2009年12月12日土曜日

SEO業者なのにSEOを依頼?!

前回、我が社が行ったセミナーでSEO(ウェブサイトを検索エンジンで上位表示させる手法)の存在を知った業者が、数週間後にセールストークだけを磨き、できもしないSEOサービスの営業を臆面もなく始めたことを紹介しました。SEOが騒がれるようになってずいぶん経ち、SEOサービスやコンサルティングを提供していると“謳う”業者がかなり増えたと思います。


しかし本当のSEOは、本やウェブからの情報収集だけで誰でもできるほど甘くはありません。SEO本来の目的である訪問者の獲得に大きな効果を望むとすれば、人々によく使われるキーワードで検索結果のトップ5以内に入る必要があり、これが実践できる業者は世界でもほんの一握りしかいません。にもかかわらず、今ではほとんどのホームページ制作会社や広告代理店が口を揃えて「SEOができる」と語ります。


できもしないSEOを宣伝する詐欺


以前、「自社サイトのSEOをして欲しい」と電話で依頼してきた会社がありました。事業内容を尋ねるとIT関連とのこと。ホームページのアドレスを教えてもらい、さっそく見てみると思わず絶句してしまいました。そこには、次のように書かれていたのです。


サービス:SEO対策コンサルティング

…(中略)…

ポイントはまだまだありますが、これらの基礎をマスターしている弊社コンサルタントが、売れるサイト構築を一からお手伝いいたします。




つまり、SEOコンサルティングをすると宣伝している会社なのに、自社のサイトのSEOができないため我が社へ依頼してきたわけです。絶句した後に私は「弊社と競合するサービスでなければ、SEOをご提供できる可能性はありますが……まずはちょっと検討させて頂きます」と言葉を濁して電話を切りました。


「自社のサービス内容に挙げているのなら自分でやれよ」と正直思いました(今確認してみると、このサービスは既にホームページから削除されていました)。電話してきたのは、アメリカの日系会社でした。競合するビジネスをやろうとしている上、できもしないサービスを「できる」と謳う同業他社のマーケティングを助けてあげようとするところがあるとは思えません。そんな依頼をしてくる相手の思考が不思議でなりませんでした。


実は日本からも、似たような問い合わせをかなり受けました。弊社のウェブサイトは日本でもよく知られているため、同業他社から技術提携の話もよく持ちかけられますが、ノウハウ流出を避けるため、全てお断りしています。確かに、SEOを正しく施したウェブサイトとそうでないものでは、見た目は同じであってもサービス料金が1桁違うことがざらにあります。ですので、業者ができもしないSEOサービスを「できる」と謳いたい心境は分かります。しかし、これは立派な詐欺だと思うのは私だけでしょうか?



あえて「ホームページ」と呼ぶ


以前、「ホームページ」という表現は正しくは、複数ページからなるウェブサイトの最初のページという意味であり、日本的な「ホームページ=ウェブサイト」という使い方は誤っていると指摘しました。そして私は、SEOを無視した、つまり訪問者のいない商用サイトは、その存在目的を考えれば間違っているとも思います。


そこで私は、SEOを無視し単なるオンライン・ブロシュアー化したサイトを「ホームページ」と呼び、SEOなど集客やマーケティングをしっかり考慮したものを「ウェブサイト」と呼ぶことで、両者を区別しています。


前者は何らかの広告を別に行わなければ訪問者は得られません。制作費はその分安く、10ページ程度なら相場は2000〜3000ドルでしょう。後者は、SEOで狙うキーワードの難易度やマーケットにもよりますが、相場は6000〜3万5000ドルとなります(ただし、データベースやシステムなどを含めずにこの値段というのが味噌です。システムなどを含めれば料金は一気に高くなりますが、どんなに素晴らしいシステムが組み込まれていたとしても、訪問者がなければ無価値です。ですので依頼者は制作費にSEOが含まれているのか必ず確認してください)。


IT業者は自社が提供するサービスがどちらに該当するのかを明確にすべきです。そしてその価値を顧客に正しく伝え、伝えた通りに実現できて初めて、プロなのではないでしょうか?

2009年11月8日日曜日

セミナーに出ただけでSEO営業を開始?!

前回、ホーム前回、ホームページをビジネスに生かすのに欠かせない集客力は、SEO(ホームページを検索エンジンで上位表示させる手法)の出来を確認すれば、ある程度分かることを説明しました。今回は、このSEOに関して起きたとんでもない事件を紹介します。


セールストークだけを磨いて


6年ほど前のことです。ある依頼を受けて一般企業向けにウェブマーケティングのセミナーを行ったことがありました。当時、日系企業の間ではウェブマーケティングの有効な手法であるSEOの存在はほとんど知られていませんでした。そのため、一般の方以外に同業他社もかなり出席した大盛況のセミナーとなりました。


セミナーが終わってから数週間後のことです。我が社のクライアントから、ある同業他社が「こんなすごいこと(SEO)を私たちはできるんです!」と得意げに営業してきたことを知らされました。言われてみるとその同業他社からはセミナーに3人も出席があり、熱心にメモを取られていたのを覚えています。


