2013年4月26日金曜日

災害時のIT



(U.S. FrontLine誌 2011年3月20日号 掲載分)
東日本で起きた大震災における被災者およびその関係者の 皆様、救援・復興作業に携わっておられる関係者の方々に、 少しでも被害が少ないこと、できるだけ多くの方が救出さ れること、そして今後の生活で手厚い援助を受けられるよ うになることを、心より願っております。

多忙を理由に最近はニュースをほとんど見ておらず、人か ら今回の災害について伝えられ、その後周りのアメリカ人 たちがあまりにも「お前の家族は大丈夫なのか?」と聞い てくるので、逆に事の重大さを実感したぐらいでした。

計画停電への対応策

災害発生2日後に、東京に本社のある、我が社のクライア ントの社長から電話がかかって来ました。いつもならGTalk (Googleの無料インターネット電話)かSkypeで話すのです が、この時は通常の国際電話から、しかも日曜日の電話だ ったので、事の重大さを実感せざるを得ませんでした。

電話の第一声が「大変です…」。社員の方に何かあったの か、あるいはオフィスが地震で大きな被害にあったのかと 思ったのですが、幸いそうではありませんでした。話を聞 いてみると、「東京で計画停電が始まるらしい」という内容 だったので、実は正直かなりホッとしたのですが、よく考 えてみると確かに、少し大変な事態かもしれません。

そのクライアントの販売管理システムは、完全なカスタム 開発で我が社が導入・稼動させているのですが、物流倉庫 が名古屋にあり、VPN(暗号化により、インターネット回 線をプライベートな専用回線であるかのように利用し、ネ ットワーク接続を可能にする技術)を通じて、本社のサー バーと通信させています。

計画停電はどうやら毎日3時間強程度らしいのですが、そ の間、システムを通じた物流からの出荷・入荷作業ができ なくなるため、その時間帯に物流業務をストップさせない ための対応策を考えたいということでした。

咄嗟のことで私も今ひとつ冴えておらず、簡単に考えられ る方法として、一時的にサーバーを物流倉庫側に置くか、 ウェブサーバー側(現在アメリカのホスティング会社を利用) に既に同じタイプのデータベースがあるので、そこに役割を 移行することは簡単にできるでしょう、と答えました。

要するに、停電の影響を受けない本社以外のロケーション にメインサーバーを移行しては? という案だったのです が、東京地区の計画停電なので、そもそもISP(インターネ ット・サービス・プロバイダ)もダウンするのでは? と いう根本的な問題に気付きました。

そこで、とりあえずISPに確認してもらうことでいったん 電話を切ったのですが、確かに東京地区全体が停電する場 合、インターネットも使えなくなるわけで、VPNも機能し ないことになります。システム化した企業ほど、停電によ る日常業務への影響の大きさを実感しました。

ITの脆さを垣間見る

その後、やはりインターネットもダウンしてしまうことが 判明したのですが、社員の方から「こんな方法はどうでし ょう?」と提案されたのが、
① とりあえずジェネレータやUPS(無停電電源装置)な どでサーバーとPC用に最低限必要な電源を確保する
② システム上の出荷作業を本社側で代わりに行い、その 際に出力される伝票を全てPDF化する
③ 携帯キャリアのインターネット接続を通じて、それら のPDFファイルを物流倉庫に送り、それを印刷して出荷作 業をしてもらうというものでした。

もちろん、物流倉庫側にもサーバーを立てられれば、技術 的にはデータベースを同期させるなど、もう少し細かいオ プションもあるのですが、一番コストがかからず簡単にで きそうな方法として、「なるほど!」と開眼する思いでした。 特に画期的なわけでもないのですが、こういうフレキシブ ルな発想を、自分も忘れがちだと反省しました。

携帯キャリアのインターネット接続が計画停電の間に使え なければ元も子もないのですが、それはとりあえず問題なか ったようです。出力伝票が何百枚にもなるので、PDF化する 過程で作業が簡単になるプログラムを組む必要がありました が、結局、一時凌ぎとしてこの方法でやってみることになり ました。デジタルの時代にアナログ運用に戻ったような話で すが、今回はITの脆さを垣間見ることになりました。

今回は未曾有の震災が起こったことを受けて普段とは違う 内容になりましたが、次回からは、またITマーケティングに 話題を戻したいと思います。

2013年4月4日木曜日

アメリカ文化、 どこまで理解できていますか?



