プロパガンダを見破る方法 (中級編: ディープステート(DS)は実在する?)

“DS (ディープステート)と呼ばれる闇の政府が、世界の中枢を裏で牛耳っている”というアメリカ発の陰謀説を、日本語でも簡単にそこら中で見かける様になりました。テレビにも出演している“有識者/専門家”の中にも、このDSについて実しやかに語っている方も出ているみたいですね。

それは実話である。表世界の話ならば。

先に結論からお話ししますが、これが一部の資本主義覇者による支配の話しをしているのなら、陰謀どころか表の世界で堂々と実在する話です。言い方はグローバル多国籍企業の既得権益者(エスタブリッシュメント)、財閥やビリオネアなどになると思いますが。

そして陰謀論風ですが、これもむしろプロパガンダ・ネタと言った方が正しいです。見破り方的に中級としたのは、やはり前提知識が自分は豊富にあったからですが、実在しないものを実在しないと証明するのも、かなり難しい事ではあります。

予備の前提知識

このDSはアメリカの政治(とりわけ共和党)の歴史を理解していれば、実像が簡単に見えて来ます。メディアの存在理由も併せて理解していると尚更です。

共和党の政治戦略は、いつも必ず国民の“敵”を用意します。welfare queen (怠け者の黒人達の不正福祉受給)だったり、社会主義支持者(民主主義の敵)だったり、ゲイ(不道徳で汚らわしく危険)、イラク(大量破壊兵器があって危険)、アルカイダやISIS(テロ組織の巣窟で危険)、不法移民(仕事を奪い、彼らに使う予算のせいで自分達の生活が困窮)だったり。

「これら”敵“と戦うのが共和党である」というストーリーに仕上げるわけですが、括弧書きの内容はすべて偽情報/過度な誇張でしかなく、アメリカ国民にとっての本当の敵を見えなくする目眩しが目的といえます。なぜなら本当の敵は上述の通り、実在する財閥やビリオネア達なのですから。(トップ1%による富の支配が以前騒がれましたが、本当はトップ0.01%かな。)

この支配層は政治献金やロビーの見返りに、ビジネスに都合の良い法案を通させたり、納税額をできるだけ少なくさせ、搾取構造を促進させているわけですが、バッカーという意味では民主党ともある程度共通していたりもするので、概念的には超党派で政府を裏からコントロールする存在ともいえ、DSの概念ともしっかりマッチしています。

何故DSなのか?

では何故あえてDSなどと言う闇組織に仕立てたのか?それはトランプ自身が敵と戦っているという構図を仕立てる上で、そうする必要があったからです。そもそもトランプは(グローバル多国籍企業でなくとも狭義では)エスタブリッシュメントのど真ん中に居る人間なので、本当の実在する国民の敵側である事実を悟られない為の秘策といった所です。

大企業やビリオネアへの様々な優遇措置、色んなフィールドでの規制緩和、減税による財源不足を成立させる様々な予算カット、全てトランプが真っ先に実現した事です。これらは搾取構造や格差を増長する政策でしかなく、まず殆どの国民の為とは決して言えない、エスタブリッシュメントにとって正にやりたかった事と言えます。

つまりDSをグローバルに影響力を波及させる支配層と位置づけるなら、国民の敵という目線の矛先を、自身の様なエスタブリッシュメントからDSへ向けたということです。

もう1つのDSというネタを作った目的は、自分の政敵だけをそこに組み込む事です。繰り返しますが、表の世界のエスタブリッシュメントでは、確かにヒラリーもバイデンもそれに属していますが、トランプも完全にそっち側の人間です。

DSという架空の組織は、世界規模の児童売春組織を運営している悪魔崇拝の小児性愛、人肉嗜食の秘密結社という設定らしいですが、なぜか都合よくヒラリーもバイデンもその仲間であり、トランプはそれと戦っている英雄であるというストーリーになっている時点で、冷静に考えれば誰がDSなるネタを作り出したのか、気付ける筈なのですが。。

トランプはオバマよりも国内の児童売春組織の摘発で多く成果を挙げた、という話を聞いた事があり精査はしていませんが、そんな程度の事でこのトンデモ陰謀説の根拠にできるのなら安上がりでしょう。

アメリカでは特に小児性愛系は嫌われますので、証拠も根拠もなくともそういうネタを繰り返す事で、一定量信じ込む人が必ず出て来るわけですが、それとメディアの存在理由の話にも繋がって行きます。

メディアの目的

長くなるので詳細は別投稿しますが、メディアの存在目的は、金儲け、プロパガンダ、その両方の大きく3つしかありません。それらは運営母体やスポンサーを確認するだけである程度当たりは付きます。

例外的に情報伝達目的のメディア、例えばwikiやfactcheck.orgなども存在しますが極めて稀であり、寄付で成り立ち非営利で、イデオロギー的に両側からの書き込みが可能など、特殊条件パターンがあるメディアです。

因みに「プロパガンダを見破る方法(上級編:プーチンは悪くない?)」で登場する、ウクライナを牛耳っているオリガルヒ(新興財閥)も、正に概念としてDSの様なものです。但しポイントは、あくまでも普通に実在する表世界の組織である点です。そう考えるとお金周りの現実的政策は、見事に実像が見えると思います。

