中小企業が生き残るには⑧ 大手
(U.S. FrontLine誌 2011年9月5日号 掲載分)
前回、オンラインビジネスの救世主だったPPC(クリッ ク課金型キーワード連動広告)や、今の時代に成約率の高 い広告媒体について、少しお話ししました。そして現在の オンライン市場は、超大手数社が占有し始めていると結び ましたが、この状況こそが本稿の「中小企業が生き残るに は」シリーズを書こうと思ったきっかけでした。
さてこのテーマを掘り下げていく上で、どうしても触れて おきたい、ある業界の話があります。それは、ここアメリ カで、先駆的な商品展開で成功を収めるも、業界自体の構 造変革により、厳しい状況下に追いやられる中で、今も健 闘を続けている、我が社の製造業の某クライアントからお 聞きした話です。
ある業界の怖い話
その業界はアメリカで、現在、市場規模が約2,500億ド ル前後と言われるくらい、巨大な市場を誇っています。た だ25年から30年ほど前に、大手の台頭によって、業界の構 図が信じられないくらい、まったくの別物に塗り変えられ てしまったそうです。
その時期に、大手ディスカウントストア数社が、中間業者 をバイパスして製造業者から一括で仕入れることで、商品 の極端な価格破壊を起こし、それまでは全国で2万軒はあ った町の小売店が、1割くらいにまで淘汰されてしまった そうです。
私がアメリカに来た頃には、既にこの構造変革後でしたの で気が付きませんでしたが、確かに言われてみれば、この 業種の小売店は、大手ストア以外、町で見かけることはま ずありません。また500社くらいあった卸業者も、今では 2社しか生き残っていないそうです。要するに数社の大手 ストアに、市場を完全に牛耳られてしまったわけです。
クライアントは製造業なので、この大手ストアに商品を納 入できれば、別に問題ないのでは?と思われた方もおられ るでしょう。事実、納入している商品はありますし、そう いった商品を増やしていければ逆に理想的ではあるのです が、現実はシビアで、決してクリーンな世界でもありません。
この業界に限らず、大手ストアはこのように流通ルートを 制圧していきます。その上で、例え消費者から高評価を得 ているブランドがあっても、その類似商品を、自らコスト の安い中国あたりで製造し、プライベートブランド(PB) として、少し安価に設定して販売してくるのです。
例えば薬局なら、CVS Pharmacy、Walgreens Pharmacy、 Rite Aidなどで、風邪薬、頭痛薬、ドロップから、シャンプ ー、リンス、洗顔フォーム、電動歯ブラシ、電子体温計、 ペーパータオル、ティッシュペーパーに至るまで、必ずPB 品を目にするはずです。それこそまるで人気ブランドのパ クリのような商品ばかりですよね。
また私が住むエリアの食品ストアなら、Ralphs、 Albertsons、Vonsあたりが強いのですが、それぞれジャム やバター、調味料、缶詰、牛乳など、人気ブランド品の横 に、少し値段を安くしたPB品を必ず並べています。
要するに大手ストアは、売れ筋の商品ジャンルにおいては、 抜け目なくPB品を製造し、販売してくるのです。ですから 製造業者からすれば、良い商品を製造していただけでは、 類似商品を出されて終わり、という世界なのです。
他人事とは思えない
さて、私はこのクライアントの話を聞いたとき、実は背筋 が凍る思いでした。業種は違えど、我が社が運営している 2つのオンラインショップが戦っているオンラインという 市場の今の状況と、どこかかぶる感じがしたからです。
本稿の第52回で、靴のオンライン販売で有名なZapposと いう企業(年商は10億ドル)が、Amazonに買収されてし まったことで、私的にかなりショックを受けたことをお話 ししたのも、正にこういった展開を彷彿させたからです。 現在、Amazon.comのページ下には、傘下のショップのリ ンクが表示されているのですが、本の市場を占めたAmazon が、次々と色んなジャンルの市場を狙っていく様を見てい るようではないですか。今確認したら、またリンクが増え ていたので、余計ブルーになりました。
今はまだ、我が社も何とか戦う土俵には上がれていますが、 確かに5年前と比べると、検索エンジン上での周りの競合 各社の顔ぶれががらりと変わっていることに気付きます。 Amazon、Walmart、Target…。昔いた競合相手の中小企業 たちは一体どこへ??うぉーこわっ! 続きます。
