誇れる仕事をしてますか? ①

(U.S. FrontLine誌 2012年12月5日号 掲載分)

少し前になりますが、久しぶりに日系ITビジネスの質を垣 間見た気がして、げんなりしてしまいました。日系のクラ イアントのオンラインショップ構築の案件で、先方の別の 案件の絡みで関わっている、某日系IT業者の方と話をする機 会があったのです。要はうちがクライアントに提供する予 定のホスティング環境について、他の案件への活用も検討 したいので、ITの素人であるクライアントとそのフォローと して業者さんと三者で話がしたい、ということでした。

ホスティングにも色々あるのです

なお、我が社のオンラインショップサービスにおける、ホ スティングサービスは、本稿(第32回:2010年6月20日 号)でも以前、少しだけ触れたように、信頼性の高いホス ティング会社から専用サーバーをいくつかレンタルしたも のを、共用サーバーとして提供しています。しかし、一般 的な利益を追求するためのサービスとしては提供していな いので、かなり特殊な形態と言えます(利益は別のサービ スで追求しています)。

どういうことかと言うと、第88回(2012年10月20日号) でも少し触れたように、PCIコンプライアンスという世界標 準のセキュリティ基準に準拠するために、ウェブサーバー、 メールサーバー、データベースサーバーをすべて別にした 複数の専用サーバーで運営しているのですが、仮にこのよ うな環境を1社に対して用意すると、ホスティング費用は かなりの額になり、サイトの規模にもよりますが、多くの 場合、費用対効果的に見合わなくなります。

そこで、サーバー1台に対してクライアント数を最小限に 限定し、費用も含めてそれらを共用することで、本来なら 手に入らないような環境を、リーズナブルな価格で提供で きるようにしたものなのです(SEOなどでトラフィックを 増やしてビジネスを成長させてから、1台1社の別に用意 した専用サーバーへ引越していただくことはありますが)。 なお、一般の利益を追求する共用ホスティングでは、でき るだけ1台のサーバーにクライアント(サイト)を詰め込 みます。サーバー1台の運営コストは、クライアントが増 えても変わらないので、できるだけ多くのホスティング料 を獲得するために、数百、数千というサイトを1台のサー バーにホスティングさせることもざらにあります。この場 合、借り手のレンタル料はその分低額になりますが、大量 のサイトが共存している分、トラブルも覚悟しておく必要 があります。

ですから、一般的な共用ホスティングとはスタンスがまる で違うものであることを、まず予備知識として最初に説明 しようとしたのですが、業者の方から「余計な話はしなく ていい。契約書にスペックが記載されていないので、ただ 教えてくれればいい」的なことを言われ、調べて伝えると、 「このCPUの各サイトへの割り当ては?」「メモリの割り当 ては?」などと、聞かれてくることは一見まともなのです が、そのたびに、いちいちネガティブなコメントを残して いかれるのです。

契約書にスペックをあえて書いていないのは、単にクライ アントを割り当てるサーバーは直前に決まる上に、サーバ ーも時間と共に、スペックもより新しく(良く)なるとい うだけのことなのですが、粗悪な環境を提供する悪徳会社 とでも思われているのか、とにかく感じが悪い。

確かに、間違いではないのだが…

例えば共用なので、「同じサーバー内にホストしている他 のサイトの何らかの影響を受け、クライアントサイトのパ フォーマンスに悪影響を及ぼす可能性はありますね」とい った具合です。当然そういう可能性はゼロではないのです が、前述の通り、クライアント数をかなり限定した上での 高スペックの環境だと再度説明しようとしても、「余計な話 はいいです。影響を受ける可能性があるのか、ないのか? 絶対にダウンしないのか?」と極端な論調で来られるので、 とりあえず「世の中に“絶対”などほぼあり得ませんので、 可能性はもちろんゼロではないです」と答えておきました。

専用サーバーでは、費用対効果的に合わないので、皆、共 用で妥協しているわけで、「他にどういうソリューションが あると言うのだろうか」というのが、まずは私の心の声で した。もちろん、共用環境もピンキリなので、違いを具体 的に説明しようとしても、そういう話には興味もない。正 直この時点で、この人が本当にクライアントのために話を しようとしているのか、非常に疑問を持ちました。そして 更に、致命的だと分かることが発覚したのです。次回に続 く‥

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