2015年8月27日木曜日

日本でもブランディング: [Japan & Branding]

(U.S. FrontLine誌 2015年2月20日号 掲載分)

本稿で何度となく、ブランディングについて触れてきま したが、日本からアメリカへ進出してくる企業で、いまだ にこのブランディングにおける意識が低く、必要性を理解 されていないケースによく遭遇します。あるいは、アメリ カだから特別に必要だが、日本では少なくとも必要がない という勘違いもよく見られます。

現実は日本であっても、自社が既にそれに該当する行為 を自然と行っていたり、周りも行っていることに、単に気 がついていないだけだったりします。また意識の低さから、 ブランディングそのものの理解もあやしかったりするので、 今回、日本の倉敷や奥飛騨で見られた、分かりやすいブラ ンディングを例に、ご紹介したいと思います。

ジーンズなら◯◯

倉敷の美観地区は、古い昔の街並みを残した観光地で、
和の古いテイストとモダンを見事に融合させ、若者たちも デートに遠方からでも訪れたくなるようなスポットに街全 体が仕上がっているという印象でした。

その中でもデニムストリートはユニークで、岡山の児島地区 が、国産デニム発祥の地らしいのですが、児島産デニム製品 や岡山発の他ブランド、デニムにちなんだ小物雑貨、装飾品 など、130坪の広さに、様々な物が取り揃えられていました。 ジーパンの生地であるデニムの紺色をとにかく意識して おり、店外の通りの壁にジーンズが飾られているのも、い い感じなのですが、近くの自販機までデニム色でした。

さらにフードコーナーには、デニムソフトクリームやデ ニムバーガー、紺色のデニム(肉)マンまで用意されていま した(笑)。果たして紺色の肉マンを食べたくなる人がたく さんいるのかは不明ですが、少なくとも人の目を引くこと は間違いなく、デニム屋とのギャップが逆にインパクトも 生み、どんな店なんだろうと、店内に思わず足を踏み入れ たくなるのではないでしょうか?

中には、「ブルージーン酢」なんてのも売っていました。 今の時代、来店客が「何これ!」と面白がって、フェイスブ ックやツイッターやブログにでも写真を投稿してくれれば、 プチバイラル(ちょっとした口コミ)になるかもしれません。 店内のいたる部分も本当にオシャレに仕上がっており、 子供用、男性用、女性用のデニム製品がジーンズ以外にも、 帽子、バッグ、シューズ、チェア、傘など色々と展開され、 幅広い取扱商品のジャンルも、間違いなく話題性のひとつ となっているでしょう。

ここでブランディングの観点から表現するなら、「世界に 向けた和製デニム」という印象作りをしているように感じま す。また、これだけ多種多様なアイディアのデニムを見せ られると、本家、本物感もあります。そして先進的でもあ り、話題性にも富んでいます。つまり露出とイメージの浸 透というブランディングの2大要素が、見事に構成されて いるわけです。

温泉なら××

岐阜の奥飛騨温泉郷へ先日行ってきたのですが、1月中 旬はオフシーズンなのか、不況なのか、旅行客はかなり少 なく、ある旅館の店主に尋ねたところ、スキーなら長野へ、 旅行は近場で済ます人が増えたとのことでした。

ただ99%の宿には露天風呂があり、本格的な温泉と、お まけでスキーも楽しめるのが奥飛騨だそうです。源泉量が 物凄く、冬は各宿も暖房にも利用しているそうです。また 別の宿の仲居さん曰く、長野など他の温泉地と違い、豊富 な源泉を活かして、道路の雪を溶かすなどして、歩き易く しているそうです。

こういう会話がごく自然に出てくるのは、「温泉といえば 奥飛騨」というブランディングを、皆ができることを見つけ て自然に行っているからです。確かにネットで雪見露天風 呂を探すと、結構、奥飛騨が出てくるのは納得です。

また、温泉宿が密集しているので、各宿のブランディン グも大変なはずです。夫婦でやっているようなスモールビ ジネスが大半ですが、やはり今の時代、ウェブが大きく貢 献していると思います。写真も一昔前と違い、印象重視に なってきているのも、マーケティング屋として評価できま す。仮に多少、見た写真と印象が違っても、宿のもてなし や食事、お風呂等の良い体験があれば、客はリピーターに なる可能性もあります。

[もっと詳しくブランディングについて知りたい方はこちらも参照ください: ブランディングが必要な理由]





私は4つの宿に泊まったのですが、どれも人に説明でき る特徴がありました。さらには短い滞在期間中、ニュージ ーランド、台湾、韓国、中国からの旅行客と遭遇するなど、 海外からも集客を行っていることが分かります。

