SNSの闇

(U.S. FrontLine誌 2015年02月05日号 掲載分、一部加筆・編集あり)

読者の方で、近年人気のインスタグラムという画像共有アプリをご存知の方も多いかと思います。スマートフォンで撮影した画像に、色んなおしゃれなフィルタ効果を簡単に付けることができ、それをFacebookやツイッター、Tumblr、FlickrといったSNS上で共有できるものです。またインスタグラムのサイト自身も、ツイッターに近い仕様になっており、アカウントを作成し、テキストをツイートするかのように、画像や動画を投稿できます。そして人気のアカウントは多くのフォロワー(ファン)を抱えることになり、そこで投稿された画像が、より多くの人達にフィード(配信)されることになります。

さて、近年こういったSNSで話題というか問題となっているのが、スパムアカウントの存在です。スパムアカウントは、大きくは3つの目的で作成されているように見えます。

■ スパムコメント発信用アカウント

フォロワーの多い有名人などのアカウントへ、相手の投稿とまるで関係のない宣伝目的のコメントを発信するものです。中には、まるでアカウントの持ち主本人がコメントしているかのように見せるなど、巧妙なものもあります。

利用者は当然、スパムコメントを見せられることを嫌っており、当社が管理しているアカウントでも、こういったスパムの書き込みは入ってくるので、随時削除しています。インスタグラムは2012年にFacebookに買収されて以降も、毎年約1億人のユーザーを増やしてきているのですが、このスパムアカウント撲滅に注力しており、正に先月、大掃除が行われ、その結果、著名ないくつものアカウントから、大量に偽フォロワーが削除されて、話題になりました。

具体的には、例えばナイキが25.7万人、エレン(・ディジェネレス)・ショーが27万人、フォーエバー21が24.5万人、ビクトリアシークレットが21.5万人の偽フォロワーを失ったようです。

■ スパム配信用の人気アカウント

既に出回って人気のあった画像や動画などを拾い集めて、再投稿するなどして、フォロワーを量産していくタイプのもので、ある程度時間を置いてから、元々人が興味を示したコンテンツ力のある画像の再投稿なので、それらを見ていなかった人から支持を得る確率も高く、結果、たくさんのフォロワーを獲得した人気アカウントに仕立てやすいわけです。

そうしてできた人気アカウントは、広告宣伝配信用のシーディング(種まき)の場として活用できるので、広告代理店などへ売ることができ、そういった目的で作成されていると予想できます。

■ リアルに似せた架空アカウント

既に出回っているリアルのユーザーの投稿やコメントをコピーして、勝手に投稿するものです。ポイントは、そうすることで、アクティビティを演出して、実存するユーザーであるかのように装い、媒体側のスパム判別アルゴリズムに引っ掛かり難くしています。

以前、Facebookの偽ユーザーによるLikeを販売するビジネスについて、本稿で触れましたが、その類のビジネスで、偽フォロワーを販売するための架空アカウントだと予想できます。

これらの実態は?

もしかしたら、こういったスパムアカウントが、人間の手で1つ1つ作られているような世界を想像されるかもしれませんが、実際には検索エンジンのロボットと同様、プログラミングにより、投稿されている画像や動画、コメントを収集し、独自のアルゴリズムによって、組み合わせるなどして、自動投稿されているようです。

そして実際、これらのスパム行為が1つの産業として成り立っているという現実があります。ただこれをあえてモラル云々を抜きにして、一広告主として考えた場合でも、これらの何らかのスパムアカウントを利用した販促活動を行ったところで、ユーザー受けが悪いだけでなく、すぐにブロックされるような存在になるので、実に一時的な手法にしかならないといえます。おそらくこのようなスパム行為でも成立するのは、アダルト業界、ダイエット系サプリなど、元々グレーなビジネスぐらいでしょう。

マーケティングの世界に、そんな都合の良い抜け道などないので、地道に良質なコンテンツの生産に努めることを強くお勧めします。管理委託業者を使っていれば、彼らが表面上の成果を誤魔化すのにこういった手法を用いていないか注意して見ておくべきで、前回触れたオンライン広告の闇と同様に、自分の身は自分で守る努力を怠らないことが重要です。

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