自問自答できている人ほど、ゴールも明確にもっているし、適正給与をこちらから説明しなくとも、理解されているものです。

仮に希望と開きがあっても、何ができれば、その開きを埋められるのかを真剣に考え、本気で努力しようとする人なら、企業は欲しがるでしょう。少なくとも、自分がどういう結果をもたらしていれば、雇用関係が良好に成立するのかを正しく認識できていれば、世の中的によく聞く、従業員から会社への疑念もかなりクリアに晴れるのではないかと思っています。

このように面接時に「自分がいくらの価値を生めるのか」を尋ねると、たまに応募者の方から、「今まで、こんな考え方をしたことがなかった。新しい視点を得たようだ」と感謝されることがあるので、ITとは直接関係しませんが、こんな考え方もあると、一応ご紹介してみました。

超透明パフォーマンス評価

私は、本来給与とはどういう業種で何年の経験を積んだからいくら、と単純に決まるような話ではなく、目安にはなったとしても、結局はその人によって生み出される利益により決まるべきものだと思っています(これはクライアントに対する対価でも同様だと考えており、本稿でも何度かそういう主旨の話をしてきたつもりです)。

勿論、事務職のような仕事での利益計算は、難しいものがありますが、特にうちの業種のようなITや広告業界などクリエーター系の職種では、常に何かを創造している仕事なので、収支はかなり明確に計算できます。

実際に我が社の場合、案件全体の金額と、担当者毎のタスクが、その内のいくら相当の仕事になるのか、また会社の経費的なこともかなり具体的に提示しているので、各タスクを担当する人が、どれくらいの時間を費やすかで、自身の人件費分を単純に差し引けば、貢献した純利益が、鮮 明に認識できるようにしています。

このアプローチは、勿論パフォーマンスが良い人には好評ですが、悪い人には、ただ後ろめたさを感じるつらい職場になります。しかし、私は技術職であれば、それでいいと思っています。本人が一念発起してスキルアップしてくれることを期待しているのですが、仮にもっと気楽な職場を求めたければ、他をあたってもらった方が、お互いのためだからです。

ちなみにこの考え方は、私が昔日本でIT会社に勤めていた頃に確立したものです。中小企業でしか成立しない話だとは思いますが、経費をクリアにしてもらい、自分が納めた案件の純利益の10%を年俸以外にボーナスとしてよこせと交渉し、実際に社長より給与をとるまでになり、資金を貯めて今の会社を起業できたのです。

そして今は、自分のような人が現れるのを、心待ちにしています。実は昨年雇った一人が、実力で給与を勝ち取る自信と精神をもち、自分と同じ匂いを感じるので、密かにわくわくしています。

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2015年10月20日火曜日

採用のコツ③ 分析・認識能力 Hiring the Right Person, Part 3

(U.S. FrontLine誌 2014年3月20日号 掲載分)

前回は、問題発生後のリアクションや、面接前のその人 の行動や努力から、評価対象にしていること、誰の時間を 惜しむタイプかを見極めようとしていることなど、我が社 の採用プロセスを例にご紹介しました。今回は面接に入っ てからの話です。

以前の職場を変わった理由は、おそらくどこの会社でも、 必ず聞かれることかと思います。その中で、会社が倒産し た、縮小して部署がクローズした、人員削減でレイオフさ れたというケースもあると思います。

そうした場合に、必ず聞くことにしているのが、「なぜそ のビジネスがうまく行かなくなったと思うか?」です。勿論、 この手の話は、一方から一部の話を聞いたところで、正解・ 不正解を判断できるようなことではありませんが、少なく ともその人が前の職場で何を考え、どういうスタンスで働 いてきたのかを知るには、かなり役立ちます。また問題分 析能力は、仕事で成長するには欠かせないものです。一従 業員として働いていたとしても、企業側の視点から、物事 を見られる人とそうでない人とでは、自ずとその人に期待 できるパフォーマンスも大きく違ってくるものです。

ある応募者のケース

私が立ち会った面接で、覚えているケースを少しご紹介 します。前職は某米系企業にSNSマネージャーとして採用さ れ、半年ほど勤めた、というアメリカ人女性の応募者でした。

近年、FacebookなどSNSの企業ページでの投稿や書き込 みを管理する、SNSマネージャーという職種の必要性が企 業でも注目され、我が社でもそういったサービスをクライ アントへ提供していることもあり、時折、そういうポジシ ョンの募集をすることがあります。主な仕事は、Facebook ページのファン(Like)が増えるような投稿やプロモーショ ンを考えたり、ユーザーからの書き込みに対応したりとい った仕事です。

いつものように、前職について尋ねてみたところ、「その 企業はFacebookページを開設し、その管理者として自分が 雇われたが、不景気のため、そのポジションがなくなった」 とのことでした。後任もいないようなので、「そのポジショ ンがなくなった」のは、おそらくその通りのようでした。

続けて、その企業で半年間、実際にどういうことをやっ ていたのかを尋ねると、その企業のFacebookページ上の自 分で撮影・編集して投稿した画像や、ブログの投稿記事な どを見せてくれました。

ビジネスは結果が全て

この方は正直さという面で、非常に好感が持てたので すが、採用という面では、残念ながら即時にうちでは難し いと感じました。理由は、彼女が多少得意げに見せてくれ たいくつかの投稿内容は、質的には悪くはなかったのです が、Likeが1~2人しかなく、そのページのファン自体も、 230人程度しかいなかったからです。

自分の仕事のゴールが何であるかを理解できていれば、 少なくともこんな痛い結果を、元気に人に見せてはいない と思うのですが、結果ではなく、自分が行ったタスク自体 に、何らかの価値があると思い込んでいる人には、とても 危険を感じます。

本人の中では“不景気”が原因だったかもしれませんが、 その企業が、支払った人件費を単純に広告費にでも回して いれば、おそらく数万人以上のファンが獲得できていたで あろう事実を考えると、単に費用対効果が見合っていない と判断されたことは、簡単に推測できました。

ゴールと自分の価値を追及する姿勢

なお実際に作成しているコンテンツの質は良いけれど、 反応があまり得られないことは、実は簡単に起こり得ます。 我が社でも自社ショップ関連ページでの投稿では、簡単に 良い反応が得られるのに、クライアントのページでは苦戦 するケースも正直あります。

そういう場合、根本の露出が全然できていない可能性が 高く、元々見てくれている人数が少なければ、空回りで終 わってしまうわけです。結局は、ファン数をある程度確保 してから投稿するか、広告費を投じて露出させるしか道は なく、彼女のケースもそういった状況であったことも予想 できるし、企業側にもそういった理解がなかったであろう ことは、気の毒にも思います。

ただ自分の仕事のゴールが何であり、企業がその人を雇 う目的・価値が何であるかを、常に本気で意識していれば、 問題を自分で認識・分析し、試行錯誤しながらでも、改善 案を提案していくぐらいの姿勢が見たいのです。一人で結 果を出すところまでを期待されて採用されたような状況で あれば、なお更です。

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2015年10月6日火曜日

採用のコツ② 面接前から読み取る Hiring the Right Person, Part 2

(U.S. FrontLine誌 2014年3月5日号 掲載分)

前回は、我が社の仕事にうまくフィットできる人には、 ディテールケアができるという共通点があることを見出し、 応募の段階からそういう人を選りすぐる方法として、メー ルの件名に指定した文字を必ず入れてもらうとか、カバー レターに必ず特定の内容を書いてもらうなど、応募者がテ ンプレート的なアプライができないよう、簡単なトラップ を仕掛けておくことで、かなりフィルターできるようにな り、採用プロセスが効率化されたことをご紹介しました。

今回は、面接段階からの話です。一応私は、採用する側 の目線で書いていますが、応募する人も企業はこういう見 方をしている(かもしれない)と視点を替えて読んで頂ける と、何かの参考になるかもしれません。但し、もしかした ら、うちだけに通用する話になっていることもあると思う ので、その辺はご了承ください。



問題発生後のリアクションを見ている 面接時間より20~30分も前に着いた方が、そのままオ フィスに入ってこられることがあるのですが、当たり前の ような感じで来られると、相手の事情をケアしない(自己 中)タイプとみなし、うちならマイナス評価にしかなりませ ん。申し訳なさそうに来られても、許せるのは最大15分前 くらいでしょうか。

また面接に遅れてきた場合、遅刻の程度にもよりますが、 遅れるとわかるどれくらい前に、電話を入れてきているか をまず考慮します。また相手が到着した際には、「どうされ ましたか?」と弁明のチャンスをあげようとします。

こちらとしては、何かメイクセンスする理由を聞きたく てそうしているわけですが、「いや、別に」みたいな返しを されると、ビジネスマナー、相手の質問の主旨を瞬時に汲 む能力、という点で既にアウトであることが簡単に判明し ます。仮に相手には正当な理由がまったくなかったとして も、それこそ何かユーモアででも笑わせてくれれば、許す 気になれるかもしれません。

また「履歴書を持参頂いていますか?」に対してNoであ ると、最初からマイナススタートといえます。もちろん、既 にこちらは受け取っているものですし、家にプリンタがな いというケースも理解はしていますが、やはりビジネスマナ ー、相手への気配り、面接に対して努力していいと本人が 思っている度合いという面で、イエローフラッグが立ちます。

専門職は、面接前の行動からも色々分かる

例えばウェブデベロッパーのポジションへ応募された方 には、必ず過去に携わったサイトを見せてもらうのですが、 HTMLソースを出して、「この部分は何をしているコードか わかりますか?」と尋ねて完璧に答えられた方は、過去1割 もいなかったような気がします。

「フォトショップが使えます」も、かなりの人が口にされ るのですが、実際の仕事で通用するくらいにツールを最初 から使いこなせていた方も、やはり1割もいない感じです。 ちなみにこれらは、それ関連の仕事で、既に食べてきた経 歴の人々での話です。

また面接でよくお話しするのですが、例えば専門・技術 職をこれからめざす人で、会社に入ってから色々教われば、 一生懸命がんばりますよ的なスタンスがよく見受けられる のですが、何で素人なりにでも、インターネットや自宅の パソコンを使って、見よう見真似でもできることからやっ てみようとしていないのか、不思議でなりません。

今はハードもソフトも安いし、ネット上からいくらでも 情報を拾えます。その職種にパッションがあり、本気で極 めようと思っていれば、まずは自分でやってみようとする 姿勢はもちろんのこと、自力でどこまで到達できたのかを 見たいところです。

誰の時間を惜しむタイプかを見極める

それをあえてしていない人は、恐らくパッションも知れ ており、自分で努力するという労力を惜しんでいる人です。 もっといえば、相手に色々教えてもらえばいいという受け 身の姿勢なので、相手に時間を費やさせることには抵抗が ない反面、自分の時間は惜しむタイプの人が多いと分析し ています。

先の例でも、ウェブデベロッパーになるために、HTML コーディングのスキルは必須ですが、基礎の基礎くらいな ら、適性があれば、参考書を3時間も読めばマスターでき てしまうことです(勿論、実践では多様なブラウザ・OSに 対応させるだけでも、かなり奥は深くなりますが)

フォトショップも、例えば人気サイトにあるような、お 題の画像を加工して競うコンテストに応募して、フィード バックも受けながら腕を磨くこともできます。実際、私の パートナーは、自分の時間でそうやってコツコツ腕を磨き、 優勝できるくらいにまでなっていきました。まあ、10年く らい前の話ですけどね(笑)。

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2015年10月2日金曜日

採用のコツ① 応募フィルター Hiring the Right Person, Part 1

(U.S. FrontLine誌 2014年2月20日号 掲載分)

企業は、やはり人材が要だと思います。どの企業も、で きるだけ良い人材が欲しいと考えていることでしょう。我 が社は大きく分けて、クライアント向けと自社向けの2つ のビジネスがあるのですが、クライアント系では、ウェブ マーケティングを中心にした広告代理店業からシステム開 発まで、自社系ではオンラインショップの運営などを手掛 けており、募集する人材もインターネット・マーケッター やウェブデベロッパーなど専門・技術系から、カスタマー サービスやシッパーまで、多岐に渡ることになります。



その上で、どういう人材をとるべきかを、過去のうまく いった例から分析したことがあり、ある共通点に気付きま した。それはディテールケアができることです。例えば分 析では、膨大な統計の数値を一つ一つまじめに見ていく必 要があります。プログラム・コーディングは、1文字たりと もミスコードを残すことは許されません。グラフィックデ ザインも1ピクセルのラインまで気にする仕事です。ライ ティングも誤字脱字などもってのほかです。シッピングだ って、配送先や梱包物を間違えたら、その注文の利益が吹 っ飛んで、全てが台無しです。要するに細かい人でないと、 うちにある大半の仕事が務まらないことに気付いたのです。

進化させた採用プロセス

あくまでも、うちにとって有効という話ではありますが、 このディテールケアができる人を採用するために、ちょっ とした工夫だけで、採用プロセスが飛躍的に効率アップで きたことがあり、それを少しご紹介します。

我が社の場合、求人のほとんどは英語のネイティブであ ることが必須となるので、募集をする際には、よく米系の 求人媒体に広告を出します。時期にもよるのですが、特に 初めのころなど、すぐに100件以上もの応募者からのメー ルが瞬く間に飛んでくることもざらにあり、それをすべて 読んで選別するだけでも、大変な時間を要していました。

もちろん、優秀な応募者ばかりであれば、うれしい悲鳴 なのですが、むしろその逆で、面接に呼ぶ意味もなさそう な人の方が圧倒的に多いという感じで、選別担当者のスト レスになっていました。

そこで5~6年くらい前から実践するようになったのが、 まず募集広告にいくつかのトラップを仕掛けて、それらを クリアできない人たちをフィルターすることで、採用プロ セスを短縮したのです。

ちなみにトラップといっても、実際には応募者に対して、 簡単な指示を与えるだけです。例えばメールでアプライす る際に、「件名には、ある指定した文字を入れてください」 とか、「必ずカバーレターを付け、そこに××について書い てきてください」とか、履歴書は添付ではなく本文に直接貼 り付けてください、といった感じです。ただこの指示内容 は、あえて結構長めに書いた求人広告の下の方に載せ、毎 回微妙に変えるのもコツです。

求人広告を注意深く、真剣に読んでくれる人は簡単にパ スできるのですが、そこまで注意深く読んでいない、おそ らく給与・待遇・勤務地、仕事内容など、自分に関心のあ る内容だけを把握して自己完結しているような人は、この 初歩的なトラップにも、簡単に引っ掛かります。

いくつかのトラップを仕掛けるだけ

件名トラップだけでも、媒体によって約4割はアウトの ものが来るので、その分、こちらからすれば、読まなけれ ばならないメールも減らせるわけです。

カバーレタートラップは、普段のテンプレート的にアプ ライしているやり方では通用しないようにすることで、応 募者の注意深さと本気度を測るのに使えます。

実際、アプライしたい企業を見つけたら、あとは事前に 用意した完ぺきなカバーレターと履歴書を何も考えず送れ ばいいと思っている人も多く、自動でいろいろ用意される 媒体なら、下手すると8割はこのパターンです。

