2015年7月22日水曜日

日本ブランド衰退の理由⑤ ブランディング

(U.S. FrontLine誌 2013年4月20日号 掲載分)

[もっと詳しくブランディングについて知りたい方はこちらも参照ください: ブランディングとは?]

前回、消費者に本当のベネフィットを提供する商品・サー ビスでなければ、成功できるレベルに限界があることを、 女性ランジェリーのブランドで有名なヴィクトリアズ・シ ークレット(VS)を例に取り上げました。

ヨーロッパのようにランジェリーを日常的に身に着ける文 化がまだアメリカには浸透していなかった中で、消費者の ニーズと欲求を満たす、差別化された商品を快適な買い物 空間と共に提供することで、見事に消費革命を起こすこと に成功したのでした。

ブランディングで地位を確立

まだ消費者は週7日ではなく、週末のみランジェリーを身 に着けるという1995年ごろのプチ成功の時代では、VSは カタログでの販売が売上の約1/3を占めていました。 特に広告も打たず、各店舗もセールの張り紙をしたり、カ タログに販促物を同封したりする程度で、共通できている のは伝説とブランド名くらい。マーケティング戦略もバラ バラ、独立した事業体の寄せ集めといった感じで、ブラン ディング(ブランドの露出機会を増やし、イメージを浸 透・洗脳させて、ブランドの競争力を高める)を行ってい るというには程遠いものでした。それでも当時は、うまく いっていると思っていたそうです。

しかしそのままではどうしても「週末のみのランジェリー」 の壁を破れず、前回書いたような本当の商品力を備えた商 品を1999年に開発して、はじめて本当の大成功をおさめた のです。その後も攻めの姿勢は崩さず、2001年には魅力あ るさらなる新商品を開発しました。さらに、世界一流のカ メラマンと映画監督を起用してテレビキャンペーンを製作 し、スーパーモデルによるファッションショーを収録した 番組をゴールデンタイムに放送、1200万人以上に視聴させ るなど、本格的なブランディングも展開し、現在の地位を 築いていったわけです。

「VSは単に広告宣伝にお金を掛けたから成功した」と勘違 いされたくなかったので、前回から「商品力」の重要性に フォーカスしてきましたが、もちろん、あるレベル以上の 成功には商品力だけではどうにもならない世界があります。

“ある程度うまくいっている”がネックに

VSのケースで出てくるこの「バラバラで展開」「ある程度 うまくいっている」という表現は、実はわれわれには非常 になじみがあるもので、これまでにもかなりの頻度で耳に してきました。


例えば、紙面広告、オンライン広告、トレードショー、PR などバラバラで展開(複数の業者で担当)し、ブランド・ コンセプトの共有も成されていないとか、各支店で全く別 のマーケティング戦略をとっている、といった具合です。 (ちなみにブランド・コンセプトを複数の業者で共有して いくには、ある一定以上のマーケティングにおける知識・ 理解がないと困難を極めますが、今この話はスルーしてお きます)。

それでもある程度の売上が確保でき、運営できているので、 社内的には“うまくいっている”という認識になっており、 ブランディングの必要性など説こうとしても、危機意識も低 いので、なかなか理解されないのです。それこそ広告もそ んなに活用せずに大きくなれたような企業はなおさらです。 ただそういう企業であっても、少なくともこれまでわが社 が接してきたケースを少しでも分析してみると、決してブ ランディングが不要になっていたわけではないことが分か ります。こういった企業は例外なく、競合が少なかった時 代に差別化された商品やサービスを提供しており、広告を 使わなくとも口コミも含め、メディアに取り上げられるな ど、何らかの形で露出があり、長い年月の間に幸運にもブ ランディングされてきているのです。

ところがそういった背景意識がない上で、新しい市場へ新 商品・サービスを展開しようとするから、簡単に同じよう にはいかないことに、今更ながら驚いているわけです。

結局はトップのビジョン次第

もちろん、広告など打たなくとも、ブランディングも考慮 しなくとも、ある程度の売上が得られ、それで納得するの であれば、安定・安泰であるかはともかく、それも1つの 選択肢といえます。

VSのオーナーの場合、「週7日のランジェリー」という巨 大な市場をはっきり見据えていたので、「週末だけのランジ ェリー」では終わらず、攻めたてて成功を掴んだ上でも気 を緩めることなく、ブランディングも本気で行い、地位を 確立していったという言い方もできます。

結局はトップが、潜在市場のどこまでが見え、どこまでを 目指すのか? という話ですが、ビジネスの世界に安息の 地などないことを知っている企業のみが生き残っている気 がします。続きます。

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