パレスチナ過激派ハマスは、単なるテロ組織か?

直近のパレスチナ過激派ハマスによる蛮行は、確かに非難すべきテロ行為でしょう。そのことから、現在のイスラエル擁護・支持スタンスを取られている方を多く見かけました。ただ国際政治をまともに理解したければ、最低でも30年スパンくらいで見ないと、実像は殆ど何も見えて来ません。

Palos Verdesのある場所にあったペイント
今ならこの意味がより理解できます。

少なくともテロを起こした相手は、なぜそんなことをしたのか?原因や理由まで把握することは、事のいきさつを冷静に判断する上でも、とても重要です。

仮に“ハマスはテロ組織だから駆除すべきで~”の主張を掲げるのなら、これまでのハマスとイスラエルとの紛争で、どんなことが起きていたのか?ハマスはこれまで、どんなテロを行って来たのか?を、まずは確認すべきですし、それらは誰でも簡単に確認することができます。

そしてまずすぐに分かったのが、特にイスラエルによるこれまでのパレスチナ人迫害も相当に酷く非人道的で、2006年3月のハマスの政権参加後のタイミングに限ると、イスラエルの攻撃によるパレスチナ側の死者数は、ハマスによる攻撃の76倍以上である点です。

https://electronicintifada.net/content/israels-large-scale-killing-palestinians-passes-unreported/6497

死傷者数を比較した国連統計

https://www.statista.com/chart/16516/israeli-palestinian-casualties-by-in-gaza-and-the-west-bank/

やはり死者だけではなく負傷者数も見るべきですし、もっといえば街や学校や病院やインフラ破壊は、相手の人生を丸ごと奪っている様なものです。

なお某FBグループでこの統計を投稿したら、「2018年には大した事件も無かったのに、この負傷者数は変だ。データが信用できない。」というコメントを貰いましたが、少し調べてみると、2018年~2019年はイスラエル建国より土地を追われた、パレスチナ難民数百万人の帰還権利を求める大規模な抗議デモ(通称GMR)で、多数の死傷者があったことが分かりました。

https://www.un.org/unispal/document/two-years-on-people-injured-and-traumatized-during-the-great-march-of-return-are-still-struggling/

抗議デモに対するイスラエル軍による催涙ガス攻撃で、治療が必要となった負傷者が約1.5万人居た上に、なんと実弾攻撃で46人の子供を含む214人を殺害し、8,000人弱が銃で負傷していたのです。しかも1,200人以上が長期かつ高額なリハビリテーションを必要としているそうで、実弾による負傷のうち156件が切断につながり、更に少なくとも 94件は、その後の骨感染症による二次切断を伴ったとありました。

国境なき医師団やパレスチナの医師からも、「2014年の紛争とガザ封鎖のために、ガザでは外科的処置とリハビリテーション施設が利用できない」、「負傷者の約半数は二度と普通に歩けなくなるだろう」と指摘されされており、ガザの病院の再建外科部長は、「傷の様子から、拡大する『バタフライ』効果を持つ、弾薬を組織的に使用したようだ」と指摘。

また2020年には、GMRデモに関連して10,400人が重度の精神的健康上の問題を抱え、42,000人近くが軽度から中等度の問題を抱えていると推定ともあります。これらの数字には22,500人以上の子供が含まれています。

デモ参加者のほとんどは、国境フェンスから離れた場所(イスラエル側が勝手に決めた300mの立ち入り禁止区域より外)で、平和的にデモを行っており、このデモ行進はパレスチナ社会とハマスの新しい傾向を示しており、暴力から非暴力的な抗議形態へのシフトを示しているという見方もありました。

一部の主に若い男性からなるグループがフェンスに近づき、イスラエル側に向けた暴力行為を行ったようですがWikiによると、人権団体HRW曰く、「国境フェンス付近で一部の抗議者が、タイヤを燃やしたり石を投げたりしたが、(HRWは)デモ参加者が銃器を使用した証拠も、デモで銃器使用の脅威があったとイスラエル国防軍が主張した証拠も、見つけることができなかった。」、「イスラエルの警備員に脅威を与えなかったパレスチナ人が、銃撃された証拠がある。」とのこと。

先進国の感覚では、まずあり得ない対応だと思います。事実世界中の機関から、イスラエルの対応を「非人間的で容認できない」、「非武装のデモ隊を銃撃することは違法であり、それを許可する命令は明らかに違法である」のように非難されていました。

https://en.wikipedia.org/wiki/2018%E2%80%932019_Gaza_border_protests

2018年のように一見、大した紛争もなかった年でさえも、実際には致命的な暴力、不法入植地の拡大、住宅の取り壊しなどの厳しい年だったようです。

https://www.aljazeera.com/news/2018/12/30/the-events-that-shook-the-palestinian-territories-in-2018

特にガザは2007年以来、イスラエルに軍事封鎖され、しかも世界で最も人口密度が高いエリアである上に、無差別空爆をされ続けており、市民が安全に逃げられるものでもなく、明らかなジェノサイドが今もなお続けられている現状がありました。

2023 年 10 月 7 日に、ハマスとイスラエル軍の間の武力紛争が勃発し、ハマスによるイスラエル南部への攻撃に対し、イスラエル軍は大規模な攻撃で報復。10月末までに、1,500人以上のイスラエル人と、3,000人以上の子供を含む8,000人以上のパレスチナ人が殺害され、230人以上のイスラエル人と外国人が人質になりました。