しかしセミナーでは、SEOの必要性は語っても、やり方などは一切教えていません。長い年月をかけて情報収集、分析、テスト、検証を繰り返して得られた独自のノウハウこそが命なのであり、皆そうやって、検索エンジンの順位を競っているのです。私はよく「焼鳥屋の秘伝のタレ」のようなものだと説明しています。


もちろん、表面的な情報なら本やウェブで色々解説されています。しかしそれらは、SEOをやろうとするのなら誰でも知っている内容ばかりです。知っていて当たり前、せいぜいスタート地点に立つための情報でしかありません。ところが、SEOという商売種を昨日今日のセミナーで初めて知った業者が、セールストークだけを磨いて臆面もなくSEOサービスの営業を開始したのです。幸いそのクライアントは、相手の嘘を見抜けるだけの知識を我々から得ていたので良かったのですが、SEOを全く知らない企業なら、騙されてしまったのではないかと危惧しています。


ウェブマーケティングをビジネスに有効に生かしてほしいと考えて行ったセミナーでしたが、こうした事態が生じて非常に残念でした。我が社における私のパートナーであるレイア・ワークマンが本誌にウェブマーケティング関連の連載を持っていたのも、実はこうした事態を少しでも回避したいという思いがあったからです。


その同業他社に技術的ノウハウが全く無いことは、当時の彼らのホームページを見れば一目瞭然でした。ちなみに6年経った今でも、誰も探していないマニアックなキーワードでは何とか上位に来ますが、まだSEOの本質を理解してはいないようです。誰も探していない、つまり競争が激しくないキーワードで上位に持ってくることなら誰にでもできます。しかし、それで訪問者が増えるわけではないので、ビジネス的には無価値です。そういうことを知らない顧客に対して、実際には無意味なキーワードで上位表示を行い、それをセールストークに使っている姿が目に浮かびます。


本質的に価値あるサービスを


数年前、この同業他社は、自分のクライアントを集めてSEOのセミナーを開いたそうです。その出席者とたまたま話す機会があり、私はその内容を知ることになりました。驚いたことに「SEOを自動的に行ってくれる有料のソフトがあり、それを使えば検索結果の順位が上がります!」という内容だったらしいのです。


実例として「100位くらいだったのが80〜90位代に上がった」と紹介されていたようですが、これは確かにあり得ることです。しかし、多くの人によく使われるキーワードでトップ5くらいに入らなければ、訪問者数が飛躍的に増えるということは通常ありません。キーワードによっては20位くらいまでなら有効な場合もありますが、80位代って……。


また、仮にその有料ソフトで何かできたとしても、誰もがその同じソフトを使えば結局意味はないわけです。やはり、どこまでもSEOの本質を見ようとしていないことが分かります。もっとも100%嘘のセールストークをしなくなっただけましという考え方もできますが、やはり、本質的に価値のあるサービスを提供する努力をしていただきたいものです。

2009年10月5日月曜日

これは詐欺だ ウェブデザイン編

しばらくシステム開発の話を続けていたので、少し気分を変えてこれから数回、ウェブ制作現場の話をしたいと思います。ところで日本人の間でよく使われる「ホームページ」という表現。正しくは、複数ページからなるウェブサイトの最初のページという意味ですが、なぜかウェブサイト全体を指す言葉としても使われています。今回からしばらく、あえて後者の意味で「ホームページ」という表現を使います。


今は明らかにしませんが、ちょっとした意図があるのです。さて、企業にとってホームページは持っていて当たり前の時代となり、ホームページ制作の需要は格段に増え、その制作会社も増加しました。しかし皆さんは、こういった業者が実際にどうやってホームページを制作しているかご存知でしょうか。


テンプレートを流用するホームページ作り


実は「ホームページ・テンプレート」と呼ばれる雛形が市販されており、かなり多くの業者がこれを利用しています。プロのデザイナーが汎用向けに作成した雛形から好きなデザインを選び、ロゴやテキストを変更するだけで、プロが作ったかのようなホームページを誰でも簡単に作成できるのです。プロのデザイナーがいない業者でも、雛形を使えば、素人のアルバイトにテキストを変更させるだけで、それっぽいホームページをすぐに納品できます(実際にそうやってビジネスをしている業者もいます)。


この雛形は、高くとも100ドル以下で購入でき、種類も豊富で数万ほども存在します。ホームページの制作費は、コンサルティング費(設計)、デザイン費、そしてページ作成費(コーディング費)などを合計して算出されるのですが、相場は、市販の雛形をただ流用したものなら10ページ以下で2000〜3000ドル。雛形を利用してデザイン費を100ドル以下に抑え、賃金の安いアルバイトに制作させれば、十分にビジネスになるのです。その上、市販の雛形を利用してホームページを制作するのなら、誰がやっても見た目の出来には大差ありません。


もちろん中には雛形を使わず、一から自分たちでデザインする業者もいます。しかし厄介なのは、そうして作った方が必ずしも良いものになるとは限らないということです。何しろ市販の雛形は、大量販売するため価格は安いものの、バリバリ経験を積んだプロのデザイナーが作ったものです。彼らと同等のシニアレベルのデザイナーが、もしも新規にデザインを作成したら2000ドル以上はかかるでしょう。制作費を抑えるため、エントリーあるいはジュニアレベルのデザイナーがいちからデザインして「完全オリジナルデザインだ」と主張しても、果たして市販の雛形と勝負になるのか、ということです。


