2013年6月18日火曜日

中小企業が生き残るには② 認識



(U.S. FrontLine誌 2011年5月20日号 掲載分)
前回、あえて顧客ゼロで起業したこと、実は「腕さえあれ ば何とかなる」と心のどこかで甘く考えていたこと、そし て想定していた継続の収入源が予期せぬ事件で当てにでき なくなったことなどをお話しました。

腕だけではどうにもならない

起業当初、1年は何とか会社をまわせる所持金でスタート できたものの、継続収入が期待できなくなったため、とに かく仕事を取ろうと、当時は自分が一番自信のあったシス テム開発の案件が手っ取り早いと考え、現地の日系企業を 中心に、自らも営業に出向いていました。

本来ならば、パッケージソフトの開発者として、ある程度 名前も売れた状況で展開していく予定でしたが、そのプロ ジェクト自体が頓挫したことで、自分自身もノーブランド から始めなければならなかったのですから大変です。

特に高額なシステム開発案件を受注する場合、信頼・知名 度が必要です。大手企業の冠があるわけでもなく、無名の 小企業が、そんな案件を獲得しようとすること自体、普通 に考えれば無謀です。

「良いものは作れても、まずその会社の存在自体が知られ ていなければ、ビジネスにはつながらない」。こんな一見当た り前のことを、身をもって体験し、初めて実感したのでした。

とにかく必死で慣れない営業をする中には、会社案内を渡 した相手に、その場でろくに目も通してもらえないまま、 「こんなことは誰にでも書ける。自分はXXさんや○○さんな らよく知っているが、君のことは全く知らないし、何も信 用できない」と罵倒されたこともありました。

その時の内容には、きちんと読んでもらえれば、経験を積 んだ者でなければ知識的にも書けないこともあったのです が、頭ごなしに自分のキャリアまで一切を否定されるとい うのは衝撃的だったので、今でも覚えています。

ただ同時に、真実であっても相手がそれを見ようと(興味 を持とうと)しなければ、結局はスタート地点にも立てな いことを認識しました。そして人間関係の長さや、営業ト ークのうまさではない部分で、勝負できなければ先がない ことも実感したのです。

必ずしも良いものが 売れているわけではない

昔ビデオテープが主流だった時代に、ベータとVHSの規 格があり、ベータはよりコンパクトで性能的にも優れてい たものの、結局市場はVHSが制した背景には、ざっくりマ ーケティング戦略的な優劣がありました。ちなみにマーケ ティングとは、私なりの表現で言うと、「売りやすくする仕 組み作り」です。

同じ工場で作られた同じ仕様の商品でも、高級感のあるパ ッケージで、宣伝広告などブランディングをしっかり行って いる方が、何百ドルも高く売れているものを知っています。

また私は世の中の人達は大きく分けて、「営業肌」、「技術 肌」の2つのタイプに大別できるように思います。前者は コミュニケーション能力に優れ、話術というスキルで、相 手を気持ちよくしようとするタイプ、後者は技術の習得力 に優れ、何らかの専門のスキルを提供することで、結果的 に相手を気持ちよくしようとするタイプ、といった感じで しょうか。

私は後者のタイプなのですが、前者の人達でいつも気に掛 かることがあります。ある程度会社が大きくなれば、当た り前ではあるのですが、会社の商品・サービスを相手に売 っていく上で、自分では責任の取れないことに対して、色 んな約束やトークをしなければなりません。そんなとき、 どういう精神構造になっているのか?ということです。

誠実な会社の営業さんなら、自らもできるだけ正しい知識 を習得する努力はされているでしょうし、自信の持てる商 品、もしくは最終的に責任を取ってくれる技術部隊をきち んと確保しているのだと思います。ただ本稿で何度も取り 上げてきたような、悪徳業者も世の中には多数存在するわ けで、上辺だけの知識で、自分はもちろん、会社ができも しないことまでも、平然と売りつけ、責任も取らない営業 さんは、きっと真顔で嘘がつける人だと思います。ただ案 外こういう人の方が、営業成績は良かったりするものです。

つまり世の中でよく売れているものは、決して「そのもの」 が優れているのではなく、(ものの良し悪しに関係なく、) 「売り方」が他社より勝っているケースの方が圧倒的に多い ということです。技術肌の自分にとっては、とても受け入 れ難い現実でしたが、これを認識することが、生き残るた めの第一歩だったと思います。次回に続きます。

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