まともなSEO業者は一握り
B to B向けに北米市場で産業系ビジネスを展開されている某企業様から、悲痛なお問い合わせをいただきました。
現在、ある業者にSEO費用を月額4000ドルほど支払っているが、サイトからの問い合わせは皆無で、どういうキーワードで上位表示されているのかすらも分からない、というものです。
実はこういう話はよくあることで、特に驚きはしません。ただ、今回は少しだけいつもと違う状況であったため、ここで取り上げることにしました。
米系大手業者でも、安易に信用はしないこと
これまでの経緯を伺ったところ、元々Webサイトは何年も前にローカルの小さな米系業者に制作を依頼し、SEOも委託していたそうです。ただコンテンツは社内の素人レベルで作成していたため、現在の担当者様が改善の必要性を感じて、Webサイトも一新しようと、より規模の大きい信頼できそうな米系専門業者( Thomas Net )へ、SEOとPPC広告も委託しつつ、サイトのリニューアルを依頼されたそうです。
担当者様曰く、以前は新規問い合わせが2~3件/日、新規顧客獲得が70件/年ほどあったが、今は1件も問い合わせすらない上、毎週業者さんとのMTGはあるが、特に提案もなく形式的で、言っていることもよく分からないし、サイトリニューアルに関する進捗も無く、不安に思っているとのことでした。
ここで意外だったのが、この企業様は最初から日系ではなく米系業者さんへ依頼されていたことです。日系業者さんが米市場向けの英語サイトを作成したのであれば、英語のネイティブが見ると恥ずかしいと思うレベルがほとんどなので、成果が出ないのは容易に予想できます。
しかし今回は米系業者が最初から携わっており、安易さから日系業者さんへ依頼されたわけではないという点は、少なくとも評価できます。
しかも米系業者でも色々と胡散臭いものが多数ある中、B to B 向けディレクトリとしては知名度の高い、老舗大手であるThomas Net を選ばれたのも、気持ち的には分からなくはない。こういう失敗の仕方はまだ理解はできます。
ただ日系企業様が仮に米系業者さんの適切な評価をしようとしても、英語訴求力はもとより実践力の評価をするにも、知名度くらいしか頼れる指標もなく、実力を判断されるには限界もあるということだと思います。
またThomas Net がまさかSEOサービスを提供していたとは、我々も知りませんでした。彼らの本業ではないので実際には委託業者が仕事をしていると予想しますが、調べてみると、その仕事の質はかなりお粗末といえるものでした。
サイトの現状
Webサイトのコンテンツを確認したところ、この企業様の特長が全く伝わらない、訴求力のないもので、むしろこれでよくも以前は新規顧客を獲得できていたなと思えるものでした。二回目のMTGでその点を具体的に確認したところ、問い合わせはすべて日系からとのことでした。おそらくは、サイトとは全く関与しない部分での集客によるものだったと推測できます。
もしも我々がこの現行サイトでの集客を依頼されたなら、コンテンツの改善を終えるまでは、集客に投資をしても無駄になる旨を最初に伝えるでしょう。それでもどうしても試されたいと言われれば、即効性のあるPPC広告で少額のみトライされることをお勧めします。
そういった指摘をせず、SEO(集客)にただ投資をさせていたとすると、現行業者(Thomas Net)も以前の業者も、成果ベースではなく自社収益ベースで仕事を請けていると思わざるを得ません。
また現行サイトにどの程度のSEOトラフィックがあり、どういうキーワードで上位表示できているのかを調べてみたところ、毎月4000ドルものSEO費用を支払っているにもかかわらず、SEOトラフィックはほぼゼロ。それもその筈、キーワードは上位表示する難易度もない、誰も探していない様なビジネス的に関連性の薄いものが僅か2つ、平均で9位と13位に来ていただけでした。このような惨状で業者さんがお金を取ることは、正に詐欺レベルです。
本来ならこうしたリサーチ分析は有料で行っていますが、Thomas Netが謳うSEOサービスがどんなものか興味もあり、もう少し掘ってみると、更に面白い事実が発覚しました。
Webサイト評価の1つの指標になるドメイン評価が、100点満点中で現在 0.5しかないのです。10年前までは27あったのが、数年前にほぼゼロになっており、サイト自体が何らかのペナルティを受け、サンドボックス(保護観察中のいわばBlack List)に入れられている様に見受けられました。
こうなると、SEOを考える上で講じるべき対策は、サンドボックスから脱するか、新規ドメインを取得して一から始めるかしかないのは明白で、それに言及しない / 気付いていない業者さんであれば、既にSEOは不可能と言えるでしょう。
SEOの本質的な話
今回相談をしてきた企業様はなぜ、英語サイトでのSEOやCV(コンバージョン)獲得を期待して大手米系業者へ依頼をしたのに、結果は詐欺に近いものしか得られていないという失敗をしたのでしょうか。
そもそもSEOとは謂わば他サイトと表示順位を競うレースです。それなのにThomas Netの様に同じセクター内で複数のクライアントが存在する状況で、それぞれの企業へSEOサービスを同時に提供できると考えるロジックが、我々からすると既に意味不明です。
ちなみに当社はSEO案件をお請けする場合、一業種一社に限定しています。そうでなければ、「クライアント様を市場で勝たせる」という根底のミッションに、何らかの矛盾 / 嘘が生じることになるからです。
PPC広告や上位に来ている他社サイトの状況にもよりますが、一般的に検索結果の上位表示で、トラフィックに実質的に影響するのはトップ5位以内です。つまり、世界最難関であるアメリカの英語検索で、SEOサービスで意味のあるパフォーマンスができるSEO業者は、世界選手権で5位以内に入れる実力者のみということです。
仮に50位が31位になったところで、順位が上がったと自己満足はできたとしても、ビジネス的には何のメリットももたらしていないことに、SEOサービス委託を検討する企業様も気づくべきでしょう。
なおB to C市場においてAmazonは、色々な検索結果で上位を占めていますが、それは膨大な数のテナントがページを構成しながら、各国ごとに1つのAmazonというドメイン(サイト)を強化する仕組みだからできる事です。
同様にThomasnet.comも、そこに属するクライアントが、Thomasnet.comという1つのサイト自体のSEOを強化させることは、割と簡単に実現できることです。しかし個々のテナントのドメイン(サイト)で、個々にSEOを行うとなると、話は全く変わって来ます。
しかも現状でThomasnet.comは、知名度もあり多く利用はされていますが、SEO的にはその強みを完璧には発揮できておらず、B to B市場の上位表示をAmazonのように盤石には占められていません。例えばその企業様が本来露出すべき有望キーワードで、Thomasnet.comですら上位表示できていないのに、クライアントのサイトをどうやってSEOで勝たせられるのか?という話です。