2013年3月28日木曜日

勝ち組の今流マーケティング 口コミ編③



(U.S. FrontLine誌 2011年3月20日号 掲載分)
前回、バイラル(口コミ)マーケティングには大きく分けて2種類あることをお話しました。意図的なマーケティングとして口コミを起こしていることを完全に隠して行うタイプと、あくまでも面白・インパクト広告として展開するタイプです。 最近、アメリカ進出を試みるある日本のメーカーを、我が社が救ったケースで大成功させたバイラル・マーケティングは後者でした。実は、前者のアイデアもあったのですが、成功するバイラルほど、それに関わった人(特にスポットで雇われるモデルやエキストラの人々)の中からリークが起きる可能性があり、そのリスクを取るよりも、真っ向から面白・インパクト系広告として攻めても、充分に成功させられるだけの強いアイデアがあったため、後者を選択しました。

その内容は簡単に説明すると、ブランディング・サイト(商品やブランドについて、より多くの人々にその存在を知ってもらい、良いイメージを浸透させるためのサイト)の中に、ふんだんにアメリカの文化に根付いたジョークを商材とミックスさせ、ユーモア系サイトに仕上げたものです。企画段階から、強いユーモアのアイデアが次々と浮かび、「絶対にいける!」と社内では充分に手ごたえを感じていました。

ポイントは、まず「笑えるか?」。そして、それを「人に伝達したくなるか?」でした。動画は凝ったことができる一方で、しばらくユーザーの目を引き止める必要があり、単発の強いアイデアなら有効なのですが、今回のターゲット層の範囲と、アイデアの量、およびサイト全体でブランディングしていくという目的から、瞬発力のある静画(画像)とテキストをメインで使っていく手法をあえて採用しました。

そして、本当に受けるのかを客観的な視点から確認するため、ターゲット層に該当するフォーカス・グループに仮のバイラル・サイトを見せ、フィードバックをもらいました。結果は、ほとんどがこちらの意図した以上の良い反応だった上、頼んだ訳でもないのに、フェイスブックを中心に勝手に口コミが広がり始めていったのです。その時点で、このアイデアが当たることが確信となりました。

その後、本格的に広告も投入し、より多くの人の目に触れさせることで、口コミを爆発的に発生させ、意図通りのブランディングを成功させ、卸販売も直接販売も売り上げが予定通り獲得できるようにしました。同時にフェイスブックのファンもうなぎ上りで増えていき、以前この案件を担当した“なんちゃって広告代理店”が、フェイスブック開設後1カ月で17人のファンしか獲得できなかったのに対して、我が社が担当してからは1カ月で約3000人、2カ月で約6000人…と増えたのです。

口コミで一番すごいこと

実はこの案件を受ける前に、もらっていた情報を基に現状を軽くリサーチし、直販ショップで予想できる売り上げを試算して伝えていました。その時想定していたのはPPC(クリック課金型広告)を中心とした集客による売り上げだったのですが、以前(2010年11月5日号、第41回)でも触れたように、PPCのクリック単価の高騰により、費用対効果という面でとても割に合わないという現実がありました。コンバージョン(お買い上げ)に対する集客コストが高過ぎたのです。かといって、即効性のある集客方法は他にはあまり存在しません。

このメーカーは、このままではビジネス自体が存続できない上、他に打てる手も思いつかないと頭を抱えていたので、我が社はバイラル・マーケティングの併用を勧めたのです。もちろん、バイラルが成功したらという前提付きですが、口コミで周りに伝達されるようにできれば、結果的に集客コストは軽減できるからです。仮に1人を集客するコストに1ドルかかっていても、その人が3人に伝達してくれれば、$0.33/人で集客できたことになります。実際に、このバイラル・サイトでの統計を見ると、口コミなしでただPPCだけで集客した場合の数値と比較すると、10〜20倍のトラフィックを得られていたことが分かりました。

これが以前、私が示唆していた、割高になったPPCを企業がまだ活用できるようにする「奥の手」です。限られた予算であっても、1人の集客コストで何人分まで集客できるか? を追求するマーケティング手法、これがバイラル効果の真髄です。

