2016年12月14日水曜日

スポンサード・コンテンツの影響力

(U.S. FrontLine誌 2016年12月号 掲載分)

前々回、現代の情報源となるメディアが発する4種の“情報”:「(本来の)情報」、「プロパガンダ」、「誤報」、「偽情報」について触れました。今年の最後に、我々がメディア(新聞・雑誌・テレビ・ラジオ放送、ソーシャルメディア)を消費する際の、もう一つの大事な情報形態について、マーケッターの立場からすると複雑ながら、面白い(時には恐ろしい)状況をご紹介したいと思います。

マーケティングとプロパガンダの違い

ご存知の方も多いと思いますが、実は近いところがあります。以前触れましたが、プロパガンダは大げさに都合の良いことだけを、人々の感情や恐怖に訴えかけ、宗教や政治的概念を売り込むことです。広告・マーケティングは、似たような手法を利用し、(人々の悩みや不安、ミーハー心などを操作し、)消費物を売り込むことです。要するに売り手の思惑で売り込むことが、立派に共通しており、しかも企業のプロパガンダともくると、自社に有利な情報を流しつつ、場合により直接の利害関係を明らかにはしません。

以下の例は、厳密にはプロパガンダというより、偽情報に区分されると思いますが、最近とんでもない事実が公になりました:

この50年間、砂糖などの甘いお菓子が持つ健康リスクは、もっぱら脂肪の持つ危険性であると誤認されてきましたが、実は製糖業界が研究者をお金で買収し、調査結果をねじ曲げて、科学論文を発表していたらしいのです。そしてこの誤解により、流行した「低脂肪で糖分の多い食事」は、現在の肥満社会を形成したと言われています。

こういうことが現実に起きているからこそ、メディア・リテラシーはとても重要なわけですが、近年はネイティブ広告を含む、スポンサード・コンテンツの登場で、人が情報源を安全に消化する上でのハードルも、実は更に上がっているのです。

収入減だったメディアの救世主

近年、伝統的広告の収入低下を「スポンサード・コンテンツ」により、補っていくことを図り、かなり成功しているメディアが多いのですが、これは簡単に言えば、情報記事、ビデオ、写真集、ポッドキャストなど、自然なコンテンツを装った有料広告です。

以前なら、新聞や雑誌などに広告を載せようと思ったら、モデルさんと写真家とコピーライターを雇い、広告を作り、媒体の専用広告欄に載せていたと思います。しかし現代の広告ブロックソフトや、人々の広告を無視できる感覚の発達もあり、伝統広告は、そのリーチと影響力が激減し、しかも成果測定も困難であり、広告主にとっての価値が年々下がってきました。しばらく広告スペースを売る側(媒体)と買う側(広告主)も苦しんだあげく、媒体の中に自然に挿入されたコンテンツは、消費者をより説得しやすく、面白い情報として紹介することができる事に気付いたのです。

事実、アメリカにおいては、NewYork Timesを始め、ほとんどの大手新聞や雑誌は、「スポンサード・コンテンツ」を収益の大事な一部と認定しています。

コンテンツ・マーケティングとネイティブ広告

コンテンツ・マーケティングは、消費する側にとって、情報性、教育性など、面白みの高いコンテンツを作り出し、それを活用するマーケティングの手法です。従来のCMや有名人を使った押し売りのキャンペーンではなく、受け手側が何かを得たと感じさせる、有益なコンテンツ、例えばありふれた、非常においしい新しい調理法の特集から、ワンポイントメイクを極める秘訣の画期的なビデオまで、お役立ち情報の中に、企業の商品が密かに取り上げられたり、企業対消費者ではなく、エンドユーザーからの推薦として紹介するといった具合です。「Infotainment」とか「Edutainment」といった、楽しい造語は、現代企業の商品やサービス紹介戦略にますます入ってきています。

コンテンツ・マーケティングは、ブランドの認知度を高めながら、ユーザーとの信頼関係や忠誠心を作り上げるには、有効かつ必要なものになってきており、潜在顧客層にとって有益なコンテンツを作ったら、今度は人目に触れさせる必要があります。

ここでネイティブ広告の出番なのですが、ネイティブ広告とは、その有益なコンテンツを各媒体の体裁に合った形で、違和感なく挿入し、消費者に抵抗感なしで有益情報として消化させる広告の事です。例えば検索エンジンでのキーワード連動広告、Facebookのスポンサード・ポスト、ポータルサイトのレコメンド記事なども全てこれに該当します。

そしてFacebookやBuzzfeedはもちろん、NewYorkTimesですら、社説より、この「スポンサード・コンテンツ」として載せた方が、遥かに影響力を持つとまで言っています。

2016年11月1日火曜日

洗脳 VSメディア・リテラシー②

(U.S. FrontLine誌 2016年11月号 掲載分、一部加筆あり)

前回、この12年間でアメリカのメディアで一番視聴されているFox Newsは、CNN と MSNBC を合わせた以上の視聴者数を誇り、その層の70%弱は、Foxを一番信頼できるニュースソースと考え、他のメディアを全く視聴しない傾向があり、その背後には巧妙な洗脳術があることに触れました。

Fox Newsの実体

運営関係者を見ると一目瞭然で、Foxの元CEOは、歴代の共和党大統領の政治コンサルタントで、現在のトランプ氏の選挙対策委員会(選対)のアドバイザーです。選対本部長も Fox のコメンテーターで、Fox と密接なメディアを運営する人物が選対CEOなど、メディア幹部や関係者が、実は共和党選挙戦略のブレインで固められており、共和党支持、民主党批判の偏向報道ばかりなのは、至極当然なのです。それ故この選挙で、メディア・リテラシーが、どれ程重要であるかを、改めて痛感させられています。

Foxの元CEOは、ディベートコーチの役目が終わる大統領候補最後のディベート当日に、「トランプ氏は人の話の聞く耳をもたなかった」として、選対アドバイザーを降りる宣言をしてはいましたが、いずれにせよ最大の視聴者数を誇るメディアが、特定政党の選対として、自ら率先してサポートしている状況は、冷静に考えると、かなり衝撃的です。

Fox Newsによる洗脳術

分析によると、Fox は大きく「視聴者の隔離」→「敵の創造」→「恐怖による扇動」→「史実の変換」の 4 つを循環させ、その中で様々な洗脳テクニックを駆使しているそうです。

(参考情報: Fox Newsによる洗脳を、研究した例)

