2013年12月18日水曜日

中小企業が生き残るには⑮ 品質?

(U.S. FrontLine誌 2011年12月20日号 掲載分)
世に大量に溢れている商品群の中から、消費者が「よし、 これを買おう」と1つの商品の購入を決断するまでの過程で は、品質や性能の良し悪しの価値判断が、大きく影響して いることくらいは、誰でも感覚的に理解できると思います。

製造業であろうが、小売業であろうが、ビジネスを行う側 からしても、できるだけ故障率の低い、良い品質や性能を もつ商品を扱いたいというのが、本音だと思います(勿論、 粗悪品でも薄利多売で儲けるビジネスもありますが)。

生き残るために、高品質、高性能の商品を扱いましょう、 で済ませられれば非常に楽なのですが、他社と品質で勝負 して、必ずしも勝てる保証はないと思います(少なくとも 同等を目指す必要はあると思いますが)。そこで、全く別の 視点から考えたいと思います。

品質や性能は 本当は何で決まるのか?

「品質」や「性能」という要素は、実は意外に評価基準が 曖昧なことが多いのです。何らかの比較対象があり、それ と比べて、コストパフォーマンス的に“見合っている”と 感じるかの評価であって、自分の納得値が、合格ラインを 形成しているに過ぎません。

例えば1万ドルという金額は、高額所得者でもなければ、 一般的には大金と感じる金額でしょう。ところが、もしも その1万ドルで、ベンツの新車を買えたなら、「安い!」と 感じるはずです。逆に1ドルという金額は、一般的には小金 ですが、単なるコピー用紙1枚に1ドル払えと言われれば、 「高い!」と感じるはずです。

つまり人は頭の中で、モノの妥当な相場を想定して価値判 断し、実際の値段と期待値の達成度のギャップから、納得 値を上にも下にも変動させているのです。例えば、消費者 が「この商品に100ドル出したからには、これぐらいのパ フォーマンスを期待する」といった暗黙の期待値を抱いて いる場合、予想以上の高パフォーマンスが得られれば賞賛 を受けますし、裏切られたと感じたときは、クレームにつ ながりやすいのです。

安い商品ほど クレーム率は低い?

我が社の運営するオンラインショップでも、面白い傾向が あります。商品の不満足による返品率が、高額商品ほどよ り高くなるのです(あくまでも比較の話であって、最終的 に返品率の高い商品は、取り扱いを中止します。粗悪品を 平然と棚に並べているわけではありません)。

というより、安い商品での返品要求はあまり起きません。 どうやら安い商品ほど、仮に満足度が低くとも期待値も最 初から低いため、クレームにまで発展しないようです。 勿論、それだけなら結局不満足で終わっているので、2度 と買い物をしてくれなくなり、プラスになったとは言えま せん。ただ、「この値段だから、まぁこんなものだよね」と、 消費者が及第点をくれていればOKだとも言えるのです。そ のためには、店側がもう一歩努力して、がんばる必要があ ります。

どうしても品質・性能面で際立った勝負ができないのであ れば、ユーザーの期待値が品質に相応する価格帯を探り、 製造もしくは販売戦略の根底のコンセプトに取り込むのも、 一案だと思います。

要は消費者の満足度を得るために、品質や性能をひたすら 追求するか、心理的合格ラインを追求するかという話で、 後者なら、品質・性能以外の要素でカバーし得ることもあ る、という発想です。

差別化から始める

大手は資本力があり、流通ルートも豊富で、価格競争でも 優位に立てます。中小が生き残るには、ずばり「大手では 真似できない、あるいはやりたがらないこと」をできるだ け多く見つけ、率先してやっていくことだと、私は考えて います。

例えば、あらゆる面の性能で他社に勝つことを目指すので はなく、大手が手を出しにくいターゲットやマーケットを 見つけ出し、それに特化して差別化を図るのも、中小企業 だからできることではないでしょうか。

大体の場合、大手は合理主義でビジネスを展開しているの で、売れ筋商品以外は切り捨てて考える傾向にあり、そう いった隙間をしつこく狙っていくわけです。ウェブマーケ ティングにより、そういったニッチマーケットをピンポイ ントで、比較的リーズナブルに狙えるようになったことも、 中小にとって朗報と言えます。

まとめると、品質や性能に関して、他社と技術的に競える のであれば、思う存分追求して、それが難しければ、何か に特化することで差別化を図ればよく、顧客の大満足を得 られなくとも、及第点をもらえるようなアプローチも検討 すべき、ということです。

2013年12月5日木曜日

中小企業が生き残るには⑭ 評判3

(U.S. FrontLine誌 2011年12月5日号 掲載分)
前回は、消費者の評判(レビュー)投稿サイト側の、ある 種ヤクザ的ともいえるビジネスモデルについて触れました。 お店やレストランなどのレビューサイトとして有名なYelp.com に対する集団訴訟や、直近6カ月間のレビューの評価格付け しか反映されないレビューサイトを活用する際の、ビジネ スオーナー側のリスク、及びレビューサイト側が提供する 有料サービスの「グレーさ」などをお話ししました。

今後レビューは ますます重要視される

さて、アメリカのオンラインにおいて、やはりGoogleの力 は依然、強力なわけですが、勿論彼らも、レビュー情報の需 要の高さについては意識しています。地域名などが絡んだ検 索をすると、Google Placeというローカルのお店などの情報 を表示してくれる便利なサービスがあるのですが、そこに もユーザーによるレビューや格付け情報が表示されています。

また、商品が絡んだ検索で、ショッピングサイトのリストを 表示させている、Google Shopping(という名前ですが、新 しい動きがあり、その話はまたいつか)というサービス内 でも、やはりユーザーによる格付け情報を表示しています。

ただ近年になって大きく変わったのは、その格付け情報の ソースです。以前は少なくとも、一応Googleが認める、“厳 選されたレビューサイト”からの情報のみを反映させてい ましたが、現在はできるだけ多くのサイトから情報を拾お うとしており、信頼性の乏しいレビューもお構いなく反映 させるようになりました。

Googleは数年前に、Yelpを5.5億ドルで買収しようと試 みて失敗したという過去があるのですが、少なからずそれ が影響しているのではないかと思っています。またショッ ピングサイトなら、Amazonは圧倒的なシェアを誇っていま すが、レビューという仕組みを早くから取り入れており、 その数もずば抜けています。

要するに、Googleは既存のレビューサイトやレビュー情 報が豊富な競合に対抗するため、とりあえず質より量で、 レビューコンテンツ獲得に走った感があります。

ただ今年の9月にGoogleは、Yelpの対抗馬で、レストラン ガイドとして有名なZagatを買収しました。勿論ローカルビ ジネスのレビュー情報の充実化のため、というのは大きな 目的の1つではあると思いますし、別の目論見もくろみがあるとい う憶測も飛び交っているみたいですが、何より私が言いた いのは、今後もレビューという情報の価値が、注目されて いくことの現れである、ということです。

レビューとの付き合いは続く

近年、企業の雇用の場でも、大きな変革がみられています。 SNS(facebookなどに代表される、ソーシャルネットワー キングサービスで、一種のオンラインコミュニティ)で精 力的に活動している人を、ブランドマネージメント(ブラ ンドを企業にとって好ましい状態に総合的に管理する)の 担当として、積極的に採用しているという話があるのです。

オンラインの世界には、オフラインとは違う感性、常識、 文化があることも事実で、そのあたりを熟知した適性を買 って採用し、必要に応じて、自社のブランドや商品・サー ビスに関するネガティブな書き込みの火消しをさせたり、 時には販促活動で活躍してもらったり、というのが主な役 割だと思われます。おそらく本人達も、意外なところでオ ンライン遊びが役に立つ、面白い時代になってきた、と思 っているのではないでしょうか。

我が社の場合、早くからオンラインを主戦場にしていたこと もあり、オンライン大好き人間達の豊富なネットワークをもっ ており、彼らには結構その方面でも活躍してもらっています。 ブランドマネージメントの必要性と本質を理解していれ ば、どれだけ特殊能力が要求され、片手間でできる次元の 仕事ではないことを理解できるはずなのですが、中小企業 ほど、ブランドマネージメントを甘く考えており、社内の 英語ネイティブにでも軽く任せておけばいいだろうといっ たノリをよく見かけます。