惰性的にアプライ作業を繰り返している人ほどこの傾 向があり、そういう人は言い換えれば、多くの企業にアプ ライしても採用もされていない上、どこでもいいからアプ ライしている、とも読み取れます。また一度はテンプレー ト的に完ぺきに仕上げたカバーレターでも、自分で編集を 加えることで、多少なりとも文法力や文章力が必要になり、 そこでもその人のライティングスキルが確認できます。

添付ファイルを認めないと、完ぺきにレイアウトして事 前に用意した履歴書をそのまま使えないので、メールの本 文に組み込む過程で、フォーマットなどが崩れることもあ り、初歩的なITのスキルをうかがい知ることができる場合 があります。

人は何かが欲しい時、欲しい度合いに比例したその人の ベストを尽くします。つまり応募作業に掛けてくれる力の 結果から、その人を採用してすぐに期待できる最大のパフ ォーマンスは予測できます。次回に続きます。

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2015年9月24日木曜日

ソーシャルメディアとキャリア ② [Social Media & Your Career Part 2]

(U.S. FrontLine誌 2015年7月5日号 掲載分)

前回は、ソーシャルメディア上での発言が元で、採用 されたのに働く前にクビになった人たちのケースについて、 触れました。今回は働き出してからのケースを取り上げよ うと思っていたのですが、先週金曜にテキサス州のあるプ ールパーティで起きた事件が、まさにタイムリーだったの で、そちらについてお話ししたいと思います。

悲しさと強い憤りを感じた動画

色んなニュースで取り上げられているので、ご覧になっ た方も多いかと思いますが、その場に居合わせた人が撮影し た動画を見たとき、私はかなりショックを受けた上、一体何 が起きているのか信じられず、何度も見返してしまいました。

その動画の内容は、およそこんな感じでした。住宅街 のストリートに何人かのティーンがおり、1人の白人警官 と普通に話していたところ、別の常軌を逸した白人警官が、 次々と黒人の男の子のティーンだけに怒声を浴びせながら 地面に座らせたり、うつぶせにさせたり、後ろ手で手錠を かけていくのです。

そして今度は、周りにいた黒人の女の子のティーンたち へ、「ここから立ち去れ」と何度も怒鳴り散らし、最終的に は立ち去ったのですが、去り際の口答えが気に入らなかっ たらしく、1人の女の子につかみかかり、地面に顔を付け ろと怒鳴り、押さえ付けながら拘束したのです。

それを見ていた周りのおそらく友達らが、彼女を助けよ うと集まってきたところ、この警官は銃を取り出し、子供 らを威嚇したのです。ちなみにこのティーンたちは、ただ プールパーティに来ていて、女の子たちはビキニ、男の子 も短パンで、もちろん丸腰で武器など一切なく、無抵抗な 子供たちでした。この警官のまるでテロリストでも相手に しているかのような行動は、とても不可解でした。



また特定の犯罪者を探しているというより、とにかく手当 たり次第に目に付いた黒人を拘束しているようにしか見え ないのも、とても違和感がありました。彼らは銃を向けられ るまでは、普通に逃げるわけでも、争うわけでもなく、ただ その場に居ただけのように見えたので、一体どんな罪や容疑 でこんな扱いを受けているのだろう? と思っていました。 さらに私を混乱させたのが、周りにいる白人には一切 干渉しない一方で、何か罪を犯しているとも到底思えない、 ただ公共のストリートにいるだけの黒人ティーンにのみ、 「ここから立ち去れ」と怒声を浴びせ続けていたことです。

私は記事を読む前に動画を見たため、何層にも渡って 不可解な出来事でした。ある記事によると、ことの発端は、 コンドやタウンハウスなどにあるHOAが管理する共用プー ルを利用したプライベートパーティを、そこに住む黒人家 族が開き、招待された黒人を含む友達が参加していたとこ ろ、近所の白人が、“付近に住んでいない、立ち入りを許可 されていない黒人たちが来ている”と、警察へ通報したとの ことです。このニュースはその後、当事者以外の色々なと ころでも、大きな波紋を呼びました。

発言の自由には当然責任も伴う

マイアミにある高校の校長が、ネット経由で新聞へ、“He did nothing wrong, He was afraid for his life. I commend him for his actions.”(この警官は何も間違っていない。彼は 命の危険を感じていた。彼はよくやった。)と投稿したのが元 で、解雇されました。後のインタビューで本人は、「匿名で投 稿するつもりだった」と発言していました。そういう問題で もなく、理不尽な目に遭った子供たちを凶悪な犯罪者扱い?

またある小学4 年を受け持つ先生は、Facebook上 で、こんな醜い人種差別的発言をして、解雇されています。 “Segregated on one side of town so they can hurt each other and leave the innocent people alone. Maybe the 50s and 60s were really on to something.”(黒人たちを隔 離すればいい。彼らはお互いに殺し合い、罪のない(白人)は 関わらなくて済む。1950~1960年代にそうしていたのは 正しかった)。こんな“先生”の下にいた子に深く同情します。

また黒人の女の子と白人女性が喧嘩していて、別の白人 女性が黒人の子の頭を叩いている動画もあるのですが、こ の白人女性たちは、人種差別的な醜い言動や、顔をひっぱ たくなど、黒人の子らを攻撃し騒ぎを煽っていたというの が、インタビューなどから知れ渡っており、ネット上でこ れらが誰かを突き止める動きも起きました。

例えば1人はBank Of America(BOA)関連していると分 かると、BOAのツイッターページに、「人種的中傷と暴力で 子供を攻撃しているTracey Carver-Allbrittonは、そちらの 従業員ですか?」と投稿され、BOAも返答していました(実 際にはそのベンダーの従業員だったようです)。この女性も 現在雇用主から、停職処分を下されました。

発言の自由は、もちろん誰にでもありますが、ソーシャ ルメディアの時代では、内容により相応の責任もとらされ ることを覚悟しておくべきでしょう。

2015年9月17日木曜日

ソーシャルメディアとキャリア ① [Social media and your career, part 1]

(U.S. FrontLine誌 2015年6月20日号 掲載分)

この4月、テキサス郊外に住む、ある27歳のシングル マザーの記事が取り上げられました。何カ月も無職で仕事 を探していて、ようやく就職先が決まったらしいのですが、 働く初日の朝に、Facebookへ自身が投稿した、たった2行 の文章が波紋を呼び、結局、働く前にクビになったという 話です。

ちなみに彼女は、チャイルドケアの仕事に就こうとして いたのですが、Facebookの自分のページに、こんな投稿を していました。

“I start my new job today, but I absolutely hate working at day care.(今日から新しい仕事が始まる。でも、 デイケアで働くのはまっぴら)” さらに続けて、“Lol, it's all good, I just really hate being around a lot of kids.(大笑い。 まあ、いいとしよう。たくさんの子どもが周りにいるのが 本当に嫌なだけ)”

彼女の発言に対して、すぐに多くの女性から批判的反応 があったようで、「バカ女」と罵られたり、「伝染病患者」の ような扱いで激しくバッシングされたりしたそうです。 皆さんは、この話を聞いて、どう感じられましたか?  シングルマザーの方や求職中の方なら、もしかしたら少し は同情されるのかもしれませんが、私からすれば、これは 何層にも渡ってアウトでした。

あえて、どれくらいダメかをたとえるなら、誰かの講演 に行き、講演前のスピーカーとの挨拶で、「コネクション作 りで来ました」と本音で喋ってしまうくらいですかね。まぁ 若いときには、誰でも色々やらかすかな~(笑)。

さて、客観的に見て、どんな意図での発言だったとし ても、これを、子供をもつ親、つまり施設にとってのクラ イアントが見てしまったら、そんなスタッフのいる施設に 子供を預けたくはないだろうし、そういうスタッフを採用 した企業体制自体にも疑問を感じるだろうし、採用した側 も面目丸つぶれで、下手をすると既にそこで働いている他 の人にまで、色んな迷惑が及んでいるかもしれません。そ して何より、たくさんの子供に囲まれるのが大嫌いな人が、 選ぶべき職業ではないでしょうね。

働き始める前にクビ!

投稿は、Facebook上の8000人のメンバーをもつヤード セールグループにも拡散され、狭いコミュニティー内で広 まる噂のように、一気に広まっていき、遂には施設のオペ レーターの耳にも入ったようで、本人に直接コンタクトし てきて、実際に働き始める前に解雇を通達されたそうです。

他にも2月にテキサスに住む別の10代の女性が、ピザ 屋で働き出す前日に、ツイッター上で自身が呟いたことが 原因で、即クビになったそうです。彼女は、“Eww I start this f**k ass job tomorrow(ゲェー、明日から最悪の仕事 が始まる)”と7つの親指を下に向けた絵文字で呟き、それ を見たスタッフが経営者に見せたところ、翌日、“...no you don't start that job today! I just fired you! Good luck with your no money, no job life!(いいや、今日、君の仕 事は始まらないよ。たった今クビにしたから。お金も仕事 もない生活に幸運を)”と、直接経営者からツイッター上で 返され、クビになったそうです。

ソーシャルメディアは、ガラス張りのプライバシーと思え

また、もう1つ別の層の問題として、プライバシー意識 の薄さがあります。もちろん、Facebookは、設定次第で自 分の投稿を見せる相手も任意に設定できます。つまり正し く設定さえしていれば、ある程度クローズドの世界にはで きるのですが、これが逆に人々の油断を誘っているのかも しれません。

仮にFacebook上では、自分のフレンドのみに投稿を見 せていたとしても、例えばそのうちの誰かが勝手に画面コ ピーをとって、外部へ拡散することだって可能なのです。

つまりは100%信頼の置ける相手とのみフレンドの関係 になっていない限り、設定云々も大した意味をもたないわ けです。しかし、ソーシャルメディアをよく利用している 人ほど、ちょっとした知り合い程度の相手も含めて、フレ ンド登録している人の方が大半であると思われるので、そ もそもセキュアと考える方が無理がありそうです。

最初の彼女のケースでも、本人がどのようなプライバシ ー設定にしていたのか定かではありませんが、ソーシャル メディア上で行う自身の発言は、それがプライバシー設定 的にパブリックであれプライベートであれ、相手本人が目 の前にいるくらいのつもりで発言するべきなのでしょう。

[もっと詳しくソーシャルメディアマーケティングについて知りたい方はこちらも参照ください: ソーシャルメディアマーケティングが必要な理由]

2015年9月11日金曜日

天才的キャンペーン: 「Thanks Obama」meme.

(U.S. FrontLine誌 2015年5月20日号 掲載分)

ある時期から、「Thanks Obama」というフレーズが流 行っていますが、ことの発端は、政治的や経済的に起こる、 望まない事態や出来事を、共和党支持者(ティーパーティな ど保守派)たちが、とにかくオバマ大統領のせいにする傾向 があり、本来の因果関係や原因も丸無視、あるいはまった く考えようともせず、とにかく盲目的にオバマ氏が悪いと いう片付け方で終えるという風潮があります。

ちなみに聞いた話で、ある病院の待合室で待っていたら、 そこでウクライナで起きた旅客機の墜落事故のニュースが テレビでたまたま流れていて、一緒に見ていた白人の年配 の女性が、「オバマのせいだ…」と本気で呟いていたそうで、 おそらく私が予想できる以上に、この風潮に染まっている 人たちがいるのかもしれません。

「Thanks Obama」というミーム

民主党支持者(リベラル)や理性のある無党派の人たちは、 そんな風潮を皮肉る形でユーモアとして、日常で起こる望 まない事態や出来事に、「Thanks Obama」とテキストをつ けた画像や動画などをアップするというのが、ネット上で ミーム(流行)になったのです。

特にReddit(アメリカの膨大なユーザー数を誇る面白ニ ュース&掲示板サイトで、掲示板部分では日本の2ch的な 要素がある)というサイト内のSubreddit(個別のトピッ クの掲載箇所)で、「Thanks Obama」というコミュニティ ーが作られ、そこに色んなユーモアコンテンツが投稿され、 かなり盛り上がっていました。

どんなものが投稿されていたかと言えば、缶飲料のタブ が折れてしまって飲めないとか、ガムが足底についたとか、 バナナの皮がうまく剥けなかったとか、とにかくありとあ らゆる、オバマ氏と無関係なことに、「Thanks Obama」と して投稿するといった具合です。

そんな「Thanks Obama」熱を、オバマ政権が実際にどう とらえていたのかは不明ですが、Redittで終わりがないか の如く続いていた投稿を、一気に沈着させた出来事があり ました。それは、政府がバズフィードという超有名バイラル (口コミ)メディアと組んで作成した、バイラルビデオでした。 健康保険(通称オバマケア)への加入登録を促すための、政 府公式のキャンペーンビデオだったのですが、何とオバマ氏 自身が出演し、「Thanks Obama」ネタを入れてきたのでした。



クッキーをミルクに浸して食べようとするも、クッキーの 方がコップよりサイズが大きくて浸せない、というコンテで、 自ら「Thanks Obama」と言う自虐ユーモアを発し、ネット上 でも、とても話題になり、正に超バイラルビデオとなりました。

従来の常識を覆した手法

何より斬新だったのが、以前の政府系キャンペーンなら、 道徳観に訴える真面目なものと相場は決まっており、どこ か説教くさいものになりがちだったのですが、この動画は まったくそういったテイストではなかったことです。

大統領が、鏡で見た目を確認しなら自分の色んな表情を 作ってみたり、へたくそな奥さんの絵を描いてみて、自分で 褒めてみたり、セルフィースティック(自撮り棒)を使ってよ いアングルを探してみたり、人に見られて恥ずかしい瞬間 を見られたりと、人間的なリアルさを表現したものでした。

しかし根底はヘルスケアのことなので、勿論真面目で 深刻な内容であり、全体を通して、うまく若者を意識した、 受け入れやすい、軽い感じのコンテに仕上げつつ、重要な 情報をさらっと訴求できており、アメリカの大統領が、自 虐ユーモアを使ってきたというインパクトも相まって、大 きな反響のあるキャンペーンに仕上がっていました。

Subredditを作ったユーザーも、「まいった。これ以上 のThanks Obamaユーモアは誰も出せない」という種の コメントを残し、実際その後、Subredditへの「Thanks Obama」投稿がぴたりと止まりました。

バイラルはまさに旬

バイラルマーケティングは、今まさに現代のマーケティ ング手法として地位を確立してきています。この例はあく までも政府(=大企業)的なものではありますが、根底概念 としては、中小企業のマーケティングにも、十分に通じる ものだと思っています。

特に覚えておくべきことは、たとえ大統領であっても、 若者層などのデモグラフィックにリーチするには、ここま で彼らを意識して正しく分析し、刺さるものを作り、リー チできる場所へ供給する必要があるという事でしょう。

我が社でもかなり前からバイラルマーケティングには取 り組んでおり、先日もまさに某クライアントのバイラル動 画の案件の撮影を終えたばかりです。やっていていつも思 うのは、難易度は確かに高く、どう転ぶかはわかりません が、簡単ではないからこそ、誰にでもできない分、価値が あるのだということです。

[もっと詳しくバイラル マーケティングについて知りたい方はこちらも参照ください: バイラル マーケティングが必要な理由]

2015年9月1日火曜日

こんなアウトソースはあり?なし? [Is it ok to outsource your job?]

