中小企業が生き残るには⑦ 推移

(U.S. FrontLine誌 2011年8月20日号 掲載分)
前回、ウェブ制作において、企業内でよくある誤解につい て触れました。ウェブ制作プロジェクトの担当になること が多いのが、その企業内のIT部署の方なのですが、彼らの専 門分野と、本来ウェブ制作で必要とされる専門分野は、実 はかなり違っています。担当の方のプロジェクトへの関わ り方が、ウェブ制作者の管理役であろうと、制作現場で関 わる方であろうと、専門外の人にプロジェクトの管理を任 せていることを、企業が正しく認識していないと、期待で きる結果と現実にギャップが生じてしまい、後々、皆が面 白くない思いをすることになります。

オンラインビジネスの救世主だったPPC

さてオンラインで、SEO(検索結果で上位表示させて集 客を図る手法)の次に登場したマーケティング手法が、 PPC(クリック課金型キーワード広告)でした。検索キー ワードに連動させて広告を表示でき、ユーザーにクリック された分に対してのみ広告費が発生するため、ターゲット も絞り込みやすく、費用対効果の面で従来の広告より格段 に優れていたため、あっという間に浸透していきました。

特にオンラインショップでは、集客数と売上は切実な関係 があるため、オンラインビジネスをよく理解しているショ ップオーナーは、こぞってこのPPCに飛びついたものです。 ただ、既に試された方ならお分かりだと思いますが、PPC は始めるのはとても簡単ですが、継続的に利益を創出する のは、決して楽ではありません。事実、PPCを始めてみて、広 告費を湯水のように使うも、お金を浪費するだけだったと、 我が社に助けを求めてこられるケースも多々ありました。

ただ「ちょっとAdwords(Google社の提供するPPCサー ビス)を試してみたけど、何にもならなかった。あれはダ メだね」と、たまに素人の方が結論づけることがあるので すが、それはちょっと違うかな、と思うときもあります。

本稿で何度も述べたように、PPCもうまく活用するには プロ並みのノウハウが不可欠です。価値が本当にないのか は、プロが試行と分析を重ね、ようやく判断できることで、 素人が下手な活用をして結果が出ないのは当たり前、それ だけで価値判断するのは浅はかだと思います。

ところでアメリカと日本のショップを比較すると、どうし ても日本の戦場のぬるさを感じずにはいられません。勿論ロ ケーション的な意味で、アメリカの方がオンラインの需要が高 く、それだけショップ側も本気だったとも言えますが、PPCの 普及の早さと使われ方も、この差に一役買っていたはずです。

なお本稿の第41回でも取り上げたように、近年のPPCの 1クリック当たりの広告費は、始まった当初と比べ、かなり 高騰してしまいました。原因は、それまでテレビCMに多額 の予算を投じていた大企業が、オンライン広告へ予算の比 重を置くようになってきたのが大きいでしょう。それによ り、中小企業には敷居が高くなってしまった感があります。

今、成約率が高い広告は?

ちなみに我が社は、2つの自社オンラインショップを運営 しており、当然PPCもやっています。例年の経験でいうと、 ホリデーシーズンは効果てきめんであまり心配はないので すが、オフシーズンはかなり手間を掛けてPPCを最適化す る必要があります。

一方従来からあった、人気サイトでのバナー広告は、出稿 先の選定さえ気をつければ、意外に手間をかけず、利益を 確保できる場合があります。勿論、いくらトラフィックの 多いサイトでも、ターゲット層が適切であり、オンライン 人間達の心理を理解した広告であることは絶対条件ですが。

我が社やクライアントショップの経験上、今、成約率が安 定して高いPPC媒体が実はあります。それは、Amazonです。 勿論Amazonは巨大な競合の1つなのですが、検索結果に表 示させるPPCと比較すると、Amazon内のPPCの方が成約率 が高くなるという経験を何度もしました。

レビューや価格などを比較するために、買い物をしたいユ ーザーが既に集っていることが、その要因と予想できます。 一番の目の敵であり、オンラインショップの王様である Amazonの、膨大なトラフィックの恩恵を得てビジネスをす るという、何とも皮肉な話です。

ただ今のオンラインは、超大手数社が、買収も繰り返しな がら急速に拡大して、市場を占有し始めています。別に預 言者ではありませんが、この状況でこのまま大手に乗っか っていっても、中小企業に先はないと断言できます。それ を肌で感じているからこそ、本稿のテーマを書いておくべ きだと思った次第です。続きます。

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