印刷業界は遅れている?

数年前、日本のクライアントから「カタログ制作を効率化して欲しい」という依頼を受けたことがありました。その会社では毎年200~ 300ページの製品カタログを、QuarkXPressというDTP(デスクトップパブリッシングの略で、コンピュータを使い、印刷物を出版するための印刷用ファイルを作成する)ソフトを使って制作していたのですが、とにかくその作業が非効率的で困っているというのです。


システムと連動させてカタログを制作したい


商品数が多くて価格変更も頻繁にあるのに、スタッフや業者が、販売管理システムに保存されている商品データをコピー&ペーストしたり、直接手作業で編集作業をしているため、間違いが起きやすく、校正(間違いがないかを確認して修正する)作業にもかなり手を焼いていました。その上、手の込んだレイアウトの表も多数作成しなければならず、制作時間も費用もかなりかかっていたようです。


そこでその会社の社長は「今の時代ならもっとITを駆使して、例えば社内のシステムから商品情報を選択してボタンをクリックするだけで、DTPソフトへ自動的にデータが送られるような仕組みができないか?」と考えたわけです。そして東京都内のDTP専門業者を片っ端からあたったらしいのですが、どこも満足の行くソリューションが提供できるとは言い難い状況だったようで、我が社へ「ACEさんなら何かできないか?」と問い合わせてきたのでした。


余談ですが、特に高額なシステム開発などを受注する場合、どうしても信頼や実績が必要になります。しかし我が社の場合、大手の冠があるわけではありません。実績はあったとしても、上辺だけの実績なら誰でも簡単に謳えるため、顧客にはその真価を見極めにくいのが実情です。


実は、我が社を起業する前にその対策は考えていたのですが、とある不測の事態でそれが使えなくなってしまったため、新しいビジネスモデルを考えました。まず、ウェブマーケティングサービスなど比較的安価で導入し易く、目に見える成果を短期間でも出しやすい仕事を受注するのです。


そうした仕事で確実に成果を積み上げて信頼関係を構築し、ウェブマーケティングで相手のビジネスを拡大させていくことでシステム開発の需要も増大させ、頃合をみてシステム開発を提案していく、というものです。


このクライアントもその典型で、最初にSEOで年商2億円増を実現し、カスタムの販売管理システムを開発して導入し業務改善を図っていたので、信頼関係は充分でした。カタログ制作の効率化は、正直「寝耳に水」のような問い合わせでしたが、これまでに築いた信頼・期待に応えたいと思うのが人の性(さが)ではありませんか!


安請け合いはしたものの


「今の時代、そういったことができる既製のソフトぐらい、いくらでもあるだろう」と甘く考え、「とりあえず調べてみますよ」とかなり軽い気持ちで返事したのですが、これが悪夢の始まりでした。そのカタログは日本語であるため、とりあえず日本の既製ソフトを色々探したのですが、驚いたことに満足できそうなものがほとんどありません。かなり探してようやく、やりたいことが実現できそうな10万円くらいのソフトが1つ見つかったのですが、トライアル版がなく、購入してみないと評価ができません。仕方なくクライアントからの了承を得て購入したのですが、柔軟性はなく、例えば用意されている単純なレイアウトテンプレートでは割りと簡単にデータを書き出せるのですが、実現したいカスタムのページレイアウトで行うには、そのソフト専用のプログラム言語を覚えて、新たにプログラムし直すような作業が必要だったのです。


説明書もかなりアバウトなものしかなく、「いくら何でもこれはないだろう……」と思い、そのソフトの製造元に問い合わせたところ、どうやら実現したいカスタムレイアウトでデータを書き出すには、結局その業者にカスタム開発を依頼しないといけないらしいのです。しかし、カスタムで開発するのなら、正直、我が社でもやれるわけです。既製ソフトを利用しているのは、手早く簡単に低コストで実現したいからなのに、これではその意味が全くないことを悟り、絶句しました。


よくこんなソフトで商売できているなと思いつつ、仕方なくアメリカの既製ソフトを探すことにしたのですが……。以下、次号に続きます。

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