棚ぼたのバイラル Wendy Davis' Sneakers & Viral Reviews
(U.S. FrontLine誌 2013年8月20日号 掲載分)
数カ月前に、テキサス州議会に中絶禁止法案が提出されました。この法案は、妊娠20週以降の中絶を禁止した上、産婦人科クリニックに大病院並みの施設を求めるなど中絶規制を強化する内容で、可決されればテキサス州内の中絶クリニックはほとんど閉鎖に追い込まれます。
共和党は中絶禁止を強く主張する宗教思想をもつ人々が支持母体になっており、共和党員が過半数を占めているテキサス州議会では、このような法案も通りやすく、下院では既に通過済み、上院での可決を残すのみという状態でした。
ところがこの法案に反対を唱える民主党のウェンディ・デイビス上院議員が、フィリバスターと呼ばれる議事妨害を行い、見事に法案の通過を阻止したことで一躍有名なりました。
デイビス氏は、19歳で結婚と離婚を経験したシングルマザーであり、14歳のときに両親が離婚し、3人の弟妹を支えるためにアルバイトを始め、並大抵ではない努力と犠牲を払い、ハーバード大学ロースクールを33歳で卒業した人物です。
そんな苦労人だからなのでしょうか。この法案が可決すると、中絶手術を行えるのが大病院に限られるようになり、住んでいる場所によっては、仮に中絶をしようとしても、妊婦が何時間も車を運転して行かなければならなくなること、そして結果的に、中絶が合法化される以前の状態に逆戻りしてしまうことを懸念して、彼女は体を張った抵抗をしたのです。
感動した出来事
法案の採決を投票期限である深夜12時すぎまで持ち込めば、審議を無効にできるらしく、何と11時間も1人でひたすら演説を行って時間稼ぎをしたそうです。というのも上院では議員の発言時間には制限が課されていないので、理論上はこういったことが可能らしいのですが、実際にそれをやれる人は近年、ほとんどいなかったと思います。
そもそもただ演説をしていればいいというものではなく、議題から外れたら演説行為自体が無効とされる上、演説中は食事、トイレ休憩、着席、机に寄りかかることも禁止だそうで、過酷極まりない状況だったといえます。自分だったら、想像しただけで音を上げそうですが、50歳の女性が何とこれをやってのけたのです。
ちなみに中絶が合法化される前では、中絶しようにも表立ってできないため、医療資格をもたない闇の医療現場で行われ、最悪は母体も命を落とすような悲惨な状況が多発していたと聞いたことがあります。
なお共和党のテキサス州知事の執念で、最終的には再度この法案が審議にかけられ、成立してしまったようですが、お金目的ではなく、体を張ってでも本気で自分の信念に従って意思表示しようとする人が政治家であって欲しいと願っている私は、デイビス氏に感動しました。
バイラルは、何にでも起きる可能性がある
さてこの話が本稿と何の関係があるのかと思われる読者の方もおられるでしょう。大ありです。このニュースで話題になったのは、骨のある政治家魂を見せたデイビス氏だけではありません。11時間も休憩なしに立ったままの体を支え続けた、彼女が履いていたシューズも有名になったのです。
「ミズノ女子ウェーブライダー16ランニングシューズ」という品名らしいのですが、アマゾン上でのレビューでも瞬く間に大量の好評価を得ていったのです。これこそ棚ぼたのバイラルマーケティング(口コミで人々に伝達させるマーケティング)です。
ちなみにアマゾンの場合、投稿されたレビューを読んだユーザーが、実際に自分にとって参考になったかを各レビューに対して評価する仕組みがあり、「参考になった」という評価を多数得たレビューが、有益なレビューとしてみなされ、より上の方に表示されやすくなります。
またアマゾンのレビュー欄で、ポジティブ、ネガティブの両レビューの中から、それぞれ「一番役に立った」とユーザーから評価されたレビューをピックアップして表示させているセクションがあります。
無敵のレビュー
製品についてのポジティブなレビューのうち、ユーザーから一番役に立ったと評価を受けたレビューは、こんなことが書かれていました。
『マラソン・フィリバスターのためのマラソンシューズ』という題名で、「次回、あなたが13時間も食事、水、トイレ休憩もなしで立ち続ける必要があれば、このシューズはあなたにぴったりです。レース当日は、男尊主義より長く走れます」一方、ネガティブな内容のレビューで、一番役に立ったとユーザーに評価されたのは、『サイズ』という題名で、「私は普段男性用サイズ17を履いているが、自分に合うサイズがない。
しかし新しい靴にお金を費やす代わりに、テキサスでこの靴をとても誇らしげに履いていたデイビス上院議員へ、いくらか寄付をするつもりです。私は彼女がテキサス州の次の知事になるかもしれないと思う」というレビューでした。
みんなアマゾンレビューの仕様を熟知してるなーと、思わずニンマリしました(笑)。