オリジナルと詐称し売り込む悪徳業者


雛形から作ったホームページをさもオリジナルであるかのように語り、法外な金額で売りつける業者もいるので注意してください。既に述べたように、市販の雛形はプロが作った美しいデザインとはいえ、誰でも簡単に購入できるものです。ただ、一般の方にはその存在があまり知られていないので、簡単に騙されてしまうわけです。


2000〜3000ドルが相場のホームページを、言葉巧みに1万ドルで売りつけていた業者を私は知っています。制作
依頼から1年経ってもホームページが完成せず、不安になった被害者が我が社へ助けを求めてきて、発覚したのです。偶然にもその悪徳業者は、元友人が経営する米系の会社でした。こういう例は日系ではよく見かけましたが、米系にもそういう業者がいたのは驚きでした。


“元友人”という表現からお分かりのように、その事件がきっかけで今は全く交流していません。世の中には嘘八百を真顔で話せる人間がいるから怖いと改めて思いました。彼は決して根が悪い人間ではなかったと思いますが、ビジネスにも自分にも甘いため、いつしか感覚が麻痺してしまったのでしょう。


誤解してほしくないのですが、雛形を使ったホームページの制作自体は悪いことではありません。ただ、そうやって出来上がるホームページの価値は、顧客に正しく伝えて欲しいと思います。次回は、デザインとは別の観点から詐欺的行為について話します。

2009年9月8日火曜日

これは詐欺だ コーディング編

前回、ウェブの制作費は、コンサルティング費(設計)、デザイン費、そしてページ作成費(コーディング費)を合計して算出されること、そして大半の業者は、100ドルほどで簡単に誰でも購入できる「ホームページ・テンプレート」(ひな形)を利用していることを説明しました。数万種もあるひな形から好きなデザインを選び、ロゴやテキストを変更するだけで、見た目はプロフェッショナルな「ホームページ」が誰でも簡単に作れるのです(「ホームページ」とは正しくは、複数ページからなるウェブサイトの最初のページという意味ですが、なぜかウェブサイト全体を指す言葉としても使われています。今回も、あえて後者の意味で「ホームページ」という表現を使います。その意図は後で明らかにします)。

ウェブ屋にも資格制度を設けたい

皆さんは普段、色々なホームページをご覧になられていると思います。では、ホームページが何でできているかご存知ですか? ホームページは、皆さんの目に見える画像などのほか、HTMLというごく簡単なプログラムコードで出来ています。このコードには、世界共通で定められた基本仕様があり、本当のプロならそうした仕様は当然熟知しています。

ただ、良くも悪くも最近の技術進歩により、コードを一切理解していなくても、便利なソフトを使って誰でも簡単にホームページが作成できるようになりました。そのため、プロのはずなのにコードを理解していない、にわかウェブ開発者もかなり増えてきています。

以前、我が社を訪れたあるクライアントから、「某広告代理店に作成してもらったホームページに何の反応もないのでリニューアルしたい」という依頼をいただきました。そして、まずはそのホームページを見せてもらったのです。クライアント曰く、「このデザインでは商品の良さがうまく伝わらないので、もう少し変えたい」ということでした。確かにその通りでしたが、それ以前にまず私は、1日の訪問者数はどれくらいかと尋ねたのです。すると「分からない」との答えでしたので、まずは訪問者数について探っていくことにしたのです。

プロなら有り得ないデタラメコード

ある程度の訪問者数があるとすれば、検索エンジンで何らかの言葉を検索したユーザーの目にそのホームページが留まっているはずです(もちろん、その他どこかに広告を出していれば別です)。逆に言えば、ホームページを検索エンジンで上位表示させる手法、SEOがどれくらい実現できているかを確認すれば、具体的な訪問者数は把握していなくても、おおよその集客力は分かるのです。

また、そのホームページのコードを見れば、SEOに関する理解度はもちろんのこと、制作者のレベルまでが分かってしまいます。優秀な職人さんがビルの天井や天井裏を見れば、建築に関わった職人のレベルが分かるのと同じです。ちなみにホームページのコードは、誰でも簡単に見ることができます。

そのクライアントのホームページのコードを見た私は、愕然としました。SEOうんぬん以前の問題でした。HTMLを全く理解していない素人が作成したものだと一瞬で分かるデタラメさだったのです。見かけだけは普通に表示されているため、一般の方には分かり難いでしょう。しかしそれはまるで、内部の配管がなされないまま、きれいな天井ボードで塞いだだけで完成とされたマンションの一室でした。

世の中のほとんどのウェブ業者はSEOを深く理解していないため、単に見た目がきれいなだけで訪問者がないに等しいホームページを作ってしまいがちです。このクライアントの場合も、そうしたホームページの一つだったということで話は終わりそうですが、「ひな形を使うような業者であっても、ここまでデタラメなコードにはならないだろう」と思わされるひどさだったのです。おそらく、素人が見よう見まねで作成したのでしょう。そんなものにクライアントは結構な額を支払っていたのです。

我々の本来のビジネスのあり方を愚弄しているとしか思えず、この某広告代理店には強い憤りを感じました。「素人が、できもしないことをプロの顔をしてするな!」と言いたくなりました。次回は、憤りを通り越してあきれ果ててしまった例を紹介します。

2009年8月5日水曜日

そのシステム開発費、適正ですか?