(U.S. FrontLine誌 2013年6月20日号 掲載分)

今年の初めくらいに話題になった話です。本稿で触れるタ イミングを逸していたのですが、まあ軽い話題として一つ。

あるアメリカの会社に勤めるソフトウェア開発者で、“ボ ブ”という40代の男性の話です。彼はその会社の人事部か らのパフォーマンス評価では、オフィス内で最高の開発者 と絶賛されていて、6桁の給与を貰っていたそうです。

事件の発覚

会社の使用しているプライベートネットワーク回線に、中 国から何者かがログオンしているとして、会社の技術部門 を管轄するベライゾンより調査が始まりました。その侵入 者が会社から渡されているログオン情報を使用しているこ とまでは分かっていました。そして調査を進めていったと ころ、侵入したプログラマーを突き止めたのですが、それ があのボブであり、なぜかちょうどその時、デスクに座っ ていたのでした。

ボブのコンピュータを調べていくと、彼がログオン資格情報を 外部の会社へ送った証拠が出てきた上、沈?(中国)のサード パーティの開発者からの何百もの請求書が発見されたのです。 同時に彼の毎日のウェブ閲覧履歴も確認すると、午前中は ほぼ、ネット上に投稿されたネコのビデオの閲覧やReddit (人気のユーザー投稿サイト)をサーフィンしていたことが 分かりました。

午後はeBayで買い物をしたり、Facebookで遊んだりし て、17時前には帰社するというような生活だったそうです。 要は一日中ネットで遊んでいたわけです。

そして彼はこのような行為を複数の会社に対して行ってい たことが分かっており、(フリーランスとしても仕事を請け ていたのでしょうか)、年俸数十万ドルを稼ぐ一方で、中国 のコンサルティングファームへは下請け料として、総額わ ずか約5万ドルを支払っていたそうです。この事実が発覚 して、彼はクビになりました。

具体的な話はここまでだが…

要はこの話、個人が会社から支給される自分の給与を使っ て、下請けとして中国の業者を雇い、「自分の仕事」を外注 先にやらせて納品していた、ということですね!

パフォーマンス評価は賞賛されていたくらいですから、お そらく納品された成果物も良い出来だったのではないでし ょうか。

もしそうだとしたら、彼は品質管理をとてもうまく行って いたのか、あるいは優良な業者をきっちりと見極めて発注 していたのか、ともかく世の中の大半のIT業者が、安さにつ られて中国・インド辺りにアウトソースして、かなり痛い システムを納品してしまっているような現状からすれば、 今のアメリカのビジネスモデルを、一個人がとてもうまく 実践していたといえます。

個人的見解

記事では彼に対して一応「詐欺」というような批判的な書 き方でしたが、ビジネスとして成立する成果物をタイムリ ーかつコンスタントに納品できていたのであれば、むしろ 評価してあげたいくらいです。

ただ業界的には機密保持契約などは、おそらく確実に要求 されていたと思われ、その部分で抵触していれば、もちろ ん完全にアウトです。私的に引っ掛かるとすれば、その一 点くらいですけどね。

うちの新人スタッフによく言って聞かせていることです が、仕事は結果がすべてで、システムもウェブも、正しく 期待されたように機能させることができて、初めて仕事は 成立します。その間に例えどれだけ睡眠を削り、身を粉に 働いたとしても、クライアントには全く関係のない話だし、 会社的にも良い結果さえ出してくれるのであれば、昼寝を していようが、デスクにほとんどいなかろうが、正直何の 問題もないわけです。

アウトソース成功の条件

日系・米系問わず、一般的にIT業者、広告代理店などほと んどはアウトソースをしているという印象ですが、その仕 事結果も散々なものであるケースが多々あると、本稿で何 度も触れてきました。ですがこのボブのように、うまく仕 事をこなせていたケースももちろん存在するわけです。 この差は何から生まれると思いますか? これも持論にな ってしまいますが、「自社内でも上手くできることをあえて 外注している」のと、「自社内ではできないことを外注して いる」の違いだと思っています。

自社内で相応のスキルがあれば、「目指すべき正解」も理 解しているので、仮に外注先の仕事の出来が悪かったとし ても、それを指摘・修正させ、クオリティコントロールを することは可能です。一方単なるブローカー的なビジネス をしている業者の場合、自社の知識・スキルレベルから 「正解・不正解」も判別できないため、運任せという感じに なるのでしょう。

[もっと詳しく弊社のカスタム・システム開発ポリシーとアウトソースについて知りたい方はこちらも参照ください: カスタム・システム開発ポリシー]

2015年8月27日木曜日

日本でもブランディング: [Japan & Branding]

(U.S. FrontLine誌 2015年2月20日号 掲載分)

本稿で何度となく、ブランディングについて触れてきま したが、日本からアメリカへ進出してくる企業で、いまだ にこのブランディングにおける意識が低く、必要性を理解 されていないケースによく遭遇します。あるいは、アメリ カだから特別に必要だが、日本では少なくとも必要がない という勘違いもよく見られます。

現実は日本であっても、自社が既にそれに該当する行為 を自然と行っていたり、周りも行っていることに、単に気 がついていないだけだったりします。また意識の低さから、 ブランディングそのものの理解もあやしかったりするので、 今回、日本の倉敷や奥飛騨で見られた、分かりやすいブラ ンディングを例に、ご紹介したいと思います。

ジーンズなら◯◯

倉敷の美観地区は、古い昔の街並みを残した観光地で、
和の古いテイストとモダンを見事に融合させ、若者たちも デートに遠方からでも訪れたくなるようなスポットに街全 体が仕上がっているという印象でした。

その中でもデニムストリートはユニークで、岡山の児島地区 が、国産デニム発祥の地らしいのですが、児島産デニム製品 や岡山発の他ブランド、デニムにちなんだ小物雑貨、装飾品 など、130坪の広さに、様々な物が取り揃えられていました。 ジーパンの生地であるデニムの紺色をとにかく意識して おり、店外の通りの壁にジーンズが飾られているのも、い い感じなのですが、近くの自販機までデニム色でした。

さらにフードコーナーには、デニムソフトクリームやデ ニムバーガー、紺色のデニム(肉)マンまで用意されていま した(笑)。果たして紺色の肉マンを食べたくなる人がたく さんいるのかは不明ですが、少なくとも人の目を引くこと は間違いなく、デニム屋とのギャップが逆にインパクトも 生み、どんな店なんだろうと、店内に思わず足を踏み入れ たくなるのではないでしょうか?

中には、「ブルージーン酢」なんてのも売っていました。 今の時代、来店客が「何これ!」と面白がって、フェイスブ ックやツイッターやブログにでも写真を投稿してくれれば、 プチバイラル(ちょっとした口コミ)になるかもしれません。 店内のいたる部分も本当にオシャレに仕上がっており、 子供用、男性用、女性用のデニム製品がジーンズ以外にも、 帽子、バッグ、シューズ、チェア、傘など色々と展開され、 幅広い取扱商品のジャンルも、間違いなく話題性のひとつ となっているでしょう。

ここでブランディングの観点から表現するなら、「世界に 向けた和製デニム」という印象作りをしているように感じま す。また、これだけ多種多様なアイディアのデニムを見せ られると、本家、本物感もあります。そして先進的でもあ り、話題性にも富んでいます。つまり露出とイメージの浸 透というブランディングの2大要素が、見事に構成されて いるわけです。

温泉なら××

岐阜の奥飛騨温泉郷へ先日行ってきたのですが、1月中 旬はオフシーズンなのか、不況なのか、旅行客はかなり少 なく、ある旅館の店主に尋ねたところ、スキーなら長野へ、 旅行は近場で済ます人が増えたとのことでした。

ただ99%の宿には露天風呂があり、本格的な温泉と、お まけでスキーも楽しめるのが奥飛騨だそうです。源泉量が 物凄く、冬は各宿も暖房にも利用しているそうです。また 別の宿の仲居さん曰く、長野など他の温泉地と違い、豊富 な源泉を活かして、道路の雪を溶かすなどして、歩き易く しているそうです。

こういう会話がごく自然に出てくるのは、「温泉といえば 奥飛騨」というブランディングを、皆ができることを見つけ て自然に行っているからです。確かにネットで雪見露天風 呂を探すと、結構、奥飛騨が出てくるのは納得です。

また、温泉宿が密集しているので、各宿のブランディン グも大変なはずです。夫婦でやっているようなスモールビ ジネスが大半ですが、やはり今の時代、ウェブが大きく貢 献していると思います。写真も一昔前と違い、印象重視に なってきているのも、マーケティング屋として評価できま す。仮に多少、見た写真と印象が違っても、宿のもてなし や食事、お風呂等の良い体験があれば、客はリピーターに なる可能性もあります。

[もっと詳しくブランディングについて知りたい方はこちらも参照ください: ブランディングが必要な理由]





私は4つの宿に泊まったのですが、どれも人に説明でき る特徴がありました。さらには短い滞在期間中、ニュージ ーランド、台湾、韓国、中国からの旅行客と遭遇するなど、 海外からも集客を行っていることが分かります。

今の時代、日本でも、各人一人一人が、そして街までも がブランディングを意識し、できることを考え、実践して いるわけですが、企業がそれを軽視している場合でしょう か? 自社の特徴すら説明できないようなら、本当に深刻 だと思います。

2015年8月21日金曜日

心に訴えかけるSMM の力: Social Media Marketing & CSR

(U.S. FrontLine誌 2015年8月20日号 掲載分)

アメリカにおいて、ソーシャルメディアマーケティング (SMM)と言えば、やはりFacebookを使ったマーケティン グが代表的ですが、企業は実際にSMMをどれくらい有効 活用できているでしょうか? 今回は、在米日系企業の某 オフィス用品・文房具メーカーであるクライアントの公式 Facebookページにおいて、当社が実際に図ったSMMの事 例をご紹介したいと思います。

クライアントは、Breast Cancer Research Foundation (BCRF)という非営利の乳がん研究団体の支援に、乳がんの 象徴であるピンクリボンマークを付けたピンク色の商材の 売上の一部をBCRFへ寄付することを決め、これについて何 かできないか? と当社へ相談を頂いたのが始まりでした。

10月は乳がんの啓発月間として知られており、その時期 には、さまざまな団体・企業が乳がんに関するキャンペー ンを行うのですが、逆に他が多過ぎて埋もれてしまうので、 あえて年中を通して乳がんを意識すべきという主張ととも に、実施時期を7月に設定しました。

母親が自身の体型を気にして、家族写真に写りたがらな いケースが増えているという記事があり、後になって後悔 しているとか。また毎年かなりの数の人が乳がんで亡くな っています(アメリカで、今年は40,290人が亡くなる見込 み)。こうした現状を踏まえ、BCRFのキャンペーンで、母 親を対象にこんなコンセプトを考えてみました。

心に刺さるキャンペーン

自意識過剰から写 真に写らない、また (乳がん検診などを受 けず)健康管理を疎か にする、いずれもこ の先の家族写真から 自分を消してしまう 行為であり、母親を 半透明にした画像で、 この2つのメタファ ーを分かり易く連想させようと考えました。

また「staying in the picture」(写真 or 人生に残る)とい う表現で、最近撮った自分が写っている家族写真を投稿す ることを呼びかけ、同時に乳がんを意識することも訴えま した。そして写真を投稿してくれた人の中から、クライア ントの商材のセットを進呈する当選者をランダムに選ぶと も告知したのです。

このキャンペーンをFacebookで実施してから、1週間 で12.8万人以上へリーチし、2500以上のLike、360以上 のシェア、770以上のコメント(写真投稿コンテストの参 加者)になりました。

何らかのコンテストを実施された経験のある方ならお分 かり頂けると思いますが、余程高額な賞品と宣伝費を投じ なければ、ここまで盛況にするのは難しく、掛けた広告費 は僅か250ドルで、シェア、Likeもしくはコメントなどア クションを5883人が行ったため、1人当たり4セントで アクションを獲得した計算です。

そして何より嬉しかったのが、参加者の投稿内容が、見 ているだけでも心温まるものばかりで、「思い出せてくれて ありがとう」と主旨を理解し、共感してくれた人が本当に沢 山おり、中には「母親を乳がんで亡くしたが、一緒の写真が 3枚しかなく、子供を同じ目に遭わせない」など、感謝さ れながらクライアントのCSR(企業の社会的責任)として強 いブランディングにも繋がるという、理想的かつ、これぞ SMMのなせる技という結果でした。

[もっと詳しくブランディングについて知りたい方はこちらも参照ください: ソーシャルメディアマーケティングとは?]

成功要因

この結果を得られたのは、コンセプトが人に刺さったのは 勿論ですが、SMMを理解するネイティブのエキスパートが、 全員へタイムリーかつ丁寧にレスをしていたことも大きく、 たとえネット上であっても、テンプレート的な対応ではな く、リアルに心から接していくことがいかに重要であるかを 示す好例と言えます。また既に2万人以上のファンがおり、 普段から反応のある投稿を心掛けていたことも重要です。

ファンが少なければ、必然的に広告費を使わないと人に は見られませんし、数人のLikeしかされないような、エン ゲージメント率の低い投稿を続けていると、Facebookから 価値がないとみなされ、たとえファン数があっても投稿を ほとんどの人へ見せてくれなくなります。

たまたま最近、乳がんの手術を受けた大学の先輩もおり、 私的にも関心が高いトピックで、感慨深い思いをさせて頂 き、クライアントや共感してくれた参加者にとても感謝し ています。こういう仕事なら、幾らでもやりたいですね。

2015年8月10日月曜日

悪質なウェブ業者にご注意: 検索結果に全く表示されない理由 [Bad Web Developers]

(U.S. FrontLine誌 2015年8月5日号 掲載分)

先日、某在米日系企業の方からこんな問い合わせを頂き ました。トラフィックも急激に減っており、幾つかのキー ワードにおけるSEO(検索エンジンの自然な検索結果にお けるウェブページの上位表示)の強化も視野に入れている一 方で、以前ならそんなことはなかったが、現在はなぜか自 社名で検索しても全く表示されず、それについても原因は 全く不明、といった内容でした。

検索結果に全く表示されない理由

とりあえずサイトを確認したところ、先方が不思議がら れていた、自社名で検索しても全く自社サイトが表示され ない理由は、およそ2秒で分かりました。検索エンジンに サイトが全く表示されない場合、予想できる要因は大きく 分けて、2つしかありません(全くとは、検索結果をどこま で辿っても表示されない、という意味です)。 ・検索エンジンの何らかのルールに違反し、罰則を受けて いるケース

・検索エンジンの基本仕様すら理解せず、キャッシュもし くはインデックスすらされていないケース

一応、検索エンジンにサイトが表示される基本的な仕 組みを簡単に説明しておくと、検索エンジンは、ロボット、 クローラーもしくはスパイダーとも呼ばれるある種のコン ピュータープログラムによって、世界中のウェブサイトを 徘徊し、彼らのデータベース内へサイト情報やコンテンツ を保存しています。この行為をキャッシュと言います。

