中小企業が生き残るには㉒印象2

(U.S. FrontLine誌 2012年4月5日号 掲載分)
前回は、オフィスの印象が、企業の信頼性に影響するというお話をしました。ではオンラインにおいて、企業やブランド、商品の印象を決めるのは、何だと思いますか? やはりウェブサイトのデザインや商品写真、バナーといった、ビジュアル的な要素が大きいのではないでしょうか?
もちろん、キャッチコピーや説明テキストなども、最終的には影響してくると思いますが、やはりビジュアルのインパクトは、非常に重要になります。

誰の何のためのウェブか?

ブランディングサイトや企業サイト、オンラインショップ構築などのお問い合わせをいただく際に、真っ先に「サイトのビジュアルデザイン」の話をしたがる方か た が多いです。気持ちは分からなくもないのですが、私の心の中では、実はそういう相手であるほど「黄色信号」になります。
何故なら、通常はウェブマーケティングにおいて、集客・露出というステップから失敗しているケースがほとんどだからです(もちろん、集客後のステップで失敗しているケースもありますが、そういうのは私の過去の経験上では、5%もないくらいです)。
つまり、「集客・露出をどうしていくか?」という最も大事な話をせずに、「集客後のサイトのビジュアルデザイン」を真っ先に心配しているようでは、ビジネスとして論理的な分析をできている方か たなのかどうか、こちらとしては不安になるわけです。
ただうちが担当する案件であれば、通常は集客を大前提とした戦略になっているので、次のステップとして、デザインも重要になります。そして相手から色々と具体的な要望をいただくこともあります。「○○のようなテイストで」、「XXのサイトみたいな感じが」…。その時、私がよくする質問は、「そのデザインの要望は、誰のためのものですか?」。その答えが、「単に自分の好みです」という話なら、いよいよ私の中では「黄色信号」が「赤信号 」に変わります。
この場合、必ずしなければならない質問が、「この案件の目的は、マーケティングですか? それともご自分の欲しい(好きな)ウェブを手に入れることですか?」

誰の好みを尊重すべきか?

デザインに関して、私の関心事は常に1点だけ。そのデザインが、ターゲットマーケットに好まれるかどうか? それだけです。たとえ、そのデザインを私が大嫌いだとしても、マーケットに受けるなら、1つの正解なのです。ショックを受けられるかもしれませんが、私にとってはクライアントの好みも、ターゲットマーケットと関係がなければ、大した意味をもちません。
ある案件で、デザインについて、クライアントと意見がぶつかったことがあります。相手は暗い渋めのテイストが好みということを知っていたのですが、商材のコンセプト上、明るいクリアなイメージにする必要がありました。そこでいくつかのサンプルデザインを用意し、あえて相手の好みそうなものと、こちらがマーケティング的に正解と考えるものを含め、選んでもらったところ、案の定、相手は暗くて渋いデザインを選んできました(わざわざ不正解を入れたのは、相手の好みは理解していることを示すため)。
そして選ばれたものが、いかに間違っているかを説明しようとしたのですが、なかなか納得してもらえず、ターゲット層に比較的近いフォーカスグループを用意し、好みを選んでもらいました。
結果はやはりこちらの予想した通りだったのですが、それを伝えても納得してもらえず、再度相手にフォーカスグループを用意してもらい、同じテストをしたところ、さらに顕著な結果となり、ようやく理解してもらうことができました(それでも納得というよりは、黙るしかなかったという感じでしたが。苦笑)。
我々にとって、相手の好みに合わせたデザインを作成することは、実はさほど難しくありません。相手にも簡単に喜んでもらえるので、一時的には案件が成功したようにも見えます。ただ目的がマーケティングである場合、その先の結果を出すことが難しくなり、最終的には誰もハッピーになりません。
前回書いた自らの教訓もあり、うちは本気で関わっている案件ほど、時にこういうバトルも辞さないのですが、一応100戦100勝です(笑)。ちなみに日系、米系問わず、問い合わせをいただき、お話していると、「最初から話しているポイントが他社とは全然違う」と、よく言われます。
うちだけが正解だとは決して思っていませんが、真っ先に依頼主のデザインの好みを聞いて、忠実に再現しようとするような業者さんなら、やろうとしていることは、おそらくマーケティングではないと思います。

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