2014年3月20日木曜日

中小企業が生き残るには(21)印象1

(U.S. FrontLine誌 2012年3月20日号 掲載分)
企業やお店、あるいはブランドや商品の印象を決めるものは何だと思いますか? オフィスや店舗の場合は外観や内装、また広告や商品パッケージのデザインなどが、すぐに浮かぶのではないでしょうか?

見た目は大事

会社を立ち上げて3年目の頃だったと思います。オフィスはビーチから1ブロックで、開放感があり澄んだ空気が気持ちよく、ロケーション的にはとても贅沢をしていました。もちろん家賃も相応に高かったのですが、内装にはほとんどお金を掛けず、オフィス家具も、私が日本で勤めていた時代のオフィスの感覚を引きずっており、日本によくありがちな、頑丈さだけがとりえのようなグレーのスティールデスクに、何の変哲もないグレーのパーテーションやホワイトボードといったものでした。
言葉だけでお伝えするのが難しいのですが、イメージ的には、日本の田舎にある、地味な会計事務所みたいな感じでしょうか。とにかくできる限り、最もつまらなそうなオフィスを想像してみてください。きっとそれに近いです…
パートナーは最初から猛反対していたのですが、私が出資していたこともあり、何にいくら使うのか、私がほとんど独断で決めていたため、最初は内装などは最低限で済ませ、その分サーバーやPC、ソフト等には充分にお金を掛けるといった、ある種のエンジニアドリームを実現していました(笑)
その頃の私は、外面など飾らなくとも、内面の技術さえしっかりしていれば、いつか必ず伝わるはず、という考え方だったのですが、パートナーから、「仕事の内容は極めてクリエイティブなことをしているのに、このオフィスではそれが一切感じられないし、来社してくれた人も、おそらく同じ感覚を抱くはずだ」と指摘され、とりあえず内装にもお金を掛けることを承諾しました。
それこそ天井から壁、床までモダンでユニークな雰囲気に変え、ライトも特注したフレームにし、オフィス家具も全てグラス調に変え、レイアウトも空間を最大限に、うまく生かすようにしたのです。その結果、ほとんどの方に、「わぉ、素敵なオフィスですね!」と言っていただけるようになりました。
そして何より、来社していただいた潜在顧客の方に対して、改装前と特に変わらないコンサルテーションをしていたにも関わらず、前とは明らかに違い、「なるほど! とても勉強になります」的な、納得のリアクションが格段に増えたのでした。

人の当然の心理

正直最初は、「こちらのスキルは何ら変わっていないのに、ここまであからさまに信用のされ方が違うのは何なんだ(怒)!」と、本質を見ようとせず、表面的なもので判断している相手の資質を、むしろ疑いたくなったくらいでしたが、徐々にこれがむしろ、人の当然の感覚、心理であると理解することができました。
何故なら私自身も、日常生活でそういった価値判断を常にしてきたことに気が付いたからです。例えば、パッケージが安っぽい冷凍食品を見ると、それだけで品質まで疑ってかかったり、不動産エージェントがどんなに感じのよい人だったとしても、乗っている車が明らかに中古のボロ車だと、失礼を承知で「この人、あまり仕事ができない人なのかなぁ?」と、内心思ってしまったりする自分がいました。
誰もダサいヘアスタイルの美容師の所へは行きたくないのと同じで、何よりウェブサイトが悲惨な業者に、デザインを頼みたくはないですよね? 当時の状況としては、おそらくこの逆で、ウェブを見て、せっかく期待感をもって来社していただいたのに、オフィスが冴えず、不必要な不安を与えてしまっていたのだと思います。
そして実際には技術面にはお金は掛けていたのですが、表面的にそうは映らなかったため、マーケティングという売上を伸ばすサービスを行っている会社で、価格もそれなりにするのに、クライアント候補からすれば違和感があったのだと思います。
真実がどうあれ、相手に正しく伝わらなければ、ビジネスは成立しない。とても基本的なことですが、私が身をもって学習したことでした。以来、我が社では、事業拡張でオフィスを移転する度、内装にも本気で取り組んでいます。今のオフィスも、近所では結構評判らしいです。まぁ掃除のおばさんからの情報ですけどね(笑)。