また検索エンジンはキャッシュとは別にインデックス化 も行っており、アルゴリズムと呼ばれる表示順位付けルール と照らし合わせながら、最終的に各キーワードで、どのサイ トのどのページから上位に表示させるかを決定しています。 SEOは、このインデックス化を戦略的に行わせる行為で もあり、SEO的にうまくないサイトは、なかなか検索結果 の上位には出てこられないわけですが、かといって完全に 最後まで出てこないとすれば、インデックスというよりキ ャッシュに問題があるということです。

ちなみに本来のSEO的な戦いは、キャッシュのさせ方か らも始まっているのですが、上位表示を競うレースに出場 したければ、最低でも検索エンジンにキャッシュされてい なければ何も始まりません。



原因は一瞬で判明。更に衝撃の事実も

ところが問い合わせを頂いた先方のサイトは、何と 「NOINDEX, NOFOLLOW」のタグが書かれていたのです。 これは検索エンジンに対して、インデックスもキャッシュ もさせたくない時に記述すべきタグですので、当然社名で 検索しようがヒットするわけもなく、レースの参加登録か ら漏れていたような話です。また、これまでに業者を2度 ほど変えたとも伺っていたので、軽い興味から、過去のサ イトではどうなっていたのかも、簡単に調べてみました。

すると「NOINDEX, NOFOLLOW」のタグは、最初からで はなく、ある時期にいきなり書き換えられていたことが分 かりました。それを先方に伝えたところ、ちょうどその時 期は、業者との仕事をクローズさせた時期であったという 衝撃的な事実が分かりました。業者が腹いせに、確信犯的 に行っていたのなら、倫理的に許せないですね。

私は当初、またタグすらまともに理解しない日系の“なん ちゃってウェブ屋さん”にでも依頼されて、悪意もなく単に 知識不足で痛い目に遭っているパターンかと予想したので すが、先方は米系業者に依頼されていたようです。

私が日系業者の仕業と予想した背景には、過去に多々、 そういうレベルの仕事をされているのを見てきたからで、 実は今でも恐らく悪意もなく、痛いことをやっている業者 さんは多々います。実際に今、軽く調べてもみても、そう いう例が簡単に見つかりますから。

致命的なサイトへ直接連絡して、何なら営業でもしちゃ おうかな~とも考えましたが、多分しません(笑)。そうい うレベルの業者さんを平気で使い、そのままで放置できて いたくらいなので、恐らくウェブへの関心度も低いと予想 できるからです。生意気な物言いと取られるかもしれませ んが、我々の本来やっていることの難しさ、深さ、重さ、意 味、そして価値をどこかで軽視されていると感じてしまう相 手と関わるのは、お互いに不幸になるだけだと思っています。

ですがもしもウェブマーケティングに本気で関心があり、 かつ現在何か不安を感じられていれば、お気軽にお問い合 わせください。本稿は同業者さんにもかなり見られている ようなので、もしかしたらこれを見て、慌てて修正して証 拠隠滅を図られるかもしれませんが、先に書いた通り、過 去のサイトも実は簡単に辿ることができるので、小手先の 誤魔化しは効きません。今現在、そして過去どうだったの か、簡単ながら無料でお調べしましょう! ただ一応、先 着10社様くらいでいいですかね? それとも本気度を測る 簡単なテストで選定させて頂くかな(笑)。

[もっと詳しくSEOと検索結果について知りたい方はこちらも参照ください: SEOと検索結果とは?]
[もっと詳しく悪いWEBサイトの例について知りたい方はこちらも参照ください: 悪いWEBサイトの例]

2015年8月3日月曜日

ウェブサイトのモバイル対策: Responsive Web Design [レスポンシブWebデザイン]

(U.S. FrontLine誌 2014年9月5日号 掲載分)

前回、近年登場した、新しいモバイル対応サイトの画期 的な構築方法である、レスポンシブ・ウェブデザインにつ いて、軽く触れました。昨今のデバイスやインターネット 閲覧環境の多様化により、モバイルユーザーが増え続けて いる中、ユーザーが閲覧している画面サイズも、かなりの バラツキが出ています。一番割合的に多い画面サイズでも、 全体の1割強という状況で、サイト制作側も、モバイル対 応は、必要不可欠になってきたと言えます。

[もっと詳しくレスポンシブWebデザインについて知りたい方はこちらも参照ください: レスポンシブ・ウェブデザインとは?]

従来のモバイル専用サイトの問題

以前より、モバイル専用サイトは、大手企業サイトを中心 に存在はしていました。ただ通常サイトとは別に構築する ことで、色んな問題があり、あまり普及はしませんでした。 モバイル専用サイトは、通常サイトの簡易機能版サイト という位置づけで、通常サイトにある全ての機能・コンテ ンツが使えるものにはなっていないケースがほとんどでし た。ユーザーからすると、使い勝手や得られる情報という 面で、かなりストレスを感じることが多く、モバイル専用 サイトがあるとは分かってはいても、あえて多少見難くと も、スマートフォン上で通常サイトの方を利用するユーザ ーも多くいたと思います。

検索エンジン的には、通常サイトとモバイル専用サイト は、ミラー(重複)コンテンツになりやすく、リダイレクト (自動でページを転送させる行為)も多発するなど、SEO的 に色んな問題を抱えることになります。

ログ解析においても、コンテンツが二重化していること で煩雑になり、勿論、開発費も二重にかさみ、ページの更 新・追加作業といった メンテナンス的にも、コストがかさ むことになります。

そこで近年登場したのが、レスポンシブ・ウェブデザイン という手法です。ちなみにResponsiveとは、「反応がいい」 という意味ですが、元は建築用語の「Responsive Design 変化できる建築デザインの意」から引用されたそうです。

レスポンシブ・ウェブデザインとは?

モバイル専用サイトのように、ファイルを二重化構造 でもつことなく、通常サイトに必要なファイルに、少し拡 張した記述をすることで、ユーザーが様々な画面解析度で 閲覧した場合でも、柔軟な表示を実現する手法のことです。 技術的には、大きく3つの要素から構成されます。

「フルードグリッド」は、液体が器の形に合わせて、流動 的にカタチを変えるかのように、画像やテキストなど、ウ ェブページのコンテンツを、どんな画面サイズで閲覧され ても、きれいに整列させたレイアウト表示を実現する技術。 「フルードイメージ」は、画像を、縦横比を保ったまま、 画面解析度に合わせて、伸縮させる技術。

画像に関しては、例えばモバイルから閲覧された場合に だけ、小さいサイズの画像をロードさせ、回線事情の悪い 環境下でもレスポンスを改善することなども行えます。

「メディアクエリー」は、ユーザーの画面解析度に合わせ て、任意のスタイルを適用できるようにする記述で、これ を利用して例えばモバイル用のメニューの表示も簡単に行 えます。

レスポンシブ・ウェブデザインの利点・欠点

メリットは、今後も増え続ける様々なデバイスへの表示 が柔軟に対応でき、ファイルを一元管理できるため、生産 性・メンテナンス性に優れ、デザイン性やURLも統一でき、 SEO的にも有効(Googleも推奨している)になることです。 デメリットは、通常のサイトを構築するよりは、記述し なければならないコードや、考慮事項が増えるため、テス トも含め、開発コストは上がります。それでもモバイル専 用サイトを別に開発するよりは、一般に安くなります。

コードがより複雑化するため、設計段階から、それな りのスキル・知識をもった開発者が携わる必要があります。 適切なスキルのない開発者が関わると、返ってメンテナン ス性が悪くなり、不測の事態を招く可能性もあります。

2015年7月27日月曜日

日本ブランド衰退の理由⑥ まとめ

(U.S. FrontLine誌 2013年6月5日号 掲載分)

今では完全に当たり前となった全自動のドラム式洗濯・乾 燥機ですが、アメリカ市場においては、2001年にワールプ ール社が発売したデュエットという製品が、それまでの平 均価格の4倍以上だったにも関わらず、生産が追いつかな いくらいの大ヒットを記録して以来、市民権を得ていった ようです。本シリーズで数回にわたり取り上げてきた、女 性ランジェリーブランドのビクトリアズ・シークレット (VS)の成功例ともいくつか共通していて興味深いです。

固定概念を破る

当時のアメリカの消費者は、前面より上面から衣類を出し 入れする構造を好むという調査結果があり、前面ドア式の 洗濯機はあまり受けないと考えられていたそうです。ただ ヨーロッパではむしろこのタイプが人気だったようで、VS のケースと同様に、まだ市場に浸透していなかった概念・ 製品を持ち込んだわけです。

同じく市場調査より、家電製品は心理的な理由では購入さ れないとみなされていて、通常、ライフサイクルが12〜14 年もある洗濯機を、消費者が故障前に買い替える、という 発想自体もなかったようです。

消費者に本当にメリットとなる商品力

従来のものに比べ、容量が2倍あり、洗浄力の違いも目で 分かり、ドラムの中心に回転翼がないので衣類にやさしく、 省エネで使用水量・漂白剤も少なくて済み、前面ドアなの で洗濯物の出し入れがしやすく、洗濯機と乾燥機を横にも 縦にも並べられます。また洗濯と乾燥の時間的サイクルを 合わせることで、効率的に作業でき、時間を有効に使える など、明確な違い、実利的メリットが多数ありました。

心理面での結びつき

アンケート結果から、このデュエットという洗濯・乾燥機 のユーザーたちは、同製品に対して、「愛してる」「家族や友 人のよう」「誇りと喜び」といったさまざまな感情を持ってい ることが分かりました。ある空調の修理屋さんは、顧客で ある個人宅を仕事でまわる際に、もしも洗濯機が古くなって いれば、自然とこの愛するデュエットをお勧めしていたそう で、それこそ1時間くらいは話が止まらなかったといいます。

中間は淘汰される

勿論、洗濯機に強い思い入れのない層は、むしろ低価格の ものを購入するという動きがあり、思い入れの強い層が購 入するワンランク上の価格帯と、低価格帯の商品がよく売 れ、中間の商品が売れなくなるという、ほかの商品カテゴ リーと同様の、市場の二極化が進んでいるようです。

本シリーズの冒頭で、「特徴のないブランドはいずれ淘汰 される」とお話ししましたが、逆に「特徴のあるブランドは熱 狂的なファンベースを築けている」ともいえます。そのバロ メータの1つが、例えば上記のようにユーザーから「このブ ランドを愛している」というような感情表現を引き出せてい るか? ということです。これが大きな鍵になると考えられ、 我が社もクライアントのブランディングの案件において、特 に最近注力している部分でもあります。ちなみにVSでも熱 烈なファンになったユーザーの話が紹介されていました。

まとめ

製品のライフサイクルが長く、価格が比較的高い程、故障 前の買い替えについて、販売者側は消極的な考えを持つ傾 向にあると思います。それはある意味で正論かもしれませ んが、今日の「ワンランク上の消費行動」という流れに乗 れない(乗らないと決めた)場合、生き残るには低価格競 争の道しかなくなっていくように思います。果たしてそれ で中国・韓国ブランドとまともに戦っていけるのか? と いうのが、第一の課題でしょう。

モノが売れる・売れないは、必ずしも価格で決まるのでは なく、消費者心理を掴み、納得させられるようなベネフィッ トを提供できているかどうかで、価値判断されているのです。 顧客を甘く見ず、正面から向きあって正しく分析し、固定 概念にとらわれず、顧客に本当にメリットがあり、差別化 された商品を開発・提供することに努める。そして常に挑 戦し続けながら妥当な潜在市場を見据えたビジョン・ゴー ルを持ち、それを実現するためにブランディングを行い、 最終的に強いブランド・ロイヤルティーを持つファンベー スを構築する。それができれば、低価格競争に巻き込まれ ることなく、高くても大量に売れるというビッグビジネス を展開できる、ということです。

もともと本シリーズでご紹介した内容は、10年くらい前 にアメリカの消費者行動について書かれた本がベースでし たが、私的にはなぜ今、日本ブランドがいろんな市場で衰 退していっているのかを、結果的にうまく説明してくれて いるように感じたため、このようなタイトルで書かせてい ただきました。何かの参考にでもなれば幸いです。

もっと詳しくブランディングが必要な理由について知りたい方はこちらも参照ください: ブランディングについて

2015年7月22日水曜日

日本ブランド衰退の理由⑤ ブランディング

(U.S. FrontLine誌 2013年4月20日号 掲載分)

[もっと詳しくブランディングについて知りたい方はこちらも参照ください: ブランディングとは?]

前回、消費者に本当のベネフィットを提供する商品・サー ビスでなければ、成功できるレベルに限界があることを、 女性ランジェリーのブランドで有名なヴィクトリアズ・シ ークレット(VS)を例に取り上げました。

ヨーロッパのようにランジェリーを日常的に身に着ける文 化がまだアメリカには浸透していなかった中で、消費者の ニーズと欲求を満たす、差別化された商品を快適な買い物 空間と共に提供することで、見事に消費革命を起こすこと に成功したのでした。

ブランディングで地位を確立

まだ消費者は週7日ではなく、週末のみランジェリーを身 に着けるという1995年ごろのプチ成功の時代では、VSは カタログでの販売が売上の約1/3を占めていました。 特に広告も打たず、各店舗もセールの張り紙をしたり、カ タログに販促物を同封したりする程度で、共通できている のは伝説とブランド名くらい。マーケティング戦略もバラ バラ、独立した事業体の寄せ集めといった感じで、ブラン ディング(ブランドの露出機会を増やし、イメージを浸 透・洗脳させて、ブランドの競争力を高める)を行ってい るというには程遠いものでした。それでも当時は、うまく いっていると思っていたそうです。

しかしそのままではどうしても「週末のみのランジェリー」 の壁を破れず、前回書いたような本当の商品力を備えた商 品を1999年に開発して、はじめて本当の大成功をおさめた のです。その後も攻めの姿勢は崩さず、2001年には魅力あ るさらなる新商品を開発しました。さらに、世界一流のカ メラマンと映画監督を起用してテレビキャンペーンを製作 し、スーパーモデルによるファッションショーを収録した 番組をゴールデンタイムに放送、1200万人以上に視聴させ るなど、本格的なブランディングも展開し、現在の地位を 築いていったわけです。

「VSは単に広告宣伝にお金を掛けたから成功した」と勘違 いされたくなかったので、前回から「商品力」の重要性に フォーカスしてきましたが、もちろん、あるレベル以上の 成功には商品力だけではどうにもならない世界があります。

“ある程度うまくいっている”がネックに

VSのケースで出てくるこの「バラバラで展開」「ある程度 うまくいっている」という表現は、実はわれわれには非常 になじみがあるもので、これまでにもかなりの頻度で耳に してきました。


例えば、紙面広告、オンライン広告、トレードショー、PR などバラバラで展開(複数の業者で担当)し、ブランド・ コンセプトの共有も成されていないとか、各支店で全く別 のマーケティング戦略をとっている、といった具合です。 (ちなみにブランド・コンセプトを複数の業者で共有して いくには、ある一定以上のマーケティングにおける知識・ 理解がないと困難を極めますが、今この話はスルーしてお きます)。

