プロパガンダを見破る方法 (初級編: アメリカの不正選挙?)

最近やたらとプロパガンダネタを目にする様になりました。その1つに元註ウクライナ大使の馬渕睦夫という方の動画があり、この馬渕という方がアメリカ大統領選挙についても語っていたのを知り、読んでみましたが思わず絶句してしまいました。とりあえずプロパガンダをどう見破るかの良い例に使えそうだったので、ここでご紹介します。

プロパガンダを見極めるにはメディアへの理解も必須ですが、そのテーマだけでも十分長くなるので、中級編で多少触れるとしてここでは割愛しますが、世の中にはプロパガンダメディアが多数存在し、プロパガンダの手法もある程度パターンがあることだけ触れておきます。

プロパガンダの典型手法

事実も各所に織り交ぜながら信憑性を増しつつ、印象操作も行いながら最終的に視聴者を意図した思考/思想に引き込むというやり方が典型的です。

ここでポイントなのが「事実も各所に織り交ぜながら」という部分で、正確には「導きたい主張には、大して影響を与えない事実」や、「説明をあえて不十分にしてミスリードを誘う事実」です。これをよく覚えておいてください。

プロパガンダ見破り術

これは別にプロパガンダに限らない話で、フェイクニュースを見破る上でも必要かつ有効な手法ですが、純粋な「情報」と「情報以外」の部分に分けて整理することがとても重要です。

とはいえ「情報」か否かを判断するにも前提知識が全くなければ、かなり困難を極めるのは確かです。また勿論、慣れもあります。

最初は「ファクトチェックがある/ない」、「根拠があり、それを否定するのが逆に困難」などの指標から始めてみるのも良いでしょう。

不正選挙だったのか?

情報とそれ以外に分けて検証

具体例的にセンテンス毎に抜き出して、実際に検証してみましょう。元の記載はこちら


「本来なら選挙で大敗していたはずの少数派のバイデン陣営が、不正選挙という手段を使って、合法的で正当なトランプ政権を潰した」

これはかなり冒頭の文だったのですが情報と呼べるのは、「バイデン陣営とトランプ政権が選挙で争った」という話だけです。「大敗していたはずの少数派」というのが根拠もない主観表現で、情報ではない部分です。

補足:

あの選挙はバイデン好きでなくトランプ嫌いの票数で勝敗が付いており、その事実は元々のトランプ不支持率からみても分かる筈の事でした。なので上記の「情報ではない部分」が正に印象操作で、選挙の実態を理解する上でも全く不要な部分です。


「一夜にして、ウィスコンシン州とミシガン州バイデン票が、数十万単位で増えました」

事実だが、不完全な情報。

「常識的に考えてあり得ないですよ。」

主観表現のみで情報ではない部分。

補足:

選挙委員が集計を入力する際に誤って、0が余分に足されたケースの事を話されていると予想しますが、すぐに発見され修正された事実も伝えないと誤解を生じます。

また各地の徹夜で行われていた開票作業は、公平性確保の為にライブストリーミングで確認できレコーディングもされていた上、開票地域次第で大量の票数の動きも普通に起こり得る事で、開票翌日に前日と結果が反転するのもごく自然な事です。


「いわゆる激戦州の郵便投票が、なぜ「不正」なのかといえば、3日以降の投票まで認めているためです。しかも、消印や署名が無くても票として認定されています。」

「3日以降の投票まで認めている」は事実の情報ですが、それ自体が不正でもなく、「消印や署名が無くても票として認定」も言葉足らずで、ミスリードを誘う表現。

補足:

州や地域よっていつまでに到着した票をカウントするかなどルールは違いますが、各議会が3日以降でも到着した票もカウントすることを決定していれば、不正でもなんでもなく公認のルールです。

少なくとも10の州(カリフォルニア、イリノイ、メリーランド、ミネソタ、ネバダ、ニュージャージー、ニューヨーク、ペンシルベニア、ワシントン、ウェストバージニア)は、選挙日後に到着する消印が無いか判読できない投票用紙も受け入れます。

ただ殆どの州では追跡情報のために投票用紙にバーコードを使用しており、システムから投票用紙がいつ郵便局に返送されたかを判断できます。また選挙管理人が郵便局と調整して、消印が欠落している特定の郵便物がいつ受け取られたかを判断することもできます。

そもそも郵便物の消印は単に切手の再利用を防ぐために設計されており、人的ミスも含めて絶対的に必要とされておらず、仮にこの投票者のコントロール外である消印の有無だけで無効票になると、それも問題なので上記の様な追跡システムが構築が必要といえます。

特にこの時の選挙では各地で郵送の遅れも顕著であったため、そういう措置が必要となっていました。(トランプが意図的に郵便局の処理能力を落とさせる為に、様々な策略も行っていた。後述参照)

署名が無いか判別エラーの票の扱いについては、後述参照。


「郵便投票にトランプの名前がまったくなくて、投票用紙の一束すべてがバイデンの名前なんてことがあり得るでしょうか。」

誤情報。

補足:

