天才的キャンペーン: 「Thanks Obama」meme.

(U.S. FrontLine誌 2015年5月20日号 掲載分)

ある時期から、「Thanks Obama」というフレーズが流 行っていますが、ことの発端は、政治的や経済的に起こる、 望まない事態や出来事を、共和党支持者(ティーパーティな ど保守派)たちが、とにかくオバマ大統領のせいにする傾向 があり、本来の因果関係や原因も丸無視、あるいはまった く考えようともせず、とにかく盲目的にオバマ氏が悪いと いう片付け方で終えるという風潮があります。

ちなみに聞いた話で、ある病院の待合室で待っていたら、 そこでウクライナで起きた旅客機の墜落事故のニュースが テレビでたまたま流れていて、一緒に見ていた白人の年配 の女性が、「オバマのせいだ…」と本気で呟いていたそうで、 おそらく私が予想できる以上に、この風潮に染まっている 人たちがいるのかもしれません。

「Thanks Obama」というミーム

民主党支持者(リベラル)や理性のある無党派の人たちは、 そんな風潮を皮肉る形でユーモアとして、日常で起こる望 まない事態や出来事に、「Thanks Obama」とテキストをつ けた画像や動画などをアップするというのが、ネット上で ミーム(流行)になったのです。

特にReddit(アメリカの膨大なユーザー数を誇る面白ニ ュース&掲示板サイトで、掲示板部分では日本の2ch的な 要素がある)というサイト内のSubreddit(個別のトピッ クの掲載箇所)で、「Thanks Obama」というコミュニティ ーが作られ、そこに色んなユーモアコンテンツが投稿され、 かなり盛り上がっていました。

どんなものが投稿されていたかと言えば、缶飲料のタブ が折れてしまって飲めないとか、ガムが足底についたとか、 バナナの皮がうまく剥けなかったとか、とにかくありとあ らゆる、オバマ氏と無関係なことに、「Thanks Obama」と して投稿するといった具合です。

そんな「Thanks Obama」熱を、オバマ政権が実際にどう とらえていたのかは不明ですが、Redittで終わりがないか の如く続いていた投稿を、一気に沈着させた出来事があり ました。それは、政府がバズフィードという超有名バイラル (口コミ)メディアと組んで作成した、バイラルビデオでした。 健康保険(通称オバマケア)への加入登録を促すための、政 府公式のキャンペーンビデオだったのですが、何とオバマ氏 自身が出演し、「Thanks Obama」ネタを入れてきたのでした。



クッキーをミルクに浸して食べようとするも、クッキーの 方がコップよりサイズが大きくて浸せない、というコンテで、 自ら「Thanks Obama」と言う自虐ユーモアを発し、ネット上 でも、とても話題になり、正に超バイラルビデオとなりました。

従来の常識を覆した手法

何より斬新だったのが、以前の政府系キャンペーンなら、 道徳観に訴える真面目なものと相場は決まっており、どこ か説教くさいものになりがちだったのですが、この動画は まったくそういったテイストではなかったことです。

大統領が、鏡で見た目を確認しなら自分の色んな表情を 作ってみたり、へたくそな奥さんの絵を描いてみて、自分で 褒めてみたり、セルフィースティック(自撮り棒)を使ってよ いアングルを探してみたり、人に見られて恥ずかしい瞬間 を見られたりと、人間的なリアルさを表現したものでした。

しかし根底はヘルスケアのことなので、勿論真面目で 深刻な内容であり、全体を通して、うまく若者を意識した、 受け入れやすい、軽い感じのコンテに仕上げつつ、重要な 情報をさらっと訴求できており、アメリカの大統領が、自 虐ユーモアを使ってきたというインパクトも相まって、大 きな反響のあるキャンペーンに仕上がっていました。

Subredditを作ったユーザーも、「まいった。これ以上 のThanks Obamaユーモアは誰も出せない」という種の コメントを残し、実際その後、Subredditへの「Thanks Obama」投稿がぴたりと止まりました。

バイラルはまさに旬

バイラルマーケティングは、今まさに現代のマーケティ ング手法として地位を確立してきています。この例はあく までも政府(=大企業)的なものではありますが、根底概念 としては、中小企業のマーケティングにも、十分に通じる ものだと思っています。

特に覚えておくべきことは、たとえ大統領であっても、 若者層などのデモグラフィックにリーチするには、ここま で彼らを意識して正しく分析し、刺さるものを作り、リー チできる場所へ供給する必要があるという事でしょう。

我が社でもかなり前からバイラルマーケティングには取 り組んでおり、先日もまさに某クライアントのバイラル動 画の案件の撮影を終えたばかりです。やっていていつも思 うのは、難易度は確かに高く、どう転ぶかはわかりません が、簡単ではないからこそ、誰にでもできない分、価値が あるのだということです。

[もっと詳しくバイラル マーケティングについて知りたい方はこちらも参照ください: バイラル マーケティングが必要な理由]

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