2013年6月30日日曜日

中小企業が生き残るには③ 効率



(U.S. FrontLine誌 2011年6月20日号 掲載分)
前回、ビジネスは腕だけではどうにもならないこと、良い ものが必ずしも売れているわけではなく、「売り方」がより 勝っているものが売れている現実について、お話しました。

そこで、どうしてもマーケティングについて触れないわけ にはいきません。ちなみにマーケティングとは、私なりの 表現では「売りやすくするための、あらゆる仕組み作り」 のことです。よく「マーケティング」と「営業」を同義で 使われている方を見かけますが、それは間違いだと思いま す。「営業をしやすくするための行為」という表現なら理解 できます。

マーケティングがなぜ必要か

前回、我が社を例に、人間関係の長さや、営業トークのう まさ以外の部分で、勝負できなければ先がないと実感した こともお話しました。理由は簡単で、特にアメリカで間も ない頃だったので、人間関係の長さで対抗することは不可 能であり、自分をはじめ、我が社のスタッフも皆営業行為 自体が嫌い、もしくは苦手で、営業トークが得意な他社さ んには太刀打ちできなかったからです。

ちなみに上記を別の表現に置き換えてみると、人間関係の 長さ=信頼性で、営業力=人数が多いほど有利といえます。 つまり大手になるほど、そういった要素では当然有利に働 くわけで、別に我が社の例でなくとも、それに対抗するの に、特に中小企業の場合、同じ土俵で戦うには限界がある と思うのです。

ところで自分の場合、営業が大嫌いではあったものの、あ りがたいことに、運良く話を熱心に聞いて頂ける方に当た ると、時間は掛かりますが、受注につながることはありま した。恐らく技術者の話の方が、説得力があったからだと 思います。ただビジネスとしては、採算が合いません。営 業に費やしている時間までを計算すると、せっかく契約で きても、技術者の相場としては、あり得ないくらい安い時 給になってしまうからです(涙)。

そこでなぜ時間が掛かるのかを考えてみると、もともと相 手が意識もしていないことに興味を持たせ、実は必要であ ることを理解してもらう過程が大変であり、時間も掛かっ てしまうということが分かったのです。

もともとその商品やサービスが必要で、探し求めている人 達にリーチできれば、少なくとも最初のステップは省けま す。そういったことができる効率的な方法を考えると、今 の時代、自ずとウェブに行き着くと思います。

当時は検索エンジンもまだ発展途上でしたが、知恵と工夫 だけでもかなり面白いことができた時代でもありました。 そしてその潜在能力をいち早く見抜き、研究していたのが パートナーのレイアでした。

彼女は、日本で私が勤めていた会社の、偶然上の階にある、 コンサルティング会社に勤めていたのですが、その会社の 経営者の1人と私が懇意にしていて、丁度アメリカでの独立 を考えていることを話した際に、「うちの会社で日本語ので きるアメリカ人がいるよ」と言われ、紹介してもらったの がきっかけでした。

ただ私は独立した当初は、自分の腕だけでも会社を回して いけると甘く考えており、彼女がマーケティングについて 既に知識もあり、「へぇー」と関心させられることは多々あ ったのですが、正直そういったスキルより、とにかく英語 的な手助けをしてくれれば助かる、くらいに考えていたの です。

ところが現実問題としては、すぐに営業というステップで 大きな壁にぶつかってしまいます。彼女も私の技術力につ いては、前の会社の経営者からも話を聞いていたので、理 解はしてくれていましたが、ここまで脆いビジネスプラン だったことには呆れていました。そして私が採算の合わな い営業活動でもがいている間にも、せっせと研究・実践を 重ねてくれていたのです。

そしてある時、私をPCモニターの前に呼び、Googleであ るキーワードで検索し、大手サイトも押しのけ、我が社の サイトがトップに来ているのを嬉しそうに見せてくれたの です。実はそれでも、その時はそれが本当はどういう価値 を持つのかを、すぐには理解していませんでした。

ただそれから、我が社へ問い合わせが入るようになり、そ の価値と意味をしっかり理解できるようになりました。何 より相手は既にサービスを求めている潜在企業であること、 そして無人のウェブが、24時間365日、勝手に世界中を営 業をしてくれて、引き合いをもってきてくれるのです。少 なくとも我が社の場合、彼女の功績により存続できたこと は間違いありません。次回に続く。