今の時代、日本でも、各人一人一人が、そして街までも がブランディングを意識し、できることを考え、実践して いるわけですが、企業がそれを軽視している場合でしょう か? 自社の特徴すら説明できないようなら、本当に深刻 だと思います。

2015年8月21日金曜日

心に訴えかけるSMM の力: Social Media Marketing & CSR

(U.S. FrontLine誌 2015年8月20日号 掲載分)

アメリカにおいて、ソーシャルメディアマーケティング (SMM)と言えば、やはりFacebookを使ったマーケティン グが代表的ですが、企業は実際にSMMをどれくらい有効 活用できているでしょうか? 今回は、在米日系企業の某 オフィス用品・文房具メーカーであるクライアントの公式 Facebookページにおいて、当社が実際に図ったSMMの事 例をご紹介したいと思います。

クライアントは、Breast Cancer Research Foundation (BCRF)という非営利の乳がん研究団体の支援に、乳がんの 象徴であるピンクリボンマークを付けたピンク色の商材の 売上の一部をBCRFへ寄付することを決め、これについて何 かできないか? と当社へ相談を頂いたのが始まりでした。

10月は乳がんの啓発月間として知られており、その時期 には、さまざまな団体・企業が乳がんに関するキャンペー ンを行うのですが、逆に他が多過ぎて埋もれてしまうので、 あえて年中を通して乳がんを意識すべきという主張ととも に、実施時期を7月に設定しました。

母親が自身の体型を気にして、家族写真に写りたがらな いケースが増えているという記事があり、後になって後悔 しているとか。また毎年かなりの数の人が乳がんで亡くな っています(アメリカで、今年は40,290人が亡くなる見込 み)。こうした現状を踏まえ、BCRFのキャンペーンで、母 親を対象にこんなコンセプトを考えてみました。

心に刺さるキャンペーン

自意識過剰から写 真に写らない、また (乳がん検診などを受 けず)健康管理を疎か にする、いずれもこ の先の家族写真から 自分を消してしまう 行為であり、母親を 半透明にした画像で、 この2つのメタファ ーを分かり易く連想させようと考えました。

また「staying in the picture」(写真 or 人生に残る)とい う表現で、最近撮った自分が写っている家族写真を投稿す ることを呼びかけ、同時に乳がんを意識することも訴えま した。そして写真を投稿してくれた人の中から、クライア ントの商材のセットを進呈する当選者をランダムに選ぶと も告知したのです。

このキャンペーンをFacebookで実施してから、1週間 で12.8万人以上へリーチし、2500以上のLike、360以上 のシェア、770以上のコメント(写真投稿コンテストの参 加者)になりました。

何らかのコンテストを実施された経験のある方ならお分 かり頂けると思いますが、余程高額な賞品と宣伝費を投じ なければ、ここまで盛況にするのは難しく、掛けた広告費 は僅か250ドルで、シェア、Likeもしくはコメントなどア クションを5883人が行ったため、1人当たり4セントで アクションを獲得した計算です。

そして何より嬉しかったのが、参加者の投稿内容が、見 ているだけでも心温まるものばかりで、「思い出せてくれて ありがとう」と主旨を理解し、共感してくれた人が本当に沢 山おり、中には「母親を乳がんで亡くしたが、一緒の写真が 3枚しかなく、子供を同じ目に遭わせない」など、感謝さ れながらクライアントのCSR(企業の社会的責任)として強 いブランディングにも繋がるという、理想的かつ、これぞ SMMのなせる技という結果でした。

[もっと詳しくブランディングについて知りたい方はこちらも参照ください: ソーシャルメディアマーケティングとは?]

成功要因

この結果を得られたのは、コンセプトが人に刺さったのは 勿論ですが、SMMを理解するネイティブのエキスパートが、 全員へタイムリーかつ丁寧にレスをしていたことも大きく、 たとえネット上であっても、テンプレート的な対応ではな く、リアルに心から接していくことがいかに重要であるかを 示す好例と言えます。また既に2万人以上のファンがおり、 普段から反応のある投稿を心掛けていたことも重要です。

ファンが少なければ、必然的に広告費を使わないと人に は見られませんし、数人のLikeしかされないような、エン ゲージメント率の低い投稿を続けていると、Facebookから 価値がないとみなされ、たとえファン数があっても投稿を ほとんどの人へ見せてくれなくなります。

たまたま最近、乳がんの手術を受けた大学の先輩もおり、 私的にも関心が高いトピックで、感慨深い思いをさせて頂 き、クライアントや共感してくれた参加者にとても感謝し ています。こういう仕事なら、幾らでもやりたいですね。