SEO(検索エンジンでの上位表示)やPPC(キーワード 広告)の管理を、社内で片手間にやってみるか、安い“な んちゃって専門業者”に依頼して、成果が全くでないと嘆 いているのに似ています。やっていることは地味でアナロ グ的なのですが、知識と経験、センスは勿論のこと、創造 力が不可欠で、何よりやり方がまずいと、企業に致命傷を 与えかねないのも、似ています。

結局のところ、今後しばらく、企業はレビューという文化 と、レビューサイト側のダークな部分も含め、否応なく付 き合っていくしかないのです。

2013年11月25日月曜日

中小企業が生き残るには⑬ 評判2

(U.S. FrontLine誌 2011年11月20日号 掲載分)
前回は、ビジネス的に軽視できなくなったレビューサイト について触れ、投稿されている評価内容も、サクラや競合 による嫌がらせの可能性も大いにあり、決してクリーンと は言い切れない世界であるということをお話ししました。

勿論、消費者にとって、商品やお店に関する他者からの評 判を事前に把握できることは、すばらしいことだと思いま す。商品やサービスを提供する側も、その品質を少しでも 向上させるため、切磋琢磨するのであれば、それもまた良 しです。本来なら、レビューという仕組みは、誰にとって も有益ですばらしいものになるはずです。

ただ基本の思想がどんなに素晴らしいものであっても、そ こにビジネスが介在する限り、そこまでクリーンな世界で もなくなってきます。所詮はレビューサイト側もレビュー される側もビジネスとしてやっているわけですから、お互 いの思惑というものがあるのです。

ある種ヤクザな商売

お店やレストランなどの代表的なレビューサイトとして有 名なYelp.comですが、実は企業から何度か訴えられていま す。訴訟内容としては、Yelpから広告購入の要請を受け、 それを断ったら、もともと載っていた良い内容のレビュー の多くがいきりなり消えてしまい、その企業の評価格付け も下がったとか、Yelpの社員が広告料の名目で毎月の支払 いを企業に要求し、それと引き換えに悪いレビューの削除 や書き換えを行うと打診してきたなど、ある種の強請 ゆすりとも言える行為が報告されています。

3年くらい前になりますが、Yelpについて書いたキャスリ ーン・リチャーズ氏(サンフランシスコ・ベイエリアの新 聞East Bay Expressの編集者)の記事によると、Yelpは 2004年にビジネスを始めた当初、多くのレビューを社員に 書かせており、CEOのストッペルマン氏自身も、当時800 件以上のレビューを書いていたとか。

また、元社員が、「当初はスモールビジネスを助ける、誇 りの持てる仕事と感じていたけれど、ビジネスが拡大する に従い、そうではなくなった」とか「Yelpの広告購入を断 った店には、Yelpが人を雇って悪いレビューを書き込ませ た」という暴露をしたこともありました。

確かにYelpの社員も一応、消費者でもあるわけで、それこ そ「本人が試し、そう感じた」と主張しさえすれば、Yelp に都合のよいレビューを書くこともできてしまいますよね。 実際、裁判ではそういう弁明がなされていました。真相は その人のみぞ知る、なのですが、今年の4月、Yelpに対して 起こされた集団訴訟が、証拠不十分で却下されたようです。

私は事の真相については何も分かりませんし、ここで言及 するつもりはありません。ただ、かなり以前、某アンチウ ィルスソフトのメーカーが、自らウィルスを製造してバラ まいているという話を本稿で取り上げましたが、Yelpのケ ースも似たような話ではないかと感じています。

途中で止めることもできない…

また、某レビューサイトでは、直近6カ月間のレビューし かカウントされません。これが怖いのは、例えば最初は高 い評価を得て、評価格付けに喜んでいても、時間と共にレ ビューが古くなり、たまたま最近高い評価のレビューが入 らなかったというだけで、結果として総合の評価格付けが ぐんと下がってしまう可能性があるということです。

例えば、二人のユーザーが、最高評価の5つ星と、4つ星 をくれたとします。総合評価は平均なので、その時点では 4.5星となり、かなり良いわけですが、半年間にレビューが 一つも入らなければ、いきなり星がゼロの評価になるとい うことです。

実際、サービス内容や商品によって、たくさんの人が集中 してレビューを書いてくれることもあれば、滅多に書いて もらえないこともあります。そもそもレビューを書くこと 自体、本来は面倒な行為なので、よほど感動したか、不満 を持たない限り、一般の人はなかなかレビューを積極的に 書くことはないでしょう。

また、この某サイトでは、企業が「有料アカウント」とし て登録すると、レビューの投稿者と対話することができる のですが、そのサービス料をいきなりぐんと上げてきて、 キャンセルしようものなら、悪いレビューがどこからとも なく書き込まれるという話も出ています。レビューを書い た人が明らかに本当の顧客ではないと分かっており、日付 や注文番号などを調べて問い詰めたくても、対処するには、 結局有料サービスを支払うしかない、とビジネスオーナー が嘆いているのを見ると、本当にぞっとします。

2013年11月1日金曜日

中小企業が生き残るには⑫ 評判1

(U.S. FrontLine誌 2011年11月5日号 掲載分)
商品やお店の評判(レビュー)をウェブサイト上に載せる のが一般的になってから、随分経ちます。ユーザーレビュ ーの専門サイトも、今ではすっかり定着しました。レスト ランならYelp.com、ホテルならTripadvisor.comなどがレ ビューサイトとして有名です。本誌の読者で、普段利用さ れている人もかなりいるのではないでしょうか。

まず1つ言えることは、ビジネスを営む側は、今後しばら く、このレビューという存在と付き合っていくしかありま せん。レビューの数が少ない、もしくは悪いレビューが多 いビジネスは、見込み客からは確実に敬遠されることにな ります。レビューがビジネスシーンに与えるインパクトが、 年々強まってきているのです。

ビジネス的に軽視 できなくなったレビュー

勿論大手はそれを察知しており、オンラインのブランドマ ネージメント(ブランドを企業にとって好ましい状態に総 合的に管理する)業務に、早くから着手しているところも かなりあります。ただ大手ほどの予算がない中小は、まだ まだ認識も甘く、野放し状態のところも多いと思います。

ほんの一例ですが、イタリアンレストランを営む、当社の ある米系クライアントに、うちのスタッフが電話するため、 たまたま番号をウェブで検索したそうです。G o o g l e Places(お店などの基本情報を地図と一緒に表示してくれ るGoogle社のサービス)が真っ先に表示されるので、電話 番号も一瞬で分かって便利だったところまでは良かったの ですが、基本情報と一緒に表示される、お店のレビューが 数件あったので、何気に見てみると、評判を示す星の数が1 つ星である書き込みが1件あったらしいのです。

「おやっ?」と気になりレビューを読んでみると、色々と ボロクソに書かれており、その中に「ヤク中みたいで、や たらとピアスをした、無駄話の多いレジの女性店員」とい う記述が出てくるのですが、実際にそういった店員をその 店では雇っておらず、近くの別のお店と完全に間違えて書 かれていることがすぐに分かったそうです(たまたまどち らの店のこともよく知っていたからですが)。

「これ、あの(別の)店のことだよね」という主旨の書き 込みを入れて、すぐにフォローをしておいたらしいのです が、それまでにこのレビューを見た何人の人がこのお店を 敬遠したかと想像すると、ぞっとしませんか?