(U.S. FrontLine誌 2011年3月5日号 掲載分)
以前、アメリカの実情を理解しようともせず、「日本では こう売れた」的な思い込みだけで突っ走ろうとする日系メ ーカーをよく見るというお話をしました。

特に日本で生まれ育った日本人が、アメリカの歴史的背景 や文化、慣習、価値観などを、アメリカ人並みに理解する には無理があると思います。アメリカは多民族国家ですの で、なおさら複雑なのです。

(もっと詳しくアメリカ進支について知りたい方はこちらも参照ください。 アメリカ進出サポートサービス )

仮に、アメリカに移住して20年以上住んでいる人だとし ても、それまで周りのアメリカ人とどの程度の関わり合い を持ち、どのような生活をしてきたのかが重要です。スム ーズに英会話をされているような方であっても、深層的な アメリカ文化の理解という意味では、意外にも危うい方々 をたくさん見てきました。文化・言語の奥の深さを本当に 実感できていれば、アメリカ市場におけるマーケティングは、 アメリカ人の協力が不可欠であることも理解できるはずで す。ただ残念ながら、未だに甘く見ているケースと遭遇し てしまうので、自分たちの認識不足が原因で市場で負ける べくして負けていることに早く気付いて欲しいものです。

「かわいい」は褒め言葉ではない?

以前に取り上げた、我が社が窮地から救った日本のあるメ ーカーも、アメリカ文化の理解という観点において、ター ゲットの選定と売り方の基本戦略から致命的な間違いをし ていました。最初に「なぜ自分たちの商品がアメリカで受 けると思っているのか? 何が優れているのか?」と尋ね たところ、「かわいい」デザインだからという返答でした。 そして、その商品は、日本では中学生くらいの女の子たち に「かわいい」という理由で受けているため、それがアメ リカにおいても、同じように通用すると考えていたのです。

アメリカの場合、まず「かわいい」という価値観自体が、 アジア圏とでは大きく異なっています。例えば、日本であ れば、成人女性に対する褒め言葉として、「美人だね」「かわ いいね」などが通用すると思いますが、アメリカの成人女 性に対して「Cute(かわいいね)」という表現を使った場合、 それは「年齢の割には未熟だね」といったニュアンスの、 むしろ当人も言われてあまり嬉しくないような意味に受け 取られる方が一般的なようです。大人に対して「かわいい」 という日本の価値観が通じるのは、アニメ好きのオタクと アジア系くらいだと考えておいた方が無難でしょう。

ティーンガールは大人の女性を目指す

そして、日本とのもう1つの決定的な違いとして、アメリ カのほとんどのティーンの女の子たちは、大人の女性が形 容されるような状態を目指しています。それは、例えば 「セクシー」「美人」「クール」といった路線で、決して「か わいい」ではないのです。もちろん、先に述べた「かわい い」に関する価値観の違いが大きく起因しているのだと思 いますが、一般的に中学生は高校生を、高校生は大学生を マネたがる傾向にあり、自分たちよりも年上の女性が目指 してもいないものを、若い年齢層が目指すことはないので す。

我が社は、まずそのメーカーの商品はアメリカにおいては、 「かわいさ」ではなく、「Funny(面白い)」という理由で受 ける可能性の高いものだということを指摘し、ターゲット 層も最初はティーンではなく、大学生以上の男女を狙うべ きであることを伝え、基本戦略から修正させました。仮に ティーンをどうしても狙いたかったとしても、先に大学生 あたりから浸透させ、徐々に購買年齢層が下がっていくと いう展開の方が現実的であり、数年後に達成させると考え るべきものなのです。

ブランド名も、我が社がその案件を担当する前に、既にそ のメーカーの現地担当が(つまりマーケティングに関して は素人が)考え出したもので展開していたのですが、基本 戦略もターゲット層も大きく間違った上で考えられたもの であったため、多くの男性からは敬遠されがちな名前にな っていました。

そのリスクや現状を最初は口頭で説明したのですが、なか なか理解されなかったので、既にあった販売店やフォーカ スグループのアンケート結果を突きつけることで、ようや く納得してもらうことができました。そのまま間違った方 向に突き進んでいたら、そのメーカーは今頃、アメリカか ら撤退しなければならなかったことでしょう。

もっと詳しくブランディングについて知りたい方はこちらも参照ください:ブランディングが必要な理由