2013年8月28日水曜日

中小企業が生き残るには⑦ 推移

(U.S. FrontLine誌 2011年8月20日号 掲載分)
前回、ウェブ制作において、企業内でよくある誤解につい て触れました。ウェブ制作プロジェクトの担当になること が多いのが、その企業内のIT部署の方なのですが、彼らの専 門分野と、本来ウェブ制作で必要とされる専門分野は、実 はかなり違っています。担当の方のプロジェクトへの関わ り方が、ウェブ制作者の管理役であろうと、制作現場で関 わる方であろうと、専門外の人にプロジェクトの管理を任 せていることを、企業が正しく認識していないと、期待で きる結果と現実にギャップが生じてしまい、後々、皆が面 白くない思いをすることになります。

オンラインビジネスの救世主だったPPC

さてオンラインで、SEO(検索結果で上位表示させて集 客を図る手法)の次に登場したマーケティング手法が、 PPC(クリック課金型キーワード広告)でした。検索キー ワードに連動させて広告を表示でき、ユーザーにクリック された分に対してのみ広告費が発生するため、ターゲット も絞り込みやすく、費用対効果の面で従来の広告より格段 に優れていたため、あっという間に浸透していきました。

特にオンラインショップでは、集客数と売上は切実な関係 があるため、オンラインビジネスをよく理解しているショ ップオーナーは、こぞってこのPPCに飛びついたものです。 ただ、既に試された方ならお分かりだと思いますが、PPC は始めるのはとても簡単ですが、継続的に利益を創出する のは、決して楽ではありません。事実、PPCを始めてみて、広 告費を湯水のように使うも、お金を浪費するだけだったと、 我が社に助けを求めてこられるケースも多々ありました。

ただ「ちょっとAdwords(Google社の提供するPPCサー ビス)を試してみたけど、何にもならなかった。あれはダ メだね」と、たまに素人の方が結論づけることがあるので すが、それはちょっと違うかな、と思うときもあります。

本稿で何度も述べたように、PPCもうまく活用するには プロ並みのノウハウが不可欠です。価値が本当にないのか は、プロが試行と分析を重ね、ようやく判断できることで、 素人が下手な活用をして結果が出ないのは当たり前、それ だけで価値判断するのは浅はかだと思います。

ところでアメリカと日本のショップを比較すると、どうし ても日本の戦場のぬるさを感じずにはいられません。勿論ロ ケーション的な意味で、アメリカの方がオンラインの需要が高 く、それだけショップ側も本気だったとも言えますが、PPCの 普及の早さと使われ方も、この差に一役買っていたはずです。

なお本稿の第41回でも取り上げたように、近年のPPCの 1クリック当たりの広告費は、始まった当初と比べ、かなり 高騰してしまいました。原因は、それまでテレビCMに多額 の予算を投じていた大企業が、オンライン広告へ予算の比 重を置くようになってきたのが大きいでしょう。それによ り、中小企業には敷居が高くなってしまった感があります。

今、成約率が高い広告は?

ちなみに我が社は、2つの自社オンラインショップを運営 しており、当然PPCもやっています。例年の経験でいうと、 ホリデーシーズンは効果てきめんであまり心配はないので すが、オフシーズンはかなり手間を掛けてPPCを最適化す る必要があります。

一方従来からあった、人気サイトでのバナー広告は、出稿 先の選定さえ気をつければ、意外に手間をかけず、利益を 確保できる場合があります。勿論、いくらトラフィックの 多いサイトでも、ターゲット層が適切であり、オンライン 人間達の心理を理解した広告であることは絶対条件ですが。

我が社やクライアントショップの経験上、今、成約率が安 定して高いPPC媒体が実はあります。それは、Amazonです。 勿論Amazonは巨大な競合の1つなのですが、検索結果に表 示させるPPCと比較すると、Amazon内のPPCの方が成約率 が高くなるという経験を何度もしました。

レビューや価格などを比較するために、買い物をしたいユ ーザーが既に集っていることが、その要因と予想できます。 一番の目の敵であり、オンラインショップの王様である Amazonの、膨大なトラフィックの恩恵を得てビジネスをす るという、何とも皮肉な話です。

ただ今のオンラインは、超大手数社が、買収も繰り返しな がら急速に拡大して、市場を占有し始めています。別に預 言者ではありませんが、この状況でこのまま大手に乗っか っていっても、中小企業に先はないと断言できます。それ を肌で感じているからこそ、本稿のテーマを書いておくべ きだと思った次第です。続きます。

2013年8月5日月曜日

中小企業が生き残るには⑥ 誤解

(U.S. FrontLine誌 2011年8月5日号 掲載分)
前回、我が社へSEOサービスの引き合いを多数いただき ながらも、相手のマーケティングに対する意識や考え方に 違和感を覚えるケースも多々あったことをお話ししました。 SEOを通じて本気でマーケティングがしたいのか、それと も単に検索表示ランキングを上げて自己満足に浸りたいの か、見極めようとすればするほど、残念ながら後者のパタ ーンのように感じることが多かったのです。

ウェブ=IT部署の管轄?