システム開発費が決して安いものではないということは、皆さんも何となくご存知かと思います。業務管理系システムであれば、極めて小さい規模でも5千~数万ドル、中規模で数十万ドル、大規模なら数百万ドルになります。一方、インターネット上で機能するウェブ系システムですと、どんなに大規模でも、通常は数十万ドルです。とはいえ、それでも決して安くはありません。

開発費はどうやって計算する?

では、こんな高額なシステム開発費を、そもそもどうやって算出しているかご存知ですか? よく利用されるのが「人月計算」という算出方法です。1人の開発者が1カ月間、開発に携わる場合を「1人月」とし、何人が何カ月間、開発に携わるかによって開発費を計算するわけです。例えば3人体制で5カ月開発するとすれば「15人月」となります。そして「1人月」当たりの単価は、ソフト会社によって違います。私が知る限り、日本なら70~150万円/人月という具合です。ですので「15人月」ですと、最低で1050万円の開発費となります。

逆に、すごく優秀で生産性の高い開発者がいたとしても、なかなか開発費には反映し難いものです。例えば、「うちの開発者は10倍優秀ですから、700万円/人月いただきます」なんて言おうものなら、顧客は確実に引いてしまうでしょう。

開発人数とクオリティーは反比例する

某大手自動車メーカーに勤める友人が、総勢100人の開発者を使った大規模な社内システム開発プロジェクトを日本時代に担当したと、自慢げに話していました。「そんな案件は、まずうちの会社へもってこい!」と軽く突っ込んだのですが(笑)、正直、開発者が100人も必要なこと自体を疑問に感じました。「短期間で終わらせるため?」と聞いたところ、少なくとも1年以上は費やしたそうですから、特に早いわけでもありません。詳細を知らないので推測ですが、開発予算がたくさん欲しいソフト会社側は、見積もり段階で提示した高額の開発費に、「人月計算」で帳尻を合わせようとして、開発者を100人用意しなければならなかったのかもしれません。

大勢で分業して開発すると、それぞれのスキルの差や業務知識、視野の違いがあるため、少人数で開発したときより品質が落ちやすいことを私は知っています。そのために開発自体が失敗する場合だってあり得ます。

その一方で私は、開発費5億円相当のPOSシステム(*)をわずか3人で開発した人たちを知っています。開発期間はよく覚えていませんが、少なくとも1年以内だったはずです。実質半年くらいだったかもしれません。「人月計算」で考えると、どんなに少なく見積もっても軽く1000万円/人月以上となります。私自身も、開発費3000万円程度のシステムなら、1~2人で2~3カ月かけて全てをこなすのが普通です。この場合も、「人月計算」では最低、500万円/人月となります。

開発費はシステムの価値で決まるべき

開発費を算出する際、本来なら、「このシステムを導入すれば幾らのメリットが生じるから、幾ら投資する価値がある」という考え方をすべきだと思います。もちろん、この算定方法も決して簡単ではないのですが、「人月計算」だけではやはり無理があります。

ライアント側に「このシステムには、これだけ支払う価値がある」という考え方を、ソフト会社側にも「開発に携わる人数や開発にかかった期間の長短に関わらず、使えるシステムを納期までに納めるのが責務」というスタンスを浸透させるべきです。そうすればわざわざ開発者100人を用意したりするような無意味な人月調整がなくなるばかりか、納期が予定より早くなる可能性も出てきます。そして、システムの品質も高まるというメリットも生じるでしょう。

2009年7月24日金曜日

プログラマーはシステムを開発するな!

これまで、システム導入が失敗する理由について触れてきましたが、今回、さらにもう1つ、開発者側の致命的な問題についてお話しします。

開発テクニックは重要ではない

去に私が接してきた全てのプログラマー(PG)に共通していえることなのですが、彼らは、開発テクニックに強い関心があり、先端技術を駆使してシステムの画面を色々と工夫しようとします。例えば「リストのここをクリックすると、項目の並び順が瞬時に変わるようにしたい」だとか「マウスをドラッグした時、その部分が拡大表示されるようにしたい」だとか。もちろん、きめ細かく配慮の行き届いた画面を顧客のために作りたいという心がけは良いのです。しかしそれが往々にして、顧客の業務の本質には関係ない、表面的なだけの小手先の機能の実現となり、PGの自己満足で終わってしまいがちです。

例えば業務管理系システムであれば、まずその会社の業務について深く理解していなければなりません。さらに、その会社の経営方針や、管理職の考え、実際にシステムを使用するオペレーターのスキルなどを見据えるトータルな視野も必要になります。ところが多くのPGは、顧客の業務内容や会社の実情には、開発テクニックほどの強い関心を持っていません。そのため、「何のためのシステム」であるかがきちんと捉えられていないのです。

顧客の業務の実情を把握しているか

例えば、細かいマウス操作でいろいろ便利な機能が使い分けられるシステムを作っても、オペレーターがコンピュータ慣れしていない人達であれば、むしろ基本的な数値入力とキーボード操作だけで使用できるシステムの方が良いわけです。