少なくとも 44 か国(ほとんどが西側諸国)は、ハマスの奇襲攻撃をテロ攻撃とみなした一方、ハマスは、自分たちの攻撃は「アル・アクサ・モスクの冒涜」、ガザ地区封鎖、イスラエル入植地および入植者の暴力に対する報復であると宣言。

現在の戦争はガザ地区における5回目の戦争であり、攻勢が始まる前の2023年、イスラエルとパレスチナ間の暴力が激化し、少なくともパレスチナ人247人、イスラエル人32人、外国人2人が殺害されています。

ハマスの主張する報復とは何に起因するのか?そもそもハマスはどんな組織なのか、きちんと知るところから始めてみました。

(以下英語/日本語Wikiをメインに要約・抜粋)

ハマスの設立

1980年代の第1次インティファーダ(イスラエルによるパレスチナの軍事占領に対する民衆蜂起)時代に、アラファト議長が指揮するパレスチナ解放機構 (PLO) の影響力を排除した、民衆レベルでの対イスラエル抵抗組織として設立。

ハマスとPLOの対立関係を見たイスラエル政府は、ハマスがPLOの対抗勢力となることを期待して、秘密裏に援助。

この話の出典情報は、wikiにはありませんでしたが、元イスラエル当局者のイツハク・セゲブ将軍が、PLOへの対抗勢力として、ハマスへの資金提供に協力したと、NYTでのインタビューで語っています。

https://theintercept.com/2018/02/19/hamas-israel-palestine-conflict/

かつて米ソ冷戦を背景として、アメリカCIAがアルカイダへ資金提供を行い、都合が悪くなるとテロ組織認定し、後にテロ撲滅という名の殲滅作戦を行った事実を彷彿させます。

イスラエルがハマスに支援していれば、それは即ちアメリカが支援していたという事です。自分で作り出した勢力が邪魔になると、凶悪なテロ組織として撲滅するというのは、アメリカの十八番です。

なおハマスは教育、医療、福祉などの分野で一般民衆への地道な活動を続けたため、パレスチナ人の間で支持が拡大していきました。

ハマスによる最初の攻撃

1989年春に、2人のイスラエル兵を拉致して殺害。当時ハマスは兵士の拉致を目的とした、新しいグループ101部隊を設立。しかし本件で数百人のハマスの指導者や活動家が逮捕され、ハマスは非合法化されて事実上解体。壊滅的な打撃を受けたハマスは、運用構造をより分散させ、発見される可能性を最小限に抑えるために、指揮系統を地域化。

アル・アクサでのパレスチナ人の虐殺

1990年10月に、神殿の丘(イスラム教徒はここを神聖視しており、ユダヤ人による乗っ取りの可能性を懸念)に、ユダヤ人過激派が第三神殿の礎石を設置するのを、イスラム教徒の崇拝者たちが阻止しようとして、イスラエル警察がアル・アクサの敷地内でパレスチナ人に対して実弾射撃を行い、17人を殺害。

これがハマスの拉致作戦を強化させる原因となり、ハマスはすべてのイスラエル兵士を標的にすると宣言。

イスラエルによって拒否された国連安全保障理事会決議672では、特にイスラエル治安部隊による暴力行為を非難。

ハマスとイスラム聖戦メンバーの国外追放

1992年12月、イスラエルは国境警察官の殺害に対抗し、ハマスとイスラム聖戦のメンバー415人を、当時イスラエル占領下の南レバノンへ追放。そこでハマスは、難民キャンプに住むパレスチナ人ヒズボラと接触し、自爆テロや自動車爆弾の製造方法を習得。

イスラエルは彼らの国外追放に伴い、ガザのストリップに2週間の外出禁止令を課し、日当181万ドルの収入不足を創出。強制送還者は9か月後に帰国を許可。この国外追放は国際的な非難を引き起こし、全会一致の国連安全保障理事会決議が採択。

ハマスは国外追放への報復として、自動車爆弾2台のテロを指示。

ハマスによる最初の自爆テロ

1993年4月、ヨルダン川西岸のメホラ・ジャンクションで、兵士を乗せた2台のバスの間に駐車された車を使って実行。

インティファーダの最初の数年間は、ハマスの暴力対象はパレスチナ人に限定。イスラエルとの協力者、およびイスラエルの犯罪ネットワークと関係する麻薬売人や売春婦 、美容院で女性をアルコールで誘惑するなどの卑劣な行為で知られた人物など。1992年だけでも、150人以上を処刑。ハマスは、イスラエルの工作員によって奨励されたと考えられているとか。

ヘブロンでのイスラム教徒虐殺

1994年2月、軍服を着たユダヤ人入植者が、ラマダン月中にヨルダン川西岸のヘブロンにあるモスクで、礼拝中に29人のイスラム教徒を虐殺。その後の暴動でさらに19人のパレスチナ人が、イスラエル軍によって殺害。

イスラエルのラビン首相は虐殺を非難したが、ヘブロンの暴力的な入植者コミュニティとの衝突を恐れて軍の撤退を拒否。

ハマスは死者への復讐を誓い、イスラエルが「戦闘員と民間人」を区別しなければ、シオニストたちを同じように扱うだろうと発表。

最初の7年間は、イスラエル兵士と軍事施設のみを攻撃したが、虐殺の後はもはや軍事目標と民間目標を区別しなくなりました。

ムスリム同胞団のリーダー、ハジ・アリは、「1994年のイブラヒミ・モスクの虐殺がなければ、自爆テロはなかっただろう」と主張。アル・ランティシは1998年のインタビューで、自爆攻撃は「テロリストのゴールドスタインによる虐殺後に始まり、アイヤシュの暗殺後に激化した」と述べた。アブ・マルズークは「私たちは民間人を標的にすることに反対していたが、ヘブロンでの虐殺の後、私たちはイスラエルの民間人を殺害する時が来たと判断した。イスラエルが無差別攻撃をしなければ止めると申し出たが、彼らはその申し出を拒否した。」と語った。