1.「視聴者の隔離」は、洗脳の典型的手法で、Fox 視聴者が外部から情報を得るのを遮断します 。「誤った二分法」により、 例えば「( 敵で偽りの )リベラル / 主流メディアの情報」or(味方であり正しい)Foxの情報 」という究極の2択を迫り、仮にネット上 の情報で、Foxの報道に疑問を感じても、それは“リベラル/主流メディアが、悪意の操作 をしている”、 というようなフレ ーズを、しつこく繰り返し、そう信じ込ませます。

更に仮説や信念を検証する際に、それを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視、または集めようとしない「確証バイヤス」や、矛盾を抱えた際の不快感を解消する為に、自身の態度や行動を変更する「認知的不協和」の心理と、信仰心も利用し、Foxの主張=正しい信仰に基いた神の主張、Foxを否定=神への否定かのような行為として浸透させているとか。

「認知的不協和」の分かり易い例:
喫煙者にとって、肺癌になりやすいという認知は、自身の行為に矛盾を感じさせるので、喫煙者で長寿の人もいれば、交通事故での死亡率の方が高い、など新たな認知を加えると、矛盾を弱められます。煙草会社の主張は、「喫煙者が肺癌になりやすいのは、煙草が原因ではなく、ストレスを抱える人がそれを和らげるために喫煙しており、肺癌の要因はストレスであり、煙草との因果関係はない。」

2.「敵の創造」は、論理思考を除去するのに都合がよく、家族・国・神を守るFox視聴者は、正直でピュアな善のグループ、リベラル・エリートなど、それ以外は皆悪のグループと規定し、例えばキリスト教はこれらの人々から攻撃を受けているという構図を創り上げます。

本来言える立場にいない側が、自分に言われていることを相手に被せていく「フリッピング」で、例えば黒人の人権保護主張を、逆に白人差別だと非難するなど、問題は相手側にあると片付けたり、警官による黒人射殺事件では、( 白人ならまず撃たれ得ない ) 被害者を、誹謗中傷にて相手の立場の正当性を無くし、無理やり悪者にし立て、“殺されても仕方なかった”と消化したり、少数の行動からグループ全体をネガティブな存在に規定した「スケープゴート」により、例えば“イスラム教徒は皆テロリスト”というように、偏見や敵を確立します。

3.「恐怖による扇動」は、独裁者やカルト教祖が人を支配する上での常套手段です。恐怖は、脳の理性を処理する部位をバイパスして、動物的反応を司る視床下部へ直接伝達される為、理性を失わせた行動をさせるのが特徴です。

例えば“不法移民は犯罪者ばかりで危険”だとか、“職を奪ったり、福祉受給が多く、自分達の生活を脅かしている”という「ステレオタイプ」を増幅させて、不平等や差別も許される根拠へ展開します。(不法移民の犯罪率は特別高くなく、福祉受給割合など実は白人も多く、不法移民に割かれる税財源など数パーセントで、逆に彼らがもたらす経済効果により、社会保障の財源も破綻していないという事実があります。)

4.「史実の変換」も偽情報を流して頻繁に行われ、Fox視聴者には、“オバマ氏はイスラム教徒で、米国生まれではない” “地球温暖化はただの陰謀”などと、本気で信じている人が多いのも、見事な洗脳成果です。

視聴者を恐怖で煽り、戦時中の国民さながらに怯えさせ、理性を奪い、身を守るためと錯覚させるこのやり口は、ナチドイツのナンバー2が「誰も戦争など望まないが、攻撃されかかっているのだと煽り、平和主義者に対しては、愛国心が欠けていると非難すればよい」と言っていたのを思い出して、ぞっとしました。

2016年10月3日月曜日

洗脳 VSメディア・リテラシー①

(U.S. FrontLine誌 2016年10月号 掲載分、一部加筆あり)

アメリカのトップ1%(実質的には0.1%)による富の支配が騒がれるようになってから、随分経ちます。所得格差の是正は、今回の選挙でも1つの争点になっているはずなのに、相変わらず、富裕層や大企業への減税、租税回避の実質的放置、相続税廃止など、本来なら所得格差を拡大させるだけの政策を掲げる共和党ですが、いつも通り支持率で民主党と拮抗しています。トップ1%の方々だけならまだしも、なぜ半数近くも、いつも安定して支持を得られるのか? そこにはあるメディアの秘密が関係しています。

メディアが発する4種の“情報”

仕事柄、マーケッターとして人の心理を分析し、警戒心を解き、効率的に広告やブランドイメージを浸透させることを研究しているだけに、選挙では、逆に人のメディア・リテラシーの低さが恐ろしくなります。メディア・リテラシーとは、『無数の情報メディアを読み解いて必要な情報を引き出し、その真偽を見抜き、活用する能力』です。私たちはメディアを通じて、日々様々な“情報”に触れているわけですが、そこにはどれくらいのプロパガンダが含まれ、洗脳の危機に晒されているのかに言及します。

ジョンズ・ホプキンス大学の、効果的なリサーチを行う為の研究生向けガイドラインによると、情報は、大きく「(本来の)情報」、「プロパガンダ」、「誤報」、「偽情報」の4つに分類されるとのことです。

「情報」の基礎単位はデータで、我々が既に持っている情報に、その新しいデータを足し、分析をすることによって、知識に変えることができる可能性のあるものです。

「プロパガンダ」は、主張者にとって有利に働く、選りすぐられた「情報」データを加え、更に受け手の態度や感情を煽って、深層心理にまで訴え掛け、意図した主張の説得や洗脳を試みる行為です。見分けるにあたり、感情を煽ったり強調されたりした部分をすべて取り除き、「(本来の)情報」だけを抜き出すことは有効です。

「誤報」は、都市伝説的な情報です。見分けるのはとても難しく、自分で様々なソースを見て確かめるしかないのですが、とにかく鵜呑みをしない事が重要です。

「偽情報」は、悪意を持って嘘の情報を作り上げ、それをベースに論理的な説得や洗脳を試みる行為です。見分け方としては、情報を提供している側のバッカーや関係者の国、団体、個人を確認し、その情報が引き起こす心理操作により、誰が得をし、誰が損をするのか? 裏の意図を確認する事で、判断できる可能性があります。

典型的な例では、 “イラクが大量殺戮兵器を持っている”という「偽情報」により、世論も操作して、ブッシュ前大統領によるイラク戦争が開戦され、推定120万人が死亡しました。

洗脳はどの様に成されるのか?