切心から、誰でも簡単に、いろいろな画面から商品情報を取り出せる仕様にしたとします。現場のオペレーターには便利で好まれるかもしれませんが、仕入先や商品原価までもが誰にでも丸分かりになってしまうのならば、経営者としてはありがたくないでしょう。

とんどのシステム開発において、顧客の業務を把握したシステムエンジニア(SE)が指示書を作成し、それに沿ってPGがプログラミングを行います。しかし、指示書に業務の全てを事細かに書き起こすことは非現実的です。不可能ではないかもしれませんが、膨大な作業量になる上、実際にプログラミングを始めてから、改善案や懸念材料が新たに発見されることも多いのです。ですから「指示書以外の事柄は全て不要」というスタンスは危険過ぎます。PGが顧客の業務の実情を把握しておかねばらないゆえんです。


中国、インドへのアウトソースが失敗する理由

近年、安い人件費の魅力につられ、中国、インドへシステム開発をアウトソースする傾向にあります。しかし一般的に彼らは、指示書の通りには作ってくれても、そこに書かれていないことについては配慮しません。ですから、「マイナスの数値が入力できてしまう年月日欄」だとか「5桁のパスワードを入力する画面で6桁以上入力してもエラーメッセージが出ない欄」などが生じたりするわけです。

日本人が働いている下請け企業にシステム開発をまかせていた時ですら、満足に使えるシステムを納品できなかったソフト会社が、海外へ開発をアウトソースしたりすれば、「こんなことも理解されないまま納品されてしまった」という顧客からの苦情が増加するのは当たり前です。

相互に深い有機的なつながりがあるべきシステムをパーツに分け、指示書で無機質に表現して別々に開発させ、つなぎ合わせて動かそうとすること自体、無理があるのだと思います。「システムはSEが開発すべき」というのが私の持論です。SEの資質をもったPG、もしくはPGにもなれるSEが開発しなければ、本当に使えるシステムにはならないという意味です。「指示書に書いてあることだけ実現させれば完成」というPGの考えこそ、使えないシステムがたくさん開発されてきた元凶です。あらゆる点について細大漏らさぬ指示書の作成など不可能なわけですから、指示書には示されていない問題や懸念要素を察知し対応できるスキルこそ開発者には必要なのです。

2009年6月30日火曜日

システムの作り直しを避けたければ

前回、システム導入が失敗する理由について少し触れました。下請けとして開発している場合、納品を済ませると、現場からのフィードバックを受けないまま次の開発へと移っていくことが多いため、独りよがりになり、なかなか成長できないことを理由の一つに挙げました。今回は、これとは別の問題を紹介します.


プログラミングできない人の設計

システム開発は、設計とプログラミングからなります。システムの全体を構想するのが設計で、それを実際にプログラムコードで書き上げていくのがプログラミングです。

ず設計から始まりますが、設計者は、過去にプログラミング経験があったとしても、今は現役のプログラマーではないというケースがよくあります。その結果、机上の空論的な設計となり、実際の開発で生ずる問題や危険性を認識できていない事態がよく発生します。

イメージしやすいよう建築現場で例えてみましょう。配管工事を行い、図面に沿って排水用パイプを設置するとします。図面を描くのが、上記の設計者の役割です

さて、排水用パイプと並べて電線も通すことになっており、図面上では、両者は問題なく並べられるはずでした。しかし、排水用パイプのつなぎ目に採用した新開発のパーツが、従来のものより太いため、図面通りに施行したところ、パイプのつなぎ目が太くなった分、電線を通せなくなってしまったのです。

要するに、昔の知識だけの設計では、現場で通用しないことがあるわけです。

設計変更が必要なら作り直しと思え

そして、一度開発を終えたら、後から設計を変更するのはとても大変な作業となりがちです。それだけ追加費用も高くつきます。ひどい場合、すべて作り直しになることもありますから、設計という工程はとても重要です。
例えば3階建てのビルを建てた後、やっぱり15回建てに変更したいといっても、単純に上階を継ぎ足すわけにはいきません。それだけの重さに耐え得る設計になっていない可能性があるからです。最悪の場合、ビル全体を取り壊して一から、ということもあり得ます。

「現在の業務では一つの倉庫しかないから」という理由で、一倉庫に限定して設計された在庫管理システムをたまに見かけますが、「ビジネスが拡張して複数の倉庫管理が必要になったらどうするつもりなのだろう?」と思ってしまいます。おそらく作り直しに近い変更が必要になるでしょう。


設計力が寿命を決める

拡張性を見据えた設計になっているかどうかで、そのシステムの成否や寿命が決まると言っても過言ではありません。
私は以前、格安航空券を取り扱う旅行代理店のウェブシステムを構築したことがあります。おそらく過去に最も、設計について頭を悩ませた仕事でした。というのも、各航空会社の格安航空券料金の仕様は、統一されていないだけでなく、かなり頻繁に根本から変更されることが多かったからです。

