2013年12月18日水曜日

中小企業が生き残るには⑮ 品質?

(U.S. FrontLine誌 2011年12月20日号 掲載分)
世に大量に溢れている商品群の中から、消費者が「よし、 これを買おう」と1つの商品の購入を決断するまでの過程で は、品質や性能の良し悪しの価値判断が、大きく影響して いることくらいは、誰でも感覚的に理解できると思います。

製造業であろうが、小売業であろうが、ビジネスを行う側 からしても、できるだけ故障率の低い、良い品質や性能を もつ商品を扱いたいというのが、本音だと思います(勿論、 粗悪品でも薄利多売で儲けるビジネスもありますが)。

生き残るために、高品質、高性能の商品を扱いましょう、 で済ませられれば非常に楽なのですが、他社と品質で勝負 して、必ずしも勝てる保証はないと思います(少なくとも 同等を目指す必要はあると思いますが)。そこで、全く別の 視点から考えたいと思います。

品質や性能は 本当は何で決まるのか?

「品質」や「性能」という要素は、実は意外に評価基準が 曖昧なことが多いのです。何らかの比較対象があり、それ と比べて、コストパフォーマンス的に“見合っている”と 感じるかの評価であって、自分の納得値が、合格ラインを 形成しているに過ぎません。

例えば1万ドルという金額は、高額所得者でもなければ、 一般的には大金と感じる金額でしょう。ところが、もしも その1万ドルで、ベンツの新車を買えたなら、「安い!」と 感じるはずです。逆に1ドルという金額は、一般的には小金 ですが、単なるコピー用紙1枚に1ドル払えと言われれば、 「高い!」と感じるはずです。

つまり人は頭の中で、モノの妥当な相場を想定して価値判 断し、実際の値段と期待値の達成度のギャップから、納得 値を上にも下にも変動させているのです。例えば、消費者 が「この商品に100ドル出したからには、これぐらいのパ フォーマンスを期待する」といった暗黙の期待値を抱いて いる場合、予想以上の高パフォーマンスが得られれば賞賛 を受けますし、裏切られたと感じたときは、クレームにつ ながりやすいのです。

安い商品ほど クレーム率は低い?

我が社の運営するオンラインショップでも、面白い傾向が あります。商品の不満足による返品率が、高額商品ほどよ り高くなるのです(あくまでも比較の話であって、最終的 に返品率の高い商品は、取り扱いを中止します。粗悪品を 平然と棚に並べているわけではありません)。

というより、安い商品での返品要求はあまり起きません。 どうやら安い商品ほど、仮に満足度が低くとも期待値も最 初から低いため、クレームにまで発展しないようです。 勿論、それだけなら結局不満足で終わっているので、2度 と買い物をしてくれなくなり、プラスになったとは言えま せん。ただ、「この値段だから、まぁこんなものだよね」と、 消費者が及第点をくれていればOKだとも言えるのです。そ のためには、店側がもう一歩努力して、がんばる必要があ ります。

どうしても品質・性能面で際立った勝負ができないのであ れば、ユーザーの期待値が品質に相応する価格帯を探り、 製造もしくは販売戦略の根底のコンセプトに取り込むのも、 一案だと思います。

要は消費者の満足度を得るために、品質や性能をひたすら 追求するか、心理的合格ラインを追求するかという話で、 後者なら、品質・性能以外の要素でカバーし得ることもあ る、という発想です。

差別化から始める

大手は資本力があり、流通ルートも豊富で、価格競争でも 優位に立てます。中小が生き残るには、ずばり「大手では 真似できない、あるいはやりたがらないこと」をできるだ け多く見つけ、率先してやっていくことだと、私は考えて います。

例えば、あらゆる面の性能で他社に勝つことを目指すので はなく、大手が手を出しにくいターゲットやマーケットを 見つけ出し、それに特化して差別化を図るのも、中小企業 だからできることではないでしょうか。

大体の場合、大手は合理主義でビジネスを展開しているの で、売れ筋商品以外は切り捨てて考える傾向にあり、そう いった隙間をしつこく狙っていくわけです。ウェブマーケ ティングにより、そういったニッチマーケットをピンポイ ントで、比較的リーズナブルに狙えるようになったことも、 中小にとって朗報と言えます。

まとめると、品質や性能に関して、他社と技術的に競える のであれば、思う存分追求して、それが難しければ、何か に特化することで差別化を図ればよく、顧客の大満足を得 られなくとも、及第点をもらえるようなアプローチも検討 すべき、ということです。