ちなみに最近確認したら、そのボロクソレビューは削除さ れていました。ただ、新たに人種差別的な書き込みがあっ たそうで、弊社のスタッフが通報しておいたらしいのです が、競合の嫌がらせなのか、たまたま頭のおかしな輩なの かは分かりませんが、こういうことが普通に起きていると いうことです。

決してクリーンとも 言えない世界

レビューされる側は、少しでも評判を上げようと、好意的 なレビューをサクラに作成させたり、他社を貶めるために、 悪いレビューを書き込んだりする人もいます。レビューサ イトにも色々あって、そういったサクラをある程度アルゴ リズムで弾く機能を持ったサイトもあれば、全くの無法地 帯と化しているサイトも多々あります。

本来は中立であるべきレビューサイトなのですが、信用性 はまちまちなのが実状です。先に挙げたYelpなどは、サク ラを弾く機能をかなり持っている方ですが、それでも万全 ではありません。

サクラを簡単に見破ることができればいいのですが、なか なかそうもいきません。

次回お話する予定の、レビューサイト側のグレーさも関係 してきます。とはいえ、本テーマの主旨から外れますが、 少しだけ見破るための指標を紹介します。

Yelpなどは、レビューを書いている人が、他に何回くら いレビューしたことがあるかを表示してくれます。レビュ ー回数が数回しかない人(特に1、2回)の書き込みは要注 意です。お店側がサクラを募っている可能性があります。

特に過去1、2回しかレビューをしていない人の書き込み が、やたらと多く出てくるお店のレビューは、お店のサク ラか、良いレビューをすると何か特典がもらえるというよ うな、レビューサイトによってはきつい罰則対象になるこ とをやっている可能性を疑いましょう。アカウント登録の 日時やその他にどんなレビューを書いたかなども追ってい くと、胡散臭い書き込みは結構見えてきますよ。次回に続 きます。

2013年10月18日金曜日

中小企業が生き残るには⑪ 価格2

(U.S. FrontLine誌 2011年10月20日号 掲載分)
前回、小売もしくは卸業者にとっては、商品の品質や性能 の良し悪しよりも、まずは利幅が充分とれ、売りやすい商 品が「良い商品」であること、また価格破壊は、市場にお ける消費者の感覚的商品価値をも下げさせることになり、 売値を下げなければ売れない商材は小売側の興味を失わせ、 結果的にメーカーの競争・体力を奪うことにもなり、製造 やサポート中止という事態を招きかねないこと、そしてそ れを避けるために、メーカー側は、小売の広告最低価格を 制約する、MAP(Minimum Advertised Price)を検討す べきことをお話しました。

またネット時代による恩恵として、消費者は同じ商品の他 店との価格比較が、いとも簡単に行えるようになりました。 ただこれはほとんどの小売側にとっては、全くありがたく ない話です(価格競争を望んでいるところであれば、むし ろ大歓迎な状況なのでしょうが)。

当社の運営するショップでも、この問題には常に直面して おり、それこそ同じ商品なら、1ドルでも安く買いたいと思 っている消費者が、他店に流れてしまうのをどう防ぐか、 頭の痛いところです。他店と値下げ合戦をしても、両社に 明るい未来はありません。ではどうするか?

簡単に比較をさせない

一番手っ取り早いのが、その商品が他店で扱っている商品 と同じものとして特定されやすい、メーカーが規定するユ ニークな商品コードをあえて使わず、商品名までも独自の ものに変えてしまうことです。更にメーカーから支給され る商品写真や商品説明をそのまま使うのではなく、独自に 用意することです。

そうすることで、消費者がその商品ページを閲覧してくれ れば、あとはその商品の価格も含め、気に入ってもらえる か、という次元で売買が成立します。勿論、この手法が使 えるのは、予めそのオンラインショップに、見込み客がた くさん訪れている、つまりトラフィックのあることが、前 提にはなります。

トラフィックがない場合、どうしてもその商品をピンポイ ントで探している見込み客を捕まえるしかありません。そ の場合は、商品名や商品コードで検索をして出てくるショ ップの中で、できるだけ価格の安いところを探しているよ うな人が対象となりやすく、結果的に価格だけが決め手に なってしまいがちで、価格でアドバンテージを持てない小 売店にとっては、厳しい戦いになってしまいます。

そう甘くはないアマゾン

実はその状況の典型が、以前少しとりあげたAmazon. comで起きます。ショッピングをしたいと思っている見込 み客が大量に集うアマゾンは、オンラインショップ出店者側に とっても、お買い上げ(コンバージョン)につながる率も高い 傾向にあり、広告媒体として検討する価値があると、以前 ご紹介しました。ただしアマゾンのサイト内に自分のショ ップを出店して商品販売を試みる場合、ルールとして必ず メーカー規定の商品コードを登録しなければなりません。

ショッピングモールとしての立場のアマゾンからすれば、 正当な商品を他店とも比較しやすくしながら、できるだけ 消費者が買い物をしやすくする措置であることは、理解し ていますが、価格競争を極力避けたい我が社としては、こ れが、アマゾンへの出店に二の足を踏んでいる原因でもあ ります。

3カ月前の価格を覚えているユーザー

当社のショップで、価格をわざとアップダウンさせること があるのですが、それに敏感に反応した顧客から、「今買い たいと思っているけど、この先値段下げたりしないよね?」 と、問い合わせを受けることが、意外にもよくあります。

要するに自分が買った後に、更に安くなっていればショッ クを受ける、というわけです。何より毎日サイトをチェッ クして価格に変更がないか、確認しているユーザーも結構 いることを認識しておかねばなりません。中にはそれこそ3 カ月前の価格を覚えているユーザーもいます。彼らのよう な潜在顧客にどうお得感を与えられるかが、ショップ売上 の鍵の1つであることは、間違いありません。

また同時に、顧客のショップに対するロイヤリティを獲得 できていなければ、結局は価格の安いところに流れてしま います。特にこの不景気では、その傾向が強く、「価格」と いう絶対的な要素以外の「何か」に、顧客の目を向けられ るかは、業種・業態を問わず中小企業にとって、死活問題 になってきているように感じます。続きます。

2013年10月2日水曜日

中小企業が生き残るには⑩ 価格1

(U.S. FrontLine誌 2011年10月05日号 掲載分)
前回、このシリーズのテーマの解決法として、主に製造業 と小売業の立場から、私が想定している方向性を示してい くにあたり、少しだけ基本に触れました。自社の顧客を知 ること、本当の敵を知ること、現在のポジションを知るこ とが必要不可欠になってくるわけですが、それらは「価格」、 「評判」、「品質・性能」、「信頼性・知名度」、「印象」といっ た要素が密接に関係してきます。前回を読まれていない方 は、本稿の前に一読されることを強くお勧めします。何事 も基本なくして、応用はありません(といっても今回も基 本ですが…)。

利幅がとれるのが一番良い商品

ここアメリカにおいては、小売店は卸もしくは製造業者に 対して、暗黙の了解として、原価に対して100%近くの利 幅を確保できる仕入価を期待しています。つまり、50ドル で仕入れたものなら、100ドルで販売して売れるものとい うことです。勿論、需要が高く人気もあり、労力を使わな くとも簡単に売れてしまうものはその限りではないのです が、市場で認知されていない新商品を扱うケースほど、そ の傾向が強くなると思います。

日本からアメリカへ進出しようとするメーカーさんにしば しば見られる傾向として、自社商品に強い自信と情熱をお 持ちなのはよく分かるのですが、良い商品だからと、小売 店や流通業者の期待値とかけ離れた価格設定をされること が挙げられます。確かに日本製で品質も性能も優れている のだと思いますが、小売や流通業者にとっての「良い商品」 とは、品質や性能の良し悪しよりも、売りやすく、利幅が 多くとれる商品だという現実を受け止めなければなりませ ん。ビジネスである以上、その辺りは極めてドライです。

どんなにモノが良くても、利幅が見込めない商材であれば、 小売や流通業者からは、あまり興味を示してもらえないこ とが普通で、中間業者にビジネス的旨みを出せなければ、 アメリカで流通させることは困難を極めます。メーカーさん はその辺りを理解した価格設定を意識されるべきなのです。

当社のオンラインショップに扱って欲しい商品をもちかけ られる際にも、こうした暗黙の了解を知ってか知らずか、 こちらからするとあり得ない仕入値を提示されることがあ ります。経験上、同類の商品の市場での販売価格が分かる ため、幾らくらいに設定すれば売れそうかは簡単に予測で きます。仕入値が高過ぎると、利幅がなく、扱ってもこち らにメリットがほとんどありません。その場合は、お断り するか、「利幅のとれる販売価格にするので、(結局、消費者 的には高過ぎて)売れないでしょう」と伝えた上で、商品 情報を掲載して終わる、という感じです。

価格破壊は避けるべきもの

人は通常、わざわざ粗悪品を探しません。見た目や印象で 高そう(良さそう)なものを、極力安く買いたいのです。 つまり潜在的な顧客に、商品価値が高く映ることは重要で す。安物と映っているものを高く売ることは不可能に近い でしょう。逆に高級品が安く手に入った気にさせられれば、 買い手は勿論のこと、売り手もより売りやすくなり皆ハッ ピーです。

インターネット時代の特徴として、消費者は色んなお店で 価格比較が簡単に行えます。実店舗なら1日3〜4店舗を 回るのがせいぜいだと思いますが、ネットなら30分もあれ ば、10〜15店舗くらいは簡単に比較できます。そのため、 小売業者間で少しでも顧客をつかもうと、価格競争が起き ます。それは結果として市場におけるその商品の売値の相 場自体を引き下げることにもなり、価格破壊につながって いきます。