それでもある程度の売上が確保でき、運営できているので、 社内的には“うまくいっている”という認識になっており、 ブランディングの必要性など説こうとしても、危機意識も低 いので、なかなか理解されないのです。それこそ広告もそ んなに活用せずに大きくなれたような企業はなおさらです。 ただそういう企業であっても、少なくともこれまでわが社 が接してきたケースを少しでも分析してみると、決してブ ランディングが不要になっていたわけではないことが分か ります。こういった企業は例外なく、競合が少なかった時 代に差別化された商品やサービスを提供しており、広告を 使わなくとも口コミも含め、メディアに取り上げられるな ど、何らかの形で露出があり、長い年月の間に幸運にもブ ランディングされてきているのです。

ところがそういった背景意識がない上で、新しい市場へ新 商品・サービスを展開しようとするから、簡単に同じよう にはいかないことに、今更ながら驚いているわけです。

結局はトップのビジョン次第

もちろん、広告など打たなくとも、ブランディングも考慮 しなくとも、ある程度の売上が得られ、それで納得するの であれば、安定・安泰であるかはともかく、それも1つの 選択肢といえます。

VSのオーナーの場合、「週7日のランジェリー」という巨 大な市場をはっきり見据えていたので、「週末だけのランジ ェリー」では終わらず、攻めたてて成功を掴んだ上でも気 を緩めることなく、ブランディングも本気で行い、地位を 確立していったという言い方もできます。

結局はトップが、潜在市場のどこまでが見え、どこまでを 目指すのか? という話ですが、ビジネスの世界に安息の 地などないことを知っている企業のみが生き残っている気 がします。続きます。

2015年7月16日木曜日

日本ブランド衰退の理由④ 商品力

(U.S. FrontLine誌 2013年5月5日号 掲載分)

前回、女性ランジェリーのブランドで有名なヴィクトリア ズ・シークレット(VS)のサクセスストーリーの序章をお 話ししました。現VSのオーナーであるレス・ウェクスナー 氏が、さまざまな分析をした結果、イタリアの有名な超高 級ブランド「ラ・ペルラ」のような高品質とセンスで、手 の届く価格帯の「大衆向けラ・ペルラ」を、快適な買い物 空間と共に提供すれば、女性は週末など特別な日だけでは なく、ヨーロッパのように日常的にランジェリーを身につ けてくれると考え、業界に革命を起こそうとしたのです。 架空の“ヴィクトリア”というブランド創始者の伝説を仕 立て上げ、ブランド・アイデンティティの確立を目指し、 カタログにスーパーモデルたちを起用し、従来のセクシー 系下着カタログの卑猥さを排除し、誰が見ても恥ずかしく ないファッション風に仕立てるなど、斬新で画期的な試み も功を奏しました。

さまざまな固定概念を破り、特にファッション性で消費者 に定評を得ていったVSですが、着け心地といった面には、 あまりケアしてこなかったようで、1995年の年商19億ド ルの段階では、まだランジェリーは週末のみの存在であり、 革命には至っていませんでした。

消費者のための本当の差別化

1997年に「きっと世界一美しいブラ」として売り出した 商品は、見た目が美しいだけで着け心地が悪く、一時的な 話題で終わり、翌年に発売した「ハイテク・ランジェリー」 も失敗に終わり、商品のデザイン・縫製などを根本から見 直す決断をしたそうです。

そして1999年に、競合他社や消費者の情報を収集して研 究した結果、シームレスで柔らかく滑らかで、高いフィッ ト感とすばらしい着け心地の「ボディ・バイ・ヴィクトリ ア」というブラジャーを開発しました。これは価格も34ド ルとデパートの平均価格の2倍以上だったにも関わらず、 発売からわずか6週間で完売という大ヒットを起こしたの でした。この段階でようやく、アメリカ人でも日常的に身 に着けるランジェリー(革命)を達成したそうです。 この話で改めて感じるのが、「モノが売れる・売れないは 必ずしも値段ではない」ということ。そして、消費者の欲 求を常に研究・把握した上で、「本当に消費者が欲しがる、 差別化された商品」を提供することが、やはり最後は決め 手になるということです。

売れない原因を正しく認識

ビジネスがうまく行っていないとしましょう。原因の切り 分けとして、潜在顧客にうまくリーチできていない・露出 ができていないのであれば、マーケティングに問題があり ます。露出はできていて、売上につながらないとすれば、 ブランド・商品・サービスの訴求力に問題があるというこ とです。後者の場合でも、売り物が消費者のニーズ・欲求 を十分に満たす、差別化されたものであるならば、これも マーケティングの問題なのですが、そうではない場合、売 り物自体に問題があるということです。

先のVSの例でいえば、週7日のランジェリーの領域に到 達できていなかった原因を、売り物の問題だと自覚し、失 敗を繰り返しながらも、当時のピチピチのTシャツという 流行をきっちりとらえ、ブラのラインが見えにくくて着け 心地が良いものを開発することで、ようやく消費者の欲求 を満たし、今日の成功があるわけです。間違ってもスーパ ーモデルの起用など、膨大な広告費を投じたからではない のです。それでも失敗した時期もあったくらいで、商品力 ありきでなければ、本当の成功などないということです。

「日本では売れていた」は、気休め

市場が違えばニーズも嗜好も全く別物です。違いを分析し、 研究を正しく行えば、応用が利く部分はありますが、単に 日本の物や考え方をそのままアメリカに持ち込んだだけで は、苦戦するのは当然です。日系企業にありがちなのが、 コンセプトは良いのに、アメリカ市場向けにアレンジする 必要性を軽視しているか、消費者を甘く見ているケースで す。自分の潜在顧客の像を直視せず、事業を展開しよう (できる)と考えているのです。

わが社もマーケティング屋として、例えばSEO(検索上 位表示)、PPC(広告)、SNSやバイラル(口コミ)などを 活用して、潜在顧客を集客し、サイトのコンテンツで購買 意欲を促進させるお手伝いをしているわけですが、われわ れにできることは、最初に売れるようにするところまでで す。購入者の満足を得られるかどうかは、商品・サービス の品質次第であり、カスタマーサービスなども含め、われ われの管轄外の要因で、結果としてビジネスがうまくいっ ていないというケースが、過去いくつかありました。顧客 がリピートしないようなビジネスは救えません。マーケテ ィングは魔法ではないのです。続きます。 もっと詳しくブランディングについて知りたい方はこちらも参照ください: ブランディングが必要な理由

2015年7月2日木曜日

日本ブランド衰退の理由③ 分析とBI

(U.S. FrontLine誌 2013年4月20日号 掲載分)

前回、消費者は高くても買う場合と、できるだけ安く買う 場合を使い分けており、少し背伸びすれば誰でも買える “新しい贅沢品”と呼ばれるカテゴリーは、何らかの思い入 れにより、「高くても買いたい」という衝動を起こさせるこ とに成功している分野であるとお話ししました(従来の金 持ちが自己顕示欲のために購入する贅沢品と区別する意味 で「新しい」と明記)。また、その成功例として、女性ラン ジェリーのブランドで有名なヴィクトリアズ・シークレッ ト(VS)の成功例に触れました。

冷静な分析から始める

VSのオーナーであるレス・ウェクスナー氏は、1982年 に、年商400万ドルながら倒産しかけていた、VSという名 の4店舗のセクシー系ランジェリーストアを100万ドルで 買収し、1985年以降、毎年売上を25%、店舗数を16%増 やし、1995年で既に年商19億ドル、670店舗という規模 にまで成長させました。しかし、これもまだサクセススト ーリーの序章に過ぎませんでした。

最初の数年は、以前と同じ運営を継続しつつ、さまざまな 分析の時間にあてたそうで、前の店は、セクシー系ランジ ェリーの購買層を男性と想定し、内装も男性向け(アダル トショップ風)に施されていたことで、女性には店内が快 適ではない空間になっていた上、男性が好む下着は、女性 からすると魅力も感じられず、着け心地も悪かったと分析 しました。

アメリカのデパートも研究し、当時の売り場は、実用性重 視でロマンスは皆無、贅沢な品を購入しても贅沢な気分に はなれず、店員の知識も乏しく、買い物が快適な体験には なっていないと分析しました。

さらに1着のブラジャーが75ドル以上もするような高級 ブランドの下は、10〜15ドルのデパートブランドのほか、 3〜10ドル以下の下着という感じで、価格帯にかなりの開 きがある上、その隙間に目ぼしい競合もほとんどおらず、 ブラジャーの半分はセール品として売られ、「20ドル以上の 品は大量に売れることはない」というのが当時の通説だっ たそうです。

またヨーロッパの女性は、日常的に「ランジェリー」を着 けているのに対し、アメリカの女性は、日頃は「下着」を 着けているという文化の違いも把握し、イタリアの有名な 超高級ブランド「ラ・ペルラ」のような高品質とセンスを持 ちつつ手の届く価格帯の「大衆向けラ・ペルラ」を提供でき れば、業界に革命が起こせると考えたそうです。それこそ 魅力的で憧れを抱くような商品と、快適な買い物空間を提 供すれば、週末など特別な日だけではなく、日常的にラン ジェリーを身に着けてくれるようになるという構想でした。 そこで世界で一番美しい人たちが買い物をする空間という コンセプトを打ち立て、店舗の内装やディスプレイを女性 向けにロマンチックで魅力的に変え、ヨーロッパのランジ ェリーのテイストを意識しながら、流行に合わせたファッ ション性を備え、良い生地と優れた縫製方法を採用して、 大衆に手の届く価格帯で提供していったのです。

ブランドアイデンティティの確立

コンセプト実現のために、彼は架空の“ヴィクトリア”と いうブランド創始者の伝説も作り上げました。イギリス系 とフランス系の血を引く、世界トップモデルで洗練された 美貌とセクシーさを持つ彼女が、ロンドンに店を持ち云々、 と言う具合です。

このキャラクター設定やストーリーをブランドイメージと して活用し、マーケティング関係者は勿論のこと、店舗ス タッフに至るまで、自らそれを語れるくらいにまで浸透さ せ(対外的にも浸透したかは不明ですが)、共通のビジョン を持たせてブランド・アイデンティティ(BI)を確立させて いったのです。

また当時業界におそらく衝撃を起こしたであろう、ランジ ェリーのカタログにスーパーモデルを起用するという大胆 な行動も、前回の「固定概念を破る」であり、コンセプト を具現化するための手段の1つだったのでしょう。聞いた 話では、従来のセクシー系下着カタログの卑猥さを排除し、 誰が見ても恥ずかしくないファッション風のカタログにし たのも画期的だったようです。

日本からアメリカへ進出して来られる企業で、「アメリカ 人は××だから」と浅い分析と間違った戦略で、売れない 理由を片付けているのをよく見かけますが、失敗の言い訳 を考える前に、成功できる要因をもっと探すべきなのです。 仮に文化の違いがあっても、それを力づくででも浸透させ ていくぐらいの戦略と根性が必要ということでしょう。続 きます。

もっと詳しくブランディングについて知りたい方はこちらも参照ください: ブランディングが必要な理由

2015年6月22日月曜日

日本ブランド衰退の理由② 選択消費

(U.S. FrontLine誌 2013年4月5日号 掲載分)

前回は、アメリカの消費者行動について10年くらい前に 書かれた「トレーディング・アップ(マイケル・J・シル バースタイン著)」という書籍が、なぜ今、アメリカで日本 製品が売れなくなっていったのかを、結果的にきれいに説 明してくれていることに触れ、最終的に生き残れるのは、 個性や熱狂的なファンベースのある高級ブランドと、とに かく低価格の商品の二択であり、特徴もなく中間を狙った ブランドは、淘汰される傾向にあること、および顧客を甘 く見た薄っぺらい広告戦略は、危険であることをお話しし ました。

消費者は高くても買う場合と 安く買う場合を使い分けている

BMWに乗っている人が、普通にターゲットでも買い物を するといった、一見アンバランスな現象が起きているよう です。本当に裕福でなければ、全てを高級品では揃えられ ないので、多くの人は、こだわり、価値を感じているもの には高いお金を費やす一方で、特に理由がなければ、でき るだけ安いものを選ぶという行動心理が働いていると同著 では指摘されています。

皆さんはいかがでしょうか? 私自身は正にそんな感じで す。楽器機材やコンピュータになら、価値を感じるものに は相応のお金を投じようと思いますが、例えばタオルや加 湿器なら、必要と考えているスペックさえ満たせば、値段 は安いに越したことはないと考えている自分がいます。

著者は特に“新しい贅沢品”と呼ばれる分野において、こ の行動パターンが顕著にみられると指摘しています。この 贅沢品は、一般の人でも少し背伸びをすれば手が届くもの で、何か強い思い入れにより、「高くても買いたくなる」商 品を指し、虚栄心で購入されるような従来のタイプのもの と区別する意味で、“新しい”という表現を使っているよう です。

この不況下で、生活必需品以外の商品を販売している企業 からすると、どうやってこの「高くても買う」というカテ ゴリーに入れてもらえるかが、今後のマーケティングにお ける重要課題になることは間違いないでしょう。

固定概念は破っていくもの

この本に登場する、女性ランジェリーのブランドで有名な ヴィクトリアズ・シークレット(VS)のオーナーであるレ ス・ウェクスナー氏の話は、非常に興味深く、アメリカ進 出、あるいは日本で新製品展開をしているクライアント企 業のケースにもかなり適用できる上、我が社がこれまでし てきたこと、しようとしていることともかぶる部分が多く、 私のつたない説明より余程うまく伝わりそうだったので、 読んでいて何だか嬉しくなってしまいました。

彼は1963年に、ザ・リミテッド(The Limited)という 女性用スポーツウェア専門店を立ち上げ、1969年には上場 し、1970年に11店舗だったものを1979年には全国318店 舗にまで成長させ、今日でも順調に運営しており、VSの大 成功の前に、既に別のビジネスで成功していました。

当時のアメリカは、ファッション的には都会であってもヨ ーロッパより2〜3年は遅れており、アメリカの中部など の田舎は、都会よりさらに2〜3年遅れで、そういった田 舎に先端のファッションを持ち込んでも売れないという通 説があったそうです。しかし彼は「女性は見たことのない ものにより興味を示す」「田舎では単に買えないから売れて いない」と分析し、田舎へも店舗展開して爆発的に売上を 上げたことで、その分析が正しかったことを証明しました。 さらに彼は、1982年に、VSの名で4店舗を運営し、年 商400万ドルながら倒産しかけていたセクシー系ランジェ リーストアを100万ドルで買収し、1985年以降、毎年売上 を25%、店舗数を16%増やし、1995年で既に年商19億ド ル、670店舗という規模にまで成長させたのです。

VSの話はいろいろと役に立つポイントがあり、一度では とても書き切れないので次回でも触れますが、彼はさまざ まな分析をしていく中で、ヨーロッパの女性は、日常的に 「ランジェリー」を着けているのに対し、アメリカの女性は、 日頃は「下着」を着けているという文化の違いがあるのを 確認し、アメリカの女性も毎日「ランジェリー」を着ける ような文化的革命を起こそうとした人なのです。

