誇れる仕事をしてますか? ②

(U.S. FrontLine誌 2012年12月20日号 掲載分)

前回、我が社がクライアントへ提供するホスティング環境 について、某日系IT業者さんとクライアントと三者で話す機 会があり、げんなりした経験についてお話ししました。

業者さんの指摘が現実離れしており、どんな話でもネガテ ィブに話されるので、最初はうちを粗悪な環境を提供する 悪徳業者とでも思われているから感じが悪いのかと、提供 される環境が、通常なら手に入らない、贅沢な環境である ことを具体的に説明しようとしました。しかし、そういう 話は一切聞こうとしないので、本気で環境の良し悪しを見 極めようとしているわけではなかったようですが、その後、 決定的なやりとりがあったのです。

久々に日系業者のレベルに絶句

業者さんから「データベース容量の制限は?」と質問され たので、私が「1GBです」と答えると、「いずれ容量オーバ ーになるので、その後は?」と聞かれました。「経験上、こ の規模のショップで簡単に超えることはないですよ」と答 えると、「(相手)超えるに決まっている!」「(私)ウェブロ グの容量と間違えられていませんか?」「(相手)間違えてい ない。そんなもの簡単に超える!」(しばらく絶句してから) 「(私)このショップのアイテム数をご存知ですか?」「(相手) まだ聞いていないから知らない」

もちろんショップのリソースも100通りでもあるので、 私の経験だけがすべてだと断言するつもりはないのですが、 仮にデータ容量が簡単に何GB以上にもなるようなショップ ならば、そうならないショップも簡単に構築できている以 上、余程非効率なデータの持ち方をしているとは言えます。 この時点で、この業者の方が、あまりITの知識・技術がな いか、ショップ運用経験がないか、こじ付けで粗探しをし ているかの、いずれかであることは分かりました。

少しだけ技術的な話をすると、もちろん、無限の器など存 在しないので、どんなものでもデータを貯め続ければ、い つかは容量制限を越える可能性はあります。ただショップ の場合、増え続けていくタイプのデータとしては、主に顧 客や注文情報ですが、かなりのマーケティング予算を掛け て集客でもしなければ、通常それらがデータ容量を圧迫す るほどにはなりません。むしろデータ容量的に嵩みやすい のが、商品やカテゴリー情報になります。

ですから、将来的なデータ容量を想定する上では、何アイ テムを取り扱うのか? とか、トラフィックや顧客や注文 数がどれくらいになりそうなショップなのか? というの は、非常に重要な要素になるので、少なくともプロであれ ば、真っ先に確認すべき内容なのです。

我が社のクライアントでも、数万アイテムを扱うショップ や、数十万レコードを貯めておく必要のあるサイトでは、 データベース容量が数GB以上になることもあります。ただ そういうサイトでは、そのための容量も想定した上で、そ れに見合った料金で提供しているので、特に問題もないわ けです。ちなみにこのクライアントの場合、多めに想定し てもせいぜい500アイテムという規模で、トラフィックも 非常に限られたものになることが、簡単に想定できるもの でした。

可能性はゼロではないが‥

ホスティングのレンタルは、オフィススペースのレンタル のようなものです。事業を拡張していけば、いずれはより 広いスペースが必要になるかもしれません。ただレンタル する際には、今現在どういう規模で、将来どう展開する、 という想定ありきで物件を探すはずです。先の例では、従 業員数5人くらいの会社が、10,000Sqfくらいのオフィス を借りた上で、将来スペースが足りなくなる時の可能性を 話しているようなものです。

可能性がゼロではないにしても、今それを心配したところ できりもなく、何か対策が変わるというわけでもない。 あくまでも想定の範疇ですので、“絶対”ではないにして も、想定ありきで話を進めなければ、費用対効果も踏まえ た現実的な話になるはずもなく、さらにこの業者さんは、 レンタル料金自体も知らずに話していたことも分かり、何 でもいいから不安材料を募っていたと確信しました。正直、 知識・技術・経験レベルの方も大いに疑問でしたが。

さすがに最後は私も一言、釘を刺さずにはいられませんで した。「あなたはプロとして、ITの素人であるクライアント をサポートするためにいるはずでしょう? こんな現実感 も解決策もないような話だけで、クライアントは一体何を 得ているのでしょうか?」。

何ともやりきれない気持ちになりました。

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