これは最終的に、誰もハッピーな状況にはなりません(消 費者を除いてですが・笑)。 売値を下げないと売れないので、小売業者にとって興味が 薄い商品となり、消費者からも安物と認識されてしまうか らです。結果的にメーカーの競争力・体力も奪ってしまう ので、製造やサポートの中止といった形で、最後は消費者 にも悪影響を及ぼします。

これを防ぐには、メーカーが小売店に対して、「この価格 以下で広告を出してはいけない」という契約(MAP)を最 初に結ばせることです。少なくともアメリカでは一般的で す。勿論万全とはいきませんが、小売店側からしても、無 意味な価格競争に巻き込まれず、価格以外の部分のアピー ルに注力できるので、元々競争力をもつ優良店舗からは歓 迎されます。我が社のショップも、利幅が高くとれ、MAP を強いているメーカーさんの商材には特に関心をもちます。

2013年9月28日土曜日

中小企業が生き残るには⑨ 基本

(U.S. FrontLine誌 2011年9月20日号 掲載分)
前回、あるクライアントの業界が、大手数社の台頭で業界 全体の構造が全く別物に変えられてしまったという話をし ました。全国で2万軒はあった町の小売店が、1割くらい にまで淘汰され、500社くらいあった卸業者も、今では2 社という恐ろしい現実です。そして業種は違えど、オンラ インという市場でも同じような淘汰が進行しているように 感じていることもお話ししました。

この流れは、資本主義社会である以上、どうすることもで きないのかもしれません。また中小企業が大手に資本力で 敵うはずもありません。ではどうすればよいのか?このシ リーズの最初に書いたように、少なくとも私には、絶対的 な解決法は見つけられませんが、おそらくこういう方向性 ではないかと感じているものはあります。

勿論、本来なら業種により解決法も違ってきますが、主に 製造業と小売業の視点から見ていこうと思います。それ以 外の業種でも共通していることや、応用できることもかな りありますので、随時、ご自身の状況に合わせて、適切に 読み替えて頂ければと思います。

例えば飲食店であれば、製造業であり、同時に小売業でも あると言えます。サービス業であれば、売り物が「商品」 から「人」に代わっただけで、小売業としてとらえられる と思います。ただ話の核心に行く前に、少し基本のおさら い的なことをさせてください。

自社の顧客を知る

人がどこかの会社の商品・サービスを購入・利用しようと するとき、何を基準に選んでいるのかを考えてみると、「価 格」「評判」「品質・性能」「信頼性・知名度」「印象」といっ た要素がすぐに浮かびます。ただこれらの要素の中で、消 費者の購買意思決定に影響する優先順位というのは、商材 により変わってきます。つまり顧客層の特性をできるだけ 正確に押さえておくことが重要だと言えます。

また、誰が顧客層になり得るかというのも、これらの要素 により、相対的に決まってくることが多くなります。ただ、 製造業であれば、顧客層を主体的に意識した商品開発も必 要になってくると思います(それに対する異論を唱える著 書もあったのですが、あくまでも経験による私見ととらえ てください)

自社の本当の敵を知る

自社の競合が誰になるかは、同じ顧客層(市場)をターゲ ットとしている相手すべてが該当する可能性があると言え ますが、もう一つの要素として、自社のゴール設定も影響 してきます。要するに売り上げ目標が高ければ高いほど、 通常、広い市場を目指さなければならず、その分競合の数 もレベルも当然変わってきます。

自社のポジションを知る

目指す市場において、自社の競争力・優位性がどれくらい あるのか?という話なのですが、それを推し量るのに、や はり先に挙げた「価格」、「評判」、「品質・性能」、「信頼性・ 知名度」、「印象」においての競争力が総合的に関係してきま す。どれも大手企業であれば、中小に比べ、優位性を発揮 しやすい要素であることは間違いありません。

中小企業からすれば、その現状を認識した上で、大手に対 抗できる要素を少しずつ見出し、捻出していくしかないで しょう。予算的な余裕がないほど、アイデアでカバーせざ るを得ないのですが、逆に、大手では実行が難しいことを 見つけ、いかにやってのけるか、という勝負になると思っ ています。

さて、おそらく本屋さんで並んでいるどこにでもあるビジ ネス書に書いてありそうな、概念的な話はこの程度にして、 これらの基本を念頭において頂いた上で、ACE Inc.らしく、 オンラインにおける実状・戦略をできるだけ具体的に絡め ながら、本テーマの本題にいよいよ迫っていきたいと思い ます(まだもったいつけるのかと罵声を浴びせられそうで すが、いよいよ次回からです! 笑)

ところで、私事で誠に恐縮なのですが、事業拡張のため、 8月31日に本社及び倉庫を移転しました。新たに展開して いきたい事業が2つあること、また、以前のオフィスより かなり広いスペースに自社オンラインショップ用の倉庫を一体 化することでオペレーションの効率化を図ることが目的でし た。10年いたビーチエリアを離れるのは若干の寂しさもあ ったのですが、我が社が次のステージへ行くためにと、決 断しました。移転作業にまつわるトラブルのエピソードなど も、いつか息抜きついでにお話ししようかと思っています。

2013年9月3日火曜日

中小企業が生き残るには⑧ 大手

(U.S. FrontLine誌 2011年9月5日号 掲載分)
前回、オンラインビジネスの救世主だったPPC(クリッ ク課金型キーワード連動広告)や、今の時代に成約率の高 い広告媒体について、少しお話ししました。そして現在の オンライン市場は、超大手数社が占有し始めていると結び ましたが、この状況こそが本稿の「中小企業が生き残るに は」シリーズを書こうと思ったきっかけでした。

さてこのテーマを掘り下げていく上で、どうしても触れて おきたい、ある業界の話があります。それは、ここアメリ カで、先駆的な商品展開で成功を収めるも、業界自体の構 造変革により、厳しい状況下に追いやられる中で、今も健 闘を続けている、我が社の製造業の某クライアントからお 聞きした話です。

ある業界の怖い話

その業界はアメリカで、現在、市場規模が約2,500億ド ル前後と言われるくらい、巨大な市場を誇っています。た だ25年から30年ほど前に、大手の台頭によって、業界の構 図が信じられないくらい、まったくの別物に塗り変えられ てしまったそうです。

その時期に、大手ディスカウントストア数社が、中間業者 をバイパスして製造業者から一括で仕入れることで、商品 の極端な価格破壊を起こし、それまでは全国で2万軒はあ った町の小売店が、1割くらいにまで淘汰されてしまった そうです。

私がアメリカに来た頃には、既にこの構造変革後でしたの で気が付きませんでしたが、確かに言われてみれば、この 業種の小売店は、大手ストア以外、町で見かけることはま ずありません。また500社くらいあった卸業者も、今では 2社しか生き残っていないそうです。要するに数社の大手 ストアに、市場を完全に牛耳られてしまったわけです。

クライアントは製造業なので、この大手ストアに商品を納 入できれば、別に問題ないのでは?と思われた方もおられ るでしょう。事実、納入している商品はありますし、そう いった商品を増やしていければ逆に理想的ではあるのです が、現実はシビアで、決してクリーンな世界でもありません。

この業界に限らず、大手ストアはこのように流通ルートを 制圧していきます。その上で、例え消費者から高評価を得 ているブランドがあっても、その類似商品を、自らコスト の安い中国あたりで製造し、プライベートブランド(PB) として、少し安価に設定して販売してくるのです。

例えば薬局なら、CVS Pharmacy、Walgreens Pharmacy、 Rite Aidなどで、風邪薬、頭痛薬、ドロップから、シャンプ ー、リンス、洗顔フォーム、電動歯ブラシ、電子体温計、 ペーパータオル、ティッシュペーパーに至るまで、必ずPB 品を目にするはずです。それこそまるで人気ブランドのパ クリのような商品ばかりですよね。

また私が住むエリアの食品ストアなら、Ralphs、 Albertsons、Vonsあたりが強いのですが、それぞれジャム やバター、調味料、缶詰、牛乳など、人気ブランド品の横 に、少し値段を安くしたPB品を必ず並べています。

要するに大手ストアは、売れ筋の商品ジャンルにおいては、 抜け目なくPB品を製造し、販売してくるのです。ですから 製造業者からすれば、良い商品を製造していただけでは、 類似商品を出されて終わり、という世界なのです。