もしこれが本当に起これば確かに疑うべき事象ですが、これも集計数をシステムへ誤入力した、ミシガンでの人的エラーケースのことを指摘されていると推測しますが、すぐに把握され修正されています。

因みにこういった人的誤入力はこれまでの選挙でも必ず起きているもので、今回だけ特別だったという話でもない上、勿論チェック機構もあるため問題にはなりません。


「死亡者や引っ越しで住民不在の家庭にまで、投票用紙が届いていたと聞いています。」

事実だが本質的には関係のない情報。

補足:

過去の選挙でも普通に起きていた事ですし、選挙人登録と実投票時でのタイムラグがある以上、それは確実に起き得ることですが、そのことは全く問題になり得ないのは後述参照。


「本人確認の方法も曖昧でした。」

ミスリードを誘う表現。

補足:

確認方法も州により決定されますが、通常まず署名と登録住所を基準に票の有効性を確認され、合致しなければ「問題あり」として保留扱いになり、人的なより深い確認&検証後に問題と判断されれば無効となります。

そもそも基本的にアメリカの投票システムにおいて、二重投票や偽証投票をするのはほぼ不可能な仕組みになっています。

因みにそういった不正は重罪になりますが、実際にトランプ支持者が何人もそれを試みて捕まっています。

しかも不正で選挙結果を変えたとこの方は根拠もなく主張されていますが、もしそうなら何万票単位で行っている必要があり、この方はアメリカの選挙システムを、全く理解もせず発言していると断言できます。


「郵便投票は不正のリスクがあると、ずっと言われていました」

印象操作的表現。

「民主党側からすると、郵便投票をしなければ選挙に勝てない」

ミスリードを誘う表現。

「だからこそ、民主党寄りの大手メディアが一丸となって、郵便投票を推し進めたのです。」

「だからこそ」は主観表現のみで、情報ではなく印象操作。

補足:

トランプが根拠も示さず一方的に郵便投票は不正が起きると吹聴していただけで、以前から郵便投票を採用していた州もあり、何ら問題にもなっていませんでした。

2020年7月の時点で、コロラド、ハワイ、オレゴン、ユタ、ワシントンの5つの州がほぼ完全に郵送で選挙を行っており、真っ赤な共和党地盤の州も含まれています。

投票率が高ければ民主党が勝ち、低ければ共和党が勝つ、というのがアメリカの選挙事情における常識です。なので投票率を上げる郵便選挙を民主党は後押ししますし、逆に共和党はあの手この手で投票率を下げる策略を常に行っており、“郵便選挙で不正を行えるから“民主党が推し進めたというのは、悪意のある印象操作です。


まとめ:

このように純粋な情報とそれ以外とを分けていくことで、馬渕睦夫という方は、全く根拠にもならない話や誤情報、関係のない情報を交えて、“アメリカの大統領選挙は不正があった”という印象操作を行っていたことが分かります。

参考情報:

ここに触れられていないことで、アメリカの大統領選挙で不正などなかったことをより決定付けられる事実についても、いくつかご紹介しておきます。

いくつかの接戦州の都市で、トランプ共和党は不正があったとクレームを入れたり、ルール上から手作業による票の再集計も行われています。それはドミニオン社の自動集計機が不正をしたというクレームに対する検証も兼ねていて、複数箇所で行われましたが結果は全て元の集計に限りなく近く、むしろ若干バイデン票が増えたくらいでした。

また選挙後トランプ陣営は“多数の不正の証拠がある”を連呼してきましたが、起こした訴訟で実際に不正の根拠として提出されたものは、どれも審議にすら値しない一蹴されるものばかりで、50以上もの訴訟が棄却されまくったわけですが、保守派の圧倒的多数で迎えた最高裁であってもそれは同様でした。

Fox Newsなど典型的プロパガンダメディアやフェイクニュースメディアが、“自動集計機の不正の証拠もある”と繰り返し主張していましたが、ドミニオン社がそれについて訴訟を表明した途端に、それらメディアが皆誤情報であったと認め謝罪しました。

トランプは彼の熱烈な支持者をUSPSのトップに任命し、幹部をばっさり解雇した後、口実は一応コスト削減で全国の自動仕分け機や郵便箱をいきなり撤去させました。選挙がらみでただでさえ郵送物量が増え、遅延が慢性化していたのに、郵送物の処理能力をむしろ下げさせる狙いで行ったのは自明です。

元註ウクライナ大使の馬渕睦夫という方について

どうやら記事は著書からの抜粋らしいので、本編にはもう少しまともな根拠なり情報があるのでしょうか?申し訳ないのですが、とても読む気にはならないので、そこは不明です。

あくまでも彼の記事を読み返した印象ですが、ご本人がアメリカの選挙に関してまともな知識をお持ちでなく、ファクトチェックも一切せず、殆どトランプ発言やプロパガンダメディアの単なる請け売りという感じでした。それに加えて想像オンリーで薄っぺらい話を作り上げたという印象です。

人がどんな思想を持ち何を信じようと自由ですが、何にせよここまでお粗末な内容を根拠に、選挙という民主主義の根幹の信頼性を傷付ける様な発言を行っている方ならば、心底軽蔑致します。

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