「プロパガンダを見破る方法(上級編:プーチンは悪くない?)」

客観的かつ現実的な視点を持つ事

これがプロパガンダだと見破る鍵は、やはり矛盾点を見逃さない事です。存在するかしないかが不明なものなら、とりあえず存在すると仮定した場合に、DSが何を実現したいのか?目的から考えてみる事で、架空のバーチャル世界から現実世界のイメージで具現化できます。

ただ今回のケースで難しいのは「DSは国境無き世界で、金融資本による統制をグローバル化の美名で進める」という基本部分だけをリテラルに捉えてしまうと、それに対するトランプの矛盾には、まだ部分的にしか気づけないことです。もっと大きく引いた視点で、DSが「国民の敵」ならば、それに部分的にでも抗うトランプは「国民の味方なのか?」という分析がより有効に働くと思います。

一方で“小児性愛の悪魔崇拝の秘密結社の〜”は、逆にそれで世界を支配して云々という世界観が、あまりに幼稚な漫画チックで違和感だらけです。ものすごい権力者達が世界を巻き込んでやりたい事がそれか??という素朴な疑問が湧くと思います。

それでも犯罪なのでもし証拠があれば逮捕されるわけですが、勿論そんな証拠/逮捕の事実はカケラも無いのに、何故か都合よく政敵達が皆そうなんだと吹聴し続ける根拠/証拠を伴わないフェイクニュースの数が、逆に答えを表しているとも言えます。

元々存在しないものを存在しないと証明する場合、この様にどうしても客観的証拠から漠然とした話になりがちなので、誰が?(どの種のメディアが?)言っているかの見極めが重要になり、メディアの本質への理解もやはり必要になるという事です。

アップデート: この話の核は?

Facebookであからさまにロシアのプロパガンダを拡散している方に、違を唱えるコメントをすると、必ず第一声で「DSを理解していない貴方達と話してもね〜」的な上から目線の態度で来られるパターンを何度か経験しました。なので、この投稿を作った様なものですが、この投稿を見せても全く話の核とズレた解釈で返答されるという経験をしました。

例えば「共和党と民主党が戦っているというのは、表面的な見方で〜」とか、「DSの存在は単なるプロパガンダではなくて〜」とか。自分の文章力の問題なのか、相手の理解力の問題なのかは不明ですが、勿論そんな話をしているつもりもなく、ポイントレスなやり取りに終始されたので、ここで一応、再度明確にしておきます。

この話の核は、DSの概念的なもの=世界の政治/経済を牛耳る資本主義覇者は、普通に実存していますが、呼称は所謂グローバル多国籍企業のエスタブリッシュメント、財閥、ビリオネアなどで、誰でも知っているものです。

そして国民の敵をDSとあえて表現するなら、トランプも思っ切りDS側の人間であり、その基本的な事実を人々にそうではないと錯覚させる為に、わざわざ陰謀説めいたDSという呼称も使いながら、政敵達だけがDSに属しているというストーリーに仕立てた部分が、正にプロパガンダという事です。実存する/しないの話は、別にプロパガンダではありません。表の世界で普通に実存している事は、周知の事実ですから。

因みにその相手に、経済/政治の世界において、あなたの考えるDSが私の指摘するグローバル多国籍企業、エスタブリッシュメント、財閥、ビリオネアと一体何が違うのですか?と尋ねたところで、そのスレッドから突然Banされました。(笑)

なお後日別の方から「DSは国境無き世界で、金融資本による統制をグローバル化の美名で進める」という具体的定義をご教授頂いたので、それに併せてDSの定義で自分的に曖昧/不正確だった部分を全文において見直し、修正しました。(04/24/2022)

トランプのNAFTA、TPP、制裁関税への動きや、気象変動対応やNATOへの動きなどはざっくり反グローバル協調路線=DSに抗う行為という認識ですが、他方で無策の租税回避対策や各種規制緩和など共和党規定路線は、DSの利害と完全に一致していると言えます。なので「グローバルに影響力を波及させる悪のDS」に抗うトランプという構図は、確かに大きく矛盾した行動も含みつつ、全く描けない話しではないと思います。

ただそこから展開して、”反DS=国民の為の動きを取ってくれるヒーロー”だと盲目的に解釈をしてしまっている、DS信者の方が殆どに感じており、まずそれがとても危うい発想だと言えます。

なぜなら各国の独裁主義者は、通常はグローバル協調路線ではないので、間違えなく反DSの括りにはなりますが、国民の味方である保障は全くないからです。国民の利益という観点で見た場合、DSも(グローバル多国籍企業でなくとも狭義の)エスタブリッシュメントも同じように敵であり、直接生活に悪影響を簡単に体感させ得るとすれば、むしろエスタブリッシュメントがやる悪巧みの方が、多いでしょう。

プロパガンダを見破るには、やはり矛盾に気付けないと難しいという事です。

なぜ広告代理店の代表がこんな話題を?

うちはデジタルマーケティング屋であり、意外に感じられるかもしれませんが、ある意味でこれは専門分野の1つです。仕事柄メディアとは常に密接な関係にあり、当然メディアの実態を嫌でも理解する立場にあります。

そしてあえてキレイな言い方にしますが、「広告で人の心を動かす」のが我々の本業の1つです。そのノウハウを競い合う仕事とも言えます。なので商材がクリーンなもので秀逸な広告やマーケティング手法を見た際には、「おおっ、やるな!」と正直心が踊らされる自分が居ます。

ただ反対に商材がプロパガンダの政治ネタともなると、敏感に嫌でも気付けてしまう事が多く、嫌悪感で苛まれるという、実に難儀な職業なのです。

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