自爆テロが激化

1994年4月、アフラの混雑したバス停で自爆テロ犯が車を爆破し、イスラエル人8人が死亡、34人が負傷。パレスチナ人がバスで自爆し、さらにイスラエル人5人が死亡、30人が負傷。

1994年10月、テルアビブのダウンタウンでバスに爆弾が仕掛けられ、 22人が死亡、45人が負傷。

1995年12月下旬、ハマスはパレスチナ自治政府(PA)に対し、軍事作戦を停止すると約束。しかしアル・カッサム旅団のリーダーのアイヤシュ(29歳)が暗殺。全人口の約11%に当たる、10万人近くのガザ人が彼の葬儀に行進。

ハマスは暗殺への報復として、1995年のかなりの期間休止していた自爆テロ作戦を再開。

第二インティファーダ(民衆蜂起)

大規模なデモと致命的なイスラエルの反乱鎮圧戦術によって暴力的に始まり、約1年にわたる激しい紛争を経た翌年7月までに、世論調査ではパレスチナ人の86%がイスラエル人に対する暴力を支持し、ハマスへの支持が17%に上昇。

アル・カッサム旅団は、この時期にイスラエルの民間および軍事目標に対して、軍事的攻撃と自爆テロの両方を開始した多くの過激派組織の一つ。その後数年間で約5000人のパレスチナ人と1100人以上のイスラエル人が殺害。

イスラエル人に対するパレスチナ人の攻撃は多数あったが、パレスチナ人の最も効果的な暴力形態は自爆攻撃で、インティファーダの最初の5年間では、イスラエル人の全死亡者の半数強が、自爆攻撃の犠牲者でした。この期間に発生した135件の自爆攻撃のうち、約40%はハマスによる犯行。

トリスタン・ダニングの著書によると、2004年1月、ハマスの指導者ヤシンは暗殺される前に、ヨルダン川西岸地区、ガザ地区、東エルサレムにおけるパレスチナ国家と引き換えに、10年間の停戦協定として、イスラエルに対する武力抵抗を終了し、パレスチナ難民に対する帰還の権利の回復させることを訴えていました。ハマスの高官アル・ランティシもこれに賛同し、ハマスが「段階的な解放」を構想しているとも言及。

イスラエルはその後数年にわたり、ハマスが民間人に対する攻撃の一時停止を何度申し出ても、交渉に応じることがなかった代わりに、3月にヤシンをイスラエル軍の標的空爆で暗殺し、4月にはアル・ランティシを同様の空爆で暗殺。

2006 年の大統領選挙と議会選挙

ハマスはアラファト議長の死後初めて行われた、2006年のパレスチナ議会選挙に参加。EUは、パレスチナ領土で民主的な選挙実施に注目。投票日前に、米国のライス氏、イスラエルのリブニ氏、英国のブレア首相は皆、ハマスが民主的プロセスで競争することを認めることに難色を示す。

ハマスは、清潔な政府、腐敗した行政制度の徹底的な見直しと、蔓延する不法問題という綱領に基づいて活動。

汚職で告発されていることで悪名高いパレスチナ自治政府(PA)は、イスラエルで5つの終身刑で服役中のバルグーティを最有力候補として擁立。米国はメディアイメージを向上させるために、PAに200万ドルを寄付。イスラエルはまた、バルグーティ氏の刑務所内でのアラブテレビによるインタビューを許可したり、東エルサレムの10万人のパレスチナ人に、投票を許可したりしてPAを支援。

ハマスは暴力ではなく政治的手段で権力を握ることを意図しており、イスラエルがパレスチナ人の町や村への攻撃をやめればイスラエルへの攻撃を控えると発表。

この選挙はイスラエルがガザの入植地から撤退した直後のタイミングだったこともあり、ハマスは、「武装抵抗戦略の正当性を証明するもの」として声明。

ハマスは76議席を獲得。ファタハは43議席で、この選挙は国際監視団によって、「競争的で真に民主的」であったと評価。

エジプト、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦は米国に対し、ハマスにチャンスを与えるよう求め、パレスチナ人の選択を理由に罰するのは得策ではないと主張し、1か月後にはアラブ連盟もこの立場を支持。

EUは財政支援を維持すると約束するも、3か月後には、自由選挙に関する基本原則に違反。米国とカナダ同様に、ハマス主導政府への財政援助を突然凍結。代わりに、資金を人々やプロジェクトに直接振り向け、雇用されているかどうかにかかわらずファタハメンバーにのみ給与を支払うことを約束。

ハマスは選挙での勝利を受けてガザの政権を引き継ぎ、根本的な変化を導入。イスラエル、米国、カルテットによる経済制裁によりPAの行政資源が機能不全に陥り、アルカイダを模倣した多数のマフィア風のギャングやテロ集団の出現につながったため、無秩序の混沌とした状況が引き継がれたが、ダニエル・バイマンは後に『フォーリン・アフェアーズ』誌に次のように述べた。