ウェブ制作の仕事依頼をいただくと、多くの場合、相手企 業の担当者はIT部署の方になります。確かにウェブ自体は、 ITの知識・技術があってこそ存在するものですが、まだ多く の企業内で誤解があるように思うのですが、一般のシステ ム管理者(シスアド)の方の本来のフィールドでは決して ありません。

一般の人からすると、IT自体がよく分からない難しそうな 世界で、ウェブも一緒くたに映っているのかもしれません が、一口にウェブといっても、実はとても広く、奥が深い 世界です。

例えば、ウェブに必要なHTMLやCSSといったウェブペー ジを構成するためのコードを書けるシスアドの人もいると 思います。また、ウェブサーバーを構築するためのサーバ ーの知識や、画像加工するためのフォトショップ(Adobe 社の画像編集ソフト)の使い方を知っている、という人も いるでしょう。

ただ、それらは例えるなら、「料理教室に通って包丁の正 しい使い方を習った」という程度の話です。よほどの天才 でなければ、それだけで「料理の鉄人」のシェフにはなれ ません。

一握りの勝ち組を競うのが マーケティング

マーケティングの世界は、一握りの勝ち組と、その他ほと んどの負け組で構成されています。特に大きい市場で戦う ほど、その傾向は顕著になってきます。先の例で、「料理の 鉄人にならなくても、地元の定食屋のコックさんでもいい のでは?」と思われたかもしれませんが、特にオンライン での戦いでは、そうもいきません。

定食屋であれば、顧客層も競合相手も、店の近辺のエリア に絞られます。実際にそれで成り立つビジネスであれば別 の話もできるのですが、もう少し広いエリアに戦いを挑も うとすると、オンラインでは競合相手の範囲は一気に広が り、「全国区での戦い」になります。

例えば、ニューヨークの店や企業を視察に訪れた人が、ロ サンゼルスにある同業の店や企業と比較したいと思えば、 ロサンゼルスへ移動しなければならないので、時間も費用 もかかり、気軽には行動できません。従って、ニューヨー ク近辺の他社が主な競合相手になります。一方、オンライ ンの場合、わずか数秒、しかも無料で、「比較のための移動」 が可能です。理論上、ウェブにはロケーションによる縛り がないのです(検索エンジン自体は、あえてロケーション による縛りを設ける逆の試みもしているのですが、今はそ の話は割愛します)。

また、勝ち組は、一握りの本物のプロによるサポートを受 けています。負け組は、世の中の大半を占める“なんちゃ ってプロ”によって作り出されている、とも言えます。

プロ中のプロ同士の戦いで勝ち残るのがマーケティングで あり、以前私は、それを「売りやすくするためのあらゆる 仕組み作り」と表現しました。その基本は競争力です。“な んちゃってプロ”のように、誰でも真似できるようなこと をやっていては、競争力が備わるはずもありません。ウェ ブマーケティングは、世の中に出回っているような知識や ノウハウで、どうにかなる世界では、断じてないのです。

“なんちゃってプロ”ですら、曲がりなりにもその道を専 業に何年もやってきた人たちです。シスアドの方が、片手 間に習得できる知識やスキルは、氷山の一角でしかありま せん。

失敗しやすいパターン

またウェブ制作で、その会社のマーケティングや営業担当 の人が打ち合わせから参加しないケースもあるのですが、 これは間違いです。マーケティング目的でウェブを開設す るのであれば、本来さまざまな議論やコンサルティングが 必要になります。その過程が抜け落ちてしまうと、ゴール 設定も方法論も間違いだらけのプロジェクトになりかねま せん。

ウェブを成功させるのに必要なのは、正しいマーケティン グ戦略と実践ノウハウ・技術です。それらどの分野におい ても、本来IT部署の人は専門外なのです。企業もそれを理解 した上で担当を任せていなければ、最終的に皆、不幸な状 況で終わるでしょう。(次回に続く)