[もっと詳しくバイラル マーケティングについて知りたい方はこちらも参照ください: バイラル マーケティングが必要な理由]
数カ月前に、テキサス州議会に中絶禁止法案が提出されました。この法案は、妊娠20週以降の中絶を禁止した上、産婦人科クリニックに大病院並みの施設を求めるなど中絶規制を強化する内容で、可決されればテキサス州内の中絶クリニックはほとんど閉鎖に追い込まれます。
共和党は中絶禁止を強く主張する宗教思想をもつ人々が支持母体になっており、共和党員が過半数を占めているテキサス州議会では、このような法案も通りやすく、下院では既に通過済み、上院での可決を残すのみという状態でした。
ところがこの法案に反対を唱える民主党のウェンディ・デイビス上院議員が、フィリバスターと呼ばれる議事妨害を行い、見事に法案の通過を阻止したことで一躍有名なりました。
デイビス氏は、19歳で結婚と離婚を経験したシングルマザーであり、14歳のときに両親が離婚し、3人の弟妹を支えるためにアルバイトを始め、並大抵ではない努力と犠牲を払い、ハーバード大学ロースクールを33歳で卒業した人物です。
そんな苦労人だからなのでしょうか。この法案が可決すると、中絶手術を行えるのが大病院に限られるようになり、住んでいる場所によっては、仮に中絶をしようとしても、妊婦が何時間も車を運転して行かなければならなくなること、そして結果的に、中絶が合法化される以前の状態に逆戻りしてしまうことを懸念して、彼女は体を張った抵抗をしたのです。
感動した出来事
法案の採決を投票期限である深夜12時すぎまで持ち込めば、審議を無効にできるらしく、何と11時間も1人でひたすら演説を行って時間稼ぎをしたそうです。というのも上院では議員の発言時間には制限が課されていないので、理論上はこういったことが可能らしいのですが、実際にそれをやれる人は近年、ほとんどいなかったと思います。
そもそもただ演説をしていればいいというものではなく、議題から外れたら演説行為自体が無効とされる上、演説中は食事、トイレ休憩、着席、机に寄りかかることも禁止だそうで、過酷極まりない状況だったといえます。自分だったら、想像しただけで音を上げそうですが、50歳の女性が何とこれをやってのけたのです。
ちなみに中絶が合法化される前では、中絶しようにも表立ってできないため、医療資格をもたない闇の医療現場で行われ、最悪は母体も命を落とすような悲惨な状況が多発していたと聞いたことがあります。
なお共和党のテキサス州知事の執念で、最終的には再度この法案が審議にかけられ、成立してしまったようですが、お金目的ではなく、体を張ってでも本気で自分の信念に従って意思表示しようとする人が政治家であって欲しいと願っている私は、デイビス氏に感動しました。
バイラルは、何にでも起きる可能性がある
さてこの話が本稿と何の関係があるのかと思われる読者の方もおられるでしょう。大ありです。このニュースで話題になったのは、骨のある政治家魂を見せたデイビス氏だけではありません。11時間も休憩なしに立ったままの体を支え続けた、彼女が履いていたシューズも有名になったのです。
「ミズノ女子ウェーブライダー16ランニングシューズ」という品名らしいのですが、アマゾン上でのレビューでも瞬く間に大量の好評価を得ていったのです。これこそ棚ぼたのバイラルマーケティング(口コミで人々に伝達させるマーケティング)です。
ちなみにアマゾンの場合、投稿されたレビューを読んだユーザーが、実際に自分にとって参考になったかを各レビューに対して評価する仕組みがあり、「参考になった」という評価を多数得たレビューが、有益なレビューとしてみなされ、より上の方に表示されやすくなります。
またアマゾンのレビュー欄で、ポジティブ、ネガティブの両レビューの中から、それぞれ「一番役に立った」とユーザーから評価されたレビューをピックアップして表示させているセクションがあります。
無敵のレビュー
製品についてのポジティブなレビューのうち、ユーザーから一番役に立ったと評価を受けたレビューは、こんなことが書かれていました。
『マラソン・フィリバスターのためのマラソンシューズ』という題名で、「次回、あなたが13時間も食事、水、トイレ休憩もなしで立ち続ける必要があれば、このシューズはあなたにぴったりです。レース当日は、男尊主義より長く走れます」一方、ネガティブな内容のレビューで、一番役に立ったとユーザーに評価されたのは、『サイズ』という題名で、「私は普段男性用サイズ17を履いているが、自分に合うサイズがない。
しかし新しい靴にお金を費やす代わりに、テキサスでこの靴をとても誇らしげに履いていたデイビス上院議員へ、いくらか寄付をするつもりです。私は彼女がテキサス州の次の知事になるかもしれないと思う」というレビューでした。
みんなアマゾンレビューの仕様を熟知してるなーと、思わずニンマリしました(笑)。
[もっと詳しくバイラル マーケティングについて知りたい方はこちらも参照ください: バイラル マーケティングが必要な理由]