日米のWebサイトの違い

(U.S. FrontLine誌 2016年08月号 掲載分)

前回は、日本から欧米市場へ進出される企業の英語サイトでよく見られた、いくつかの共通点について触れました。一言で言えば、相手に対する尊重の無さの問題でした。

誤字や大文字・小文字の不統一、スペース規則無視など超基本事項をはじめ、ロジック的にうまく整理されておらず、短いセンテンス1つ理解するにも、かなりの努力と労力を必要とするなど、英語のネイティブからすれば、そこに掛けられた努力やケアの乏しさが透けて見える為、本気で英語圏の顧客を欲しがっているとは思えず、雑に扱われている感覚になるという話でした。またそうした雑な英語サイトは、近年、コンテンツの質を特に重んじるようになった主要検索エンジンからは、罰則を受ける可能性もあります。

今回は、そうした初歩的英語の問題は脱しているけれども、販促にはほとんど繋げられていない英語サイトの傾向について、お話しします。

取説とマーケティングの違い

技術的にもユニークで、世の中の役に立ちそうでいて、需要もありそうな、とてもポテンシャルのある商材を扱う日本企業から、以前、既存の英語のサイトのリニューアルについて、問い合わせがありました。

そんな素晴らしい商材だったのですが、サイト上では価値や興味、インパクトが全く伝わって来ないので、まるで取り扱い説明書を読まされている感覚になる、というのが、当社のネイティブのマーケッターたちの評価でした。

英語的に意味は取れるものの、人の興味を募ろうとか、競合と比べて、こちらを是非使ってみたいと思わせる、何らかの説得され得る理由を一切提供してくれないので、好意的に何かはあるはずだと、むしろ説得されたがって読んでいたのに、結局何も見つけられず、逆にイラっときたそうです。


日米の商習慣的な違い

商習慣的な違いも、もしかしたら災いしているのかもしれません。日本では基本、謙虚さはポジティブに評価され、他社批判など御法度ですが、アメリカは、真逆で、他社批判ありきみたいな所があり、大手は名指しも時にはしますし、相手会社を比喩で貶すことは多々あります。

例えばクールな Macという人物が、ダサくておやじ風のPC君を、色んなテーマでこき下ろすApple社のキャンペーンなどは有名です。

またブランドをとりまく環境も大きく違っています。日本では担当者が、人との繋がりを地道に築いて信頼を構築する、昔ながらのスタイルがまだ割と残っていると思います。

今でこそ終身雇用は崩れてきたそうですが、それでもひとつの会社へ長く勤める人も多く、従業員の会社に対するロイヤリティは強い傾向があり、すばらしいとよく感心させられるのは、自社の製品に誇りを持ち、例え膨大な品種があっても、実に広く深い知識を持つエキスパート的な担当の方々が、何人もいることです。

そうした人たちが、対外的に商品やサービスとは別の次元で、ブランドを形成しているとも言えます。

一方アメリカでは、数年で転職は当たり前の世界ですので、担当者はコロコロ変わり、各担当の会社へのロイヤリティも低く、従業員を雇っても、商品やサービスについて、十分な知識を持ち、愛着が沸く前に、もう居なくなっている、みたいなケースがほとんどかもしれません。

それこそ、顧客としてごく当然な質問をしているつもりでも、まともに返されず、分からない、ウェブにはもしかしたら載っているかも、といった残念な対応に出会う経験を、ほとんどのアメリカ在住の方なら、されているのではないでしょうか?

米系企業において、ブランドを形成しているのは、ほとんどの場合、人の要素はなく、商品や会社と言えます。

Webサイトがベストな営業マン?

つまり人もブランドを代表する日本と、会社のみがブランドを代表するアメリカ、みたいな違いがあり、その会社をWebサイトが代表するので、ベストの営業マンを安定して唯一確保する方法があるとすれば、企業のブランディングサイトを構築することになります。

米系企業の場合、例えどんなスモールビジネスであっても、企業ブランディングは意識されており、Webが効果的なジャンルの企業ほど、十分な情報提供に加え、潜在顧客層に刺さる訴求力をもった企業のブランディングサイトが、マーケティングを行っていく上で、非常に重要な位置づけという認識であり、日本とはその意味と存在意義に、大きく温度差があるように感じます。

日本の場合、良くても情報が充実したサイトという印象ですが、アメリカの場合、必要な情報の提供もさることながら、良くできたサイト程、テレビCMでも見ているかのような、インパクトや訴求力を感じさせます。

日本とアメリカの文化・価値観の違いなど、こちらでも説明していますので、併せてご参照ください。英語ウェブサイト制作について >>>

人気の投稿