「ガザ地区を占領した後、ハマスは警察と治安部隊を刷新し、ファタハの下で(少なくとも机上では)5万人のメンバーを削減し、1万人強のより小規模で効率的な部隊に編成し、犯罪とギャングを取り締まった。グループが公然と武器を持ち歩いたり、罰を受けずに盗んだりすることはなくなりました。人々は税金や電気代を支払い、その見返りに当局はゴミを拾い、犯罪者を刑務所に入れました。ガザはエジプト、その後イスラエルの支配下で無視され、パレスチナ指導者アラファトとその後継者によって失政されてきたが、ついに本物の政府を樹立した。」

欧米諸国は民主主義国家の代表のはずでしたが、パレスチナに関しては、民意を丸無視した、恣意的かつ露骨な政権介入をしていたことがよくわかります。

2006年2月初旬、ハマスはイスラエルに対し、「ヨルダン川西岸、ガザ地区、東エルサレムといったパレスチナ占領地からのイスラエルの完全撤退」と引き換えに、10年間の休戦を提案。但しイスラエルに対する他のパレスチナ人グループの武力作戦を妨げるものではないと付け加えた。

選挙後、中東カルテット(米国、ロシア、欧州連合(EU)、国連)は、ハマスが暴力を放棄し、イスラエルを承認し、以前の合意を受け入れた場合にのみパレスチナ自治政府への支援が継続されると述べた。イスラエル・パレスチナ合意をハマスは拒否。その後、カルテットは、パレスチナ領土に対するすべての国際援助を凍結。

ガザ選挙後の2006年、ハマスの指導者はジョージ・W・ブッシュに宛てた書簡を送り、その中でハマスは休戦を含む1967年の国境地帯での国家樹立を受け入れると宣言したが、ブッシュは無回答。

2008 ~ 2009 年のガザ戦争

2008年4月24日、ハマスはイスラエルにガザ地区内での6ヶ月間の休戦を提案。イスラエルは、ハマスが和平ではなく更なる戦闘に備えるために休戦協定を利用すると推測したため、この提案を拒否。

2008年6月17日、ハマスとイスラエルの間で非公式の停戦が合意。イスラエル情報筋曰く、ハマスは他のパレスチナ組織に対しても停戦を強制することを約束。ハマスは停戦維持に細心の注意を払ったが、他のグループが時々ハマスに反抗してこの停戦を破ることが散発的だった。

12月19日に6か月間の停戦が正式に失効すると、ハマスはその後3日間でイスラエルに50発から70発以上のロケット弾と迫撃砲を発射したが、イスラエル人に負傷者は無。

12月21日、ハマスは、イスラエルがガザへの「侵略」を止め、国境検問所を開放すれば、攻撃を停止し、停戦を更新する用意があると述べた。

12月27日と28日、イスラエルはハマスに対してキャストリード作戦を実施。パレスチナ当局者らによると、空爆の最初の2日間で280人以上が死亡、600人が負傷。多くの民間人も死亡したが、大半はハマスの警察官と治安当局者。

イスラエルが、2009 年 1 月 17 日に一方的な停戦を宣言。

2009年7月、ハマスの政治局長は、パレスチナ難民にイスラエルに帰還する権利と、東エルサレムが新国家の首都として認められる権利を条件に、1967年の国境に基づくパレスチナ国家を含む、アラブ・イスラエル紛争の解決にハマスが協力する用意があると声明。

2014年のガザ侵攻

2,200人以上が死亡。パレスチナ側の民間人犠牲者は、国連(OCHA)によると1460人(死者全体の7割)。イスラエルの民間人犠牲者は7人。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%82%B6%E4%BE%B5%E6%94%BB_(2014%E5%B9%B4)

2021年のイスラエル・パレスチナ危機

2021 年 4 月~5 月のラマダン イベント

4月13日の夜、イスラエル警察がモスクの敷地内に侵入し、西の壁の下でイスラエルのリブリン大統領が行っていた、メモリアルデーの演説を妨げないように、イスラム教の聖なるラマダンでの祈りの儀式の、呼びかけを放送するためのスピーカーケーブルを切断。

この事件をヨルダンは非難し、パレスチナ国家自治政府のアッバス議長は、「人種差別的憎悪犯罪」と呼んだが、他の国際的な注目を集めなかった。

同月にイスラエル警察は、旧市街のダマスカス門の外にある、パレスチナ人の伝統的な休日の集いの場である階段状の広場を閉鎖。激しい夜間衝突が発生し、数日後にバリケードは撤去。

4月15日、パレスチナの10代の若者が、超正統派のユダヤ人男性を平手打ちするTikTokの動画が拡散され、いくつかの模倣事件が発生。

翌日、イスラエルがモスクでの礼拝に1万人制限を課したラマダンで、数万人のパレスチナ人礼拝者がアル・アクサのモスクから追い返された。

同日、ヤッファでユダヤ教聖職者ラビが殴打され、2日間の抗議デモが勃発。

4月22日、極右のユダヤ人至上主義者グループLehavaが、 "アラブ人に死を "と唱えながらエルサレムを行進。

4月23日、周辺軍事組織がイスラエル南部に向けて36発のロケット弾を発射後、イスラエル国防軍はガザ地区のハマスの標的に向けてミサイルを発射。ロケット弾の乱射は、東エルサレムで数百人のパレスチナ人が、イスラエル警察と衝突しているときに発生。