今は、オンラインで航空券予約までできる旅行代理店のサイトが増え、非常に便利になりました。しかし目玉の格安航空券は、通常の航空券と異なり、各航空会社からリアルタイムで提供される航空券データとは別枠であるため、全て網羅するには、結局、手作業でデータを入力する必要があります。そのため各社とも、この部分はかなり苦戦しているようです。

実際に聞いた話ですが、ある会社で何十万ドルもかけて開発を試みたシステムが、格安航空券料金の度重なる仕様変更についていけず、結局お蔵入りになったのだとか。

私の構築したシステムが6~7年経った今も現役でいられるのは、もちろん、優秀な現場の方にうまく使っていただいているからです。しかし、設計時に考え抜いていなければ、おそらく2~3年の寿命で終わっていたと思います。

2009年6月1日月曜日

システム導入が失敗する理由、教えます

前回、取引先からの注文や在庫を管理する販売管理システムを下請け業者に作らせたところ、かなり使えないものが納品されたという話を紹介しました。商品情報の照会に5~10分かかるとか、売り上げ入力を間違えても訂正できないとか。

今回は、なぜ、このようなお粗末なものを納品してくるソフト会社があるのかを考えます。

詐欺まがいのビジネスが横行

「多額の投資をしてシステム導入を試みたが、うまくいかなかった」という話を、職業柄、私は色々な所で聞きます。読者の皆さんも、1、2度くらい、そういった話を聞いた、あるいは直接経験したことがあるのではないでしょうか。

前回取り上げた例は、日本時代に私が直接関係したものですが、アメリカでも似たような話をよく耳にしました。「開発能力がないソフト会社が高額なシステム開発を受注したものの、納品できず訴訟になった」「大金を使ってシステムを導入してみたが、使い物にならず眠ったまま」「使えないシステムに開発費用を払い続ける羽目になり、担当者が責任を問われクビになった」などなど。とにかく詐欺まがいのビジネスが横行していると思います。

ただもしかすると、そうしたシステムを納品してくる本人たちには、その自覚がないのかもしれません。

当時、システム開発を直接依頼されたのは私のいた会社であり、その会社から下請けに開発を発注していました。ですから、システムが納品された後、エンドユーザー(クライアント)からの苦情を受けるのは私のいた会社です。例えば、以下のような苦情がありました。

「複数ユーザーで同時に入力すると、在庫数がおかしくなった」「データ量は多くないのに、いきなり処理速度が遅くなった」「後から日付が任意に変更可能なせいで、会計上の矛盾を生じてしまった」

もっともな苦情ばかりであり、明らかにシステムを開発した側に問題がありました。そしてこれらは、世の中の一般的な販売管理システムでは解決されていて当然の問題なのです。ですので私は「いったいこのソフト会社は、今までどんなシステムを作ってきたのだろう?」と疑問に思いました。

下手の横好き集団?

下請け業者が納品してきたシステムのプログラムを解析してみると、プログラムコードの書き方がとても非効率的であることが分かりました。そのため、後から変更を加えるのが大変なのです。要するに、その場しのぎの書き方であり、先々のことを考えて開発されてはいませんでした。

IT業界では、規模の大きいシステム開発であるほど、実際に開発を行う業者は2次請け、3次請けが当たり前だと以前お話ししました。そのことが大きく災いしていると思います。彼らは、1つのプロジェクトを終える(納品する)とすぐに次のプロジェクトへ移ります。したがって自分の仕事の結果を知らないままであり、技術的に成長するチャンスがないのです。

私が入社して以降、私のいた会社は自社内でシステムを開発できる体制に移行していくのですが、当時、開発者の採用を試みる度に、この下請け業者のようなレベルの人材ばかりなのに気づきました。そして、エンドユーザーからのフィードバックを受けずにいるのがどれだけヤバイのか実感したのです。

納品後に起きた問題を知らず、自分のやり方だけを正解と思い込んでいる開発者ほど、扱いづらいものはありません。面接しただけの人や試用しただけの人も合わせると、過去に私はおそらく50人以上の開発者と会っています。しかし、直請けで仕事をする会社にいたのは2、3人。そして、本当にモノになったのも2、3人でした。この業界、開発者の人数だけは多いと思うのですが……。

「正解は100通りある。その中で最適解を見つけ出すのがプロだ」というのが私の持論です。一定の結果に満足してしまったら、必ずそこで成長は止まります。常に上を目指すという気構えがなければ、この業界ではやっていけません。もしもあなたがIT業界を目指しているのなら、肝に銘じておいてください。

2009年5月15日金曜日

大金をかけたシステムが使い物にならない!その2

前回、1500万円をかけて開発したシステムのひどい出来具合についてお話ししました。そのシステムは、取引先からの注文や売上、在庫などを管理する販売管理システムでしたが、画面で商品を1つ選択するのに5~10分もかかるお粗末さだったのです。

さらに驚くべきことに、そのシステム開発は2回目でした。既に一度、同じく1500万円をかけた最初のシステム開発が失敗に終わっており、再度クライアントに予算を取ってもらった上での失敗だったのです。

