2013年10月18日金曜日

中小企業が生き残るには⑪ 価格2

(U.S. FrontLine誌 2011年10月20日号 掲載分)
前回、小売もしくは卸業者にとっては、商品の品質や性能 の良し悪しよりも、まずは利幅が充分とれ、売りやすい商 品が「良い商品」であること、また価格破壊は、市場にお ける消費者の感覚的商品価値をも下げさせることになり、 売値を下げなければ売れない商材は小売側の興味を失わせ、 結果的にメーカーの競争・体力を奪うことにもなり、製造 やサポート中止という事態を招きかねないこと、そしてそ れを避けるために、メーカー側は、小売の広告最低価格を 制約する、MAP(Minimum Advertised Price)を検討す べきことをお話しました。

またネット時代による恩恵として、消費者は同じ商品の他 店との価格比較が、いとも簡単に行えるようになりました。 ただこれはほとんどの小売側にとっては、全くありがたく ない話です(価格競争を望んでいるところであれば、むし ろ大歓迎な状況なのでしょうが)。

当社の運営するショップでも、この問題には常に直面して おり、それこそ同じ商品なら、1ドルでも安く買いたいと思 っている消費者が、他店に流れてしまうのをどう防ぐか、 頭の痛いところです。他店と値下げ合戦をしても、両社に 明るい未来はありません。ではどうするか?

簡単に比較をさせない

一番手っ取り早いのが、その商品が他店で扱っている商品 と同じものとして特定されやすい、メーカーが規定するユ ニークな商品コードをあえて使わず、商品名までも独自の ものに変えてしまうことです。更にメーカーから支給され る商品写真や商品説明をそのまま使うのではなく、独自に 用意することです。

そうすることで、消費者がその商品ページを閲覧してくれ れば、あとはその商品の価格も含め、気に入ってもらえる か、という次元で売買が成立します。勿論、この手法が使 えるのは、予めそのオンラインショップに、見込み客がた くさん訪れている、つまりトラフィックのあることが、前 提にはなります。

トラフィックがない場合、どうしてもその商品をピンポイ ントで探している見込み客を捕まえるしかありません。そ の場合は、商品名や商品コードで検索をして出てくるショ ップの中で、できるだけ価格の安いところを探しているよ うな人が対象となりやすく、結果的に価格だけが決め手に なってしまいがちで、価格でアドバンテージを持てない小 売店にとっては、厳しい戦いになってしまいます。

そう甘くはないアマゾン

実はその状況の典型が、以前少しとりあげたAmazon. comで起きます。ショッピングをしたいと思っている見込 み客が大量に集うアマゾンは、オンラインショップ出店者側に とっても、お買い上げ(コンバージョン)につながる率も高い 傾向にあり、広告媒体として検討する価値があると、以前 ご紹介しました。ただしアマゾンのサイト内に自分のショ ップを出店して商品販売を試みる場合、ルールとして必ず メーカー規定の商品コードを登録しなければなりません。

ショッピングモールとしての立場のアマゾンからすれば、 正当な商品を他店とも比較しやすくしながら、できるだけ 消費者が買い物をしやすくする措置であることは、理解し ていますが、価格競争を極力避けたい我が社としては、こ れが、アマゾンへの出店に二の足を踏んでいる原因でもあ ります。

3カ月前の価格を覚えているユーザー

当社のショップで、価格をわざとアップダウンさせること があるのですが、それに敏感に反応した顧客から、「今買い たいと思っているけど、この先値段下げたりしないよね?」 と、問い合わせを受けることが、意外にもよくあります。

要するに自分が買った後に、更に安くなっていればショッ クを受ける、というわけです。何より毎日サイトをチェッ クして価格に変更がないか、確認しているユーザーも結構 いることを認識しておかねばなりません。中にはそれこそ3 カ月前の価格を覚えているユーザーもいます。彼らのよう な潜在顧客にどうお得感を与えられるかが、ショップ売上 の鍵の1つであることは、間違いありません。

また同時に、顧客のショップに対するロイヤリティを獲得 できていなければ、結局は価格の安いところに流れてしま います。特にこの不景気では、その傾向が強く、「価格」と いう絶対的な要素以外の「何か」に、顧客の目を向けられ るかは、業種・業態を問わず中小企業にとって、死活問題 になってきているように感じます。続きます。