他人事とは思えない

さて、私はこのクライアントの話を聞いたとき、実は背筋 が凍る思いでした。業種は違えど、我が社が運営している 2つのオンラインショップが戦っているオンラインという 市場の今の状況と、どこかかぶる感じがしたからです。

本稿の第52回で、靴のオンライン販売で有名なZapposと いう企業(年商は10億ドル)が、Amazonに買収されてし まったことで、私的にかなりショックを受けたことをお話 ししたのも、正にこういった展開を彷彿させたからです。 現在、Amazon.comのページ下には、傘下のショップのリ ンクが表示されているのですが、本の市場を占めたAmazon が、次々と色んなジャンルの市場を狙っていく様を見てい るようではないですか。今確認したら、またリンクが増え ていたので、余計ブルーになりました。

今はまだ、我が社も何とか戦う土俵には上がれていますが、 確かに5年前と比べると、検索エンジン上での周りの競合 各社の顔ぶれががらりと変わっていることに気付きます。 Amazon、Walmart、Target…。昔いた競合相手の中小企業 たちは一体どこへ??うぉーこわっ! 続きます。

2013年8月28日水曜日

中小企業が生き残るには⑦ 推移

(U.S. FrontLine誌 2011年8月20日号 掲載分)
前回、ウェブ制作において、企業内でよくある誤解につい て触れました。ウェブ制作プロジェクトの担当になること が多いのが、その企業内のIT部署の方なのですが、彼らの専 門分野と、本来ウェブ制作で必要とされる専門分野は、実 はかなり違っています。担当の方のプロジェクトへの関わ り方が、ウェブ制作者の管理役であろうと、制作現場で関 わる方であろうと、専門外の人にプロジェクトの管理を任 せていることを、企業が正しく認識していないと、期待で きる結果と現実にギャップが生じてしまい、後々、皆が面 白くない思いをすることになります。

オンラインビジネスの救世主だったPPC

さてオンラインで、SEO(検索結果で上位表示させて集 客を図る手法)の次に登場したマーケティング手法が、 PPC(クリック課金型キーワード広告)でした。検索キー ワードに連動させて広告を表示でき、ユーザーにクリック された分に対してのみ広告費が発生するため、ターゲット も絞り込みやすく、費用対効果の面で従来の広告より格段 に優れていたため、あっという間に浸透していきました。

特にオンラインショップでは、集客数と売上は切実な関係 があるため、オンラインビジネスをよく理解しているショ ップオーナーは、こぞってこのPPCに飛びついたものです。 ただ、既に試された方ならお分かりだと思いますが、PPC は始めるのはとても簡単ですが、継続的に利益を創出する のは、決して楽ではありません。事実、PPCを始めてみて、広 告費を湯水のように使うも、お金を浪費するだけだったと、 我が社に助けを求めてこられるケースも多々ありました。

ただ「ちょっとAdwords(Google社の提供するPPCサー ビス)を試してみたけど、何にもならなかった。あれはダ メだね」と、たまに素人の方が結論づけることがあるので すが、それはちょっと違うかな、と思うときもあります。

本稿で何度も述べたように、PPCもうまく活用するには プロ並みのノウハウが不可欠です。価値が本当にないのか は、プロが試行と分析を重ね、ようやく判断できることで、 素人が下手な活用をして結果が出ないのは当たり前、それ だけで価値判断するのは浅はかだと思います。

ところでアメリカと日本のショップを比較すると、どうし ても日本の戦場のぬるさを感じずにはいられません。勿論ロ ケーション的な意味で、アメリカの方がオンラインの需要が高 く、それだけショップ側も本気だったとも言えますが、PPCの 普及の早さと使われ方も、この差に一役買っていたはずです。

なお本稿の第41回でも取り上げたように、近年のPPCの 1クリック当たりの広告費は、始まった当初と比べ、かなり 高騰してしまいました。原因は、それまでテレビCMに多額 の予算を投じていた大企業が、オンライン広告へ予算の比 重を置くようになってきたのが大きいでしょう。それによ り、中小企業には敷居が高くなってしまった感があります。

今、成約率が高い広告は?

ちなみに我が社は、2つの自社オンラインショップを運営 しており、当然PPCもやっています。例年の経験でいうと、 ホリデーシーズンは効果てきめんであまり心配はないので すが、オフシーズンはかなり手間を掛けてPPCを最適化す る必要があります。

一方従来からあった、人気サイトでのバナー広告は、出稿 先の選定さえ気をつければ、意外に手間をかけず、利益を 確保できる場合があります。勿論、いくらトラフィックの 多いサイトでも、ターゲット層が適切であり、オンライン 人間達の心理を理解した広告であることは絶対条件ですが。

我が社やクライアントショップの経験上、今、成約率が安 定して高いPPC媒体が実はあります。それは、Amazonです。 勿論Amazonは巨大な競合の1つなのですが、検索結果に表 示させるPPCと比較すると、Amazon内のPPCの方が成約率 が高くなるという経験を何度もしました。

レビューや価格などを比較するために、買い物をしたいユ ーザーが既に集っていることが、その要因と予想できます。 一番の目の敵であり、オンラインショップの王様である Amazonの、膨大なトラフィックの恩恵を得てビジネスをす るという、何とも皮肉な話です。

ただ今のオンラインは、超大手数社が、買収も繰り返しな がら急速に拡大して、市場を占有し始めています。別に預 言者ではありませんが、この状況でこのまま大手に乗っか っていっても、中小企業に先はないと断言できます。それ を肌で感じているからこそ、本稿のテーマを書いておくべ きだと思った次第です。続きます。

2013年8月5日月曜日

中小企業が生き残るには⑥ 誤解

(U.S. FrontLine誌 2011年8月5日号 掲載分)
前回、我が社へSEOサービスの引き合いを多数いただき ながらも、相手のマーケティングに対する意識や考え方に 違和感を覚えるケースも多々あったことをお話ししました。 SEOを通じて本気でマーケティングがしたいのか、それと も単に検索表示ランキングを上げて自己満足に浸りたいの か、見極めようとすればするほど、残念ながら後者のパタ ーンのように感じることが多かったのです。

ウェブ=IT部署の管轄?

ウェブ制作の仕事依頼をいただくと、多くの場合、相手企 業の担当者はIT部署の方になります。確かにウェブ自体は、 ITの知識・技術があってこそ存在するものですが、まだ多く の企業内で誤解があるように思うのですが、一般のシステ ム管理者(シスアド)の方の本来のフィールドでは決して ありません。

一般の人からすると、IT自体がよく分からない難しそうな 世界で、ウェブも一緒くたに映っているのかもしれません が、一口にウェブといっても、実はとても広く、奥が深い 世界です。

例えば、ウェブに必要なHTMLやCSSといったウェブペー ジを構成するためのコードを書けるシスアドの人もいると 思います。また、ウェブサーバーを構築するためのサーバ ーの知識や、画像加工するためのフォトショップ(Adobe 社の画像編集ソフト)の使い方を知っている、という人も いるでしょう。

ただ、それらは例えるなら、「料理教室に通って包丁の正 しい使い方を習った」という程度の話です。よほどの天才 でなければ、それだけで「料理の鉄人」のシェフにはなれ ません。

一握りの勝ち組を競うのが マーケティング

マーケティングの世界は、一握りの勝ち組と、その他ほと んどの負け組で構成されています。特に大きい市場で戦う ほど、その傾向は顕著になってきます。先の例で、「料理の 鉄人にならなくても、地元の定食屋のコックさんでもいい のでは?」と思われたかもしれませんが、特にオンライン での戦いでは、そうもいきません。

定食屋であれば、顧客層も競合相手も、店の近辺のエリア に絞られます。実際にそれで成り立つビジネスであれば別 の話もできるのですが、もう少し広いエリアに戦いを挑も うとすると、オンラインでは競合相手の範囲は一気に広が り、「全国区での戦い」になります。

例えば、ニューヨークの店や企業を視察に訪れた人が、ロ サンゼルスにある同業の店や企業と比較したいと思えば、 ロサンゼルスへ移動しなければならないので、時間も費用 もかかり、気軽には行動できません。従って、ニューヨー ク近辺の他社が主な競合相手になります。一方、オンライ ンの場合、わずか数秒、しかも無料で、「比較のための移動」 が可能です。理論上、ウェブにはロケーションによる縛り がないのです(検索エンジン自体は、あえてロケーション による縛りを設ける逆の試みもしているのですが、今はそ の話は割愛します)。

