Getty Imagesには要注意

(U.S. FrontLine誌 2012年7月20日号 掲載分)

ウェブサイトや紙面パンフレットを制作する際には、やはりビジュアル面で、良い写真などを使うと、印象が良くなります。どれだけ訴求力のあるテキストを用意したとしても、そこに写真があれば、真っ先に写真の方に目を奪われてしまうでしょう。

1ドルから画像が買えるダウンロードサイト

かなり前になりますが、本稿にてウェブ制作をする際の予備知識として、高品質の写真を安く買える、画像ダウンロード購入サイトがあると紹介しました。www.istockphoto.com やwww.fotolia.com なんかは、その中でも有名で、安いものは1枚1ドルからでも購入できます。

面白いのが、ローカルのフリー誌で、「ああ、これiStockphotoの写真をそのまま載せただけね」という広告が結構見つかります。

なお当時は少なくとも日系のホームページ制作業者さんでは、まだそういったサービスをご存知なかったみたいで、彼らのサイトを見ても、写真も少なかったのですが、今ではさすがに、どこの業者さんでも高品質の低価格な購入画像を、ふんだんに使われているのがわかります。

ところで、古くから、同様の画像ダウンロード購入サイトとして、www.gettyimages.com というものもありました。こちらはもっと有名で歴史もあり、本当に良い写真が揃っています。当時から日系業者さんでもよくご存知だったと思いますが、とにかく1枚の写真の料金が高く、気軽には利用できないという現実もありました。

何よりGettyの場合、ライセンス形態が非常に複雑で、1枚の写真に結構な費用を払ったとしても使用期限が設定されています。つまり、継続使用するには、追加で費用を払う必要があり、神経を使わなければならないため、我が社では結局敬遠していたサービスです。事実、費用対効果的には合わないことの方が多いと思います。

あるクライアントが不測の事態に遭遇

先日のことです。我が社のある新しいクライアントさんから、ちょっと困ったことがあると相談を受けたのですが、何とこのGettyから、「写真のライセンス違反で罰金を払え」という主旨のメールが、彼らの弁護士経由で入ったというのです。よくよく聞いてみると、うちへ依頼される数年前に、日系の業者さんへホームページの制作を依頼され、開設されている現在のサイトに使われている画像に、Gettyのものがあり、ライセンス違反をしている、というのです。

クライアント曰く、当時も写真購入に、その日系業者を通じてかなりの費用を支払っていたらしいので、なおさら困惑しているとのことでした。私はまず「クレームされた画像を即時に削除した上で、当時の業者さんとの契約書で、こういった著作権違反などでの条項を確認してください」と伝えた後、すぐにスタッフにもGettyについて少し詳しく調べてもらいました。

そこですぐに判明した衝撃の事実として、
① Gettyはあくまでもエンドユーザーとのライセンス契約になっている
② 似たクレームがネット上で探しても山のようにある
③ 通常、示談に持ち込むしか手がなく、支払いを免れるのは極めて困難
ということでした。

元々Getty自体、大人数の弁護士を抱えたデジタルライツ(電子著作権)マネージメントが本業なのです。残念ながら、画像を削除したからといって、簡単に逃げられる相手ではないようです。

「エンドユーザーとのライセンス契約」というのも巧妙で、使用期限超過後でも確実にコンタクトしやすいのは勿論、制作会社よりはエンドユーザーであり、しかも今回のように何も知らないクライアントさんがエンドユーザーになっているケースが多々あるだろう、という恐ろしい話です。

結局このクライアントさんは、交渉して2枚の画像に1,000ドルを支払うはめになったそうですが、元の業者ともこの件を話ししたところ、同じデザイナーで、3,000ドルくらい支払った別件もあったらしく“お互い様”的なことを言われたそうです(?!)。

私は片側だけの主張しか聞いていないので、公平に判断する立場ではありませんが、少なくとも、Gettyのライセンスもきちんと理解しないデザイナーを使っていたのは、プロとして論外です。ましてやそのリスクや賠償をクライアントに負わせていること自体、制作者サイドとして許容し難いです。本稿は同業者さんも結構見ているらしいので、もし異論でもあればメールしてください。なければ、プロの真似事は止めてください。

なお、似たクレームに遭遇された方は、通達があってから即時に画像を削除しないと、悪意があると見なされ、さらに悪い立場になるのでご注意を。

人気の投稿