4月25日、国連特使は「エルサレム全土での挑発行為はやめなければならない。イスラエルの人口密集地に向けたロケット弾は国際法に違反しており、直ちに停止しなければならない。」と暴力を非難。

4月26日、ガザ地区からイスラエルに向けて40発以上のロケット弾が発射され、それまでの3日間に、ガザ地区内で1発のロケット弾が爆発した後、イスラエルの安全保障内閣は、ガザからのロケット弾発射が続く場合、ハマスに攻撃を加える作戦計画を討議の末、賛成多数で決定。

翌日、パレスチナ人の少年と19歳のイスラエル人入植者が殺害。

5月6日、イスラエル警察はヨルダン川西岸のナブルスで、16歳のパレスチナ人を射殺。Addameerによると、イスラエル警察は4月中旬から東エルサレムとその周辺での衝突の間に、少なくとも61人の子どもを逮捕し、3週間で4人を射殺。

Addameer(アダメール)の補足:

パレスチナの捕虜支援人権協会NGO。イスラエルは何度も事務所を襲撃や不法捜査し、書類やコンピューターなどを略奪。例として、5,150人のパレスチナ人捕虜(その多くはアダメールが支援)が、再び国際法に違反したイスラエルによる投獄中に発生。

2021年10月、イスラエルが他の5つのパレスチナ非営利・非政府組織(アルハク、ビサン研究開発センター、国際児童防衛、パレスチナ女性委員会連合、連合)とともに、テロ組織に指定。

このテロ指定を、アムネスティや国連人権高等弁務官事務所は非難。CIAと共有されたイスラエルの秘密情報調査でも、CIAはイスラエルの告発の証拠が無いと判断。

2022年7月、EU9カ国(ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、オランダ、スペイン、スウェーデン)は共同声明を発表し、イスラエルが禁止してきた6つのパレスチナ組織との協力を継続すると表明。

2022年8月、イスラエル軍はアダメールと他の6つの組織の本部を襲撃し、コンピューターと機器を撤去し、閉鎖を命令。

要するにイスラエルでは、人道的活動すらもまともにできない環境下にある、ということがよくわかります。

シェイク・ジャラー論争:

1948年以来の土地をめぐる、イスラエルとパレスチナの紛争のいわば縮図。2021年時点で、東エルサレム全域に住む、1,000人以上のパレスチナ人が立ち退きの可能性に直面。

イスラエルの極右政党の党首ベン・グヴィールは、衝突が始まる直前にシェイク・ジャラーを訪れ、その家々はユダヤ人のものだと述べ、抗議者たちに「発砲」するよう警察に指示。

フランス通信は、衝突に至るまで、シェイク・ジャラーでイスラエル人入植者たちがアサルトライフルやリボルバーを公然と所持しているのが目撃されていたと報道。

 作家のラムジー・バルードによると、エルサレムの副市長アリエ・キングと冗談を交わしながら、抗議活動中にイスラエル警察に撃たれたパレスチナ人住民をあざける、ベン・グヴィールのビデオが投稿。

パレスチナ人の抗議活動は5月6日にシェイク・ジャラーで始まったが、衝突はすぐにアル・アクサ・モスク、ロッド、イスラエルの他のアラブ地域、ヨルダン川西岸に波及。5月10日から14日にかけて、イスラエルの治安部隊により東エルサレムで、約1,000人のパレスチナ人の抗議活動参加者が負傷。

5月16日までに、約950件の標的型攻撃が完全または部分的に破壊。4つの高層タワーを含む18棟の建物。40の学校と4つの病院。そしてアル・シャティ難民キャンプも攻撃。さらに、少なくとも19の医療施設がイスラエル軍の砲撃により損傷または破壊。 

5月17日までに国連は、イスラエルの空爆によりガザ地区のアル・ジャラー・ハイライズを含む、461戸の住宅と商業施設を含む94棟の建物が破壊されたと推定。 https://en.wikipedia.org/wiki/2021_Israel%E2%80%93Palestine_crisis 

騒乱は5月21日に停戦が発効するまで継続。

ハマスの司令官とイスラム聖戦の高位司令官3人、別のハマスメンバー、ハマス最高司令官は殺害。

死傷者について:

イスラエルのタイムズ紙によると、イスラエルでは13人が殺害。その中には子供2人、インド人女性1人、イスラエル在住タイ人男性2人。

国連とヒューマン・ライツ・ウォッチは、パレスチナ人260人が殺害され、その半数は子供66人と女性40人を含む民間人であると報告。そのうちイスラエル国防軍による死者は約243人。

ガザ保健省は、1,948人が負傷し、そのうち610人が子供、400人が女性(4人の妊婦を含む)だったと発表。

パレスチナ側のロケット弾の一部は失敗し、ガザ地区に着弾し、少なくとも7人の死傷者が発生。 

戦争犯罪について

2021年7月下旬、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、特定の事件に関する現場報告に基づいて、紛争当事者双方が戦争犯罪に関与した可能性を提起。同団体は、軍事目標が確認されていない地域で、家族全員を殺害したイスラエルによるいくつかの爆撃や、パレスチナ過激派によるイスラエル民間センターに向けた無誘導ロケット弾の発射などを指摘。またベツェレム(人権侵害を文章化するNGO)も、両当事者を戦争犯罪で告発。

HRWは、ハマスが発射した数千発のロケット弾(イスラエルの民間人12人を殺害し、誤爆でガザ地区内でパレスチナ人7人を殺害)は、「戦争法に違反し、戦争犯罪に相当する」と発表。