また、勝ち組は、一握りの本物のプロによるサポートを受 けています。負け組は、世の中の大半を占める“なんちゃ ってプロ”によって作り出されている、とも言えます。

プロ中のプロ同士の戦いで勝ち残るのがマーケティングで あり、以前私は、それを「売りやすくするためのあらゆる 仕組み作り」と表現しました。その基本は競争力です。“な んちゃってプロ”のように、誰でも真似できるようなこと をやっていては、競争力が備わるはずもありません。ウェ ブマーケティングは、世の中に出回っているような知識や ノウハウで、どうにかなる世界では、断じてないのです。

“なんちゃってプロ”ですら、曲がりなりにもその道を専 業に何年もやってきた人たちです。シスアドの方が、片手 間に習得できる知識やスキルは、氷山の一角でしかありま せん。

失敗しやすいパターン

またウェブ制作で、その会社のマーケティングや営業担当 の人が打ち合わせから参加しないケースもあるのですが、 これは間違いです。マーケティング目的でウェブを開設す るのであれば、本来さまざまな議論やコンサルティングが 必要になります。その過程が抜け落ちてしまうと、ゴール 設定も方法論も間違いだらけのプロジェクトになりかねま せん。

ウェブを成功させるのに必要なのは、正しいマーケティン グ戦略と実践ノウハウ・技術です。それらどの分野におい ても、本来IT部署の人は専門外なのです。企業もそれを理解 した上で担当を任せていなければ、最終的に皆、不幸な状 況で終わるでしょう。(次回に続く)

2013年7月30日火曜日

中小企業が生き残るには⑤ 理解

(U.S. FrontLine誌 2011年7月20日号 掲載分)
前回、元々は自社のITサービスの宣伝のためにSEOを実践 していたこと、そして必要性からマーケティングを研究す る中、いつしか主軸サービスの一つとして昇華させていっ たことをお話しました。そして当時は、特に業者も企業側 も、SEOを魔法の杖でも見つけたかのようにもてはやす一 方で、結局は、単なる検索ランキング上げサービスとしか とらえていないように感じていました。

表面的なサービスの方が 食いつきはいいのだが

我が社のSEOサービスに対して、それこそ世界中の企業 から、多数の引き合いを頂きましたが、SEOの活用法とし て、「ブランディングや価値のある集客力の拡大にこそフォー カスすべきだ」といくら説いても、「難しいことはいいから、 とにかくこのキーワードで上位表示してほしい」と言われて しまい、マーケティングの本質を理解しようとしない企業担 当者に対し、「何か違うな」と感じることが多々ありました。

ある会社からウェブ制作の依頼を受けて、その会社の売れ 筋商品や特徴、市場シェアなど、少し突っ込んだ質問をし たところ、「ウェブ制作とは直接関係ない」と突き返された こともありました(苦笑)。

また自分達で考えた構想を、言う通りに遂行してくれる、 単なるIT業者を求めているような会社も結構ありました。と にかく上司から指示されたことを間違えなく終えたい、と いう担当者だと、まず例外なくこのパターンでした。

ただそういうケースほど元々の構想自体がお粗末なものも 多く、そのまま進んでもビジネスとして失敗することが目 に見えていました。その上、マーケティング意識もない、 説明しようとしても面倒がられるだけ、さあ困ったどうし よう…、という悩みを結構抱えたものです。

成果の伴わないサービスは、するのもされるのも大嫌いと いう私の性格上、そういう案件はお断りするか、予め「こ のまま進んでも散々な結果にしかなりません」とはっきり 伝え、相手がそれでも望む場合のみ請けていました。

表示順位で一喜一憂している場合ではない

今私がSEOを話題にしているのは、テーマ「中小企業が 生き残るには」を説明する過程での、単なる序章であって、 本題ではありません。正直SEOは、やっていて当たり前、5 年前の時点でも、既にカビの生えた手法でした。また以前、 本稿の第41回でも触れた通り、資本主義的様相が益々強く なってきているため、SEOを主軸においたマーケティング プランでは、特に中小企業にとっては危う過ぎるのです。

ただ、SEOがマーケティング行為であること、そしてそ れも単なる一手法に過ぎないのだと理解していることは、 とても重要なことです。
意図したキーワードの検索結果での表示順位の変動を、と にかく気にする人がいますが、SEOの最終目的は集客のは ずです。つまり表示順位の変動より、集客数の変動を真っ 先に気にすべきなのです。仮に意図したキーワードで上位 に表示されたとしても、集客数に好影響を与えられなけれ ば、キーワードの選定自体が間違っているか、サイトコン テンツに問題があるかのどちらかです。

逆に表示順位を落としても集客数が変わらない、もしくは 増えていれば、少なくともマーケティングとしては成功し ているわけです。何故そのような状況になっているのか、 原因を突き止めておくべきではあるのですが、単に「今、 このキーワードで何位だ」という次元での見方は、ポイン トレスでしかありません。

ゴールは何であるべきか

ちなみに我が社は、英語日本語に関わらず請け負った SEOの案件で、「検索結果トップ5位以内」を実現できなか ったことは、一度もありません。しかしながら、ビジネス の成果としては、必ずしも成功とは言い切れないケースも 幾つかはありました。それは大体が基本のゴール設定が間 違っていたケースだと分析しています。

要するにSEOを通じて、本気でマーケティングをやろう としているのか、単に社内・社外における体裁を保つため に上位表示を達成しようとしているのかでは、結果が大き く違ってくるということなのです。

こういう言い方をすると、「うちの会社はマーケティング がしたいんだ」と言われるのですが、よくよく詰めてみる と、「マーケティングとは何か」を理解できてもいない、も しくは理解しようともしておらず、実は単に自己満足を追 及しているケースに多々遭遇するのです。(次回に続く)

2013年7月10日水曜日

中小企業が生き残るには④ 露出

(U.S. FrontLine誌 2011年7月5日号 掲載分)
前回、我が社の設立当初の状況を例に、営業効率を上げる ために、自社の提供するサービスを探し求めている潜在顧 客にいかに効率よくリーチしていくべきかと考え抜いた末、 その方法として検索エンジンに行き着いたことをお話しし ました。

最初は自社のためにSEOを実践

今から9〜10年ぐらい前のことです。当時はシステム屋 として自分達のビジネスを営業するために、SEO(ウェブ サイトを自然な検索結果で上位表示させることで、集客を 図る手法)を研究し、実践していました。

有力なキーワードで上位表示させることができるようにな ると、その威力は絶大なものでした。それまでのように毎 日電話でアポをとり、車で出向いて何社も回るというよう な原始的な営業方法とは効率性が比べ物になりません。何 しろオフィスに座っているだけで我が社のサービスに関心 のある相手から、勝手に問い合わせが入るのですから。

また競争の激しいキーワードで上位3位くらいに入ると、 集客効果だけではなく、ブランドとしての信頼性も自然に 高まることを実感しました。例えば、検索結果で有名な大 手企業のサイトばかりの中で、自社サイトが上位にくると、 我が社も同じ様に信頼のおける企業であるという印象を与 えるようです。実際、「検索で上位に表示される企業は好印 象で信頼性を感じる」という統計結果もあるほどです。

これは正に、設立当初の我が社の課題であった、人間関係 の短さや営業の不得意さをカバーするための「何か」でした。 実際、自分達でも驚くほど有名な企業から問い合わせを受 けたこともありました。最初は日本からの問い合わせが多 かったのですが、ある日、アメリカのBorland社からシステ ム開発案件の問い合わせがきた時は、「ついにうちもここま できたか」と、本当に感動しました。Borlandといっても一般 の人には馴染みがないと思いますが、開発言語系のソフトを 開発している会社で、昔からMicrosoft社と常に競り合って きた、我々の業界では知らない人はいない会社です(おそ らくこの凄さが、皆さんに伝わらないのが残念ですが、いつ か誰かに言いたかったことだったので、私は満足です。笑)。

必要性からマーケティングを研究

さて、最初は自社のシステム開発・ITサービスを宣伝する ために始めたSEOだったのですが、次第にウェブ制作やマー ケティング自体も極めていくことになります。というより、人 間関係や、営業力以外の部分で勝負するために、ウェブマー ケティングを極める必要がありました。そして企業マーケテ ィングにおいて、その効果を自ら体験し、価値も充分理解し ていたので、このノウハウを他にも活かすべきではないかと 考えるようになり、現在のように、ウェブマーケティングサー ビスという1つのメイン事業に昇華させていったのでした。