所謂インテリ層と、非インテリ層では、メディアとの向き合い方や活用の仕方が全く異なってきている事が判明しており、インテリ層の場合、様々なメディア(CNN、MSNBC、CBS、ABC、PBS、NBC他)のソースから、幅広く情報を得ているのに対し、非インテリ層は、特定のメディアのみを視聴する傾向が顕著になっています。

その特定メディアは、この12年間で、アメリカにおいて一番視聴されており、CNN とMSNBCを合わせた以上の視聴者数を誇り、今年の共和党予備選の討論会では、240万人もの視聴者数を記録しました。そのメディアとは、Fox Newsです。

Foxの視聴者層は、実に70%弱がFoxを一番信頼できるニュースソースと考えており、(他メディアでは最大でも30%未満)、他のメディアは全く信頼せず見ない傾向が強く、なぜこんな極端な状況になっているのか、実は様々な研究・分析がなされており、聞いてみると巧妙ながら、とても恐ろしい裏の仕掛けがありました。

(Fox Newsによる洗脳を、研究した例)

まずFoxだけを見る様にさせる「視聴者の隔離」ですが、実は洗脳の典型的手法の一つだそうで、この状況を作り出す為に、色んなテクニックが駆使されており、学術的に、「誤った二分法」と呼ばれる、不必要に究極の2択を迫るのもその1つです。

本来なら複雑な問題を、単純化し過ぎることによって、実際には他にも選択肢があるのに、2つの選択肢しか考慮しない思考を生み出します。例えば「Foxという(あなたの味方で正しい)ソースから情報を得るか、他のすべてのリベラル系の(敵で偽りの)ソースから情報を得るか」という選択を迫るわけです。視聴者が外部から情報を得てしまうと、誤報や偽情報が露呈してしまう為、「誤った二分法」による「視聴者の隔離」は、洗脳には不可欠だとか。

その他、「視聴者の隔離」をより強固にさせる、「フレーズの繰り返し」や「認知的不協和」、「確証バイヤス」と呼ばれるテクニックも駆使されており、次回、具体例も交えて、詳細に解説しますが、上記はFoxの洗脳手法のうち、まだ1/4程度の話なので、本当に恐ろしいのです。

2016年8月31日水曜日

ポケモンGO

(U.S. FrontLine誌 2016年09月号掲載分)

今巷で大人気の、ポケモンGOというスマートフォン(以下スマホ)用ゲーム、私は正直それ程興味はなかったのですが、パートナーがかなりハマっており、色々聞かされたり、付き合わされたりした中で、素直に感動した事や興味深いと感じた事を、書かせてください。

前身はGoogle内のスタートアップで、昨年独立したNiantic社が開発していたIngressという、スマホ用のオンラインの位置情報のARゲームで、新しい地域を冒険し、運動にもなり、他のユーザーとも繋がりを持つというコンセプトに、現実世界とポケモン(ポケットモンスターの略で、漫画のキャラクター )との共存体験を実現する構想として、Googleや任天堂も出資しました。

既にご存知の方も多いとは思いますが、一応ゲームの概要を説明すると、プレイヤーは、ポケモントレーナーとして、現実世界でポケモンを探して歩きまわり、ポケボールと呼ばれるカプセルを投げてポケモンを捕獲し、最終的に約150種類ものポケモン図鑑を完成させるというゲームです。

ポケボールは、マップ上に現れるポケストップと呼ばれる特定の場所で、様々な道具と共に手に入ります。ポケストップは、世界中の名所やスポット以外にも、Ingressでユーザーから集められたデータも活用され、例えば近所でもマニアックなアートスポット等もあり、行ってみると、「ヘェ〜こんな所あったんだ」的なプチ感動をする事もあるとか。

図鑑を完成させるために、ポケモントレーナーとしてのレベルを上げる必要があり、たくさんのポケモンを捕まえたり、予め3つのチームに分かれたトレーナー同士が、特定の場所にあるポケジムで、敵チームとポケモンを戦わせ、鍛えるなどします。

このゲームは意図されたコンセプト通り、ユーザーをとにかく歩かせて、運動不足を解消させます。因みにパートナーは、始めてから約3週間で、112km歩いており、私もそこそこ付き合わされました(汗)。世の中の肥満問題の解決策として、誰かが考えたのなら、本当に見事で、引き籠りがちだった人が、外に出る様になったというニュースも多々見ました。

現実のコミュニティを作る

老若男女、人種問わず、それこそ障害者までもが、共通の話題で盛り上がれるのは、実に素晴らしく、今の大統領選の某候補が、恐怖や憎悪、偏見を煽り、国民を分断させるような動きをひたすらとっている様な世の中において、このゲームのコンセプトは、実に平和的で、健全かつ気持ちのいい世界感だなと思いました。

パートナーがポケジムでバトルをする際に、10歳位の見知らぬ坊やと味方チームになったそうです。周りにいたティーン達が敵チームと分かり、明らかにがっかりされたらしいのですが(笑)、いざ戦いが始まると、パートナーのポケモンは強かったらしく、ティーン達から「うわっレベル22だ、誰だ強ぇ、勝てね〜」と思わず動揺が聞こえ、この味方の坊やが急に誇らしげになり、ハイタッチして来たとか。

会社の近くで、同じくポケモン探しをしていた自閉症の子供に、熱く話しかけられたり、見知らぬユーザー同士でも、年齢差も40歳以上ありそうでも、ごく自然にこのゲームネタで、軽い会話が生まれている光景も何度も見ましたが、これって凄いなと思いました。

マーケティングにも有効だが

ポケストップには、当然ユーザーが集まりますし、お金でも買えるルアーを付ける事で、より多くのポケモンが集まるため、色んなビジネスが客寄せにも使えます。日本では既にマクドナルドと提携している事がバレていますが、ビジネスによっては、新たな集客ツールとしても十分に活用できそうだと、当初から思っていました。

ただ先日、仕様変更があり、パートナーが激怒していたのですが、今迄あったポケストップやポケジムの多くが、急に消されたのです。またポケモン捕獲の失敗率も、あからさまに上がりました。恐らくこの大反響に乗じて、収益モデルの本格化が一気に進み、有料サービスの強化が、提供者側からはかられているのでしょう。

ゲーム自体は 無料なので、ゲームを優位に遊べる有料アイテムの購入(In-app-purchases)が主な収益源なのですが、不具合もあり、返金を要求しようにもその手段がないなど、本来ならゲーム市場から撤廃させられてもおかしくない程、未整備の一面もあり、そこへ来て、ファン心理を踏みにじる仕様変更なので、今後が気になります。

以下、パートナー談です。「時代なのか大人になったからなのか、見知らぬ人は、警戒するのが当たり前になったが、子供の頃は、周りは皆ポテンシャルの友で、分け隔てなく、どこか繋がりも感じていた。この夏の1カ月位、まるで昔の夏祭りのように、子供から大人までもが、夜遅くまで夢中になって、しかも安全に遊べた感覚が、本当に懐かしかった。ありがとう。仕様変更前のゲーム」(その後、ポケモン捕獲の失敗率は、改善された様です。)