それはすなわち、高級品でありながら大量に販売できると いう、従来の数理的常識をも覆す試みでもありました。彼の印象的な言葉で、Women need underwear, but women want lingerie. I like to be want business.という ものがあります。要は贅沢品の方がマージンを多くとれる ので、自分はそちらの方のビジネスを好むというものです が、実は世の中の大半のビジネスがこの「Want」ビジネス に当てはまると思います。彼の「Want」ビジネスの成功術、 知りたくないですか? 次回に続きます。

もっと詳しくブランディングについて知りたい方はこちらも参照ください: ブランディングが必要な理由

2015年6月2日火曜日

日本ブランド衰退の理由①

(U.S. FrontLine誌 2013年3月20日号 掲載分)

アメリカの消費者行動について10年くらい前に書かれた 「トレーディング・アップ(マイケル・J・シルバースタイン 著)」という書籍をたまたま教えてもらったのですが、そこ で指摘されている内容が、今の時代に当てはめても、消費社 会の現状をなかなか見事に言い当てており、我が社が意識・ 経験し、実践してきたこととの関連も多々あったので、何回 かに分けて、私なりの視点も交えて紹介したいと思います。

中間を狙うブランドはいずれ消える

この本で、一番重要なテーマだと私が感じたのは、最終的 に生き残れるのは、個性や熱狂的なファンベースのある高 級ブランドと、とにかく低価格の商品の二者であり、中途 半端で特徴もなく中間を狙ったブランドは淘汰される、と いう話です。

10年前を振り返ってみると、例えばBest Buyの家電コー ナーに行けば、冷蔵庫や洗濯機など、日本のブランドが割 りと高い値段で売られていた記憶があります。オーディオの コーナーでも、日本の製品がかなり棚を占領していました。 ところが今ではどうでしょうか? 家電コーナーで、日本 のブランドを全く見かけないことも多々あります。ひっそ りと並べられていて、単に気付かなかったということもあ るのかもしれませんが、サムソンなど韓国のブランドや低 価格の中国勢ブランドに圧倒され、とにかく影が薄くなっ てしまったことは間違いないでしょう。

この本は、なぜアメリカで日本製品が売れなくなっていった のかを、きれいに説明してくれていたことに気付かされます。

(もっと詳しくブランディングについて知りたい方はこちらも参照ください:ブランディングとは?)

消費者を甘く見ないこと

先日、某クライアントに色々と厳しいことを言わなければ なりませんでした。こちらは日本を市場とするメーカーさ んで、我が社はウェブマーケティング全般を担当している のですが、カタログの制作会社へ「とにかくインパクトを 出してほしい」というリクエストをクライアントがしたそ うです。

そのカタログが、「クールさ」を出すという意味で西洋人 モデルを使い、おそらく誰も(仮にどの人種でも)しない ような格好をさせ、キワモノのような存在で、リアリティ が全くない路線。それでいて、誰の理想にも憧れにもなれ ていないので、ポイントが何もないものだったのです。

例えるなら、西洋人向けに、芸者・ちょんまげでもテキト ーに出して日本を“イメージ”して見せたようなものでし た。そういう広告は、日本人には「現実の日本の姿には程 遠い」とすぐに感じられてしまいますが、西洋人向けには、 それが現実離れしていても、実は大して問題がないことも あります。

ただ今回のケースでは、「日本=芸者・ちょんまげ」とい うような広告を、むしろ日本人に見せて販促効果を狙おう とするような行為だったので、ターゲットユーザーからす れば、自分たちを全く理解していないと映るか、ともすれ ばバカにされているとすら感じさせてしまうものになって いました。それがユーモアを狙ったものでもなかったので、 正に「痛い」と伝えました。

コンセプトが重要

それこそ男性社員を女装させても何らかのインパクトは出 せるでしょう。重要なのはその先で消費者に起こさせる感 情で、商品やブランド、会社に対して何らかのポジティブ な印象を残すことがマーケティングの第一歩だという前提 を、このクライアントは完全に見失っていました。

何よりも馬鹿げていたのが、本来このクライアントは、強 い特徴と多くのユーザーに好感を持たれる材料をたくさん 持っていたのに、この薄っぺらいコンセプトのおかげで、 それらを台無しにさえしようとしていたことです。そして そのことに、企業や制作者が全く気付いてさえいない…。

多くの日系企業に共通して感じるのは、自分たちの顧客層 や特徴をまともに分析できていないということです。アメ リカへ進出してくる企業の方に、「なぜ貴社の製品が売れる とお考えですか?」と尋ねると、大体は「日本製で高品質 でうんぬん」というような感じなのですが、それだけでは 特徴にはなりにくく、中間ブランドは淘汰される原則に適 合してしまうわけです。

かといって高い値段を付けて、日本ブランドで高品質だか らと主張したところで、それが消費者に伝わらなければ、 誰もハイエンドのブランドだとは認めてくれません。

消費者は年々賢くなってきており、“なんちゃって広告代 理店”あたりがやるような、「単にらしいだけのミーハーで内 容のないキャンペーン」に乗せられる人はほぼいないと、こ れまでずっとクライアントに説いてきたのですが、実に多く の企業が、甘い認識をしていることに、毎度驚かされます。

2015年5月27日水曜日

Facebookにおける考察③ ここも資本主義だが

(U.S. FrontLine誌 2013年1月5日号 掲載分)

前回、巧妙にできている有料のプロモートポストの仕組み や、ユーザーやページからの投稿が、必ずしもNews Feed ページへ全部表示されているわけではなく、エッジランク と呼ばれる、Facebook独自のアルゴリズムにより、各人へ 表示させる内容が決定されており、例えばページからの投 稿は、3〜7.5%程度(2011年)しか見られていないとい う事実に触れました。

複雑な気持ちにさせるエッジランク

エッジランクの存在が広く知られた際には、ネット上では 結構な騒ぎになり、この仕組みが導入されたことで、トラ フィックが以前より激減したと嘆くサイトオーナーたちが 大勢いました。しかし、これについて冷静に分析した記事 によると、元々Facebookは、最初から投稿を100%見せて いたわけでも何でもないのです(Facebookは自ら、平均 16%と言っています)。そしてエッジランクにより、スパム 投稿をかなりフィルタすることに成功し、News Feed上の 表示内容の質が向上したおかげで、ユーザーからのスパム 報告も軽減できた上、ページからの投稿をより見てもらえ るようになったそうです。

とはいえ、私も全ての投稿が表示されていないことを初め て知った時には、やはりショックでした。

以前本稿で少し触れましたが、近年のオンラインマーケテ ィングの王道となっている検索エンジンにおけるPPC(キ ーワード広告)は、あまりに広告主が増え、広告単価が恐 ろしく高騰してしまい、完全に資本主義の様相を呈してき ました。大手だけにチャンスがある、テレビCMのような世 界と化してしまい、資本力の劣る中小企業にとっては、と ても厳しい状況となっています。

そこへ突如現れたFacebookは、ユーザー数的にも検索エ ンジンにまったくひけをとらないばかりか、知恵とアイデ アと努力次第で、ページのファンを大量に増やしていける ので、無料でマーケティングに活用できる夢の媒体になる のではと期待していた分、ショックが大きかったのです。

業界1位のファン数を獲得したのに‥

実際、我が社が運営するソックス専門のオンラインショッ プのFacebookのページも、今ではおかげさまで、業界1位 の47,000人以上ものファンがいます。2009年11月に開始 したのですが、開設当時から歴史・知名度ともに断トツだ った某競合がおり、当然Facebookのファン数もずば抜けて いたのですが、約2.5年掛けて、彼らのファン数を抜くこと ができたのです。

しかも広告費をほとんど掛けず、アイデアとわずかな労力 だけで成し得た結果でしたので、資本主義とは別次元で、 ウェブマーケティング屋らしく、ノウハウとスキルで戦い ができることに興奮を覚えつつ大量のファンへ向けて、効 果的な宣伝を無料でがんがん投稿して、売上増につなげて いこうと息巻いていました。

ところが現実には有料のプロモートポストを使わない限 り、ファンの数%へしか配信されないと分かり、やはり世 の中うまい話はそうはないものだと落胆し、中小企業の救 世主になってくれそうだと、勝手に抱いていた期待感から、 正直、裏切られた気にもなりました。

それでもファンを募る意味はある

結局ページでファンを募っても、それを活用するのにお金 が掛かるという意味では、PPCと変わらないのではない か? Facebook自体、あまり有用性がないのでは? と思 われた方もいるかもしれませんが、冷静に考えると、実は そうではありません。それでもPPCよりは、今のところリ ーズナブルなマーケティングが行えます。そして、資本力 だけの勝負とは違って、腕次第でより効果的な活用ができ 得る要素をまだ持っているのです。

どういう事かといえば、まず1人を集客するための広告単 価が比較的安い上、Facebook自体が、口コミを発生させや すい媒体になっており、うまい投稿ができれば、実際に口 コミ効果で、本来の予算で到達できるはずの人数の、何倍 もの数の人へのリーチができる可能性も秘めているのです。 もちろん、皆が興味を持ち、人に伝達したくなるくらいの うまい投稿を行うには、並大抵のアイデアでは通用しませ んので、やはりごく一握りのスキルをもつ勝ち組のみに有 効な話ではありますが、それはマーケティングの世界の常 識でもあり、プロの存在価値もそこにあるわけで、常に腕 を磨くのみです!

また冷静に考えれば、ユーザーも企業からの大量の販促投 稿を常に見せられれば辟易するでしょうし、Facebookのビ ジネススタンスも理解はできます。ただパートナーが、母 親からの投稿ですら非表示になっていたと怒っていました が、流石にそれはダメでしょう(笑)。

2015年5月5日火曜日

Facebookにおける考察② 遂に本性を現す?

(U.S. FrontLine誌 2013年2月20日号 掲載分)

前回、Facebookの基本的な仕組みをおさらいした上で、 あるユーザー(Aさん)のNews Feed(情報を受け取るペー ジ)上に、既に半年前に亡くなったはずの友人(Bさん)が Discove(r カード会社)のページをLikeして(ファンになって) います、という表示を見た上に、そもそもBさんはDiscover が嫌いだった、という奇妙な現象について、お話ししました。

Facebookでは、自分のTimeline(ブログのような情報発 信ページ)に書き込まれた情報は、自分がFriendになってい る相手のNews Feed上に表示され、自分がFriendになって いる相手のTimelineに書き込まれた情報や、自分がLikeして いるページから発信された情報は、自分のNews Feed上に 表示されます。

Timelineには、自身が投稿した内容やほかの人が「Share (共有)」してきた情報以外に、自身がどこかのページをLike すると、「○○のページをLikeした」という情報も書き込まれ るので、例えばBさんが、DiscoverのページをLikeしたら、 BさんのFriendであるAさんのNews Feed上に、「Bさんが、 DiscoverのページをLikeしました」のように表示されるわ けです。

奇妙なのは、まずDiscoverを嫌いなBさんが、なぜページ をLikeしていたのか? これは携帯アプリや広告によって は、人が単に広告をクリックしただけで、意図せず何らか のページをLikeしたことにされるよう仕組んでいるものがあ るため、起き得ることです。

そして所有者が亡くなっても通知をしなければ、アカウン トは半永久的に動作します。ただそれでも、既に亡くなっ たBさんが、時間軸的にその後ページをLikeしたかのような 表示になる説明にはなりません。

巧妙なプロモートポスト

企業側ページには、有料で販促目的の情報を発信できる、 プロモートポストという機能があります。

また配信先に、自身の「ページをLikeしてくれたユーザー のFriend」にも配信できるオプションが用意されており、彼 らに配信する際には、受取人のNews Feed上に、ページか ら発信された情報以外に、必ず「○○さんがこのページを Likeしています」という表示も併記されます。

これはその投稿内容が、あたかも友人からお勧めされてい るかのような錯覚を起こさせ、できるだけ受信者の反応を 得られるよう考えられた仕組みでしょう。

先の例で、AさんのNews Feed上に、亡くなったはずの友 人BさんがDiscoverページをLikeしています、と表示された のは、Discoverページがプロモートポストにより、「ページ をLikeしてくれているユーザーのFriend」にも配信を行い、 たまたまAさんのFriendでDiscoverページをLikeしていたの がBさんしかいなければ、簡単に起き得るわけです(ちなみ にこれが前回の謎解きの答えです)。

マーケッターからすれば良くできたこのプロモートポスト 機能は、配信者が最大予算を決め、それに応じて配信され るのですが、実際に課金されるのは、予算内で配信(リー チ)できた人数分になります。つまり予算を最大限に消化 させたいFacebookとしては、できるだけ多くの人に配信し ようとするわけで、世界各国のユーザーに配信され、その 投稿に対して、知らない国の言語でコメントをもらう、な んてことも起き得ますのでご注意を(配信先の国を絞るこ とで一応回避できます)。

すべての情報が表示されるわけではない!

Facebookでは、ユーザーやページからの投稿が、Friend やLikeしている人たちのNews Feed上に表示される仕組み だと書きましたが、実際にはすべての情報が必ず表示され るわけではありません。

エッジランクと呼ばれる、Facebook独自のアルゴリズム により、各人のNews Feedへ表示させる内容が決定されて おり、例えばページからの投稿の場合、配信対象であるフ ァンの数にもよるのですが、3〜7.5%程度(2011年)し か投稿を見られていないという統計もあります。

ちなみにこのエッジランクの存在が広く知られた際には、 この仕組みが導入されたことで、トラフィックが以前より 激減したなど、ネット上では結構な騒ぎになりました。結 局ファン全員に投稿を見てもらえるようにするには、有料 のプロモートポストを使わなければならず、そのための予 算も中小企業で払える額ではない、みたいな話です。

ある人が、5万人のファンをもつページで、仮に1日10〜16 回の投稿を行い、それを100%見てもらえるよう、プロモート ポストを活用した場合、年間で必要な予算は、$200(1回の投 稿費用)×10(1日10回投稿した場合)×7(1週間)×4(1ヶ 月)×12(1年)= 67.2万ドルになると騒いでいました。

数字はともかくとしても、Facebookをマーケティングに 活用しようと考える企業にとって、ショッキングな話では あると思います。次回に続きます

2015年4月29日水曜日

Facebookにおける考察① 怪奇現象?