2014年3月5日水曜日

中小企業が生き残るには⑳ 知名度3

(U.S. FrontLine誌 2012年3月5日号 掲載分)
ずっと続けてきた本テーマですが、私は、バイラル(口コミ)マーケティングが、中小企業の救世主になる可能性を強く感じているとお話してきました。ただSEO(自然な検 索結果での上位表示)と同様に、単に人の真似や教則本にあることをやってみたところで結果は知れており、巷ちまたに溢れた“なんちゃってプロ”や素人では、トラフィックに好影響を与える結果にはつながらないという共通点があります。むしろ難易度で言えばSEOを遥かに凌し のぐバイラルが、「何故、救世主に?」と疑問に思う人もいるかもしれません。

古き良き時代をもう一度

一応、誤解のないように説明すると、① 残念ながら、どんな企業でもバイラルマーケティングで救えるという訳ではない
② 今のところ、アイデア次第では、資本主義競争から少し外れたところで、戦うチャンスがある
という意味です。ぬか喜びをさせてしまったのなら、ごめんなさい。でもそれが現実です。ビジネスの内容によって、バイラルに向き不向きはどうしてもあります。そして最終的には「画期的なアイデアが浮かんだかどうか」に尽きます。ただ、「資本主義競争から少し外れたところで」が、私のポイントです。
アメリカにおいて、実はSEOも6〜7年くらい前までは、中小企業も創造力だけで巨大資本の大手と五分以上の戦いができた時代でした。ただ、検索エンジンがPPC(キーワ ード広告)による収益モデルを本格化してきてからは、そうもいかなくなってきたという背景があり、バイラルは「古き良き時代」を、まだ少しだけ感じさせてくれるのです。
本稿の第37回(2010年9月5日号、No.471)「検索エンジンのビジネスモデルとは?」に、過去から検索エンジンのスタンスがどう変わってきたのか、少しヒントを書い ています(過去のコラムは、www.usfl.com/eeで見ることができます)。
なおバイラルがなぜ難しいのかについても、触れておきます。当然のことながら、多くの人の話題にのぼり、口コミが広がり、露出・知名度が増すという状況をつくり上げること自体、至難の業です。通常はこの段階で失敗して終わることの方が多いのです。
例えばYoutube.com(人気の動画投稿サイト)を見ている人ならご存知だと思いますが、毎日、膨大な数の動画が投稿されています。1分当たりに投稿される動画は60時間 分にものぼるとか。そんな中から、人目に触れ、人気を獲得していくことが容易ではないことぐらい、誰でも感覚的に理解できることでしょう。

普通のバイラルは寿命が短い

では、幸運にも、人気のバイラルビデオを制作できたとします。バイラルの特性に「熱しやすく冷めやすい」という悲しい事実があり、瞬間的に膨大な視聴回数を獲得できたとしても、すぐに忘れられてしまう、もしくは関心が薄れてしまうことの方が、むしろ多いのです。
実際、「これだけ短時間でこんなに視聴者数を稼いだ!」と実績をアピールしている広告代理店をたまに見かけるのですが、「その先は?」と突っ込みたくなります。もちろん前述のとおり、第一段階をクリアしていること自体は評価に値するのですが、息の長いバイラルを起こすのは本当に難しく、奥が深いのです。


名前が記憶に残らない

また、これはTVのCMでも言えることですが、斬新なアイ デアで視聴者の注目を集めることができても、肝心のブランドや製品名がまったく頭に入らなかった、という経験はありませんか?
現時点で1898万回以上視聴されたあるビデオ(www.youtube.com/watch?v=4ba1BqJ4S2M)があります。キャンピングしている所へ熊が現れ、「銃で撃ちますか? 撃ちませんか?」という択が出てきて、どちらかを選んでからが本番なのですが、今、種を明かすとつまらないので、時間があれば見てみてください。
クリエーターの立場からすると、このアイデアには好感が持てますし、インパクトもあると思うのですが、ブランド名が記憶に残らないという点では惜しい、と言わざるを得ません。「面白くするだけで良いなら、我々の仕事は結構簡単だよね」と言いたくなります。「でもこの案なら、正直やりたくなるな」という心の声もあり、少しひがみも入っているかな(笑)。
昨年より着手している某クライアントの案件があります。普通に考えればバイラル的にはかなり無理がある商材なのですが、自分では結構、画期的なアイデアを考えたつもりで、無事実践できた際には、いつかここで結果を紹介したいと思います。