2016年8月9日火曜日

日米のWebサイトの違い

(U.S. FrontLine誌 2016年08月号 掲載分)

前回は、日本から欧米市場へ進出される企業の英語サイトでよく見られた、いくつかの共通点について触れました。一言で言えば、相手に対する尊重の無さの問題でした。

誤字や大文字・小文字の不統一、スペース規則無視など超基本事項をはじめ、ロジック的にうまく整理されておらず、短いセンテンス1つ理解するにも、かなりの努力と労力を必要とするなど、英語のネイティブからすれば、そこに掛けられた努力やケアの乏しさが透けて見える為、本気で英語圏の顧客を欲しがっているとは思えず、雑に扱われている感覚になるという話でした。またそうした雑な英語サイトは、近年、コンテンツの質を特に重んじるようになった主要検索エンジンからは、罰則を受ける可能性もあります。

今回は、そうした初歩的英語の問題は脱しているけれども、販促にはほとんど繋げられていない英語サイトの傾向について、お話しします。

取説とマーケティングの違い

技術的にもユニークで、世の中の役に立ちそうでいて、需要もありそうな、とてもポテンシャルのある商材を扱う日本企業から、以前、既存の英語のサイトのリニューアルについて、問い合わせがありました。

そんな素晴らしい商材だったのですが、サイト上では価値や興味、インパクトが全く伝わって来ないので、まるで取り扱い説明書を読まされている感覚になる、というのが、当社のネイティブのマーケッターたちの評価でした。

英語的に意味は取れるものの、人の興味を募ろうとか、競合と比べて、こちらを是非使ってみたいと思わせる、何らかの説得され得る理由を一切提供してくれないので、好意的に何かはあるはずだと、むしろ説得されたがって読んでいたのに、結局何も見つけられず、逆にイラっときたそうです。


日米の商習慣的な違い

商習慣的な違いも、もしかしたら災いしているのかもしれません。日本では基本、謙虚さはポジティブに評価され、他社批判など御法度ですが、アメリカは、真逆で、他社批判ありきみたいな所があり、大手は名指しも時にはしますし、相手会社を比喩で貶すことは多々あります。

例えばクールな Macという人物が、ダサくておやじ風のPC君を、色んなテーマでこき下ろすApple社のキャンペーンなどは有名です。

またブランドをとりまく環境も大きく違っています。日本では担当者が、人との繋がりを地道に築いて信頼を構築する、昔ながらのスタイルがまだ割と残っていると思います。

今でこそ終身雇用は崩れてきたそうですが、それでもひとつの会社へ長く勤める人も多く、従業員の会社に対するロイヤリティは強い傾向があり、すばらしいとよく感心させられるのは、自社の製品に誇りを持ち、例え膨大な品種があっても、実に広く深い知識を持つエキスパート的な担当の方々が、何人もいることです。

そうした人たちが、対外的に商品やサービスとは別の次元で、ブランドを形成しているとも言えます。

一方アメリカでは、数年で転職は当たり前の世界ですので、担当者はコロコロ変わり、各担当の会社へのロイヤリティも低く、従業員を雇っても、商品やサービスについて、十分な知識を持ち、愛着が沸く前に、もう居なくなっている、みたいなケースがほとんどかもしれません。

それこそ、顧客としてごく当然な質問をしているつもりでも、まともに返されず、分からない、ウェブにはもしかしたら載っているかも、といった残念な対応に出会う経験を、ほとんどのアメリカ在住の方なら、されているのではないでしょうか?

米系企業において、ブランドを形成しているのは、ほとんどの場合、人の要素はなく、商品や会社と言えます。

Webサイトがベストな営業マン?

つまり人もブランドを代表する日本と、会社のみがブランドを代表するアメリカ、みたいな違いがあり、その会社をWebサイトが代表するので、ベストの営業マンを安定して唯一確保する方法があるとすれば、企業のブランディングサイトを構築することになります。

米系企業の場合、例えどんなスモールビジネスであっても、企業ブランディングは意識されており、Webが効果的なジャンルの企業ほど、十分な情報提供に加え、潜在顧客層に刺さる訴求力をもった企業のブランディングサイトが、マーケティングを行っていく上で、非常に重要な位置づけという認識であり、日本とはその意味と存在意義に、大きく温度差があるように感じます。

日本の場合、良くても情報が充実したサイトという印象ですが、アメリカの場合、必要な情報の提供もさることながら、良くできたサイト程、テレビCMでも見ているかのような、インパクトや訴求力を感じさせます。

日本とアメリカの文化・価値観の違いなど、こちらでも説明していますので、併せてご参照ください。英語ウェブサイト制作について >>>

2016年7月21日木曜日

欧米の顧客が獲れない理由

(U.S. FrontLine誌 2016年07月号 掲載分、一部加筆あり)

多忙にて半年ほど、休載を頂いておりましたが、原稿の締切に追われない生活は、本当に素敵でした(笑)。とりあえず半年ほど、またお付き合いください。

最近、日本からアメリカ市場など、欧米進出を画策されている企業からの問い合わせをたくさん頂きます。日本の景気低迷、もしくは市場の閉塞感からか、新規市場を求める企業が増えているのかもしれません。

英語圏の顧客獲得が困難な理由として、文化や価値観、言語の違い、挙げればきりがないのですが、ほとんどのケースは、それ以前の極めて基本的な問題で失格していると言えます。それは「相手に対する尊重」の欠如です。

先日も何件か、現行英語サイトのコンテンツの質や進むべき方向性など、コンサルティングサービスとして、色々とフィードバックをさせて頂いたのですが、当社のネイティヴのマーケッターたちの指摘が、日系企業のグローバル展開で、よくありがちな問題にかなり共通していたので、可能な部分で、少し共有しようと思います。

スタンスは、見透かされる

サイトデザインはモダンで、レスポンシブWebデザイン(モバイル対応サイト)になっており、他の競合のスモールビジネス感溢れる、古いサイトと比較すれば、明らかに大手の先端企業のイメージ。

ところが、マーケッターの総評は、「英語のネイティブのクライアントを、本気で獲りたがっているようには見えない。誰かがパッションを持って仕事をしてくれる気がしない。高いクオリティのサービスは期待できない」といったネガティブなものでした。

理由は複合的でしたが、一言で言えば「英語の雑さ」で、トップページからも、直訳もしくは非ネイティブ英語があまりにも目立つとのことでした。

具体的には、(日系企業で軽視されがちな)誤字や大文字・小文字の不統一、スペース規則無視などが多々ある上、ロジック的に整理されておらず、短いセンテンスひとつ理解するにも、かなりの労力と努力を必要とするらしいのです。

コンテンツに掛けられている、努力やケアの乏しさ、ビジネス上での英語(サイト)のプライオリティの低さが透けて見えるため、ネイティブからすると、本気さ・尊重を全く感じられず、舐められ、雑に扱われている感覚にしかならない、という指摘です。

完璧な英語が必要か?

