心に訴えかけるSMM の力: Social Media Marketing & CSR

(U.S. FrontLine誌 2015年8月20日号 掲載分)

アメリカにおいて、ソーシャルメディアマーケティング (SMM)と言えば、やはりFacebookを使ったマーケティン グが代表的ですが、企業は実際にSMMをどれくらい有効 活用できているでしょうか? 今回は、在米日系企業の某 オフィス用品・文房具メーカーであるクライアントの公式 Facebookページにおいて、当社が実際に図ったSMMの事 例をご紹介したいと思います。

クライアントは、Breast Cancer Research Foundation (BCRF)という非営利の乳がん研究団体の支援に、乳がんの 象徴であるピンクリボンマークを付けたピンク色の商材の 売上の一部をBCRFへ寄付することを決め、これについて何 かできないか? と当社へ相談を頂いたのが始まりでした。

10月は乳がんの啓発月間として知られており、その時期 には、さまざまな団体・企業が乳がんに関するキャンペー ンを行うのですが、逆に他が多過ぎて埋もれてしまうので、 あえて年中を通して乳がんを意識すべきという主張ととも に、実施時期を7月に設定しました。

母親が自身の体型を気にして、家族写真に写りたがらな いケースが増えているという記事があり、後になって後悔 しているとか。また毎年かなりの数の人が乳がんで亡くな っています(アメリカで、今年は40,290人が亡くなる見込 み)。こうした現状を踏まえ、BCRFのキャンペーンで、母 親を対象にこんなコンセプトを考えてみました。

心に刺さるキャンペーン

自意識過剰から写 真に写らない、また (乳がん検診などを受 けず)健康管理を疎か にする、いずれもこ の先の家族写真から 自分を消してしまう 行為であり、母親を 半透明にした画像で、 この2つのメタファ ーを分かり易く連想させようと考えました。

また「staying in the picture」(写真 or 人生に残る)とい う表現で、最近撮った自分が写っている家族写真を投稿す ることを呼びかけ、同時に乳がんを意識することも訴えま した。そして写真を投稿してくれた人の中から、クライア ントの商材のセットを進呈する当選者をランダムに選ぶと も告知したのです。

このキャンペーンをFacebookで実施してから、1週間 で12.8万人以上へリーチし、2500以上のLike、360以上 のシェア、770以上のコメント(写真投稿コンテストの参 加者)になりました。

何らかのコンテストを実施された経験のある方ならお分 かり頂けると思いますが、余程高額な賞品と宣伝費を投じ なければ、ここまで盛況にするのは難しく、掛けた広告費 は僅か250ドルで、シェア、Likeもしくはコメントなどア クションを5883人が行ったため、1人当たり4セントで アクションを獲得した計算です。

そして何より嬉しかったのが、参加者の投稿内容が、見 ているだけでも心温まるものばかりで、「思い出せてくれて ありがとう」と主旨を理解し、共感してくれた人が本当に沢 山おり、中には「母親を乳がんで亡くしたが、一緒の写真が 3枚しかなく、子供を同じ目に遭わせない」など、感謝さ れながらクライアントのCSR(企業の社会的責任)として強 いブランディングにも繋がるという、理想的かつ、これぞ SMMのなせる技という結果でした。

[もっと詳しくブランディングについて知りたい方はこちらも参照ください: ソーシャルメディアマーケティングとは?]

成功要因

この結果を得られたのは、コンセプトが人に刺さったのは 勿論ですが、SMMを理解するネイティブのエキスパートが、 全員へタイムリーかつ丁寧にレスをしていたことも大きく、 たとえネット上であっても、テンプレート的な対応ではな く、リアルに心から接していくことがいかに重要であるかを 示す好例と言えます。また既に2万人以上のファンがおり、 普段から反応のある投稿を心掛けていたことも重要です。

ファンが少なければ、必然的に広告費を使わないと人に は見られませんし、数人のLikeしかされないような、エン ゲージメント率の低い投稿を続けていると、Facebookから 価値がないとみなされ、たとえファン数があっても投稿を ほとんどの人へ見せてくれなくなります。

たまたま最近、乳がんの手術を受けた大学の先輩もおり、 私的にも関心が高いトピックで、感慨深い思いをさせて頂 き、クライアントや共感してくれた参加者にとても感謝し ています。こういう仕事なら、幾らでもやりたいですね。

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