また当時、SEOは、アメリカ(英語圏)では既にやって いて当たり前の世界でしたが、日本ではその存在自体があ まり知られておらず、日本語のSEOが恐ろしいほど簡単で あることにとても驚いたものです(実は今でも似たような 感覚ですが…)。

我が社からすれば、ごく当たり前のことをしているつもり でも、日本では羨望の眼差しで見られることも多く、当時 は我が社を知らないところはなかったといえるくらいでし た。実際、日本市場向けに開設した我が社のサイトを、 SEOのお手本として研究しようとする業者や個人が後を絶 ちませんでした。事業提携のオファーを頂いたところもい くつかありました。

意識すべきゴールの違いに困惑

とはいえ、当時数少なかった同業のライバル社も、今では 上場するなど、大きく成長しているところも結構あり、我 が社もそのタイミングで日本に支社でも構えていたら…、 と思うことは正直あります。ただ、同業も含め、企業側の マーケティングに対する認識の甘さと、我が社との考え方 との違いには、いつも悩まされていました。

簡単に言えば、我が社は身をもってマーケティングの必要 性を痛感していたこともあり、SEOもマーケティングの一 環という位置づけで、サービスを提供しようとしていたの ですが、業者も企業も、魔法の杖でも見つけたかのように SEOをもてはやす一方で、結局は、単なる検索ランキング 上げサービスとしか捉えていないように感じました。

そういった表面的なサービスに徹した方が、顧客の食いつ きがよかったのも事実ですが、我が社はなかなか割り切る ことができませんでした。次回に続く。

2013年6月30日日曜日

中小企業が生き残るには③ 効率



(U.S. FrontLine誌 2011年6月20日号 掲載分)
前回、ビジネスは腕だけではどうにもならないこと、良い ものが必ずしも売れているわけではなく、「売り方」がより 勝っているものが売れている現実について、お話しました。

そこで、どうしてもマーケティングについて触れないわけ にはいきません。ちなみにマーケティングとは、私なりの 表現では「売りやすくするための、あらゆる仕組み作り」 のことです。よく「マーケティング」と「営業」を同義で 使われている方を見かけますが、それは間違いだと思いま す。「営業をしやすくするための行為」という表現なら理解 できます。

マーケティングがなぜ必要か

前回、我が社を例に、人間関係の長さや、営業トークのう まさ以外の部分で、勝負できなければ先がないと実感した こともお話しました。理由は簡単で、特にアメリカで間も ない頃だったので、人間関係の長さで対抗することは不可 能であり、自分をはじめ、我が社のスタッフも皆営業行為 自体が嫌い、もしくは苦手で、営業トークが得意な他社さ んには太刀打ちできなかったからです。

ちなみに上記を別の表現に置き換えてみると、人間関係の 長さ=信頼性で、営業力=人数が多いほど有利といえます。 つまり大手になるほど、そういった要素では当然有利に働 くわけで、別に我が社の例でなくとも、それに対抗するの に、特に中小企業の場合、同じ土俵で戦うには限界がある と思うのです。

ところで自分の場合、営業が大嫌いではあったものの、あ りがたいことに、運良く話を熱心に聞いて頂ける方に当た ると、時間は掛かりますが、受注につながることはありま した。恐らく技術者の話の方が、説得力があったからだと 思います。ただビジネスとしては、採算が合いません。営 業に費やしている時間までを計算すると、せっかく契約で きても、技術者の相場としては、あり得ないくらい安い時 給になってしまうからです(涙)。

そこでなぜ時間が掛かるのかを考えてみると、もともと相 手が意識もしていないことに興味を持たせ、実は必要であ ることを理解してもらう過程が大変であり、時間も掛かっ てしまうということが分かったのです。

もともとその商品やサービスが必要で、探し求めている人 達にリーチできれば、少なくとも最初のステップは省けま す。そういったことができる効率的な方法を考えると、今 の時代、自ずとウェブに行き着くと思います。

当時は検索エンジンもまだ発展途上でしたが、知恵と工夫 だけでもかなり面白いことができた時代でもありました。 そしてその潜在能力をいち早く見抜き、研究していたのが パートナーのレイアでした。

彼女は、日本で私が勤めていた会社の、偶然上の階にある、 コンサルティング会社に勤めていたのですが、その会社の 経営者の1人と私が懇意にしていて、丁度アメリカでの独立 を考えていることを話した際に、「うちの会社で日本語ので きるアメリカ人がいるよ」と言われ、紹介してもらったの がきっかけでした。

ただ私は独立した当初は、自分の腕だけでも会社を回して いけると甘く考えており、彼女がマーケティングについて 既に知識もあり、「へぇー」と関心させられることは多々あ ったのですが、正直そういったスキルより、とにかく英語 的な手助けをしてくれれば助かる、くらいに考えていたの です。

ところが現実問題としては、すぐに営業というステップで 大きな壁にぶつかってしまいます。彼女も私の技術力につ いては、前の会社の経営者からも話を聞いていたので、理 解はしてくれていましたが、ここまで脆いビジネスプラン だったことには呆れていました。そして私が採算の合わな い営業活動でもがいている間にも、せっせと研究・実践を 重ねてくれていたのです。

そしてある時、私をPCモニターの前に呼び、Googleであ るキーワードで検索し、大手サイトも押しのけ、我が社の サイトがトップに来ているのを嬉しそうに見せてくれたの です。実はそれでも、その時はそれが本当はどういう価値 を持つのかを、すぐには理解していませんでした。

ただそれから、我が社へ問い合わせが入るようになり、そ の価値と意味をしっかり理解できるようになりました。何 より相手は既にサービスを求めている潜在企業であること、 そして無人のウェブが、24時間365日、勝手に世界中を営 業をしてくれて、引き合いをもってきてくれるのです。少 なくとも我が社の場合、彼女の功績により存続できたこと は間違いありません。次回に続く。

もっと詳しくブランディングについて知りたい方はこちらも参照ください。
ブランディングについて">ブランディングについて">ブランディングについて

もっと詳しくアメリカ進出について知りたい方は当社サイトも是非ご覧ください。
海外・アメリカ進出支援

2013年6月18日火曜日

中小企業が生き残るには② 認識



(U.S. FrontLine誌 2011年5月20日号 掲載分)
前回、あえて顧客ゼロで起業したこと、実は「腕さえあれ ば何とかなる」と心のどこかで甘く考えていたこと、そし て想定していた継続の収入源が予期せぬ事件で当てにでき なくなったことなどをお話しました。

腕だけではどうにもならない

起業当初、1年は何とか会社をまわせる所持金でスタート できたものの、継続収入が期待できなくなったため、とに かく仕事を取ろうと、当時は自分が一番自信のあったシス テム開発の案件が手っ取り早いと考え、現地の日系企業を 中心に、自らも営業に出向いていました。

本来ならば、パッケージソフトの開発者として、ある程度 名前も売れた状況で展開していく予定でしたが、そのプロ ジェクト自体が頓挫したことで、自分自身もノーブランド から始めなければならなかったのですから大変です。

特に高額なシステム開発案件を受注する場合、信頼・知名 度が必要です。大手企業の冠があるわけでもなく、無名の 小企業が、そんな案件を獲得しようとすること自体、普通 に考えれば無謀です。

「良いものは作れても、まずその会社の存在自体が知られ ていなければ、ビジネスにはつながらない」。こんな一見当た り前のことを、身をもって体験し、初めて実感したのでした。

とにかく必死で慣れない営業をする中には、会社案内を渡 した相手に、その場でろくに目も通してもらえないまま、 「こんなことは誰にでも書ける。自分はXXさんや○○さんな らよく知っているが、君のことは全く知らないし、何も信 用できない」と罵倒されたこともありました。

その時の内容には、きちんと読んでもらえれば、経験を積 んだ者でなければ知識的にも書けないこともあったのです が、頭ごなしに自分のキャリアまで一切を否定されるとい うのは衝撃的だったので、今でも覚えています。

ただ同時に、真実であっても相手がそれを見ようと(興味 を持とうと)しなければ、結局はスタート地点にも立てな いことを認識しました。そして人間関係の長さや、営業ト ークのうまさではない部分で、勝負できなければ先がない ことも実感したのです。