一般的に、提供している商品・サービス・技術が唯一無二、もしくは希少価値があり、競合が全くいなければ、たとえ英語サイトの質が酷くても、ビジネスが成立する可能性は高いと言えるでしょう。ただそういうビジネスは稀で、特にオンラインでは、基本的に同業他社の大半が競合となり、その中から、選択肢に入れて貰えるかを競うことになります。

デザインも古く、決してモダンとは言えないような競合サイトでも、タイポもあり完璧な英語ではなくとも、スムーズでよく整理され、その分野の専門性を感じさせたり、人間味やパッションを感じさせたりすると、非ネイティブながら一生懸命何かを伝えようと、ベストを尽くしているのが伝わってくるため、真面目さや誠実さも伝わり、好評価でした。

重要なのが、「英語が下手であっても、それは相手の人格や仕事っぷりの評価ではない」ことです。アメリカに住んでいれば、誰でも実感できると思うのですが、内容がクリアにさえ伝われば、たとえ完璧な発音や文法でなくとも、相手に咎められるわけでもなく、ごく自然にやり過ごすことができるはずです。

見た目も文体もクールな、大手のブランディング路線の場合、そこに拙い英語が来ると、逆にコンテンツを雑に扱っていると受け取られ、英語圏の潜在顧客への細かいケアもなく、(大手の横柄な企業体質的)ネガティブな印象を際立たせることになります。

大手のブランディングであれば、雑さは許されず、完璧さを要求されますし、スモールビジネスであれば、謙虚さや愛嬌、パッションを感じさせると刺さる場合があり、自社がとるべき路線を正しく見極める必要があります。

英語の質とSEOとの関係

多くの誤字や機械翻訳を含む、拙い英語のページは、実はSEOにも色んな悪影響を及ぼす可能性が高く、例えばページを量産するために機械翻訳を多用する、一昔前のスパム手法があり、図らずともその類のページと、検索エンジンに見なされる可能性があります。

また英語のネイティブが、拙い雑な英語ページへ訪れた場合、そのまま離脱する可能性も高く、サイトの滞在時間も短くなりがちです。それらは、コンテンツの品質評価をかなり重要視するようになっているGoogleから、ロー・クオリティ・スコアとして、罰則を受ける可能性が高いのです。

販促用の英語ホームページ制作における最大の課題など、こちらでも説明していますので、併せてご参照ください。英語Webサイト制作について >>>

2016年6月23日木曜日

クラウドファンディングとバイラル

(U.S. FrontLine誌 2015年09月20日号 掲載分)

クラウドファンディングという用語を聞くようになってからしばらく経ちます。群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語で、要は不特定多数の人から、インターネットなどを通じて、個人や組織が資金提供や支援などを得る行為を指します。資金調達を実現する場、つまり群衆とプロジェクト立案者を引き合わせるプラットホームとしては、kickstarterやindiegogoなどが有名です。

多額の資金が必要な製品開発やイベント開催でも、ネットを通じて、不特定多数の人に、比較的低額な出資を呼び掛け、一定額が集まった時点で、プロジェクトを開始させることが可能になり、資金調達のハードルがかなり下がったことや、アイデアによっては、不特定多数の人の目に、プロジェクトの本格展開前から露出でき、バイラル(口コミ)になることもあり、銀行やベンチャーキャピタルには相手にされないようなスタートアップ企業やクリエーターでも、容易に起業でき、成功できるチャンスが広がったと言えます。

クラウドファンディングには、資金提供者に対するリターン(見返り)のタイプが大きく3つあり、寄付、投資、購入(プロジェクトが提供する何らかの権利や、物品を購入することで支援を行う)に分けられます。その中でも寄付のタイプは、寄付額によってさまざまな特典を与えるものがあり、中にはそのユニークさやユーモアだけで、時々バイラルになることがあります。

昨年、こういうアイデアと実践力をもっと自分も持つべきだなぁと陰ながら自省させられた、ある有名なバイラルになったネタというか、”プロジェクト”があります。ご存知の方も多いかもしれませんが、一応ご紹介しておきます。

プロジェクト名は「ポテトサラダ」

ザック“デンジャー”ブラウンと名乗る人物が、kickstarterにて立ち上げたこのプロジェクト、中身は、これだけです。「Basically I'm just making potato salad. I haven't decided what kind yet.」(基本的には、ただポテトサラダを作る。まだ種類は決めてないけど)。

通常なら、資金調達のための広告代理店が制作するプレゼン用動画などがくるのですが、基本はテキストだけでした。

用意された報酬としては、1ドルの寄付で、彼のウェブサイトに名前が掲載され、調理時に名前を大声で呼んでもらえ、2ドルの寄付で、(上記に加え)調理風景を撮影した写真が貰え、3ドルなら、(上記に加え)ポテトサラダを少量送ってくれるとか。5ドルなら、(上記に加え)希望食材をサラダに加えてくれて、10ドルなら、(上記に加え)実際の調理場へ見学に行けるなど、とにかくネタとしか思えないものばかりでした。しかしこれがネットユーザーには受けて、大変な反響を呼びました。

当初の目標額は10ドルでした。それに対して、反響を得ると共に報酬内容も多少スケールアップさせていきましたが、最終的には6911人のバッカーズ(支援者)を募り、実に5万5492ドルを獲得したのです。もちろん、いろんなメディアにも取り上げられ、大きなバイラルになったのも大きかったにせよ、繰り返しますが、これはある無名の個人が、ただポテトサラダ作りに初めて挑戦するというだけの話でした(笑)。最終的にブラウン氏は、ポテトの一大イベントを開催し、イベント収益や既に得ていた2万ドル近くをチャリティーに寄付したそうです。

実際の「ポテトサラダ」のページはこちら>>

国の破産をも救える?