2013年12月5日木曜日

中小企業が生き残るには⑭ 評判3

(U.S. FrontLine誌 2011年12月5日号 掲載分)
前回は、消費者の評判(レビュー)投稿サイト側の、ある 種ヤクザ的ともいえるビジネスモデルについて触れました。 お店やレストランなどのレビューサイトとして有名なYelp.com に対する集団訴訟や、直近6カ月間のレビューの評価格付け しか反映されないレビューサイトを活用する際の、ビジネ スオーナー側のリスク、及びレビューサイト側が提供する 有料サービスの「グレーさ」などをお話ししました。

今後レビューは ますます重要視される

さて、アメリカのオンラインにおいて、やはりGoogleの力 は依然、強力なわけですが、勿論彼らも、レビュー情報の需 要の高さについては意識しています。地域名などが絡んだ検 索をすると、Google Placeというローカルのお店などの情報 を表示してくれる便利なサービスがあるのですが、そこに もユーザーによるレビューや格付け情報が表示されています。

また、商品が絡んだ検索で、ショッピングサイトのリストを 表示させている、Google Shopping(という名前ですが、新 しい動きがあり、その話はまたいつか)というサービス内 でも、やはりユーザーによる格付け情報を表示しています。

ただ近年になって大きく変わったのは、その格付け情報の ソースです。以前は少なくとも、一応Googleが認める、“厳 選されたレビューサイト”からの情報のみを反映させてい ましたが、現在はできるだけ多くのサイトから情報を拾お うとしており、信頼性の乏しいレビューもお構いなく反映 させるようになりました。

Googleは数年前に、Yelpを5.5億ドルで買収しようと試 みて失敗したという過去があるのですが、少なからずそれ が影響しているのではないかと思っています。またショッ ピングサイトなら、Amazonは圧倒的なシェアを誇っていま すが、レビューという仕組みを早くから取り入れており、 その数もずば抜けています。

要するに、Googleは既存のレビューサイトやレビュー情 報が豊富な競合に対抗するため、とりあえず質より量で、 レビューコンテンツ獲得に走った感があります。

ただ今年の9月にGoogleは、Yelpの対抗馬で、レストラン ガイドとして有名なZagatを買収しました。勿論ローカルビ ジネスのレビュー情報の充実化のため、というのは大きな 目的の1つではあると思いますし、別の目論見もくろみがあるとい う憶測も飛び交っているみたいですが、何より私が言いた いのは、今後もレビューという情報の価値が、注目されて いくことの現れである、ということです。

レビューとの付き合いは続く

近年、企業の雇用の場でも、大きな変革がみられています。 SNS(facebookなどに代表される、ソーシャルネットワー キングサービスで、一種のオンラインコミュニティ)で精 力的に活動している人を、ブランドマネージメント(ブラ ンドを企業にとって好ましい状態に総合的に管理する)の 担当として、積極的に採用しているという話があるのです。

オンラインの世界には、オフラインとは違う感性、常識、 文化があることも事実で、そのあたりを熟知した適性を買 って採用し、必要に応じて、自社のブランドや商品・サー ビスに関するネガティブな書き込みの火消しをさせたり、 時には販促活動で活躍してもらったり、というのが主な役 割だと思われます。おそらく本人達も、意外なところでオ ンライン遊びが役に立つ、面白い時代になってきた、と思 っているのではないでしょうか。

我が社の場合、早くからオンラインを主戦場にしていたこと もあり、オンライン大好き人間達の豊富なネットワークをもっ ており、彼らには結構その方面でも活躍してもらっています。 ブランドマネージメントの必要性と本質を理解していれ ば、どれだけ特殊能力が要求され、片手間でできる次元の 仕事ではないことを理解できるはずなのですが、中小企業 ほど、ブランドマネージメントを甘く考えており、社内の 英語ネイティブにでも軽く任せておけばいいだろうといっ たノリをよく見かけます。

SEO(検索エンジンでの上位表示)やPPC(キーワード 広告)の管理を、社内で片手間にやってみるか、安い“な んちゃって専門業者”に依頼して、成果が全くでないと嘆 いているのに似ています。やっていることは地味でアナロ グ的なのですが、知識と経験、センスは勿論のこと、創造 力が不可欠で、何よりやり方がまずいと、企業に致命傷を 与えかねないのも、似ています。

結局のところ、今後しばらく、企業はレビューという文化 と、レビューサイト側のダークな部分も含め、否応なく付 き合っていくしかないのです。