もっと詳しくブランディングについて知りたい方はこちらも参照ください。
ブランディングについて">ブランディングについて">ブランディングについて

もっと詳しくアメリカ進出について知りたい方は当社サイトも是非ご覧ください。
海外・アメリカ進出支援

2013年6月18日火曜日

中小企業が生き残るには② 認識



(U.S. FrontLine誌 2011年5月20日号 掲載分)
前回、あえて顧客ゼロで起業したこと、実は「腕さえあれ ば何とかなる」と心のどこかで甘く考えていたこと、そし て想定していた継続の収入源が予期せぬ事件で当てにでき なくなったことなどをお話しました。

腕だけではどうにもならない

起業当初、1年は何とか会社をまわせる所持金でスタート できたものの、継続収入が期待できなくなったため、とに かく仕事を取ろうと、当時は自分が一番自信のあったシス テム開発の案件が手っ取り早いと考え、現地の日系企業を 中心に、自らも営業に出向いていました。

本来ならば、パッケージソフトの開発者として、ある程度 名前も売れた状況で展開していく予定でしたが、そのプロ ジェクト自体が頓挫したことで、自分自身もノーブランド から始めなければならなかったのですから大変です。

特に高額なシステム開発案件を受注する場合、信頼・知名 度が必要です。大手企業の冠があるわけでもなく、無名の 小企業が、そんな案件を獲得しようとすること自体、普通 に考えれば無謀です。

「良いものは作れても、まずその会社の存在自体が知られ ていなければ、ビジネスにはつながらない」。こんな一見当た り前のことを、身をもって体験し、初めて実感したのでした。

とにかく必死で慣れない営業をする中には、会社案内を渡 した相手に、その場でろくに目も通してもらえないまま、 「こんなことは誰にでも書ける。自分はXXさんや○○さんな らよく知っているが、君のことは全く知らないし、何も信 用できない」と罵倒されたこともありました。

その時の内容には、きちんと読んでもらえれば、経験を積 んだ者でなければ知識的にも書けないこともあったのです が、頭ごなしに自分のキャリアまで一切を否定されるとい うのは衝撃的だったので、今でも覚えています。

ただ同時に、真実であっても相手がそれを見ようと(興味 を持とうと)しなければ、結局はスタート地点にも立てな いことを認識しました。そして人間関係の長さや、営業ト ークのうまさではない部分で、勝負できなければ先がない ことも実感したのです。

必ずしも良いものが 売れているわけではない

昔ビデオテープが主流だった時代に、ベータとVHSの規 格があり、ベータはよりコンパクトで性能的にも優れてい たものの、結局市場はVHSが制した背景には、ざっくりマ ーケティング戦略的な優劣がありました。ちなみにマーケ ティングとは、私なりの表現で言うと、「売りやすくする仕 組み作り」です。

同じ工場で作られた同じ仕様の商品でも、高級感のあるパ ッケージで、宣伝広告などブランディングをしっかり行って いる方が、何百ドルも高く売れているものを知っています。

また私は世の中の人達は大きく分けて、「営業肌」、「技術 肌」の2つのタイプに大別できるように思います。前者は コミュニケーション能力に優れ、話術というスキルで、相 手を気持ちよくしようとするタイプ、後者は技術の習得力 に優れ、何らかの専門のスキルを提供することで、結果的 に相手を気持ちよくしようとするタイプ、といった感じで しょうか。

私は後者のタイプなのですが、前者の人達でいつも気に掛 かることがあります。ある程度会社が大きくなれば、当た り前ではあるのですが、会社の商品・サービスを相手に売 っていく上で、自分では責任の取れないことに対して、色 んな約束やトークをしなければなりません。そんなとき、 どういう精神構造になっているのか?ということです。

誠実な会社の営業さんなら、自らもできるだけ正しい知識 を習得する努力はされているでしょうし、自信の持てる商 品、もしくは最終的に責任を取ってくれる技術部隊をきち んと確保しているのだと思います。ただ本稿で何度も取り 上げてきたような、悪徳業者も世の中には多数存在するわ けで、上辺だけの知識で、自分はもちろん、会社ができも しないことまでも、平然と売りつけ、責任も取らない営業 さんは、きっと真顔で嘘がつける人だと思います。ただ案 外こういう人の方が、営業成績は良かったりするものです。

つまり世の中でよく売れているものは、決して「そのもの」 が優れているのではなく、(ものの良し悪しに関係なく、) 「売り方」が他社より勝っているケースの方が圧倒的に多い ということです。技術肌の自分にとっては、とても受け入 れ難い現実でしたが、これを認識することが、生き残るた めの第一歩だったと思います。次回に続きます。