最近で言えば、15億4000万ユーロの債務を抱えて返済期限が迫っていたギリシャの財政破綻が話題になっていましたが、あるイギリス人男性が、やはりクラウドファンディングでギリシャを救おうと、indiegogoにて、「Greek Bailout Fund(ギリシャ破綻救済基金)」というプロジェクトを立ち上げ、寄付を募っていたのが話題になりました。

目標額は16億ユーロで、報酬は、3ユーロでギリシャ首相からのポストカード、6ユーロでフェタチーズとオリーブのサラダ、10ユーロでウーゾ(ギリシャのお酒)の引換券、25ユーロでギリシャワインなどの引換券を、160ユーロでギリシャ特産品の詰め合わせを、送料別で送るとか。5000ユーロならギリシャのペア旅行、100万ユーロなら、ヨーロッパ市民、特にギリシャ市民からのありがとうだそうです。

彼の主張としては、16億ユーロは高額に感じるかもしれないが、ヨーロッパの全員が、1人3ユーロでも寄付すれば到達できるそうで、3ユーロと言えば、イギリスでビールグラス半分の値段でしかないという発想で、事実、8日間で何と10万8654人もの寄付を募り、193万577ユーロも集めたそうです。

結局、この試みは目標額には届かず、返金したようです。今のネット時代は賛否両論あるとは思いますが、クラウドと適切に作用することで、健全かつ有益な活動のチャンスが生まれたことは、素晴らしいことだと思います。

実際の「ギリシャ破綻救済基金」のページはこちら>>

2016年6月8日水曜日

眼鏡業界のNetflix

(U.S. FrontLine誌 2015年10月5日号 掲載分)

ワービーパーカーという眼鏡ブランドをご存知でしょうか? と言っても、実は私は生まれつき視力はかなり良い方だったので、こんなコンピュータを多用する仕事にかれこれ18年くらい就いていますが、眼鏡を必要とするほど視力が衰えることもなく、利用する機会も皆無でした。しかし、このブランドは別の意味で超有名です。かつて本稿でZappos(第 52回)や Dollar Shave Club(第 137 ~ 139回)について触れたことがありましたが、それらに匹敵するくらい、業界に衝撃を与えたと思っています。

マーケティング業界においては、ご存知の方ばかりかと思いますし、周知の方からすれば何を今更と言われそうですが、今年の5月に、ビジネス雑誌のファスト・カンパニーが選ぶ 2015 年の「最も革新的な企業ランキング」で、アップルやグーグルなどを抑えて1位に輝いたとして、記事に取り上げられていたのが、何をかくそうこのワービーパーカーなのです。

ウォートン・ビジネススクールの学生4人が、在学中に立ち上げたワービーパーカーは、創設わずか5年ながら、急速な成長を遂げており、ファスト・カンパニー誌によれば、年間売上は1億ドルを超えているそうです。Wiki によると、ブランド立ち上げからほどなくして VOGUE 誌に取りあげられ、GQ 誌においては眼鏡業界の Netflix(レンタルビデオ業界を激変させた革命児)とまで言われていたそうで、翌年には 1500万ドルの出資を集め、従業員 60人だったのが、翌年には 113人に増え、今年 5月の段階では企業価値が 12億ドルにまでなっているようです。

95ドルの眼鏡

アメリカにおいて眼鏡の平均価格は 263 ドル、ファッションブランドだと 500 ドル以上もするとか。ワービーパーカーは、眼鏡をリーズナブルな価格(95 ドル)からオンライン販売し、業界のスタンダードを塗り替えました。

創業者の一人がタイ旅行で、プラダの眼鏡を飛行機に忘れ、置き忘れたことと同時に、「何で 700 ドルも眼鏡に使っていたんだ?」と後悔し、その後 iPhone を購入した際に再び、「こんな凄い技術の iPhone が 200 ドルなのに、数百年間も同じ技術の眼鏡の方が高いのはなぜか?」と思ったのがきっかけで、他のクラスメートとともに、眼鏡の価格引下げの可能性を模索したそうです。

眼鏡業界は、イタリアに本拠地を置く多国籍企業のLuxottica 社に代表される、少数の超大手企業に、サプライチェーンをすべて掌握されており、彼らがデザインや製造を行いつつ、ハイエンドのファッションブランドには名前使用のライセンス料を払い、眼鏡店に卸しているらしく、眼鏡店側も自身のマージンをかなり乗せているため、最終的に消費者に届く頃には 500 ドル以上になっているということです。

そこでワービーパーカーは、自社でデザインし、中間業者による流通ではなく、オンラインによる直接販売を行うことで、95ドルという販売価格を実現したようです。

眼鏡のオンライン販売は
成立しないという定説を覆す

ただ何度も「眼鏡のオンライン販売が成り立つなら、誰かがとっくにやっているはずだ」と聞かされたそうです。要するに自分で試着してみないと、という物理店舗必要論が根強かったのだと思いますが、この手の“論”は過去何度も色んな業界で覆されてきたものですね。

ワービーパーカーは、「HOME TRY-ON(お家でお試しサービス)」として、ネット上で選んだ5種類のフレームのサンプルを届け、お試し期間5日間を提供するという仕組みをとっています。しかもこのコンセプトが優れているのは、何も購入前の安心感、顧客満足度の向上だけではありません。届いたサンプルで自分の顔写真を撮り、どれが似合うかを、SNS上で周りに尋ねる行為がブームになったのです。今のネット時代ならではの、バイラル(口コミ)を最大限に活用し、露出・集客を図ることは、非常に的を射ていたといえるでしょう。

またサイト上のツールで、レンズ調節で必要な瞳孔間距離を測ることもできるようです。おそらく通常の眼鏡店舗に備わっているものの代替案ですかね。

ただ今ではアメリカ全土で実店舗も展開しています。と言っても、実店舗はショールームという位置づけでしかなく、在庫も置かず、あくまでも体験の場として、注文はオンラインで、というスタンスは変わらず、来店して店内のサンプルを試着し、検眼などの後、店のPCを使ってその場でネット注文を入れることになるとか。

店舗のコンセプトも、在庫がなく店舗面積を通常の眼鏡店の約半分にできるため、ビルの 2階にあるなど、店舗の運営費を抑えることに主眼を置いているようです。

また眼鏡の売上に対して、毎月途上国のために NPOパートナー(途上国に、検眼や眼鏡販売のトレーニングをしている団体)に寄付しており、今流のベンチャーの社会貢献性も訴求していました。

2016年3月25日金曜日

モバイルフレンドリーが必須化

(U.S. FrontLine誌 2015年5月5日号 掲載分、一部加筆あり)
先日Googleが、重大な発表をしました。4月21日より、モバイル対策されていないサイト(ページ)は、モバイル検索の順位を降格するという主旨の内容です。さて、この件について触れる前に、モバイル検索と聞いて、自社ビジネスにはあまり関係ないと思われている読者がいれば、果たして本当にそうだろうかと、私なら疑ってしまいます。
理由は簡単で、アメリカの統計で見ても、9割以上の人が携帯電話を所有し、6割以上の人は、スマートフォンからインターネットを閲覧しています。さらにソーシャルメディアの利用の5割以上、Eコマースも3割以上がモバイルユーザーという時代になっており、この割合は年々増加の一途を辿っているのです。
そういう時代背景もあってのことですが、Googleは以前より、モバイル対策の必要性を促してきました。そして今回、具体的な日付と共に、モバイルフレンドリーになっていないサイト(厳密にはページ単位のようですが)をモバイル検索の結果において、順位を降格させると、明言してきた意味は大きく、業界関係者内では騒然となりました。


