アメリカ文化、 どこまで理解できていますか?

(U.S. FrontLine誌 2011年3月5日号 掲載分)

以前、アメリカの実情を理解しようともせず、「日本ではこう売れた」的な思い込みだけで突っ走ろうとする日系メーカーをよく見るというお話をしました。

特に日本で生まれ育った日本人が、アメリカの歴史的背景や文化、慣習、価値観などを、アメリカ人並みに理解するには無理があると思います。アメリカは多民族国家ですので、なおさら複雑なのです。

仮に、アメリカに移住して20年以上住んでいる人だとしても、それまで周りのアメリカ人とどの程度の関わり合いを持ち、どのような生活をしてきたのかが重要です。スムーズに英会話をされているような方であっても、深層的なアメリカ文化の理解という意味では、意外にも危うい方々をたくさん見てきました。文化・言語の奥の深さを本当に実感できていれば、アメリカ市場におけるマーケティングは、アメリカ人の協力が不可欠であることも理解できるはずです。ただ残念ながら、未だに甘く見ているケースと遭遇してしまうので、自分たちの認識不足が原因で市場で負けるべくして負けていることに早く気付いて欲しいものです。

(アメリカ進出について、もっと詳しく知りたい方はこちらも参照ください。アメリカ進出サポートサービス)

「かわいい」は褒め言葉ではない?

以前に取り上げた、我が社が窮地から救った日本のあるメーカーも、アメリカ文化の理解という観点において、ターゲットの選定と売り方の基本戦略から致命的な間違いをしていました。最初に「なぜ自分たちの商品がアメリカで受けると思っているのか? 何が優れているのか?」と尋ねたところ、「かわいい」デザインだからという返答でした。そして、その商品は、日本では中学生くらいの女の子たちに「かわいい」という理由で受けているため、それがアメリカにおいても、同じように通用すると考えていたのです。

アメリカの場合、まず「かわいい」という価値観自体が、アジア圏とでは大きく異なっています。例えば、日本であれば、成人女性に対する褒め言葉として、「美人だね」「かわいいね」などが通用すると思いますが、アメリカの成人女性に対して「Cute(かわいいね)」という表現を使った場合、それは「年齢の割には未熟だね」といったニュアンスの、むしろ当人も言われてあまり嬉しくないような意味に受け取られる方が一般的なようです。大人に対して「かわいい」という日本の価値観が通じるのは、アニメ好きのオタクとアジア系くらいだと考えておいた方が無難でしょう。

ティーンガールは大人の女性を目指す

そして、日本とのもう1つの決定的な違いとして、アメリカのほとんどのティーンの女の子たちは、大人の女性が形容されるような状態を目指しています。それは、例えば「セクシー」「美人」「クール」といった路線で、決して「かわいい」ではないのです。もちろん、先に述べた「かわいい」に関する価値観の違いが大きく起因しているのだと思いますが、一般的に中学生は高校生を、高校生は大学生をマネたがる傾向にあり、自分たちよりも年上の女性が目指してもいないものを、若い年齢層が目指すことはないのです。

我が社は、まずそのメーカーの商品はアメリカにおいては、「かわいさ」ではなく、「Funny(面白い)」という理由で受ける可能性の高いものだということを指摘し、ターゲット層も最初はティーンではなく、大学生以上の男女を狙うべきであることを伝え、基本戦略から修正させました。仮にティーンをどうしても狙いたかったとしても、先に大学生あたりから浸透させ、徐々に購買年齢層が下がっていくという展開の方が現実的であり、数年後に達成させると考えるべきものなのです。

ブランド名も、我が社がその案件を担当する前に、既にそのメーカーの現地担当が(つまりマーケティングに関しては素人が)考え出したもので展開していたのですが、基本戦略もターゲット層も大きく間違った上で考えられたものであったため、多くの男性からは敬遠されがちな名前になっていました。

そのリスクや現状を最初は口頭で説明したのですが、なかなか理解されなかったので、既にあった販売店やフォーカスグループのアンケート結果を突きつけることで、ようやく納得してもらうことができました。そのまま間違った方向に突き進んでいたら、そのメーカーは今頃、アメリカから撤退しなければならなかったことでしょう。

もっと詳しくブランディングについて知りたい方はこちらも参照ください:ブランディングが必要な理由

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