オンラインショップは、何が大変なのか?①

(U.S. FrontLine誌 2012年8月20日号 掲載分)
皆さんご存知のとおり、アメリカでは、オンラインショップによるビジネスがかなり早い時期から盛んでした。この広大な土地や、比較的昔は進んでいたインターネット回線事情などが大きな要因だったと予想しています。ただその結果、膨大な数のショップがネット上に溢れているとも言えます。それでも尚、米系、日系問わず、ショップ開設またはリニューアルについてのお問い合わせを、今でも頻繁に頂きます。
なお本稿で以前に書いたように、超大手がオンラインビジネスに本格参入してきた現代となっては、資本主義の原理により、中小企業は過酷な生存競争を強いられているのですが、ほとんどのお問い合わせでは、そういった認識は感じられません。もちろん、実状を十分理解された上での余裕であれば、構わないのですが、どちらかといえば、かなりビジネスを甘ーく考えられているという印象を受けます。

何で差別化を図るつもりなのか?

結局のところ、この一言に尽きるのですが、特に誰でも扱っている(扱える)ような商材の場合、なぜ顧客はあえてそのお店で買ってくれると期待できるのか? そもそも集客はどうするつもりなのか? といった非常に初歩的な話で、既につまずいているケースが多々あります。
こういう意識が薄い方ほど、ショップの構築やデザインが一番大変な過程であると勘違いをされているのが多いのですが、誤解を恐れずに言えば、今の時代、ショップを持つこと自体は、この上なく簡単にできます。
それこそYahoo Storeのように既に仕組みが用意されているものや、ホスティング(ウェブサーバー環境を提供する)会社のオプションサービスのショップ機能を利用すれば、 月々数十ドルで始められます。オープンソースのパッケージソフトもたくさん溢れており、無料で手に入るリソースもあります。デザインもテンプレートを使って、十分それっぽいものが簡単に作成できます。

どのくらい成功できているのか?

ほとんどのオンラインショップは、失敗していると思います。なぜなら、そういった安易な手法で用意できるショップは、当然の如く、他社も同じ条件なので、差別化を図る所から、どうしても限界があるからです。
たとえば、ホスティングに付随するサービスとしてショップ機能を提供している場合、彼らはあくまでもホスティングサービスを売るための“おまけ”で用意しているに過ぎません。つまりそのショップに本気で売上が上がるかなど関心もない相手が提供しているサービスなのです。
これの発展形で、ショップ機能とマーケティングをパッケージサービスにしているものもあります。
以前にお問い合わせを頂いたケースで、少なくとも「集客は必要」という意識をお持ちの方で、(これは非常に良いことです!)必要なマーケティングも入ったオールインワンで、確か8,000ドルくらいの米系のサービスを利用したけれど、ページは確かに簡単に作成できたが、それだけで終わっている、というような内容でした。
何千ドルといった金額から、逆にそれらしい効果を期待されての利用だったと思うのですが、よくよく聞いてみると、要は数カ月分のPPC(キーワード広告)の広告費用を含み、始め方を教えてもらえる、というだけのサービスでした。もちろん、スタートラインに立つという意味では間違いではないのですが、やはり他社がどこでも当然のようにやっている時点に、自社を持って行くだけに過ぎません。PPCにしても、決して始めるのが難しいのではなく、費用対効果的にうまく活用できなくて、皆苦しむわけで、ショップと同様です。

冷静に考えれば分かる矛盾

こういったサービスを売る業者は、あたかも売上が簡単に上がるかのような触れ込みをしているのは問題ですが、完全に詐欺をしているわけでもないので、巧妙なビジネスと言えます。しかし、少し考えれば、仮にその業者のサービスが有効だったとしても、ビジネスモデルが、汎用的なパッケージサービスを不特定多数に販売するものであれば、既に矛盾があることにも気付くべきなのです。
ビジネスは他社との競争です。皆が同じように手が出せる手法で備わりうる競争力って何だと思いますか? 「多数の企業に利用されています!」という宣伝文句なら、尚更です。
汎用的なものでプラスになるのは、安定した環境が提供されることです。ただ差別化という観点からは希少性が必須なので、マーケティングの世界では逆に致命的になりやすいのです。
次回に続きます。

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