2015年8月10日月曜日

悪質なウェブ業者にご注意: 検索結果に全く表示されない理由 [Bad Web Developers]

(U.S. FrontLine誌 2015年8月5日号 掲載分)

先日、某在米日系企業の方からこんな問い合わせを頂き ました。トラフィックも急激に減っており、幾つかのキー ワードにおけるSEO(検索エンジンの自然な検索結果にお けるウェブページの上位表示)の強化も視野に入れている一 方で、以前ならそんなことはなかったが、現在はなぜか自 社名で検索しても全く表示されず、それについても原因は 全く不明、といった内容でした。

検索結果に全く表示されない理由

とりあえずサイトを確認したところ、先方が不思議がら れていた、自社名で検索しても全く自社サイトが表示され ない理由は、およそ2秒で分かりました。検索エンジンに サイトが全く表示されない場合、予想できる要因は大きく 分けて、2つしかありません(全くとは、検索結果をどこま で辿っても表示されない、という意味です)。 ・検索エンジンの何らかのルールに違反し、罰則を受けて いるケース

・検索エンジンの基本仕様すら理解せず、キャッシュもし くはインデックスすらされていないケース

一応、検索エンジンにサイトが表示される基本的な仕 組みを簡単に説明しておくと、検索エンジンは、ロボット、 クローラーもしくはスパイダーとも呼ばれるある種のコン ピュータープログラムによって、世界中のウェブサイトを 徘徊し、彼らのデータベース内へサイト情報やコンテンツ を保存しています。この行為をキャッシュと言います。

また検索エンジンはキャッシュとは別にインデックス化 も行っており、アルゴリズムと呼ばれる表示順位付けルール と照らし合わせながら、最終的に各キーワードで、どのサイ トのどのページから上位に表示させるかを決定しています。 SEOは、このインデックス化を戦略的に行わせる行為で もあり、SEO的にうまくないサイトは、なかなか検索結果 の上位には出てこられないわけですが、かといって完全に 最後まで出てこないとすれば、インデックスというよりキ ャッシュに問題があるということです。

ちなみに本来のSEO的な戦いは、キャッシュのさせ方か らも始まっているのですが、上位表示を競うレースに出場 したければ、最低でも検索エンジンにキャッシュされてい なければ何も始まりません。



原因は一瞬で判明。更に衝撃の事実も

ところが問い合わせを頂いた先方のサイトは、何と 「NOINDEX, NOFOLLOW」のタグが書かれていたのです。 これは検索エンジンに対して、インデックスもキャッシュ もさせたくない時に記述すべきタグですので、当然社名で 検索しようがヒットするわけもなく、レースの参加登録か ら漏れていたような話です。また、これまでに業者を2度 ほど変えたとも伺っていたので、軽い興味から、過去のサ イトではどうなっていたのかも、簡単に調べてみました。

すると「NOINDEX, NOFOLLOW」のタグは、最初からで はなく、ある時期にいきなり書き換えられていたことが分 かりました。それを先方に伝えたところ、ちょうどその時 期は、業者との仕事をクローズさせた時期であったという 衝撃的な事実が分かりました。業者が腹いせに、確信犯的 に行っていたのなら、倫理的に許せないですね。

私は当初、またタグすらまともに理解しない日系の“なん ちゃってウェブ屋さん”にでも依頼されて、悪意もなく単に 知識不足で痛い目に遭っているパターンかと予想したので すが、先方は米系業者に依頼されていたようです。

私が日系業者の仕業と予想した背景には、過去に多々、 そういうレベルの仕事をされているのを見てきたからで、 実は今でも恐らく悪意もなく、痛いことをやっている業者 さんは多々います。実際に今、軽く調べてもみても、そう いう例が簡単に見つかりますから。

致命的なサイトへ直接連絡して、何なら営業でもしちゃ おうかな~とも考えましたが、多分しません(笑)。そうい うレベルの業者さんを平気で使い、そのままで放置できて いたくらいなので、恐らくウェブへの関心度も低いと予想 できるからです。生意気な物言いと取られるかもしれませ んが、我々の本来やっていることの難しさ、深さ、重さ、意 味、そして価値をどこかで軽視されていると感じてしまう相 手と関わるのは、お互いに不幸になるだけだと思っています。

ですがもしもウェブマーケティングに本気で関心があり、 かつ現在何か不安を感じられていれば、お気軽にお問い合 わせください。本稿は同業者さんにもかなり見られている ようなので、もしかしたらこれを見て、慌てて修正して証 拠隠滅を図られるかもしれませんが、先に書いた通り、過 去のサイトも実は簡単に辿ることができるので、小手先の 誤魔化しは効きません。今現在、そして過去どうだったの か、簡単ながら無料でお調べしましょう! ただ一応、先 着10社様くらいでいいですかね? それとも本気度を測る 簡単なテストで選定させて頂くかな(笑)。

