中小企業の行く末は? ②
(U.S. FrontLine誌 2011年4月20日号 掲載分)
前回(4月20日号)では、まず現在のオンライン市場の 実状を知って頂くため、Amazon.comに代表される、大手 オンラインショップが当たり前のように提供する、毎日24 時間体制のカスタマーサービスや無条件の送料無料サービ スなどを説明しました。そして、大手ショップのポリシー が、オンラインショップ業界の標準として、ユーザーに認 識されるようになることも、お話ししました。
今後、オンラインビジネスに注力されようとする企業は、 益々増えてくると思います。少しでも成功してほしいから こそ、生半可な覚悟ではなく、背水の陣で望むくらいの覚 悟が必要であることを認識していただきたいのです。
極めつけの大手の返品ポリシー
顧客に届いた商品が間違っていた場合、我が社のような中 小規模のショップですと、まずいったん返品してもらい、 事実が確認でき次第、交換品を発送するのが通常です。し かし大手ショップの場合は、オンライン上で間違いの報告 をするだけで、返品用のラベルと共に交換品がその日に発 送されたりします。ほかにも大手の場合、たとえ故障や不 具合が全くなくとも、単に「気に入らない」という理由だ けで、ユーザーは無条件に、誰に説明する必要もなくオン ライン上の簡単な手続きだけで、全額の返金を受けられる システムになっているところも多いのです。そしてもちろ ん、その場合の返品送料も無料だったりします。(汗)
ユーザーの立場からすれば、「この素晴らしいシステムの どこが問題なの?」と思われるかもしれません。確かに買 い手からすれば、正に理想的な話です。しかし売り手で、 しかも中小企業ともなると、これはたまりません。返品さ れた商品は、故障していなくても2度と新品としては販売 できない上、返品送料をショップ側が丸々負担しようもの なら、元々の利益率にもよりますが、簡単に赤字になるで しょう。大手は膨大な数の商品を扱っているため、商品の 仕入れ価格や顧客への送料で特別な割引価格を貰えている ため、全体としては、送料負担などの損失も充分カバーで きる余裕があるわけです。
我が社のやり方
以前ならば、「故障ではない返品の場合、Restocking Fee (返品手数料)XX%を頂戴します」というのが標準でしたが、 今ではたとえウェブサイト上にそのことをはっきり記載し ていても、顧客には全額返金でないことを簡単には納得し てもらえないという現実があります。
我が社が運営する2つのオンラインショップでも、返品は 悩みの種です。ただ我が社のカスタマーサービスは(手前 味噌になりますが)、顧客から対応がとても親切であるとよ く褒められるくらい、1つの強みになっており、よくやっ てくれています。
故障ではなく、単に気に入らないという理由での返品の際 に、手数料の関係で全額返金でないことに納得してもらえ ない顧客がいた場合、我が社のスタッフは、まず商品に満 足してもらえなかったことについて丁寧にお詫びします。 そして、返品されてくる商品は、新品としてはもう売れな いこと、いったん封が開けられた「オープンボックス品」 として価格を下げて売らなければならないこと、既にこち らからの送料負担が発生していたり、プロセスを完了させ るまでに関わる全てのスタッフの人件費が発生することな どを、丁寧に説明します。さらに、中小企業がビジネスを 続けていくためには1つの注文で簡単に赤字を生むわけに はいかないので、あくまでも返品手数料は、お店が損失を ぎりぎりに抑えて何とかプラスマイナスゼロにしようと努 力するためのものであるという切実な事実を説明すること で、だいたいは納得してもらっています。(汗)
ただし、前回から説明してきた通り、ユーザーのオンライ ン・ショップでのサービスの期待値は、大手ショップと変 わりありません。実店舗ならば、ユーザーも見た目からシ ョップの規模を判断できる上、複数の店を行き来するのは 時間も労力もかかるため、ある程度のユーザーの妥協も期 待できます。一方のオンラインでは、ワンクリックで店舗 を移動できるため、たとえ中小企業が運営するショップで あっても、そして自分たちにそのつもりがなくても、結果 的に大手ショップと競争していかなければならないという 厳しい現実があります。そのため我が社では、できないこ とは諦め、できることで何が大手と勝負できるのかを、常 にスタッフには意識させています。
次回は、中小企業の生き残り方について、私なりに考えて みます。