2013年3月1日金曜日

勝ち組の今流マーケティング口コミ編②



(U.S. FrontLine誌 2011年2月20日号 掲載分)
前回、バイラル(口コミ)マーケティングで口コミのネ タとしてよく使われるバイラルビデオは、動画という意味 ではテレビCMと似ているものの、口コミを起こすための ネタでなければならないという意味では、CMのように企 業から消費者へ向けた単なる一方通行の広告とは、目指す ゴールが全く違う、別物であることを説明しました。

また、短期間で爆発的な口コミを起こすには、いくら強 いバイラルネタ(サイト・ビデオ・画像など)があったと しても、やはり広告などを活用して、最初は大量の人の目 に露出させなければならず、それに必要な広告費とバイラ ルネタの制作費にいくらかかり、どういうタイムフレーム で誰にリーチさせ、どのような口コミを発生させられるか までをプランニングしなければ、バイラル・マーケティン グは成立しません。

ウェブをビジネスに生かすために不可欠な露出・集客と いう必須要件を無視し、素人が喜びそうな凝ったウェブデ ザインをただ見せて、顧客の満足を一時的にだけ得る、 “なんちゃってウェブ業者”が数多く存在するのと同様に、 “なんちゃって広告代理店”による“バイラル・マーケテ ィング”も予算や時間を浪費するだけなので、注意が必要 です。

実際、我が社へ助けを求めてくる中にも、そういった被 害にあったケースが多々あります。本コラムで何度も取り 上げたSEOやPPCなど、検索エンジンで上位表示をさせて 集客を図る検索エンジン・マーケティングが、実はいかに 難易度が高く、ほとんどの業者がこの手のサービスを意味 のあるレベルで実践する能力を持っていないにも関わら ず、提供できると臆面もなく謳っていることについて警告 してきました。

バイラルは、それ以上に難易度が高く、秀でた創造力と オリジナリティーが要求されます。SEOの場合、ウェブや 本から誰でも表面上の知識は得られるので、その初歩的な 知識を素人相手にもっともらしく語るだけでも、ある程度 相手を簡単に騙せてしまいますし、実際ほとんどの“なん ちゃって業者”はそうやって営業をしています。

バイラルの場合、小手先の技術の盗用では誤魔化し切れ ないという点でも、“なんちゃって業者”との線引きが分 かりやすいので、私は特に気に入っています。もっとも、 前に紹介したように、単なるCMにしかならないような内 容をバイラルビデオと称して制作しようとする業者を見抜 けないようでは、結局、騙されて終わるだけですが…。

バイラルには2タイプある

バイラルネタには大きく分けて2つのタイプがありま す。企業側が、そのバイラルがまるで自然発生したかのよ うに装うタイプのものと、広告の一環であることを全く隠 そうとしないタイプのものです。

前者はいわゆるハイリスク・ハイリターンで、広告であ ることを消費者に悟られないようにするので、消費者が持 つ心の中のバリア(人から売りつけられることへの抵抗感) を簡単に突き破っていける可能性が高く、口コミを爆発的 に発生させやすくなります。

このタイプは大手がよく試みる手法なのですが、意図的 なマーケティングだったとバレた時に、「騙された」と消 費者から反感を強く買ってしまうので、後で大きな痛手を 被る可能性があります。下手に成功してしまったバイラル ほど、制作に関わった内部の人間によるリークが起きます が、これを完全に防ぐのは難しいでしょう。

一方、後者は「面白・インパクト広告」として展開する ので、最初から消費者に広告として認識されるため、その 分無視される可能性も高いのですが、いったん消費者の心 のバリアを突き破ってしまえば、大きな口コミを発生させ られます。その場合、最初から広告だと分かっているので、 後から消費者の反感を買うことを恐れる必要はありませ ん。バリアを突き破っていけるだけの強いネタが作れる か? という課題はあるものの、ミドルリスク・ハイリタ ーンだと思います。

ただ、バイラルの成功例として人々が簡単に知りえるケ ースは、当然、後者のみになります。前者のケースでは、 最後まで売り手側の作為的マーケティングであったことが 絶対にバレてはいけない(バレた時点で失敗していること になる)ので、表には出てこないマーケティング手法とい えます。