Googleからの衝撃的発表の要点

Googleのジョン・ミューラー氏によると、今回発表されたモバイルフレンドリー・アルゴリズム(モバイルアルゴ)で影響を受けるのは、あくまでもモバイル(スマートフォン)による検索結果のみとのことです。
自社サイトがモバイルフレンドリーであるかは、Googleの提供する公式テストツールにより確認できます。https://www.google.com/webmasters/tools/mobile-friendly/
このテストでパスしないサイトが、順位降格対象になるということです。なお、このモバイルアルゴは、リアルタイムで評価されるとのことなので、仮に4月21日に間に合わなくとも、最悪は順次対応していく意味はありそうです(Googleで有名なパンダやペンギンアップデートと呼ばれるアルゴ変更の場合、サイト評価をする頻度にかなり間隔があるので、更新のタイミングを逃すと痛いことになります)。
なお、現在のGoogleでは、ページのロードタイムを評価するページスピードアルゴや、広告とコンテンツの位置関係的なページレイアウトを評価するトップヘビーアルゴなどは、デスクトップ用のサイトでの評価をそのままモバイル検索へも適用していますが、今後は正式にモバイルアルゴが発表されたこともあり、こういったアルゴもモバイル検索用に個別に評価されるようになることは容易に予想できます。

モバイル対応なら、レスポンシブWebデザインで

ウェブサイトをモバイル対応させる手法として、以前本稿でもご紹介しましたが、GoogleはレスポンシブWebデザインという手法を推奨しています。
モバイル専用サイトを、デスクトップ用サイトとは別に構築した場合と比較すると、各ページのURLが一本化できることで、ページロードタイムも節約でき、ユーザーがシェアやリンクするのにも便利であり、コンテンツを二重に管理する必要がなくなるので、メンテナンス性に優れ、管理ミスも軽減されます。またもちろん、Google自体の様々な負荷も減るわけですから、推奨してくるのは極めて当然と言えます。
これからモバイル対応をされるのであれば、他の選択肢もあるとはいえ、レスポンシブWebデザインを考慮するに越したことはないと思います。レスポンシブWebデザインについてはこちらを参照。

もちろん、SEOありきの話

モバイル対策という行為は、あくまでも今回のモバイルアルゴで、順位を大きく降格させられることへの回避策でしかなく、SEO(自然の検索結果での上位表示)レースにおける、いわば出場資格を得るための行為に過ぎないわけです。本当に上位表示されたければ、もちろん、別途SEO用の対策を講じなければなりません。一般的なSEOについて、理解にあまり自信のない方は、「SEOについて知っておくべき10のこと」というページを当社で作成していますので、ご一読いただくとよいかもしれません。
検索エンジンで上位表示させる手法は、何もSEOだけではありませんが、少なくとも何らかの集客手法を講じていなければ、トラフィックのほとんどないサイトにしかならないので、マーケティングに活用するのは難しいでしょう。
検索エンジンをマーケティングに活用するSEMレースについてはこちらも参照してください。

2016年3月10日木曜日

心に訴えかけるSMMの力

(U.S. FrontLine誌 2015年08月20日号 掲載分、一部加筆あり)

アメリカにおいて、ソーシャルメディアマーケティング(SMM)と言えば、やはりFacebookを使ったマーケティングが代表的ですが、企業は実際にSMMをどれくらい有効活用できているでしょうか? 今回は、在米日系企業の某オフィス用品・文房具メーカーであるクライアントの公式Facebookページにおいて、当社が実際に図ったSMMの事例をご紹介したいと思います。

クライアントは、Breast Cancer Research Foundation(BCRF)という非営利の乳がん研究団体の支援に、乳がんの象徴であるピンクリボンマークを付けたピンク色の商材の売上の一部をBCRFへ寄付することを決め、これについて何かできないか? と当社へ相談を頂いたのが始まりでした。

乳がんに対するサポートキャンペーンは、多くの企業が行ってはいますが、近年、真面目で深刻な問題を逆に単なる営利目的に利用していると、消費者から大きな反感を買ってしまっているようなケースも多々あります。そこで、とにかく「乳がんへの意識を高めること」を、誠実で素直に伝えられることにかなり気を配りつつ、低予算でもできそうな効果的なキャンペーンは何かを、考えることにしました。

まず10月は乳がんの啓発月間として知られており、その時期には、さまざまな団体・企業が乳がんに関するキャンペーンを行うのですが、逆に他が多過ぎて埋もれてしまうので、あえて年中を通して乳がんを意識すべきという主張とともに、実施時期を7月に設定しました。

母親が自身の体型を気にして、家族写真に写りたがらないケースが増えているという記事があり、後になって後悔しているとか。また毎年かなりの数の人が乳がんで亡くなっています(アメリカで、今年は40,290人が亡くなる見込み)。こうした現状を踏まえ、BCRFのキャンペーンで、母親を対象にこんなコンセプトを考えてみました。

心に刺さるキャンペーン

自意識過剰から写真に写らない、また(乳がん検診などを受けず)健康管理を疎かにする、いずれもこの先の家族写真から自分を消してしまう行為であり、母親を半透明にした画像で、この2つのメタファーを分かり易く連想させようと考えました。

また「staying in the picture」(写真 or 人生に残る)という表現で、最近撮った自分が写っている家族写真を投稿することを呼びかけ、同時に乳がんを意識することも訴えました。そして写真を投稿してくれた人の中から、クライアントの商材のセットを進呈する当選者をランダムに選ぶと も告知したのです。

このキャンペーンをFacebookで実施してから、1週間で12.8万人以上へリーチし、のべ2500以上のLike、360以上のシェア、770以上のコメント(写真投稿コンテストの参加者)になりました。

何らかのコンテストを実施された経験のある方ならお分かり頂けると思いますが、余程高額な賞品と宣伝費を投じなければ、ここまで盛況にするのは難しく、掛けた広告費は僅か250ドルで、シェア、Likeもしくはコメントなどアクションを5883人が行ったため、1人当たり4セントでアクションを獲得した計算です。