一方で多数の民間人死傷者を出し、明らかな軍事目標が存在しなかった3件のイスラエル攻撃にも、焦点を当てて調査。

イスラエル国防軍(IDF)は8人の活動家が殺害されたと発表し、この攻撃で死亡した穀物商人の写真を投稿。家族は武装勢力とのつながりを否定。生存者や目撃者によると、当時、家族は加工された大麦を袋に詰める作業に従事。6人の子供が殺されたのは、大麦を拾うために現場に到着した、業者の馬車の周りに子供たちが群がっていたと目撃者らが証言。直後に撮影されたビデオも存在。この家族がガザ武装勢力と、何らかの関係を持っていた証拠は皆無。

イスラエルの攻撃により、アル・シャティ難民キャンプ内にある、個人所有の3階建て建物が破壊され、10人が死亡(女性2名とその子供8名)。

IDFは、ハマス幹部が建物のアパートの1つにおり、攻撃はブロックの下の地下壕も狙ったと主張。HRWは、そのような構造の証拠が無いと否定。

爆弾を使用して3つの建物を破壊し、44人の民間人を死亡( 18人の子供、14人の女性、12人の男性)。さらに50人が負傷。

IDFは、疑わしい地下軍事インフラの破壊を目指していると主張。ハマスは民間地域に、そのようなインフラが存在することを否定。(ガザのリマル地区にある、閑散としたUNRWA予備学校で、国連監視団がトンネルを確認したことは過去にあった。)

HRWは、この地域にトンネルや地下センターが、存在したという証拠が無いと発表。爆撃による影響が予見された、民間人には事前の警告も無し。

パレスチナ人権団体やパレスチナ人権センターは、ガザ地区での攻撃に関する報告書を国際刑事裁判所に提出。

2023年のガザ戦争前の紛争

2023 年 1 月 ジェニン侵攻

1月26日、イスラエル国境警察とイスラエル軍は、イスラエル占領下のヨルダン川西岸エリアAにあり、パレスチナ民政の管轄下にあるジェニン難民キャンプを武力襲撃。エルサレム・ポスト紙によると、目的は計画されたテロ攻撃を阻止し、指名手配中のイスラム聖戦戦士3名の逮捕。

その後の衝突で9人のパレスチナ人がイスラエル軍によって殺害。そのうちの1人は高齢の女性。別のパレスチナ人が襲撃中に受けた傷がもとで死亡し、死者は合計10人に。ジェニン難民キャンプに対するイスラエルによる襲撃としては、ここ20年近くで最も悲惨なもの。イスラエル政府は、殺害された人々のうち少なくとも6人は武装した男だったと主張。

国連専門家らは、イスラエル軍によるジェニン難民キャンプに対する最近の暴力攻撃と殺傷を非難。 アムネスティは、この殺害は違法であるとし、エルサレム銃乱射事件を含む、進行中の暴力の原因は「イスラエルのアパルトヘイト制度」にあると非難。イスラエル軍は、2023年1月だけで35人を含む、約220人のパレスチナ人を殺害。

2023年 ネーヴェ・ヤアコフ銃乱射事件

1月27日、パレスチナ人の銃撃犯が東エルサレムのネーヴェ・ヤアコフのイスラエル入植地で少なくとも民間人7人を殺害。パレスチナ武装勢力は容疑者がメンバーではないと主張。この攻撃はパレスチナ人10人が死亡した前日のジェニン襲撃に対する当然の報復だとし、パレスチナ自治政府は「危険なエスカレーション」でイスラエル政府を非難。

多くの国や国際機関がこの攻撃を非難する声明を発表。パレスチナとイスラエルの情報筋は、攻撃以来42人から50人が逮捕され、そのほとんどが加害者の家族であると言及。

2023年 アル・アクサ衝突

4月、エルサレムのアルアクサ・モスク敷地内でパレスチナ人とイスラエル警察の間で一連の暴力的衝突が発生。イスラエル警察は暴動鎮圧装備でモスクを襲撃し、50人が負傷し、少なくとも400人が逮捕。

イスラエルは5月9日までロケット弾攻撃への対応を保留したが、その時イスラエル軍はPIJ運動の指導者3名を標的とした暗殺を実行し、民間人10名が死亡。

続いて同日、ハーンユニスで車両に対する空爆があり、パレスチナ人2人が死亡。空爆は5月10日にも続き、さらに6人のパレスチナ人が死亡。

報復として、過激派はイスラエル国防軍(IDF)によれば、合計938発以上のロケット弾をイスラエルに発射。

合計の死者数はパレスチナ人34人(うちイスラエル人1人)で、イスラエルとイスラム聖戦は停戦に合意。

2023年7月 ジェニン侵攻

7月3日、イスラエル軍はジェニン難民キャンプに対して大規模な攻撃を実施。この作戦の目的は、武装勢力を標的にすることだと主張。少なくとも9人の武装勢力を含む少なくとも12人のパレスチナ人が死亡し、100人が負傷し20人が重体(犠牲者の最年長は23歳)。イスラエル軍の攻撃により、最大500世帯のパレスチナ人が家を追われた。

ジャーナリストらも、出来事の報道中にイスラエル軍の砲撃の標的になったと報告。パレスチナ情報筋によると、戦闘から逃れるために3,000人が避難あるいはキャンプから避難。

