TPPについて思うこと ④

(U.S. FrontLine誌 2015年12月20日号 掲載分、一部加筆あり)

日本にとってアメリカとの取引が大半となるTPPは、取り返しが付かないリスクだらけであるにも関わらず、日本政府が推進しようとする理由を理解するために、メリットとして挙げられていることを、前回ほんの少しだけ掘ってみました。

するとGDPが10年間で3.2兆円(年平均200億円程度)増える代償に、農林水産物生産額は、安価な輸入品に市場を奪われるため、3兆円減になるとか、米市場の大半の関税率は既にかなり低いにも関わらず、「輸出企業が関税撤廃により価格競争力が増し、海外進出しやすくなる」など、子供騙しとさえ感じました。

そもそも日本企業の米市場への参入障壁は、関税よりも文化や価値観、言語の違いへの理解・順応力であり、製品企画力やマーケティング力から、韓国など競合に比べ、致命的に劣っているのが問題な上、日本はずっと内需で回ってきた国なので、元々輸出の割合も低く、必要性を考えるとメイクセンスしません。

バッカーを見れば、誰の為かがわかる

選挙の際に、政策の主張をテレビCMなどで流していることがありますが、あれだけで裏の意図まで理解するのは不可能です。CMなので必ず主張者に都合の良い伝え方になっており、実態には程遠いからです。しかし大枠を手っ取り早く理解するには、主張のバッカー(支援者)を見ると簡単で、出資企業や団体を見れば、誰にとって利益があるのかは明白になります。

メディアもまた、ある種のバッカー(広告主や視聴者層)の好む脚色した内容を、ただ垂れ流しているに過ぎず、結果、必ず左右に偏っています。中立風を装っているか、時勢に合わせて、人々が聞きたがっていることに寄せる、風見鶏タイプかのどちらかがほとんどで、予め根底の偏りを きちんと認識した上で、情報を吸収する術を身に付けないと、プロパガンダの餌食になるだけです。

比較的安全に情報を得たければ、数少ない中立ソースを見るのが簡単で、ウィキペディア(Wiki)やアメリカであればfactcheck.orgの様に、両側からの書き込みが許されるものだと、極端な主張が中和され、結果として中立性の高いソースとなります(Wikiは変更履歴が確認できるので、稀にトピックによっては、両側の攻防まで確認できて面白いです)。

TPPのバッカーは誰なのか?

政治は最低でも、10年以上のスパンで見ないと実像は見えてこないと、昔パートナーに教わったことがあるのですが、正にその通りで、wikiを見ていくだけでも、大枠でTPPのバッカーはアメリカだと誰でもわかります。20年くらい前から年次改革要望書、日米経済調和対話などと名称だけ変えながら、日本へ様々な分野での規制緩和など公然と要求を突きつけていた経緯があり、今はそれがTPPという名称になったに過ぎません。

因みに以前の日本の郵政民営化のバッカーは、実はアメリカの保険業界だという暴露本もありましたが、wikiを見れば「簡保を郵便事業から切り離して完全民営化し、全株を市場に売却せよ」と米国保険業界より要求され、協議も重ねられていたとあるように、今回も背後に米国の各産業界がいることくらいの察しはつきます。

Common CauseというNPOのレポートによると、米国の各産業界から、何と昨年だけでも法的に公開義務のあるものだけで、6億5800万ドル(800億円以上)のロビー活動及び賛成議員を当選させるためのキャンペーン費用が投じられていたとか。

出資企業は各種企業系農業団体をはじめ、大口で分かりやすい所では、遺伝子組み換えの種を製造・販売する、悪評高いモンサント(バイオ化学)を始め、エクソンやシェブロン(石油)、ファイザー(製薬会社)、大型チェーンリテールのウォールマートやターゲット(小売)、シティグループ、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス(金融)などが名を連ねていますが、彼らは一体何のために、大金を投じていると思いますか?

政府がメリットすらまともに説明できないTPPを推進する理由は、米国産業界からの要求だと考えれば、全て辻褄は合います。

アメリカで失敗が既に証明されていたレーガノミクスのパクリ(アベノミクス)を今更導入したことも、メディアがそれに好意的であったのも、集団的自衛権、特定秘密保護法が制定されたのもしかりで、メディアコントロールで表面化され難いだけで、戦後からの日米関係をwikiなどで辿れば、今も米国の支配下にあるのは明白で、従米政権ほど長寿で逆は短命であったのも、偶然ではなく必然だとわかります。小泉政権で一気に加速した植民地化は、安倍政権で完成となるでしょう。

日本はいまだ植民地であるという真実をひた隠しにし、対等であるかのような振る舞いや、国益のためと称して国民を翻弄し、搾取構造を幇助されるのは受け入れ難いです。TPPの実態は安全保障ともセットの日米関係問題であり、果たして選択肢が与えられているのかも怪しいとはいえ、少なくとも国民に真実が浸透し、簡単に操作されなくなるだけでも抵抗力は段違いです。事実TPPにせよ、唯一まだやめさせることができるのは国民なのですから。

政府のプロパガンダ戦略としては、”もう決まってしまった。”、と強引にでも国民の関心をそぎ、諦めさせるという手法をとっているようにもみえますが、騙されないで欲しいのです。戦後から現在まで、アメリカからの要求に対して日本がとってきた行動を見る限り、まともに抵抗できる立場すらも政府は持ち合わせていないと考える方が現実的ですが、国民が異常な従米政権へダメ出しをすることで、間接的ながら、ようやくアメリカに対する抵抗力を持ち得るのです。

本稿の連載を気がつけば7年間、パートナーの連載時代からは10年、読者の皆様には駄文にお付き合い頂き感謝致します。多忙の為、とりあえず半年間の休載を頂きます。

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