システム導入が失敗する理由、教えます

前回、取引先からの注文や在庫を管理する販売管理システムを下請け業者に作らせたところ、かなり使えないものが納品されたという話を紹介しました。商品情報の照会に5~10分かかるとか、売り上げ入力を間違えても訂正できないとか。

今回は、なぜ、このようなお粗末なものを納品してくるソフト会社があるのかを考えます。

詐欺まがいのビジネスが横行

「多額の投資をしてシステム導入を試みたが、うまくいかなかった」という話を、職業柄、私は色々な所で聞きます。読者の皆さんも、1、2度くらい、そういった話を聞いた、あるいは直接経験したことがあるのではないでしょうか。

前回取り上げた例は、日本時代に私が直接関係したものですが、アメリカでも似たような話をよく耳にしました。「開発能力がないソフト会社が高額なシステム開発を受注したものの、納品できず訴訟になった」「大金を使ってシステムを導入してみたが、使い物にならず眠ったまま」「使えないシステムに開発費用を払い続ける羽目になり、担当者が責任を問われクビになった」などなど。とにかく詐欺まがいのビジネスが横行していると思います。

ただもしかすると、そうしたシステムを納品してくる本人たちには、その自覚がないのかもしれません。

当時、システム開発を直接依頼されたのは私のいた会社であり、その会社から下請けに開発を発注していました。ですから、システムが納品された後、エンドユーザー(クライアント)からの苦情を受けるのは私のいた会社です。例えば、以下のような苦情がありました。

「複数ユーザーで同時に入力すると、在庫数がおかしくなった」「データ量は多くないのに、いきなり処理速度が遅くなった」「後から日付が任意に変更可能なせいで、会計上の矛盾を生じてしまった」

もっともな苦情ばかりであり、明らかにシステムを開発した側に問題がありました。そしてこれらは、世の中の一般的な販売管理システムでは解決されていて当然の問題なのです。ですので私は「いったいこのソフト会社は、今までどんなシステムを作ってきたのだろう?」と疑問に思いました。

下手の横好き集団?

下請け業者が納品してきたシステムのプログラムを解析してみると、プログラムコードの書き方がとても非効率的であることが分かりました。そのため、後から変更を加えるのが大変なのです。要するに、その場しのぎの書き方であり、先々のことを考えて開発されてはいませんでした。

IT業界では、規模の大きいシステム開発であるほど、実際に開発を行う業者は2次請け、3次請けが当たり前だと以前お話ししました。そのことが大きく災いしていると思います。彼らは、1つのプロジェクトを終える(納品する)とすぐに次のプロジェクトへ移ります。したがって自分の仕事の結果を知らないままであり、技術的に成長するチャンスがないのです。

私が入社して以降、私のいた会社は自社内でシステムを開発できる体制に移行していくのですが、当時、開発者の採用を試みる度に、この下請け業者のようなレベルの人材ばかりなのに気づきました。そして、エンドユーザーからのフィードバックを受けずにいるのがどれだけヤバイのか実感したのです。

納品後に起きた問題を知らず、自分のやり方だけを正解と思い込んでいる開発者ほど、扱いづらいものはありません。面接しただけの人や試用しただけの人も合わせると、過去に私はおそらく50人以上の開発者と会っています。しかし、直請けで仕事をする会社にいたのは2、3人。そして、本当にモノになったのも2、3人でした。この業界、開発者の人数だけは多いと思うのですが……。

「正解は100通りある。その中で最適解を見つけ出すのがプロだ」というのが私の持論です。一定の結果に満足してしまったら、必ずそこで成長は止まります。常に上を目指すという気構えがなければ、この業界ではやっていけません。もしもあなたがIT業界を目指しているのなら、肝に銘じておいてください。

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