あまりにも高い授業料

常識的に考えれば、最初に失敗した段階で、クライアントもそのソフト会社に見切りをつけると思いますよね? そうしなかった理由の1つに、最初のシステムへの投資が失敗だったことが上司に知られたら、責任問題に発展し、担当者がクビになる可能性が高かったという事情もあったのだとか。そして、そのシステムの開発費は当時の相場で3000万円程度であり、たとえやり直して費用が倍になってもまだ相場並であるため、何とかやり過ごせたということもあるようです。

ところで、私がなぜこんな話を知っているかというと、何を隠そう、日本で私が入社したソフト会社こそ、このクライアントからシステム開発を請け負った業者だったのです。ただ、その時点では自社内で開発するだけのスキルがなく、実際の開発を下請け業者に外注したのでした。

私が入社したときは、すでに2回目の開発の終盤でした。1回目の失敗については、「こんなことがあった」という程度に聞いていただけですが、要は下請け業者から納品されたシステムを実際に動かそうとしたら、考えられないくらいにバグ(不具合)があり、とても使えるものではなかったそうです。もちろん2回目の開発では下請け業者を変えました。しかし、どの業者も似たり寄ったりで、2回目もトラブルの連続となったのです。


入力ミス厳禁なシステムって……

販売管理システムでは、売上登録を間違ってしまった場合、売上キャンセル処理(日本的な表現では赤伝処理)を行えるのが普通です。例えば100ドルの商品を1個売上登録した後でそれが間違いだったことに気づいた場合、100ドルの商品をマイナス1個売り上げたと登録して、商品の数量も売上金額も相殺して帳尻を合わせるわけです(マイナスの伝票は赤字で記入するため、赤伝処理と呼ばれているのだと思います)。

ところが下請け業者が納品してきたシステムには、この赤伝処理機能がなかったのです。それに気づき、機能を追加するよう依頼したところ、「その話は聞いていなかったから追加開発費を出せ」と言ってくるのでした。クライアントに「入力は絶対に間違えられません」とも言えず、泣く泣く追加費用の要求を呑んだとのことですが、次に出来上がってきたものを試してみると、数量だけがマイナスになるのです。商品の在庫数の帳尻は合いますが、売上金額は倍増してしまいます。「金額が合わなくなるので修正して欲しい」と伝えると、「指示を受けたのは数量のことだけ。その仕様は既に満たしている。再修正が必要なら追加開発費をさらに出せ」と来たそうです。ソフト会社が儲かるはずです……。

皆さんはこんな話を聞いたら、よほど特別なケースだと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。むしろこんな話ばかりのIT業界なのです。実際、私がアメリカに来てからも、赤伝処理機能がないまま開発されたシステムを見たことがあります。それを使っていた現場の方は「入力を間違えられないんだよね」と嘆いているだけで、それはそれですごいと思いましたが、ここで改めて申し上げます。「そんなシステム、決して普通ではないですよ」

2009年4月29日水曜日

大金をかけたシステムが使い物にならない!その1

いきなりですが、「システム」って何だか知ってます?

IT業界ではこの言葉をよく耳にします。一般の方には馴染みが薄いかもしれませんが、知らないうちに誰もが利用しているものです。YahooやGoogleなどの検索エンジン、amazon.comに代表されるショッピングサイトなどは、全てシステムで作られています。用途に合わせて様々なシステムがあり、レストランで店員さんがタッチパネル式の機械に注文を登録しているのもシステムです。店員さんは、あらかじめ登録されていた料理名を画面に呼び出し、注文を入力します。

こうして入力されたデータは全て「データベース」という情報の格納庫で管理されます。データベースは情報の詰まった大きな箱です。ただ、それだけではあまり役に立ちません。情報を便利に使えるように、プログラミングして操作画面を改良したり、必要な情報を印刷できたりするようにします。書類をダンボール箱に溜めておくだけでは、後で探す際に不便ですよね。内容ごとにフォルダに挟み、付箋を付けておけば分かりやすくなります。このダンボール箱がデータベース、フォルダや付箋が操作画面だと考え
とイメージしやすいでしょうか。

このように、データベースや操作画面を用意する一連の作業を、システム開発と呼んでいます。

2次請け、3次請けは当たり前

日本にいた頃のことです。ある会社が、販売管理システム(取引先からの注文や仕入先への発注を始め、売上、在庫、請求、入金、支払などを管理するシステム)の開発を、あるソフト会社に依頼しました。しかし、そのソフト会社には開発できる人材がおらず、システムの設計と開発を、それぞれ別の2社に外注したのです。

これは、IT業界にはよくある話です。規模の大きい仕事であるほど、実際に開発を行う業者は2次請け、3次請けというのは当たり前で、一説には、直請けだけで仕事のできている業者はわずか5%以下とも言われています。ですから、開発の多くはエンドユーザーの声の届かないところで行われがちで、その弊害は少なくありません。

第一声は「遅っ!」 唖然とする現場

取引先からの注文をシステムに入力する際は、「何の商品を幾らの価格で何個」という情報を入力します。「何の商品」かを入力する場合、あらかじめ登録された商品情報から該当する商品を呼び出して指定します。ですから、納品された販売管理システムには、商品情報を照会する機能がありました。ところが、この機能がとてつもなく遅いのです。商品を一つ選択するのに5~10分も要すのでした。プルダウン(ドロップダウン)式だったのですが、クリックした後、しばらくじっと待つ必要がありました。毎日大量に注
文を入力するわけですから、これでは使い物になりません。

