因果応報とはこのこと

(U.S. FrontLine誌 2014年08月05日号 掲載分、一部加筆あり)

今年の6月に、国際的大手広告代理店のOgilvy & Matherが、クリエイティブワークのプロセスについて、インフォグラフィック(概念的情報を分かりやすく表現するため、情報、データ、知識を視覚的に表現したもの)的な図を、Twitterでツイートして、ちょっとした騒動になりました。

実はそれとよく似た画像を、2年くらい前に、パートナーのレイアが見ていました。Toothpaste For Dinnerという、人気の漫画家が投稿していたもので、同じクリエイティブワークに従事する人間から見て、「確かにそうだよね」と、すごく納得させられるものだったので、よく覚えていたそうです。

広告代理店の画像は、それを明らかに盗作したもので、それを知った漫画家が、自身のFacebook上で指摘したことで、(彼のFacebookファンは4万人以上いるので)一気に拡散され、当社もその盗作事件を知りました。

大手広告代理店の創造力

オリジナルと見比べると分かるのですが、広告代理店の画像には、最後に、「賞を獲る」というプロセスが付け足されていますが、それ以外は、ほとんどそのままのパクリでありながら、いかにも自分で考えた風に仕上げています。

事件が発覚してから、今度はOgilvy社のFacebook上で、彼らの盗作行為について、色んな人から批判のコメントが相次ぎ、軽く炎上していました。

例えばルーズベルト大統領の、「もしも生まれ変わったなら、色んな業界の中、広告業界により行けそう」的な発言を紹介し、「あなたは人生をやり直すなら、何になりたいですか?」と続けた投稿に対し、「少なくとも彼は正直で、誰かから、ものを盗んではいないでしょう」と言うコメントが載るといった具合です。

また連邦最高裁判所判事のオリバー・ウェンデル・ホームズ氏の、「新しい経験で膨らんだ心は、決して元の大きさに戻ることはない」という名言に、この広告代理店のチーフ・クリエイティブ・オフィサーが、感銘を受けたと投稿をしたのに対し、「(プロセスチャートに、)盗作するというプロセスが抜けてるよ」とか、「へぼい。退屈でありきたり。でも何より盗作はいかんね」など、痛烈なコメントが投稿されていました。普段からほとんどの投稿内容を、著名人の名言とか、借用コンテンツをただ引用している広告代理店より、よほどクリエイティブだなと思いました(笑)。

ブランドマネージメント力も?

大手のクライアントに、ブランドマネージメント(ブランドがネット上などで、評判が良い状態に維持する)サービスを提供している会社が、自社のこの状況にどう対処するのか、私は、少し興味を持って注目していたのですが、結局彼らは、盗作を指摘した全コメントを非表示にしただけでした。

常に大きな広告賞を獲り、ブランドマネージメントの”専門家”とまで、サイト上でも謳っている広告代理店の対処方法にしては、クリエイティビティがなく、お粗末でしょう。不都合にはただ蓋をするというやり方は、時代錯誤であり、ソーシャルメディアを甘く見ているように思います。少なくともB to Cが相手のクライアント企業なら、まず使えないやり方です。通常、ネットユーザーは、そんな簡単には忘れてはくれません。

本来のブランドマネージメントには、クリエイティビティは不可欠です。地味な仕事ながら、ネットユーザーたちを何らかの形で納得させ、誘導、収束させる必要があり、相互コミュニケーションを生むソーシャルメディア上で起きているからこそ、厄介で難易度があるわけです。

勿論対処方法はケースバイケースで、100通りの正解があっていいものですが、各社それぞれ独自のクリエイティビティやキャラを生かして、ネットユーザーたちとの対話の中で、心の繋がりを作り、それがブランドイメージを作り上げるものだと、(少なくとも当社は)考えています。

最初の盗作のツイッターへの投稿にしても、まあバレないだろうという傲慢さを感じます。最終的に盗作について、本人への公式の謝罪もなかったそうで、こういうのは同じクリエイティブな仕事に携わるものとして、本当に恥ずかしいと思います。

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