イスラエル軍は、武器製造に関係する3つの施設を発見し、武器と数百個の爆発物の隠し場所を押収したと発表。

ヨルダン、アルジェリア、エジプト、アラブ首長国連邦、イスラム協力機構(OIC)は暴力を非難。ヒズボラもまた、パレスチナ人は「敵にその行為を後悔させる多くの代替手段と手段」を持っていると述べ、攻撃を非難。

パレスチナ地域の国連人道調整官リン・ヘイスティングス氏は、ツイッターでイスラエルの大規模な軍事作戦について懸念を表明し、空爆は人口が密集した難民キャンプで行われたと指摘。

国連事務総長は 、異例のイスラエル非難で、過剰な武力行使として今回の襲撃を非難し、イスラエルについて「占領国として、民間人の安全を確保する責任がある。国民はあらゆる暴力行為から守られています。」と声明。前日の国連の独立人権専門家3名に続き、今回の行為は「武力行使に関する国際法と基準への重大な違反に相当し、戦争犯罪を構成する可能性がある」と言及。イスラエルは撤回を要求したが、グテレス氏は拒否。

パレスチナ自治区の欧州連合代表は、7月8日に25カ国の国連職員と外交官の代表団を率いてキャンプに向かい、グテレス氏の発言に同調し、暴行は国際法違反であり、紛争の政治的解決を要求。

攻撃前の2023年を通じて、少なくとも247人のパレスチナ人がイスラエル軍によって殺害され、32人のイスラエル人と2人の外国人がパレスチナ人の攻撃で殺害。入植者の襲撃の増加により数百人のパレスチナ人が避難し、エルサレムの聖地として争われているアル・アクサ・モスク周辺で衝突が発生。

2023年のガザ戦争

10 月 7 日、ハマスはガザとイスラエルの障壁を突破して侵攻を開始。攻撃の数カ月前、ハマスはイスラエル情報機関に対し、ハマスは紛争を求めていないと信じ込ませていた。ハマス戦闘員は音楽祭やキブツ・ベエリで、数百人の民間人を虐殺し、イスラエル南部の人質をガザ地区に連行。

イスラエルで1,400人以上を殺害した残忍な攻撃の際、ハマス主導軍は200人以上のイスラエル軍人と民間人を人質として捕らえ、その後ガザに撤退。その後、ハマスはイスラエル人人質とイスラエルの刑務所にいる数千人のパレスチナ人との交換を申し出たが、そのうち530人は告訴も裁判もなく拘留されており、そのうち160人は子供。

イスラエル政府は、抗議活動や旗振りなどの市民活動を、“テロ”とみなす軍令101号と軍令278号に基づいて投獄。

https://www.aljazeera.com/news/2023/10/8/why-are-so-many-palestinian-prisoners-in-israeli-jails

イスラエルは前例のない数の無差別空爆と砲撃で対抗し、病院、学校、住宅やオフィスビル、世界で三番目に古い教会、そして安全と思われる道路から避難する民間人を攻撃。

ハマス高官は、ハマスはイスラエルへの攻撃の結果を十分に認識していると述べ、パレスチナ解放には「犠牲」が伴うと述べた。

また「現場の状況が許せば」国際人質を解放する用意があると述べた。

以下は10/19時点での欧州地中海人権モニターのレポートの抜粋。 

少なくとも4,079人のパレスチナ人が殺害され、死者の中には約3,420人の民間人が含まれています。

さらに15,000人以上のパレスチナ人がさまざまな形で負傷しており、その半数以上が子供と女性。 イスラエル軍が人口密集した民間地域に対して、戦争犯罪や人道に対する罪に相当する可能性のある、複数の複雑な違反を確認。ガザ地区の民間人の多くの基本的権利、特に生命の権利、住居の権利、財産の権利に対する、イスラエルの露骨な攻撃が含まれていると指摘。 イスラエルが組織的破壊作戦を通じて、ガザ地区と北ガザ地区への攻撃を集中させており、これらの地区の住民に対する強制移住と人口移動を狙っており、約100万人が暮らす住民に対し、その地域から避難し、ストリップの中心地と南部に移動するよう警告したが、この措置は安全を危険にさらすため、法的かつ人道的に重大な懸念を引き起こすもの。

https://reliefweb.int/report/occupied-palestinian-territory/israel-destroys-quarter-northern-gaza-strip-palestinian-death-toll-exceeds-4000-enar 

また世界がイスラエルでのハマスの虐殺とイスラエルによるガザ爆撃に注目している一方で、ヨルダン川西岸の入植者は混乱に乗じて、パレスチナ人を攻撃し、小さな村から追い出し。

パレスチナ保健省によると、占領下のヨルダン川西岸に住む入植者と兵士らは土曜日以来、ヨルダン川西岸で51人のパレスチナ人を殺害。少なくとも2つの村、アル・カヌブとワディ・アル・シクは、イスラエル人入植者による暴力の結果、完全に人口が減少。

https://theintercept.com/2023/10/13/israel-settlers-gaza-palestinians-west-bank/

我々は長年、こういうのを見逃して来たのでしょう。

ハマスのまとめ

ハマスは元々、イスラエル(米国)から資金提供を受けていた組織。パレスチナ人の権利回復を目指し、武力闘争を仕掛けるようになるが、当初はイスラエル軍のみを攻撃対象にしていたが、ある時期のパレスチナ市民虐殺を受けてから、すべてのイスラエル人を攻撃対象にシフト。

