広告主必見! オンライン広告の闇

(U.S. FrontLine誌 2015年01月20日号 掲載分、一部加筆・編集あり)

ウェブマーケティングにおいて、オンライン広告は、いわば定石中の定石のマーケティング手法です。様々なオンライン媒体上で、広告主が媒体へ間接もしくは直接にお金を支払い、広告を表示させるもので、広告費の課金方法としては、主にクリック課金型(PPC)と、インプレッション型(CPM)と、媒体定額型の3種類が存在します。

PPC広告は、ユーザーにクリックされる度に広告費が発生するもので、確実に広告が見られて集客したトラフィックに、広告費が比例するのが、1つの大きな特徴と言えました。

一方CPM型広告とは、広告が1000回インプレッション(表示)される毎に広告費が発生するもので、媒体定額型と同様に、定額の広告費になるのが通常です。

ただし、広告費が発生したからといって、必ずしもユーザーに広告を見られたのか(トラフィックを得ているのか)は、全く保障がないため、後者2つは、どちらかと言えば、従来の雑誌広告に近い存在と言えるでしょう。

さて、実はつい先日、全てのオンライン広告に関係する、実にショッキングな記事が出ました。

広告主は
年間63~100億ドルの詐欺に!

全米広告主協会(ANA)とセキュリティ企業のホワイトオプスの研究発表によると、8月1日から10月1日の期間で、米国内のANAの主要なメンバー大手企業である、フォード、ホンダ、マスターカード、ホームデポ、ベライゾン、ウォールマート、ウェンディーズ、ジェネラルミルズ、リリー、ミラークアーズをはじめとする36社に対して行った、デジタル広告のトラフィック調査で、ある驚愕の事実が判明したと言うのです。

それは広告主たちが、生身の人間ではない、偽トラフィックに対して、実に年間63~100億ドルもの広告費を支払っていたという事実でした。なぜなら、偽トラフィックは、ボット(検索エンジンでお馴染みのロボットの略)、つまり コンピュータプログラムにより発生させられたものだったからです。広告主が支払っているトラフィックの5%~50%が、このボットによるものだそうです。

従来の知識では、偽のインプレッションは、主に偽のウェブサイト上で発生させられているものとされていましたが、研究によると、約300万近いサイトのうち、偽サイトが何千かはあるものの、残りは正当なもので、ボットによる偽 トラフィックの1/4は、アレクサ(著名なウェブサイトトラフィック統計サイト)のトップ1000以内のサイトでも確認されたと言うのです。ちなみにアレクサのトップ1000以内といえば、超有名かつ大量トラフィックを誇るサイトです。

巧妙にできたボットのトラフィック

ホワイトオプスは、デジタル広告における、55億ものインプレッションについて研究し、独自の技術により、人間とボットのトラフィックの区別を行い、動画広告を含む、全てのオンライン広告において、数百万のボットが存在することを発見したそうです。

そして巧妙なのが、ボットトラフィックの2/3は、ホームユーザーの感染されたPC上から発生しており、主要なボットはアメリカ国内のIPであったことです。ボットを操作することで、あたかもリアルに似せたトラフィックを発生させていたのです。

広告を代理販売する、業者や仲買人たちは、この偽トラフィックのおかげで、あらゆるオーディエンスセグメントにマッチする、多様化したプロファイルを得て、広告枠を常にさばく事ができ、オンライン媒体側も、“莫大な集客力” を、高額な広告料の裏づけとして、広告収益を増大させていたことになります。

この記事では、誰が何の目的でPCをスパイウェア、マルウェアなどで感染させ、このような偽トラフィックを生成していたのかについては、具体的に触れてはいませんが、まぁ、推して知るべし、ですよね。

広告主が考えるべきことは?

媒体側のトラフィックは、広告主側からは把握できないので、特にインプレッションをベースにしたオンライン広告で、このような詐欺が簡単に行えることは、容易に想像できますが、PPC広告のトラフィックであっても、疑う必要があるということです。

とはいえ、オンライン広告以外の選択肢もあまりないのが現状ですので、できることは、自社サイトのトラフィック分析をきちんと行い、広告成果をまじめに測定していくことです。仮に偽トラフィックが混入していれば、確実に費用対効果は悪くなるわけですから、広告媒体の見極めも早く行えます。要は媒体を過信せず、まる投げもせず、自分のお金は自分で守る努力をするか、真のパートナーとして、管理委託できる業者を見つけることが重要でしょう。

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