資本主義が席巻する検索エンジンの世界
(U.S. FrontLine誌 2010年11月5日号 掲載分)
過去3回に渡って、PPCやSEOといった検索エンジンでの集客手法について触れました。画期的な広告システムとなったPPCは、広告主に歓迎され、Googleに代表される検索エンジンの主要収入源となりました。しかし広告主が増加した結果、PPCのクリック単価も軒並み高くなったのです。1クリック0.01ドルだったGoogleの最低入札額は今、意味のありそうなキーワードだと通常1クリック0.5〜3.5ドルくらいです。もし1クリック2ドルなら、たった500人集客しただけでも広告費は1000ドル。中小企業の感覚では、かなり高めに感じられると思います。
扱っている商材が高額でマージンが良いか、コンバージョン(成約)率が高くなければ、この額のPPCを継続して行うのは、中小企業には難しいでしょう。加えて、それまでTVのCMに多額の予算を投じていた大企業が、より費用対効果の高いウェブという広告媒体に着目し、オンラインマーケティングにも予算を投じるようになりました。
その結果、検索エンジンという媒体は、完全に資本主義の様相を呈しています。数年前までは、中小企業でも創意工夫してオンラインという戦場に挑めば、突破口が見出せました。うまくやれば、全国区の戦いにおいても大手と互角以上に渡り合えたのです。今はどうかといえば、Googleもすっかり商業化され、金儲けのために魂を売り渡した感があります。資本力で大手に圧倒的に劣る中小企業からすると、不公平な仕様が知らぬ間に追加されており、我々のように長年オンラインマーケティングに携わってきた者が今Googleで何かを検索すれば、その表示結果からは、資本主義の跋扈(ばっこ)とそれに伴う不公平さ(Googleからすれば極めて合理的なビジネス的意図ですが)をたっぷり実感できます。
Google Instantの真の意図とは?
Googleは最近、ユーザーがキーワードをタイプしている途中であっても、検索結果を随時表示してくれるGoogle Instantという機能を追加しました。彼ら曰く、検索がさらにスピードアップされるそうで、確かに以前からあった自動サジェスト機能(入力途中で、キーワード候補を随時予測して表示してくれる機能)が進化したような印象です。以前は、検索するキーワードを一度確定してから、クリックするなりリターンキーを押すなりして結果を表示させていましたが、この動作を減らせるわけです。「ますます検索しやすくなって、技術の進歩って素晴らしい!」と喜ばれている方は、きっと純粋で素直な方だと思います。ちなみに私の感じ方はまるで違い、「またですか……」というネガティブな感情しかありません。
皆さんは検索される際、微妙にスペルが違うキーワード(例えば最後にsが付くか付かないか等)で検索結果も違ってくることにお気づきでしたでしょうか? ユーザーの習慣によって、検索の仕方にばらつきが生じ、目にする検索結果も違っていたわけです。自動サジェスト機能が登場し、そのばらつきは抑えられてきたと思いますが、今回のInstant機能により、更に抑えられると思います。つまり、ユーザー自身の意思ではなく検索エンジンの思惑によって、検索エンジンが導きたい答えにユーザーが誘導されていくようなイメージです。なぜGoogleがそんなことを? 答えは簡単で、より広告を売りやすくするためです。
以前の仕組みだと、キーワードの微妙な違いで、ターゲットユーザーに広告を見せる機会を失う可能性がありました。もちろんPPCでは、そうした広告表示機会の漏れをカバーできるよう色々考えられているのですが、広告主としては、その可能性を意識しておく必要がありました。SEOの場合、この問題はもっと切実に捉える必要がありますが、逆に言えば、自分たちに有利に活用できるチャンスでもあったのです。
キーワードの微妙な違いによるばらつきが無くなれば、PPCの広告主にとっては広告戦略が非常に楽になるでしょう。一方、SEO業者は今まで以上に厳しく大手と順位を競う状況を強いられます。資本主義化する検索エンジンにおいて、中小企業は非常に厳しい立場に追いやられているのです。しかし、まだまだ活路はあります。次回、勝ち組の今流ウェブマーケティングについてお話しします。