そして何より嬉しかったのが、参加者の投稿内容が、見ているだけでも心温まるものばかりで、「思い出せてくれてありがとう」と主旨を理解し、共感してくれた人が本当に沢山おり、中には「母親を乳がんで亡くしたが、一緒の写真が3枚しかなく、子供を同じ目に遭わせない」など、感謝されながらクライアントのCSR(企業の社会的責任)として強いブランディングにも繋がるという、理想的かつ、これぞSMMのなせる技という結果でした。

Facebookでの実際の投稿はこちら。

成功要因

この結果を得られたのは、コンセプトが人に刺さったのは勿論ですが、SMMを理解するネイティブのエキスパートが、全員へタイムリーかつ丁寧にレスをしていたことも大きく、たとえネット上であっても、テンプレート的な対応ではなく、リアルに心から接していくことがいかに重要であるかを示す好例と言えます。また既に2万人以上のファンがおり、普段から反応のある投稿を心掛けていたことも重要です。

ファンが少なければ、必然的に広告費を使わないと人には見られませんし、数人のLikeしかされないような、エンゲージメント率の低い投稿を続けていると、Facebookから価値がないとみなされ、たとえファン数があっても投稿をほとんどの人へ見せてくれなくなります。

たまたま最近、乳がんの手術を受けた大学の先輩もおり、私的にも関心が高いトピックで、感慨深い思いをさせて頂き、クライアントや共感してくれた参加者にとても感謝しています。こういう仕事なら、幾らでもやりたいですね。

[もっと詳しくソーシャルメディアマーケティング(SMM)について知りたい方は、こちらも参照ください:]

SMMについて、知っておくべき10のこと

なぜソーシャルメディアマーケティングが重要か

2016年1月15日金曜日

棚ぼたのバイラル Wendy Davis' Sneakers & Viral Reviews

(U.S. FrontLine誌 2013年8月20日号 掲載分)

数カ月前に、テキサス州議会に中絶禁止法案が提出されました。この法案は、妊娠20週以降の中絶を禁止した上、産婦人科クリニックに大病院並みの施設を求めるなど中絶規制を強化する内容で、可決されればテキサス州内の中絶クリニックはほとんど閉鎖に追い込まれます。

共和党は中絶禁止を強く主張する宗教思想をもつ人々が支持母体になっており、共和党員が過半数を占めているテキサス州議会では、このような法案も通りやすく、下院では既に通過済み、上院での可決を残すのみという状態でした。

ところがこの法案に反対を唱える民主党のウェンディ・デイビス上院議員が、フィリバスターと呼ばれる議事妨害を行い、見事に法案の通過を阻止したことで一躍有名なりました。

デイビス氏は、19歳で結婚と離婚を経験したシングルマザーであり、14歳のときに両親が離婚し、3人の弟妹を支えるためにアルバイトを始め、並大抵ではない努力と犠牲を払い、ハーバード大学ロースクールを33歳で卒業した人物です。

そんな苦労人だからなのでしょうか。この法案が可決すると、中絶手術を行えるのが大病院に限られるようになり、住んでいる場所によっては、仮に中絶をしようとしても、妊婦が何時間も車を運転して行かなければならなくなること、そして結果的に、中絶が合法化される以前の状態に逆戻りしてしまうことを懸念して、彼女は体を張った抵抗をしたのです。

感動した出来事

法案の採決を投票期限である深夜12時すぎまで持ち込めば、審議を無効にできるらしく、何と11時間も1人でひたすら演説を行って時間稼ぎをしたそうです。というのも上院では議員の発言時間には制限が課されていないので、理論上はこういったことが可能らしいのですが、実際にそれをやれる人は近年、ほとんどいなかったと思います。

そもそもただ演説をしていればいいというものではなく、議題から外れたら演説行為自体が無効とされる上、演説中は食事、トイレ休憩、着席、机に寄りかかることも禁止だそうで、過酷極まりない状況だったといえます。自分だったら、想像しただけで音を上げそうですが、50歳の女性が何とこれをやってのけたのです。

ちなみに中絶が合法化される前では、中絶しようにも表立ってできないため、医療資格をもたない闇の医療現場で行われ、最悪は母体も命を落とすような悲惨な状況が多発していたと聞いたことがあります。

なお共和党のテキサス州知事の執念で、最終的には再度この法案が審議にかけられ、成立してしまったようですが、お金目的ではなく、体を張ってでも本気で自分の信念に従って意思表示しようとする人が政治家であって欲しいと願っている私は、デイビス氏に感動しました。

バイラルは、何にでも起きる可能性がある

さてこの話が本稿と何の関係があるのかと思われる読者の方もおられるでしょう。大ありです。このニュースで話題になったのは、骨のある政治家魂を見せたデイビス氏だけではありません。11時間も休憩なしに立ったままの体を支え続けた、彼女が履いていたシューズも有名になったのです。

「ミズノ女子ウェーブライダー16ランニングシューズ」という品名らしいのですが、アマゾン上でのレビューでも瞬く間に大量の好評価を得ていったのです。これこそ棚ぼたのバイラルマーケティング(口コミで人々に伝達させるマーケティング)です。

ちなみにアマゾンの場合、投稿されたレビューを読んだユーザーが、実際に自分にとって参考になったかを各レビューに対して評価する仕組みがあり、「参考になった」という評価を多数得たレビューが、有益なレビューとしてみなされ、より上の方に表示されやすくなります。

またアマゾンのレビュー欄で、ポジティブ、ネガティブの両レビューの中から、それぞれ「一番役に立った」とユーザーから評価されたレビューをピックアップして表示させているセクションがあります。

無敵のレビュー

製品についてのポジティブなレビューのうち、ユーザーから一番役に立ったと評価を受けたレビューは、こんなことが書かれていました。

『マラソン・フィリバスターのためのマラソンシューズ』という題名で、「次回、あなたが13時間も食事、水、トイレ休憩もなしで立ち続ける必要があれば、このシューズはあなたにぴったりです。レース当日は、男尊主義より長く走れます」一方、ネガティブな内容のレビューで、一番役に立ったとユーザーに評価されたのは、『サイズ』という題名で、「私は普段男性用サイズ17を履いているが、自分に合うサイズがない。

しかし新しい靴にお金を費やす代わりに、テキサスでこの靴をとても誇らしげに履いていたデイビス上院議員へ、いくらか寄付をするつもりです。私は彼女がテキサス州の次の知事になるかもしれないと思う」というレビューでした。

みんなアマゾンレビューの仕様を熟知してるなーと、思わずニンマリしました(笑)。

[もっと詳しくバイラル マーケティングについて知りたい方はこちらも参照ください: バイラル マーケティングが必要な理由]