(U.S. FrontLine誌 2013年2月20日号 掲載分)

昨年の12月、Facebookに関する面白い記事がありまし た。もしかしたら、読者の中には、まだあまりFacebookを 利用されていない方もおられるかもしれないので、本題の 前に基本的な仕組みだけご説明しておきます。

Facebookの仕組みのおさらい

ユーザーは自分のアカウントを作成することで、色々な情 報を発信できる、一種のブログのようなTimeline(昔なら Wall)と呼ばれるページと、周りから色々な情報を受け取る ことができる、News Feedと呼ばれるページ(アカウント のデフォルトのページ)をもつことになります。

そして、自分の友人や家族、仕事仲間、あるいは趣味仲間 たちと、Facebook上で「Friend」の関係になることで、写 真やコメント、ほかのサイトへのリンクなどをお互いに投 稿するなどして、交遊ができるようになります。

また芸能人やバンド、テレビ番組や本、あるいは企業やお 店など、ビジネス目的で開設されている様々なページがあ るので、気に入ったページ(内容)があれば、「Like」をす ることで、一種のファンとして扱われ、それらのページか ら発信される内容を受け取ったり、コメントを投稿したり でき、そのコミュニティに参加できるようになります。

実際の仕組みとしては、自分のTimelineに書き込まれた情 報は、自分がFriendになっている相手のNews Feed上に表 示(配信)され、自分がFriendになっている相手のTimeline に書き込まれた情報や、自分がLikeしているページから発信 された情報は、同様に自分のNews Feed上に表示されると いうものです。

なおTimelineには、ユーザー自身が投稿した内容が書き込 まれるのはもちろんのこと、他の人が「Share(共有)」し てきた情報のほかにも、自身がどこかのページをLikeした際 には、「○○のページをLikeした」というような情報も自動 で書き込まれます。そのため、例えばAさんが、スターバッ クス(コーヒー)のページをLikeしたら、AさんのFriendで あるBさんのNews Feed上に、「Aさんが、スターバックス のページをLikeしました。」のように表示されるわけです。

何やら奇妙な現象

さて本題です。某記事によると、「ある友人が、Discover (カード会社)のページをLikeした」という情報が自分の News Feed上に表示されたらしいのですが、その友人は、 何と半年前に他界していた、というのです。既に説明した 仕組みだけで考えると、こういうことが起きるとすれば、 亡くなったはずの友人が生きていたか、あるいは幽霊の仕 業ということでしょうか(笑)。

さらに奇妙なことに、その友人はそもそも、Discoverを 嫌っていたらしいのです。また別に報告されているケース でも、リベラル派で明らかにミット・ロムニー氏を嫌って いたある人物がロムニー氏をLikeしたとか、スバル(車)を 嫌っているはずの人物がスバルをLikeした、という奇妙な話 もありました。

ちなみに私も、意図したことのないページをなぜかLikeし たことになっていた、という経験を過去にしたことがあり ます。また周りにも、やはり既に亡くなっているはずの 「××さんが○○ページをLikeしました」という内容を、死 後しばらくたっているのに、自分のNews Feed上で見た人 もいます。こういう奇妙な例が記事でいくつも挙げられて いるのですが、皆さんは経験ないでしょうか?

謎解き

中にはFacebookが何やら勝手に人のLikeを操作している という陰謀説まで出ているようですが、この奇妙な現象が なぜ起き得るのかを知りたければ、もっとFacebookの仕組 みと、巧妙な広告機能についても理解する必要があります。

Facebook広報担当によると、携帯アプリや広告によって は、人が単に広告をクリックしただけで、意図せず何らか のページをLikeしたことにされるよう、仕組んでいるものが あるそうです。

またアカウントは、所有者が亡くなった場合でもその旨の 通知を受けていなければ、半永久的に、生きている前提と して動作するとのことです。しかし、それでも、亡くなっ たユーザーが時間軸的にその後Facebook上でアクションを したかのような表示の説明にはなりません。 もう1つここで、企業側ページのプロモートポストという、 有料で販促目的の情報を発信できる機能を理解すると、謎 は解けます。

ヒント1:

プロモートポストには配信先として、自身の「ページを LikeしてくれたユーザーのFriend」にも配信できるオプショ ンが用意されている。

ヒント2:

「ページをLikeしてくれたユーザーのFriend」に配信する と、受取人のNews Feed上にそのページから発信された情 報のほかに、必ず「○○さんがページをLikeしています。」 という表示も併記される。

今回はヒントだけ(といってもほとんど答えですが)、次 回にもう少し詳しい答えを書きます。

2015年4月2日木曜日

SEPをご存知ですか?

(U.S. FrontLine誌 2013年1月20日号 掲載分)

Search Engine Optimizationの略であるSEOは、今更説 明も不要かとは思いますが、ウェブサイトを検索エンジン が好む構造や状態にすることで、検索結果の上位に表示さ せる手法です。SEPとは、Search Engine Poisoning の略 で、ウィルスやワームといった、悪意のある不正なソフト ウェア(マルウェア)に感染したサイト(害毒)をSEOさ せることで、よりユーザーがそのサイトを閲覧するように 仕向け、ユーザーのPCを感染させる行為のことです。

ウェブ閲覧をとても危険にさせているSEP

本稿が掲載されている頃には、もう「時既に遅し」かもし れませんが、ある記事によると、特にホリデーシーズンな どで、このSEPを使った攻撃が盛んになるようです。例えば 「thanksgiving」「turkey」「recipe」「christmas」「gift」と いった人々がよく検索しそうなキーワードに絡めて上位表 示されているサイトで危険なものがより含まれる、という ことです。実際にはより具体的に何かを探している、 「preschool christmas bulletin boards」「christmas office party games」「ideas for christmas gifts in mason jars」 のようなキーワードで、確認されたとのことです。

また、ホリデーシーズン以外でも、「sample eagle scout letter of recommendation」(手紙の書き方)、「proxy to get on facebook at school」(子供が学校でのウェブ閲覧規制 から逃れる術)など、実にピンポイントで人々の目的意識 にあわせて攻撃を仕掛けてきているようです。

こういったSEP攻撃を仕掛けている側の目的としては、単 なる暇人の嫌がらせというのも中にはあると思いますが、 マルウェアに感染させ、駆除が必要と促し、擬似的駆除ツ ールを表示させて、入金すればそれが使えると誘導するも のや、市販のアンチウィルスソフトメーカーが、より多く の人々のPCを感染させて、ソフトを購入させるように仕向 けている、など金銭に絡んだものが多いと思います。

※注)間違っても何の対策もなしに、上記のような検索を して確かめるようなことはしないでください!

特に擬似的駆除ツールの類は巧妙にできており、勝手に PC内をスキャンして、「ウィルスを発見しました」と警告を したあと、支払いボタンと共に駆除ツールを見せてくるの で、知らない人なら、何か正しい動きかのように、簡単に 騙されてしまうかもしれません。

ちなみに私もやられました…

大変お恥ずかしい話ですが、実は先日、私もマルウェアに 感染してしまいました(涙)。環境的には、シマンテック社 のエンドポイントという企業向けアンチウィルスソフトの 定番は入っていたのですが、ごく普通にネットで技術情報 を検索していて、どうやらマルウェアに感染したサイトを ブラウザで閲覧してしまったらしく、その瞬間、「ウィルス を駆除できませんでした」のようなメッセージが立て続け に表示され、感染させられました。

しかもその際、メモリーエラーで駆除ができない的なメッ セージがでたので、定番と言いつつも、普段から動作が重 くトラブルの多発する、あのシマンテック製ソフトなので、 逆に最初は単純にあり得ると思ってしまいました(笑)。

実際には、「駆除できませんでした」のメッセージ自体も、 マルウェアが表示させていたのかもしれませんし、アンチ ウィルスソフトが肝心な場面で本当に駆除に失敗していた のか、いまだに分かりませんが、最終的に例の駆除ツール と支払いボタンが表示されたので、「ああ、これが噂のアレ か…」と、マルウェアに感染したことを悟った次第です。

アンチウィルスソフトでは役に立たない

アンチウィルスと、アンチスパイウェアは本来別のジャン ルで、以前なら別の専用ソフトとして販売されていました が、現在はどこのソフトメーカーでもこれらの駆除機能を 同封してきています。しかし実際の性能として、やはり得 手不得手があるようで、アンチウィルスが専門で売ってき たものでは、おまけ的に実装したスパイウェアの駆除機能 では、使えるものになっておらず、私のケースのように何 の役にも立たない可能性があります。

特に最近はマルウェアに感染させられたサイトも多く存在 しています。また、ある記事によると、感染されたサイト 全体を100とすれば、65%はBing、30%はGoogleの検索 結果で出てくるサイトだったそうです。

インターネットで安全に閲覧するには、アンチウィルスと は別に、リアルタイムで有害なスパイウェアを遮蔽する機 能が、別途必須になってきました。イメージ的には、ネッ トに蔓延した性病を避けるためにコンドームをブラウザに 装着する感じですかね。今は普通のサイトの閲覧でもリス クがあるので、スパイウェア対策もきっちり講じましょう。

2015年3月31日火曜日

ネット絡みの軽い話題を2つほど

(U.S. FrontLine誌 2013年1月5日号 掲載分)

新年明けましておめでとうございます。新年一発目と言う ことで、まずは明るい話題を1つ。

不況と言われても、皆買い物してます

実は本稿を書いているのは、2012年の12月頭なのです が、不況と言われつつも、今のところホリデーシーズンの アメリカ国内のリテールビジネスの売上は好調のようで、 11/1~12/2まで、Eコマースでは前年比で14%増の213億 3500万ドルの売上があったそうです。

特に感謝祭の翌日のブラックフライデーと呼ばれる金曜日 は、多くの実店舗が大々的なセールを行うので、消費者も こぞって買い物に出かけ、お店もかなりの黒字になること で昔から有名ですが、2012年の売上は、前年比28%増の 10億4000万ドルでした。

また近年、その週明けの月曜日をサイバーマンデーと呼び、 オンラインショップの売上が特に伸びる日と言われてきた のですが、2012年は前年比17%増の14億6000万ドルと、 こちらも記録を更新しました。

我が社が運営するオンラインショップも、おかげさまでサ イバーマンデーは特にすごかったのですが、例年以上に、 大手もこのサイバーマンデーに合わせて、オンラインでの セールがあることを強調していたのが印象的でした。

「サイバーマンデー」は、2005年より使われ始めた用語 ですが、なぜこのような現象が起きるのか、強引に理屈を つけるなら、例えば感謝祭の週末にモールなどで商品を実 際に下見した消費者たちが、月曜にオンラインで少しでも 安い店を探して購入しようとする現象といった感じでしょ うか。

ただ実のところは、ブラックフライデー的な日をネット上 にも設けたくて、

無理やりサイバーマンデーならオンラインがお得、のよう な文化を創り上げてきたように思います。丁度バレンタイ ンデーにはチョコ、のような話ですが、今ではすっかり定 着してきており、マーケティングの威力を改めて感じました。

ある人気サイトの顛末

続いて別の話題を1つ。相変わらず栄枯盛衰が著しいネッ トの世界ですが、2012年での衝撃の話題に、Digg.comの 買収がありました。Diggとは、2004年に開設されたソーシ ャルニュースサイトで、ユーザーがニュース記事を投稿し、 それを読んだ他のユーザーが、その記事に対して投票した り、シェアしたり、コメントできるもので、当時はまだ目 新しく、今で言うところのFacebookのLikeやShareのよう な仕組みに近いものを、大々的に広め、大成功を収めたの です。

より多くの投票数を得たニュースがトップページに掲載さ れるのですが、膨大なユーザーに閲覧されるので、記事内 のリンク先のサイトは、あまりのトラフィックに耐え切れ ず、サーバーをダウンさせてしまうといった現象が頻繁に 起きるほどでした。

ある記事によると、創始者のケビン・ローズ氏は、時給 10ドルのプログラマーを使って彼のアイデアであるサイト を開発し、毎月ホスティング料99ドルと、ドメイン登録料 1,200ドルを払っただけでスタートしたそうです。

2005年2月に、パリス・ヒルトンさんの携帯がハッキング され、携帯内の画像や電話番号がネット上で出回ったので すが、Diggにそのリンクがいち早く投稿され、物すごいト ラフィックを引き起こしたそうで、その時ローズ氏は、先 取りニュースがもたらす威力を目の当たりにしたそうです。 そこから目覚しい成功を遂げ、2006年にはローズ氏がビ ジネスウィークの表紙を飾り、Googleから2億ドル前後で 買収を持ち掛けられたと報じられた程だったのですが、最 終的に2012年7月に、何とたった50万ドルで売却すること になったのです。

と言うのも、2010年3月よりユーザーを急激に失い始め、 かつての勢いと比較すれば、今は見る影を失ってしまった からでした。落ちぶれた原因は、FacebookやTwitterの大成 功によりユーザーを奪われたとか、直接の競合であった Reddit.comやStumbleupon.comが台頭してきたなどを想 像されるかもしれませんが、いえいえ、実は非常に単純な ことで自滅しただけです。

SNSユーザー心理を軽視した代償

ユーザーを劇的に失うきっかけは、簡単な仕様変更でした。 高評価を得たユーザーのリストセクションを削除し、ユー ザーのアバター(自分を表すキャラクター画像)を削除し、 投稿に貢献していたトップユーザーたちを排除するなど、 ユーザー配慮に欠けた動きを一方的に行ったのです。その 後もDislikeボタンを削除して、ユーザーの意思表明の手段 を奪い、企業やSEOスパマーからの投稿が簡単になり、歓 迎されていない記事も溢れ、コミュニティ性と参加するモ チベーションを失わせた結果、見事に衰退していったとい うわけです。

2015年3月10日火曜日

誇れる仕事をしてますか? ②

(U.S. FrontLine誌 2012年12月20日号 掲載分)

前回、我が社がクライアントへ提供するホスティング環境 について、某日系IT業者さんとクライアントと三者で話す機 会があり、げんなりした経験についてお話ししました。

業者さんの指摘が現実離れしており、どんな話でもネガテ ィブに話されるので、最初はうちを粗悪な環境を提供する 悪徳業者とでも思われているから感じが悪いのかと、提供 される環境が、通常なら手に入らない、贅沢な環境である ことを具体的に説明しようとしました。しかし、そういう 話は一切聞こうとしないので、本気で環境の良し悪しを見 極めようとしているわけではなかったようですが、その後、 決定的なやりとりがあったのです。

久々に日系業者のレベルに絶句

業者さんから「データベース容量の制限は?」と質問され たので、私が「1GBです」と答えると、「いずれ容量オーバ ーになるので、その後は?」と聞かれました。「経験上、こ の規模のショップで簡単に超えることはないですよ」と答 えると、「(相手)超えるに決まっている!」「(私)ウェブロ グの容量と間違えられていませんか?」「(相手)間違えてい ない。そんなもの簡単に超える!」(しばらく絶句してから) 「(私)このショップのアイテム数をご存知ですか?」「(相手) まだ聞いていないから知らない」

もちろんショップのリソースも100通りでもあるので、 私の経験だけがすべてだと断言するつもりはないのですが、 仮にデータ容量が簡単に何GB以上にもなるようなショップ ならば、そうならないショップも簡単に構築できている以 上、余程非効率なデータの持ち方をしているとは言えます。 この時点で、この業者の方が、あまりITの知識・技術がな いか、ショップ運用経験がないか、こじ付けで粗探しをし ているかの、いずれかであることは分かりました。

少しだけ技術的な話をすると、もちろん、無限の器など存 在しないので、どんなものでもデータを貯め続ければ、い つかは容量制限を越える可能性はあります。ただショップ の場合、増え続けていくタイプのデータとしては、主に顧 客や注文情報ですが、かなりのマーケティング予算を掛け て集客でもしなければ、通常それらがデータ容量を圧迫す るほどにはなりません。むしろデータ容量的に嵩みやすい のが、商品やカテゴリー情報になります。