2013年10月2日水曜日

中小企業が生き残るには⑩ 価格1

(U.S. FrontLine誌 2011年10月05日号 掲載分)
前回、このシリーズのテーマの解決法として、主に製造業 と小売業の立場から、私が想定している方向性を示してい くにあたり、少しだけ基本に触れました。自社の顧客を知 ること、本当の敵を知ること、現在のポジションを知るこ とが必要不可欠になってくるわけですが、それらは「価格」、 「評判」、「品質・性能」、「信頼性・知名度」、「印象」といっ た要素が密接に関係してきます。前回を読まれていない方 は、本稿の前に一読されることを強くお勧めします。何事 も基本なくして、応用はありません(といっても今回も基 本ですが…)。

利幅がとれるのが一番良い商品

ここアメリカにおいては、小売店は卸もしくは製造業者に 対して、暗黙の了解として、原価に対して100%近くの利 幅を確保できる仕入価を期待しています。つまり、50ドル で仕入れたものなら、100ドルで販売して売れるものとい うことです。勿論、需要が高く人気もあり、労力を使わな くとも簡単に売れてしまうものはその限りではないのです が、市場で認知されていない新商品を扱うケースほど、そ の傾向が強くなると思います。

日本からアメリカへ進出しようとするメーカーさんにしば しば見られる傾向として、自社商品に強い自信と情熱をお 持ちなのはよく分かるのですが、良い商品だからと、小売 店や流通業者の期待値とかけ離れた価格設定をされること が挙げられます。確かに日本製で品質も性能も優れている のだと思いますが、小売や流通業者にとっての「良い商品」 とは、品質や性能の良し悪しよりも、売りやすく、利幅が 多くとれる商品だという現実を受け止めなければなりませ ん。ビジネスである以上、その辺りは極めてドライです。

どんなにモノが良くても、利幅が見込めない商材であれば、 小売や流通業者からは、あまり興味を示してもらえないこ とが普通で、中間業者にビジネス的旨みを出せなければ、 アメリカで流通させることは困難を極めます。メーカーさん はその辺りを理解した価格設定を意識されるべきなのです。

当社のオンラインショップに扱って欲しい商品をもちかけ られる際にも、こうした暗黙の了解を知ってか知らずか、 こちらからするとあり得ない仕入値を提示されることがあ ります。経験上、同類の商品の市場での販売価格が分かる ため、幾らくらいに設定すれば売れそうかは簡単に予測で きます。仕入値が高過ぎると、利幅がなく、扱ってもこち らにメリットがほとんどありません。その場合は、お断り するか、「利幅のとれる販売価格にするので、(結局、消費者 的には高過ぎて)売れないでしょう」と伝えた上で、商品 情報を掲載して終わる、という感じです。

価格破壊は避けるべきもの

人は通常、わざわざ粗悪品を探しません。見た目や印象で 高そう(良さそう)なものを、極力安く買いたいのです。 つまり潜在的な顧客に、商品価値が高く映ることは重要で す。安物と映っているものを高く売ることは不可能に近い でしょう。逆に高級品が安く手に入った気にさせられれば、 買い手は勿論のこと、売り手もより売りやすくなり皆ハッ ピーです。

インターネット時代の特徴として、消費者は色んなお店で 価格比較が簡単に行えます。実店舗なら1日3〜4店舗を 回るのがせいぜいだと思いますが、ネットなら30分もあれ ば、10〜15店舗くらいは簡単に比較できます。そのため、 小売業者間で少しでも顧客をつかもうと、価格競争が起き ます。それは結果として市場におけるその商品の売値の相 場自体を引き下げることにもなり、価格破壊につながって いきます。

これは最終的に、誰もハッピーな状況にはなりません(消 費者を除いてですが・笑)。 売値を下げないと売れないので、小売業者にとって興味が 薄い商品となり、消費者からも安物と認識されてしまうか らです。結果的にメーカーの競争力・体力も奪ってしまう ので、製造やサポートの中止といった形で、最後は消費者 にも悪影響を及ぼします。

これを防ぐには、メーカーが小売店に対して、「この価格 以下で広告を出してはいけない」という契約(MAP)を最 初に結ばせることです。少なくともアメリカでは一般的で す。勿論万全とはいきませんが、小売店側からしても、無 意味な価格競争に巻き込まれず、価格以外の部分のアピー ルに注力できるので、元々競争力をもつ優良店舗からは歓 迎されます。我が社のショップも、利幅が高くとれ、MAP を強いているメーカーさんの商材には特に関心をもちます。