動作が遅い理由は、登録されている商品数が数万件にも及ぶためでした。一般的にプルダウン式の場合、リストに表示させる全情報を、ユーザーがクリックする前にデータベースから取得しておきます。ですので、リストに数万件も表示させようとすれば、時間がかかるのは当然です。そして、そもそも数万件の中から、人間が視認して一件選ぶこと自体、非現実的です。

ではこれは誰の責任でしょう? システムの開発を始める前に、どれぐらいの商品数を取り扱うものなのか当然理解しておく必要があります。このケースでは、エンドユーザーとやり取りをしていたシステムの設計者は、それを理解していました。しかし、実際に開発を行う別の業者には伝えられていなかったのです。しかしプロならば「どういう状況でどう使用されるシステムなのか」正しいイメージをつかんでから開発に入るべきです。ちなみにこのシステム、1500万円の開発案件でした。そんな規模の仕事なのに、こんな程度のデキだったのです。

しかし驚いてはいけません。実はこれは、同じシステムの2回目の開発だったのです。1回目の開発でも失敗し、再度クライアントに予算をとってもらって行った仕事だったのでした……。

2009年4月16日木曜日

ITには人を救う力があるはずなのに

初めまして。ACE Inc.の代表、日比野と申します。IT業界に身を投じて12年、アメリカで起業して8年が経ち、これまでずっと胸の内に秘めてきた思いを実現すべく筆を執りました。

その思いとはズバリ「不透明なIT業 界を丸裸にすることで、横行する悪徳サービスを排除し、企業や個人が本来受けてしかるべき正しいサービスを受けられるようにすること」です。

そのためには、サービスを受ける側の皆さんに正しい予備知識を持ってもらうことが必要だと思います。といっても難しい技術論を説くつもりはありません。一般の方にも分かりやすく、知っていて損はない有益な情報をお届けします。

ダークな業界

ご存知の通り、この国は今、ひどく痛んでいます。毎日のように企業の倒産、大量リストラのニュースが流れ、街ではオフィスリースの看板がやたらと目に付きます。どうやってこの国は立ち直れるのか? 誰も気に病んでいることと思います。

ITの底力に魅了された一人として、私はITの真価をもっと人々に実感してもらいたい。うまく活用できれば、ITには本当に企業を、人を救える力があるからです。

そもそもITとは何か? 日本語に訳すと「情報技術」ですが、要は、コンピュータやネットを利用した様々な情報の活用技術を指します。今やITは、企業や個人にとって必要不可欠なものになりました。例えば、一見ITとは無縁に見えるお寿司屋さんであっても、売上・仕入管理が必要ですから、会計ソフトをお使いだと思います。また、個人のEメールやインターネット利用者数は莫大な数字です。このように日常的に利用されているITですが、一般の方には知られていないダークな側面もあり、それが業界の悪しき習慣を生み出す要因の一つになっています。

これから私は、自分の様々な体験や業界の裏話をお話ししていきます。読者の皆さんに業界の実態を知っていただき、いつか何かのお役に立てて欲しいと願っています。

高いレベルでの競争が必要

ところで皆さんはIT業界に対してどんなイメージをお持ちですか?

企業の方であれば「サービス料が高い」「約束と実際の効果が違う」「煙に巻くような説明なので信用できない」など、何かしらネガティブなイメージをお持ちの方も少なくないのでは? 正直、私自身、日本時代も含め良い話を聞いたためしがありません。

「ホームページを作成してもらったが、ビジターがほとんどなく何の効果もなかった」
「大金を払い業務管理システムを導入したが、使い物にならず眠ったままだ」
「使えないシステムに毎月費用を払い続ける羽目になり、社内責任者はクビになった」などなど。

一方、学生さんや転職を考えている人は、IT業界に対し「最先端ビジネス」「高収入の成長産業」といったポジティブなイメージをお持ちかもしれません。

しかし、不透明な業界ですから、実際に足を踏み入れないと実像が見えてこないのも事実です。そして不幸にも(?)踏み入れてしまった人は、もしかしたら数年後に「何てインチキでデタラメがまかり通った世界だ」と落胆されるかもしれません。

ITが本来持つ素晴らしさに気づき、それを人々に役立てたいという希望に満ちた方であれば、なおさら私は最初に釘を刺しておきたい。あなたが感じているITの価値はきっと正しい。ただその価値を実現するために、あなたが努力して習得すべき技術の量も半端ではなく、もし半端な知識のまま仕事をしようもなら、たちまち、IT企業の悪名をばらまく側に回るということを。

ともかくIT業者に悪評はつきものです。目を覆いたくなるようなサービスが横行し、残念ながらモラルも欠如しています。私はIT業界の悪評を払拭していきたい。そのためには、少しでも高いレベルでの競争が行われる必要があります。

各社が切磋琢磨し、ITが持つ本来の力を存分に発揮して社会に貢献できるようになれば、たとえ自分自身の首を絞めることになったとしても、結構ハッピーではないかと思うのです。いきなり大風呂敷を広げてしまった感は否めませんが、とりあえず今回はご挨拶ということで、以後、お見知りおきを。