圧倒的武力差があり、ミサイルをどれだけ打っても相手はほぼ無傷で、自爆テロが唯一ダメージを与える手段であるため、それを多用。ただそれでもイスラエル側で大きな被害にはならず、攻撃を控える代わりにパレスチナ人の権利回復を訴えても、無視された上に、指揮官の暗殺という返礼を受けるパターンを、長年繰り返しており、ハマス側から持ち掛ける交渉がまともに取り合われたのは皆無。一方でハマスは教育、医療、福祉などの分野で一般民衆への地道な活動を続けたため、パレスチナ人の間で支持が拡大し、国際監視団が公正だったと評価する選挙で、政権も獲得。近年の世論調査でも、およそ38%の支持率。中東カルテット(米国、ロシア、欧州連合(EU)、国連)の提示条件を拒否したことで、パレスチナへの国際援助が凍結。その後方向転換をする声明を出すも、経済的封鎖は継続。

政権獲得後は停戦協定を守ろうとするも、他の過激派がイスラエルへ攻撃し、停戦状態が続かない場面も発生。

なお設立当時の反ユダヤ主義を改め、2017年に新規約を発表。反ユダヤ主義を明確に否定し、パレスチナ人の権利を犠牲にしないイスラエル国家の存在を認めており、米国、欧州連合(EU)、などほとんどの西側諸国の方針とも一致。

参考:プロパガンダを見破る方法(初級編:パレスチナ紛争)

イスラエルによる長年の挑発、迫害が、2021年に顕著となってから緊張状態が続き、2023年、イスラエルとパレスチナ間の暴力が激化し、少なくともパレスチナ人247人、イスラエル人32人が死亡。

ハマスが「アル・アクサ・モスクの冒涜(イスラエル警察がモスクを襲撃し、50人が負傷し、少なくとも400人が逮捕。)」、ガザ地区封鎖、イスラエル入植地および入植者の暴力に対する報復として、2023年10月にイスラエルを奇襲。1,400人以上のイスラエル人を虐殺し、200人以上の人質を確保し、イスラエルの刑務所にいる数千人のパレスチナ人との交換を交渉(イスラエル政府は抗議活動などを“テロ”とみなして、530人は告訴も裁判もなく拘留されており、160人は子供。)

これをテロ攻撃と西側諸国は非難し、イスラエルは報復として、3,000人以上の子供を含む8,000人以上のパレスチナ人を殺害して、現在に至る。

私見:

イスラエルを擁護できる問題でも無く、「彼らはやりすぎ」で片付けられる様な次元にも到底感じられません。圧倒的な戦力差をもって、イスラエルは報復を口実に公然とジェノサイドを繰り返して来ており、これまでの経緯を辿るほど、本当の被害者は常にパレスチナ人だと確信しました。

ハマスの蛮行は確かに犯罪ですが、犠牲者の数も桁違いのイスラエルによる犯罪の方がはるかに大きいのも明白であり、ハマスの罪を問うからには相応にイスラエルの罪も問われなければ、全く筋は通りません。

勿論、平和的なやり方をしないハマスが悪いと考えている人もいるでしょう。ただ調べてよくわかったのは、イスラエルという国自体のヤバさです。人権支援団体をも公然と襲撃し、不都合な証拠も持ち去った上で“テロ組織”認定して閉鎖させたり、抗議活動する一般市民を、裁判すらなく“テロ”とみなして、子供であろうと投獄したりする国です。このファシズム国家で、一体どうやってパレスチナ人は権利回復を実現できるのか、私にはわかりません。

そして今回の紛争もハマスがいきなり仕掛けたというわけでもなく、しっかりと背景を辿ってみると、2021年辺りからのイスラエル側による挑発や迫害があって起きていたことでした。

しかも抗議活動でイスラエル政府に不法投獄されている子供や市民を救出する手段として、武力的には圧倒的非力なハマスが人質を確保して、交換する意図でやっていたことだとすると、安易にテロリストのレッテル貼りをすべきでもない。おそらくは、そういう見解に行きついたであろうBBCの判断は、極めて適切に感じます。

「テロリスト」という用語を都合よく多用する欧米社会ですが、これほど危ういものもない。武装力がなく原始的な殺し方をしている方が、印象として残虐性は際立つかもしれませんが、最新兵器で無差別に空爆をしていれば、それは立派にジェノサイドであり、テロ行為であるという認識を正しくもつことが重要です。しかもイスラエル政府は、人質もろとも爆撃しているとしか思えず、自国民へのテロも行っている様に見えます。

ハマスをテロ組織と呼ぶのであれば、公平にイスラエルもテロ国家と呼ぶべきです。ついでに言えば、ロシアもアメリカもテロ国家です。逆にイスラエルの行為を戦争と呼ぶのであれば、ハマスも同様に戦争を行っているともいえます。

そして私は国連事務総長の発言や見解に、基本的に同意です。調べる過程で自分は長々と書きましたが、それらを集約すると、正に彼の声明に辿り着きます。

「どんな武力紛争でも民間人の保護が最重要」であると同時に、今月7日のハマスによるイスラエルへの攻撃について、「何もない状況で急に起こったわけではない」、「パレスチナの人々は56年間、息のつまる占領下に置かれてきた。」 「パレスチナの人々が怒っているからといって、ハマスによるおぞましい襲撃が正当化されるわけではない。また、おぞましい襲撃を受けたからといて、パレスチナの人々に対する集団的懲罰が正当化されるわけではない」

https://www.bbc.com/japanese/67213313

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