2013年6月4日火曜日

中小企業が生き残るには 序章



(U.S. FrontLine誌 2011年5月5日号 掲載分)
前2回にわたり、オンライン市場で中小企業が置かれてい る現状について取り上げました。毎日24時間体制のカスタ マーサービスや無条件の送料無料サービス、無条件返品・ 全額返金ポリシーなど、大手が当然のように提供している サービスが業界の標準としてユーザーに認識されてしまう ことで、中小企業は、とても厳しい戦いを強いられていま す。

「この問題に対する画期的な対抗策は何?」と聞かれても、 正直、絶対的な答えはまだ見つかっていません。1〜2年 というスパンでならばまだ何とか想定できなくもないので すが、その場しのぎであることは否めません。そしてそれ 以前に、世の中の景気が今後さらに冷え込むというアナリ スト達の予測もあります。

実は本稿のテーマは、私の生涯のテーマでもあり、起業理 念にも関係するものです。簡単には語れないので、自分達 がこれまで辿ってきた軌跡や、現在直面している状況も交 えながら、少々長話にお付き合いいただけるとうれしいで す。

我が社を例に

「ACE Inc.は、一体何屋ですか?」と聞かれることがたま にあります。簡単に答えるなら、システム開発とウェブマ ーケティング事業の2つを主軸にしつつ、自社オンライン ショップも運営する会社なのですが、実はこのビジネスモ デルは必然性により生まれました。

本稿を昔からお読みいただいていれば、お気づきになって いるかもしれませんが、私自身がIT・システム関連の話をし ている時と、マーケティング関連の話をしている時があり ます。本来ならは、これらは全く異なる分野なのです。

私個人はキャリアでいうと、間違いなくシステム・エンジ ニアがベースです。以前本誌でウェブマーケティングにつ いて執筆していた、その道のエキスパートであるパートナ ーのレイアが、私の師でもあり、常に最新の情報と現場で の経験値をシェアしてくれており、そこに本来の自分の強 みでもある分析力・論理思考・創造力を加えることで、い つの間にかウェブマーケティングの分野でもそれなりの成 果を出せるようになり、自分でも今の肩書きの説明に困る ことがあります。

今では、アメリカ進出を試みる日系企業の方に、「しては いけないこと・するべきこと」などを偉そうに(笑)語る ことも多くなったのですが、今だから白状しますが、会社 を設立した当初は、技術的な腕にこそ覚えはあれど、ビジ ネスについては無知で、事業計画も稚拙なものでした。

独立前、私は日本の小さなIT会社に勤めていたのですが、 アメリカでの起業を考えるようになり、その会社で半ば無 理やり、アメリカでのシステム開発の仕事を展開させ、自 分のスキルがアメリカでも充分通用することを確認し、独 立しました。事前にある程度顧客ベースを築いてから独立 するのが普通だったのかもしれませんが、自分の本当の実 力・真価を測りたかったのと、顧客を盗んで独立するのは 自分の哲学に反することから、顧客ゼロ、しかも見知らぬ 土地のアメリカで事業をスタートしたのです。

ただし、ビジネスが軌道に乗るまでの収入源としては、IT 会社と会計事務所とコンサルタント会社が組んで、日本の 販売管理システムのパッケージソフトを全国展開するとい う大きなプロジェクトがあり、そのメインの開発を指名さ れていたため、開発費と展開後のサポート費用で当初はラ ンニングすることを想定していました。もちろん、パッケ ージが全国展開することで、開発者として自分の名前も売 っていくことも計算していました。

ところが、プロジェクトの途中で予期せぬ横領事件が起き たのです。残った各社で何とか再開させようと試たものの、 結局プロジェクトは頓挫してしまったのです。ただ、初期 開発は既に終えており、独立したばかりの一番弱い立場で あった私はみなさんから守っていただく形で、ありがたい ことに全額支払いも受け取っており、1年は何とか回すこ とができる金額でした。それでも、その先の継続費用の当 てを完全に失いました。

若かったといえばそれまでですが、今考えれば事業計画と はとても呼べないもので、正直「腕さえあれば何とかなる」 という過信もありました。今では日本のメーカーさんに、 「良いものだから売れるとは限らない」と諭すことがよくあ るのですが、白状すると、私も最初は似たような発想を持 っていたのです。次回に続きます。