ですから、将来的なデータ容量を想定する上では、何アイ テムを取り扱うのか? とか、トラフィックや顧客や注文 数がどれくらいになりそうなショップなのか? というの は、非常に重要な要素になるので、少なくともプロであれ ば、真っ先に確認すべき内容なのです。

我が社のクライアントでも、数万アイテムを扱うショップ や、数十万レコードを貯めておく必要のあるサイトでは、 データベース容量が数GB以上になることもあります。ただ そういうサイトでは、そのための容量も想定した上で、そ れに見合った料金で提供しているので、特に問題もないわ けです。ちなみにこのクライアントの場合、多めに想定し てもせいぜい500アイテムという規模で、トラフィックも 非常に限られたものになることが、簡単に想定できるもの でした。

可能性はゼロではないが‥

ホスティングのレンタルは、オフィススペースのレンタル のようなものです。事業を拡張していけば、いずれはより 広いスペースが必要になるかもしれません。ただレンタル する際には、今現在どういう規模で、将来どう展開する、 という想定ありきで物件を探すはずです。先の例では、従 業員数5人くらいの会社が、10,000Sqfくらいのオフィス を借りた上で、将来スペースが足りなくなる時の可能性を 話しているようなものです。

可能性がゼロではないにしても、今それを心配したところ できりもなく、何か対策が変わるというわけでもない。 あくまでも想定の範疇ですので、“絶対”ではないにして も、想定ありきで話を進めなければ、費用対効果も踏まえ た現実的な話になるはずもなく、さらにこの業者さんは、 レンタル料金自体も知らずに話していたことも分かり、何 でもいいから不安材料を募っていたと確信しました。正直、 知識・技術・経験レベルの方も大いに疑問でしたが。

さすがに最後は私も一言、釘を刺さずにはいられませんで した。「あなたはプロとして、ITの素人であるクライアント をサポートするためにいるはずでしょう? こんな現実感 も解決策もないような話だけで、クライアントは一体何を 得ているのでしょうか?」。

何ともやりきれない気持ちになりました。

2015年2月20日金曜日

誇れる仕事をしてますか? ①

(U.S. FrontLine誌 2012年12月5日号 掲載分)

少し前になりますが、久しぶりに日系ITビジネスの質を垣 間見た気がして、げんなりしてしまいました。日系のクラ イアントのオンラインショップ構築の案件で、先方の別の 案件の絡みで関わっている、某日系IT業者の方と話をする機 会があったのです。要はうちがクライアントに提供する予 定のホスティング環境について、他の案件への活用も検討 したいので、ITの素人であるクライアントとそのフォローと して業者さんと三者で話がしたい、ということでした。

ホスティングにも色々あるのです

なお、我が社のオンラインショップサービスにおける、ホ スティングサービスは、本稿(第32回:2010年6月20日 号)でも以前、少しだけ触れたように、信頼性の高いホス ティング会社から専用サーバーをいくつかレンタルしたも のを、共用サーバーとして提供しています。しかし、一般 的な利益を追求するためのサービスとしては提供していな いので、かなり特殊な形態と言えます(利益は別のサービ スで追求しています)。

どういうことかと言うと、第88回(2012年10月20日号) でも少し触れたように、PCIコンプライアンスという世界標 準のセキュリティ基準に準拠するために、ウェブサーバー、 メールサーバー、データベースサーバーをすべて別にした 複数の専用サーバーで運営しているのですが、仮にこのよ うな環境を1社に対して用意すると、ホスティング費用は かなりの額になり、サイトの規模にもよりますが、多くの 場合、費用対効果的に見合わなくなります。

そこで、サーバー1台に対してクライアント数を最小限に 限定し、費用も含めてそれらを共用することで、本来なら 手に入らないような環境を、リーズナブルな価格で提供で きるようにしたものなのです(SEOなどでトラフィックを 増やしてビジネスを成長させてから、1台1社の別に用意 した専用サーバーへ引越していただくことはありますが)。 なお、一般の利益を追求する共用ホスティングでは、でき るだけ1台のサーバーにクライアント(サイト)を詰め込 みます。サーバー1台の運営コストは、クライアントが増 えても変わらないので、できるだけ多くのホスティング料 を獲得するために、数百、数千というサイトを1台のサー バーにホスティングさせることもざらにあります。この場 合、借り手のレンタル料はその分低額になりますが、大量 のサイトが共存している分、トラブルも覚悟しておく必要 があります。

ですから、一般的な共用ホスティングとはスタンスがまる で違うものであることを、まず予備知識として最初に説明 しようとしたのですが、業者の方から「余計な話はしなく ていい。契約書にスペックが記載されていないので、ただ 教えてくれればいい」的なことを言われ、調べて伝えると、 「このCPUの各サイトへの割り当ては?」「メモリの割り当 ては?」などと、聞かれてくることは一見まともなのです が、そのたびに、いちいちネガティブなコメントを残して いかれるのです。

契約書にスペックをあえて書いていないのは、単にクライ アントを割り当てるサーバーは直前に決まる上に、サーバ ーも時間と共に、スペックもより新しく(良く)なるとい うだけのことなのですが、粗悪な環境を提供する悪徳会社 とでも思われているのか、とにかく感じが悪い。

確かに、間違いではないのだが…

例えば共用なので、「同じサーバー内にホストしている他 のサイトの何らかの影響を受け、クライアントサイトのパ フォーマンスに悪影響を及ぼす可能性はありますね」とい った具合です。当然そういう可能性はゼロではないのです が、前述の通り、クライアント数をかなり限定した上での 高スペックの環境だと再度説明しようとしても、「余計な話 はいいです。影響を受ける可能性があるのか、ないのか? 絶対にダウンしないのか?」と極端な論調で来られるので、 とりあえず「世の中に“絶対”などほぼあり得ませんので、 可能性はもちろんゼロではないです」と答えておきました。

専用サーバーでは、費用対効果的に合わないので、皆、共 用で妥協しているわけで、「他にどういうソリューションが あると言うのだろうか」というのが、まずは私の心の声で した。もちろん、共用環境もピンキリなので、違いを具体 的に説明しようとしても、そういう話には興味もない。正 直この時点で、この人が本当にクライアントのために話を しようとしているのか、非常に疑問を持ちました。そして 更に、致命的だと分かることが発覚したのです。次回に続 く‥

2015年2月5日木曜日

オンラインショップは、何が大変なのか?⑦ 顧客対応

(U.S. FrontLine誌 2012年11月20日号 掲載分)

前回、ショップ側のカード詐欺の防衛策について触れまし た。送り先と請求先が違う、普段あまり出ない個数・商品 の組み合わせ・金額の注文、早く届く発送方法を指定、な どどれか2つ以上合致したら要注意かもしれません。

今回は、トラブルになりやすい顧客に対する防衛策の話で す。といっても、うちの現場が経験則から分析し、実践して いる(とたまたま先日聞いた)方法なので、成果に関して保証 はできません(笑)。一種のEメールでの“プロファイリング” のようなものだと考えてください。ただオンラインショップ に限らず、例えば雇用の際の人材の見極め方にも共通すると ころもあるらしく、少し面白いと思ったので、ご紹介します。

こういうEメールのコンタクトを もらうと要注意?

・すべて大文字で書かれている
・フォントカラーを変更している
・背景に画像を差し込んでいる
・Eメールアカウントを夫婦で共有している
・個人メールにシグネチャー(社名や連絡先のセクション)がある
・宗教的なメッセージや祈りの言葉が入っている
・HotmailやAOLアカウントユーザー
こういったメールになっていると、なぜ注意が必要なの か? 尋ねてみたところ、要はオンライン慣れしたユーザ ーであるかどうかの指標になるのだそうです。

オンライン慣れしたユーザーの場合、(我が社の経験則・ 統計によれば)通常はビジネスメールアカウントでなけれ ば、シグネチャーなど使わないのです。

オンライン慣れしていないユーザーの場合、オンラインの ショップをあまり信用もしておらず、オンラインショッピ ングの経験も浅いので、使い方も分からず、すぐにパニッ クになりやすいという傾向があるというのです。

わざわざ変わったフォントやシグネチャーを入れているの であれば、コンピューターを使うことに抵抗感はない人の ようにも思うのですが、私なりに推察すると、コンピュー ターを覚えたての人、ビジネスでのやりとりの機会があま りない人が多く該当するのかもしれません。自分を振り返 ってみると、そういうことを喜んでやっていたのは、最初 のうちだけだったような…。

またビジネス社会に属していない人とでは、どうしても一 般常識でもギャップが生じやすいと思います。皆さんはど うでしょうか? ともかく、そういう指標もある、くらい に留めて頂ければと思います。

うちの商品でもないのに チャージバック?

最近うちのショップで、呆れてしまうケースがありました。 マーチャントアカウント(カード決済代行会社)からチャ ージバック(顧客への返金要求)が入り、調べてみると、確 かに以前、うちで買い物をした人ながら、返金対象となっ ている商品は、うちで取り扱っていないものだったのです。 スタッフが買い物をした人に電話で確認したところ、うち から購入した商品は満足していると褒めつつ、問題の商品 がうちから買ったものでないことも理解していました。こ の時点で「?」なのですが、どうやら購入元ショップと連 絡がつかず、うちへチャージバック要求をしてみたらしい のです(怒)。例え連絡がつかなくとも、購入元からチャー ジバックはできることを伝え、状況をマーチャントアカウ ントにも伝え、返金拒否のクレームを入れたそうです。

ところがその後、マーチャントアカウントは、何とうちの クレームを却下し、再度クレームを入れて、負けると500 ドルの追加手数料が発生すると言ってきたのです。顧客に 返金要求を取り下げてもらってもよいと言われ、相手に電 話で取り下げの約束をもらったのですが、その後も「もう 書類を送った」など何度かやりとりしても、結局は嘘をつ いていたことが分かり、最後には逆切れをされ、「取り下げ を何でする必要があるんだ」と怒鳴り散らしてきたそうで す。期限があるので、相手は時間稼ぎをしていたのかもし れません。結局再クレームを入れ、証拠を再度提出して戦 い、勝ったそうです。相手は証拠として、別の店から購入 した際の郵送ラベルを提出していたとか。

100%うちと関係のないことでしたが、スタッフはこの 件を片付けるのに、のべ2〜3時間を費やすはめになりま した。何ともやりきれません。

景気の良い時期と悪い時期とでは、返品などクレーム対象 になる注文金額のボーダーラインも違ってきているのでは ないでしょうか? 資本主義の過酷さも日に日に増してい る、オンラインビジネスにおいて、とりあえず何か有益な 情報を共有できればと思い、本シリーズを取り上げてみま した。少しでもお役に立てたなら幸いです。

2015年1月30日金曜日

オンラインショップは、何が大変なのか?⑥ カード詐欺

(U.S. FrontLine誌 2012年11月5日号 掲載分)

前回、数年前よりカード会社が提唱するPCI DDSという 世界的なセキュリティ基準にショップが準拠していなけれ ばならなくなったこと、そしてその基準は年々厳しくなる 一方で、日本語圏の仕事がメインの業者にショップ構築を 依頼する場合、PCI DDSコンプライアンス(準拠)におけ る知識や経験がない場合が多々あり、特に注意が必要であ ることをお話ししました。今回はカード決済機能を実装し てからの話です。

割を食うのはショップ側だけ

まず消費者は、自分のカードを他人に使用されているなど、 カード詐欺に遭っていることにさえ気付けば、大抵の場合、カ ード会社に要求して、失った金額を取り戻すことができます。

ところが、ショップが既に商品を発送してしまった後で、 カード詐欺による注文だったと発覚した場合、カードの持 ち主は前述のチャージバックにより、損失を回収できます が、ショップは商品や送料を失った上、カード会社からチ ャージバックを受け、入金を全額引き上げられてしまう上、 そのプロセス費用まで要求されます。

また実質的な金銭面以外にも、詐欺へ対応するスタッフの 人件費もロスしていることになります。更にカード詐欺が 多発すると、カード会社への手数料のレートも上げられて しまう可能性があり、正に踏んだり蹴ったりです。

ちなみに昨年のアメリカ及びカナダのオンラインショップ では、詐欺による損失は34億ドルにのぼりました。大体売 上の1%から2%は、詐欺で失うと覚悟しておいた方がよい でしょう。勿論それ以上の損失を抑えるための手立ては考 えるべきです。

カード詐欺の防衛策

前述のとおり、ショップ運営者にとってカード詐欺は、断 固阻止せねばならないテーマであることは、お分かり頂け たと思います。勿論、詐欺防止のために、ショップ側も色 んな制御を設けることは可能です。

例えばAVS(Address Verification System)という住所 認証システムはご存知の方も多いかと思います。カードに 登録されている請求先住所と、注文画面で入力する請求住 所とでマッチングを行うもので、盗難されたカードかどう かを見分けるのに有効な場合があります。

ただ設定を厳しくし過ぎると、正規ユーザーでも、PCや オンラインでの注文に慣れていない等で、入力した情報が 微妙に違うことではじかれてしまい、結果注文を逃してし まうこともあり、完全制御するのはZIPコードのマッチング にとどめているショップも多いのです。

では更に何ができるか? アルゴリズムもしくは設定によ り、色んなフラグを立てる有料サービスが存在します。勿 論有料でなくとも、例えば運用上で、
A)送り先と請求先が違う
B)普段あまり出ない個数、商品の組み合わせ、金額の注文
C)早く届く発送方法を指定
これらいずれか2つ以上の条件が合致した注文には社内的 にフラグを立て、詐欺でないかの確認プロセスを入れると いうルールを強いても良いわけです。 勿論色んな例外もありますが、詐欺の傾向としては、盗難 したカードで買い物したものを、後で売り捌 いて換金しよ うとするケースが多く、できるだけ早くバレる前に、大量 (大金)の商品を獲得しようとするので、これだけでもある 程度は把握できます。

また誰でもできる確認方法として、例えば電話帳などで請 求先を元に人物調査した上で、電話で本人確認を行ったり、 請求先住所と注文を入れた際のIPアドレス(から分かる地域) とのマッチングを行ったりするだけでも、かなりの精度で 詐欺注文を防ぐことは可能です。勿論こういった確認プロ セスを有料サービスに委ねることもできます。

ショップ側のジレンマ

仮に詐欺と判明していれば、送り先の受取人が簡単に捕ま るのでは? と疑問に思われた方もいるでしょう。実際我 が社も詐欺に遭い、スタッフが警察へ通報したこともある と言っていました。ただ警察曰く、送り先住所には、長期 不在と分かった他人の住所や、犯人の知人宅が使われてい るケースが多く、それだけで受取人自身を犯人とは断定で きないそうです。

また管轄も被害のあったショップの地域になるので、送り 先が州外の場合、FBIの管轄になります。その場合、金額的 に最低2万ドル以上のケースでなければFBIは動かないとの ことです。

過去に、海外配送専門の物流センターを送り先に指定され ていたケースもあったそうです。勿論バレバレなので、未 然に詐欺を把握して被害は回避したらしいのですが、そん な分かり易いケースでも、やはり警察もFBIも動いてはくれ ないのです。