前回、オンラインビジネスの救世主だったPPC(クリッ ク課金型キーワード連動広告)や、今の時代に成約率の高 い広告媒体について、少しお話ししました。そして現在の オンライン市場は、超大手数社が占有し始めていると結び ましたが、この状況こそが本稿の「中小企業が生き残るに は」シリーズを書こうと思ったきっかけでした。
さてこのテーマを掘り下げていく上で、どうしても触れて おきたい、ある業界の話があります。それは、ここアメリ カで、先駆的な商品展開で成功を収めるも、業界自体の構 造変革により、厳しい状況下に追いやられる中で、今も健 闘を続けている、我が社の製造業の某クライアントからお 聞きした話です。
ある業界の怖い話
その業界はアメリカで、現在、市場規模が約2,500億ド ル前後と言われるくらい、巨大な市場を誇っています。た だ25年から30年ほど前に、大手の台頭によって、業界の構 図が信じられないくらい、まったくの別物に塗り変えられ てしまったそうです。
その時期に、大手ディスカウントストア数社が、中間業者 をバイパスして製造業者から一括で仕入れることで、商品 の極端な価格破壊を起こし、それまでは全国で2万軒はあ った町の小売店が、1割くらいにまで淘汰されてしまった そうです。
私がアメリカに来た頃には、既にこの構造変革後でしたの で気が付きませんでしたが、確かに言われてみれば、この 業種の小売店は、大手ストア以外、町で見かけることはま ずありません。また500社くらいあった卸業者も、今では 2社しか生き残っていないそうです。要するに数社の大手 ストアに、市場を完全に牛耳られてしまったわけです。
クライアントは製造業なので、この大手ストアに商品を納 入できれば、別に問題ないのでは?と思われた方もおられ るでしょう。事実、納入している商品はありますし、そう いった商品を増やしていければ逆に理想的ではあるのです が、現実はシビアで、決してクリーンな世界でもありません。
この業界に限らず、大手ストアはこのように流通ルートを 制圧していきます。その上で、例え消費者から高評価を得 ているブランドがあっても、その類似商品を、自らコスト の安い中国あたりで製造し、プライベートブランド(PB) として、少し安価に設定して販売してくるのです。
例えば薬局なら、CVS Pharmacy、Walgreens Pharmacy、 Rite Aidなどで、風邪薬、頭痛薬、ドロップから、シャンプ ー、リンス、洗顔フォーム、電動歯ブラシ、電子体温計、 ペーパータオル、ティッシュペーパーに至るまで、必ずPB 品を目にするはずです。それこそまるで人気ブランドのパ クリのような商品ばかりですよね。
また私が住むエリアの食品ストアなら、Ralphs、 Albertsons、Vonsあたりが強いのですが、それぞれジャム やバター、調味料、缶詰、牛乳など、人気ブランド品の横 に、少し値段を安くしたPB品を必ず並べています。
要するに大手ストアは、売れ筋の商品ジャンルにおいては、 抜け目なくPB品を製造し、販売してくるのです。ですから 製造業者からすれば、良い商品を製造していただけでは、 類似商品を出されて終わり、という世界なのです。
他人事とは思えない
さて、私はこのクライアントの話を聞いたとき、実は背筋 が凍る思いでした。業種は違えど、我が社が運営している 2つのオンラインショップが戦っているオンラインという 市場の今の状況と、どこかかぶる感じがしたからです。
本稿の第52回で、靴のオンライン販売で有名なZapposと いう企業(年商は10億ドル)が、Amazonに買収されてし まったことで、私的にかなりショックを受けたことをお話 ししたのも、正にこういった展開を彷彿させたからです。 現在、Amazon.comのページ下には、傘下のショップのリ ンクが表示されているのですが、本の市場を占めたAmazon が、次々と色んなジャンルの市場を狙っていく様を見てい るようではないですか。今確認したら、またリンクが増え ていたので、余計ブルーになりました。
今はまだ、我が社も何とか戦う土俵には上がれていますが、 確かに5年前と比べると、検索エンジン上での周りの競合 各社の顔ぶれががらりと変わっていることに気付きます。 Amazon、Walmart、Target…。昔いた競合相手の中小企業 たちは一体どこへ??うぉーこわっ! 続きます。