[もっと詳しくSEOと検索結果について知りたい方はこちらも参照ください: SEOと検索結果とは?]
[もっと詳しく悪いWEBサイトの例について知りたい方はこちらも参照ください: 悪いWEBサイトの例]

2015年8月3日月曜日

ウェブサイトのモバイル対策: Responsive Web Design [レスポンシブWebデザイン]

(U.S. FrontLine誌 2014年9月5日号 掲載分)

前回、近年登場した、新しいモバイル対応サイトの画期 的な構築方法である、レスポンシブ・ウェブデザインにつ いて、軽く触れました。昨今のデバイスやインターネット 閲覧環境の多様化により、モバイルユーザーが増え続けて いる中、ユーザーが閲覧している画面サイズも、かなりの バラツキが出ています。一番割合的に多い画面サイズでも、 全体の1割強という状況で、サイト制作側も、モバイル対 応は、必要不可欠になってきたと言えます。

[もっと詳しくレスポンシブWebデザインについて知りたい方はこちらも参照ください: レスポンシブ・ウェブデザインとは?]

従来のモバイル専用サイトの問題

以前より、モバイル専用サイトは、大手企業サイトを中心 に存在はしていました。ただ通常サイトとは別に構築する ことで、色んな問題があり、あまり普及はしませんでした。 モバイル専用サイトは、通常サイトの簡易機能版サイト という位置づけで、通常サイトにある全ての機能・コンテ ンツが使えるものにはなっていないケースがほとんどでし た。ユーザーからすると、使い勝手や得られる情報という 面で、かなりストレスを感じることが多く、モバイル専用 サイトがあるとは分かってはいても、あえて多少見難くと も、スマートフォン上で通常サイトの方を利用するユーザ ーも多くいたと思います。

検索エンジン的には、通常サイトとモバイル専用サイト は、ミラー(重複)コンテンツになりやすく、リダイレクト (自動でページを転送させる行為)も多発するなど、SEO的 に色んな問題を抱えることになります。

ログ解析においても、コンテンツが二重化していること で煩雑になり、勿論、開発費も二重にかさみ、ページの更 新・追加作業といった メンテナンス的にも、コストがかさ むことになります。

そこで近年登場したのが、レスポンシブ・ウェブデザイン という手法です。ちなみにResponsiveとは、「反応がいい」 という意味ですが、元は建築用語の「Responsive Design 変化できる建築デザインの意」から引用されたそうです。

レスポンシブ・ウェブデザインとは?

モバイル専用サイトのように、ファイルを二重化構造 でもつことなく、通常サイトに必要なファイルに、少し拡 張した記述をすることで、ユーザーが様々な画面解析度で 閲覧した場合でも、柔軟な表示を実現する手法のことです。 技術的には、大きく3つの要素から構成されます。

「フルードグリッド」は、液体が器の形に合わせて、流動 的にカタチを変えるかのように、画像やテキストなど、ウ ェブページのコンテンツを、どんな画面サイズで閲覧され ても、きれいに整列させたレイアウト表示を実現する技術。 「フルードイメージ」は、画像を、縦横比を保ったまま、 画面解析度に合わせて、伸縮させる技術。

画像に関しては、例えばモバイルから閲覧された場合に だけ、小さいサイズの画像をロードさせ、回線事情の悪い 環境下でもレスポンスを改善することなども行えます。

「メディアクエリー」は、ユーザーの画面解析度に合わせ て、任意のスタイルを適用できるようにする記述で、これ を利用して例えばモバイル用のメニューの表示も簡単に行 えます。

レスポンシブ・ウェブデザインの利点・欠点

メリットは、今後も増え続ける様々なデバイスへの表示 が柔軟に対応でき、ファイルを一元管理できるため、生産 性・メンテナンス性に優れ、デザイン性やURLも統一でき、 SEO的にも有効(Googleも推奨している)になることです。 デメリットは、通常のサイトを構築するよりは、記述し なければならないコードや、考慮事項が増えるため、テス トも含め、開発コストは上がります。それでもモバイル専 用サイトを別に開発するよりは、一般に安くなります。

コードがより複雑化するため、設計段階から、それな りのスキル・知識をもった開発者が携わる必要があります。 適切なスキルのない開発者が関わると、返ってメンテナン ス性が悪くなり、不測の事態を招く可能性もあります。