必ずしも良いものが 売れているわけではない

昔ビデオテープが主流だった時代に、ベータとVHSの規 格があり、ベータはよりコンパクトで性能的にも優れてい たものの、結局市場はVHSが制した背景には、ざっくりマ ーケティング戦略的な優劣がありました。ちなみにマーケ ティングとは、私なりの表現で言うと、「売りやすくする仕 組み作り」です。

同じ工場で作られた同じ仕様の商品でも、高級感のあるパ ッケージで、宣伝広告などブランディングをしっかり行って いる方が、何百ドルも高く売れているものを知っています。

また私は世の中の人達は大きく分けて、「営業肌」、「技術 肌」の2つのタイプに大別できるように思います。前者は コミュニケーション能力に優れ、話術というスキルで、相 手を気持ちよくしようとするタイプ、後者は技術の習得力 に優れ、何らかの専門のスキルを提供することで、結果的 に相手を気持ちよくしようとするタイプ、といった感じで しょうか。

私は後者のタイプなのですが、前者の人達でいつも気に掛 かることがあります。ある程度会社が大きくなれば、当た り前ではあるのですが、会社の商品・サービスを相手に売 っていく上で、自分では責任の取れないことに対して、色 んな約束やトークをしなければなりません。そんなとき、 どういう精神構造になっているのか?ということです。

誠実な会社の営業さんなら、自らもできるだけ正しい知識 を習得する努力はされているでしょうし、自信の持てる商 品、もしくは最終的に責任を取ってくれる技術部隊をきち んと確保しているのだと思います。ただ本稿で何度も取り 上げてきたような、悪徳業者も世の中には多数存在するわ けで、上辺だけの知識で、自分はもちろん、会社ができも しないことまでも、平然と売りつけ、責任も取らない営業 さんは、きっと真顔で嘘がつける人だと思います。ただ案 外こういう人の方が、営業成績は良かったりするものです。

つまり世の中でよく売れているものは、決して「そのもの」 が優れているのではなく、(ものの良し悪しに関係なく、) 「売り方」が他社より勝っているケースの方が圧倒的に多い ということです。技術肌の自分にとっては、とても受け入 れ難い現実でしたが、これを認識することが、生き残るた めの第一歩だったと思います。次回に続きます。

2013年6月4日火曜日

中小企業が生き残るには 序章



(U.S. FrontLine誌 2011年5月5日号 掲載分)
前2回にわたり、オンライン市場で中小企業が置かれてい る現状について取り上げました。毎日24時間体制のカスタ マーサービスや無条件の送料無料サービス、無条件返品・ 全額返金ポリシーなど、大手が当然のように提供している サービスが業界の標準としてユーザーに認識されてしまう ことで、中小企業は、とても厳しい戦いを強いられていま す。

「この問題に対する画期的な対抗策は何?」と聞かれても、 正直、絶対的な答えはまだ見つかっていません。1〜2年 というスパンでならばまだ何とか想定できなくもないので すが、その場しのぎであることは否めません。そしてそれ 以前に、世の中の景気が今後さらに冷え込むというアナリ スト達の予測もあります。

実は本稿のテーマは、私の生涯のテーマでもあり、起業理 念にも関係するものです。簡単には語れないので、自分達 がこれまで辿ってきた軌跡や、現在直面している状況も交 えながら、少々長話にお付き合いいただけるとうれしいで す。

我が社を例に

「ACE Inc.は、一体何屋ですか?」と聞かれることがたま にあります。簡単に答えるなら、システム開発とウェブマ ーケティング事業の2つを主軸にしつつ、自社オンライン ショップも運営する会社なのですが、実はこのビジネスモ デルは必然性により生まれました。

本稿を昔からお読みいただいていれば、お気づきになって いるかもしれませんが、私自身がIT・システム関連の話をし ている時と、マーケティング関連の話をしている時があり ます。本来ならは、これらは全く異なる分野なのです。

私個人はキャリアでいうと、間違いなくシステム・エンジ ニアがベースです。以前本誌でウェブマーケティングにつ いて執筆していた、その道のエキスパートであるパートナ ーのレイアが、私の師でもあり、常に最新の情報と現場で の経験値をシェアしてくれており、そこに本来の自分の強 みでもある分析力・論理思考・創造力を加えることで、い つの間にかウェブマーケティングの分野でもそれなりの成 果を出せるようになり、自分でも今の肩書きの説明に困る ことがあります。

今では、アメリカ進出を試みる日系企業の方に、「しては いけないこと・するべきこと」などを偉そうに(笑)語る ことも多くなったのですが、今だから白状しますが、会社 を設立した当初は、技術的な腕にこそ覚えはあれど、ビジ ネスについては無知で、事業計画も稚拙なものでした。

独立前、私は日本の小さなIT会社に勤めていたのですが、 アメリカでの起業を考えるようになり、その会社で半ば無 理やり、アメリカでのシステム開発の仕事を展開させ、自 分のスキルがアメリカでも充分通用することを確認し、独 立しました。事前にある程度顧客ベースを築いてから独立 するのが普通だったのかもしれませんが、自分の本当の実 力・真価を測りたかったのと、顧客を盗んで独立するのは 自分の哲学に反することから、顧客ゼロ、しかも見知らぬ 土地のアメリカで事業をスタートしたのです。

ただし、ビジネスが軌道に乗るまでの収入源としては、IT 会社と会計事務所とコンサルタント会社が組んで、日本の 販売管理システムのパッケージソフトを全国展開するとい う大きなプロジェクトがあり、そのメインの開発を指名さ れていたため、開発費と展開後のサポート費用で当初はラ ンニングすることを想定していました。もちろん、パッケ ージが全国展開することで、開発者として自分の名前も売 っていくことも計算していました。

ところが、プロジェクトの途中で予期せぬ横領事件が起き たのです。残った各社で何とか再開させようと試たものの、 結局プロジェクトは頓挫してしまったのです。ただ、初期 開発は既に終えており、独立したばかりの一番弱い立場で あった私はみなさんから守っていただく形で、ありがたい ことに全額支払いも受け取っており、1年は何とか回すこ とができる金額でした。それでも、その先の継続費用の当 てを完全に失いました。

若かったといえばそれまでですが、今考えれば事業計画と はとても呼べないもので、正直「腕さえあれば何とかなる」 という過信もありました。今では日本のメーカーさんに、 「良いものだから売れるとは限らない」と諭すことがよくあ るのですが、白状すると、私も最初は似たような発想を持 っていたのです。次回に続きます。

2013年5月21日火曜日

中小企業の行く末は? ②



(U.S. FrontLine誌 2011年4月20日号 掲載分)
前回(4月20日号)では、まず現在のオンライン市場の 実状を知って頂くため、Amazon.comに代表される、大手 オンラインショップが当たり前のように提供する、毎日24 時間体制のカスタマーサービスや無条件の送料無料サービ スなどを説明しました。そして、大手ショップのポリシー が、オンラインショップ業界の標準として、ユーザーに認 識されるようになることも、お話ししました。

今後、オンラインビジネスに注力されようとする企業は、 益々増えてくると思います。少しでも成功してほしいから こそ、生半可な覚悟ではなく、背水の陣で望むくらいの覚 悟が必要であることを認識していただきたいのです。

極めつけの大手の返品ポリシー

顧客に届いた商品が間違っていた場合、我が社のような中 小規模のショップですと、まずいったん返品してもらい、 事実が確認でき次第、交換品を発送するのが通常です。し かし大手ショップの場合は、オンライン上で間違いの報告 をするだけで、返品用のラベルと共に交換品がその日に発 送されたりします。ほかにも大手の場合、たとえ故障や不 具合が全くなくとも、単に「気に入らない」という理由だ けで、ユーザーは無条件に、誰に説明する必要もなくオン ライン上の簡単な手続きだけで、全額の返金を受けられる システムになっているところも多いのです。そしてもちろ ん、その場合の返品送料も無料だったりします。(汗)

ユーザーの立場からすれば、「この素晴らしいシステムの どこが問題なの?」と思われるかもしれません。確かに買 い手からすれば、正に理想的な話です。しかし売り手で、 しかも中小企業ともなると、これはたまりません。返品さ れた商品は、故障していなくても2度と新品としては販売 できない上、返品送料をショップ側が丸々負担しようもの なら、元々の利益率にもよりますが、簡単に赤字になるで しょう。大手は膨大な数の商品を扱っているため、商品の 仕入れ価格や顧客への送料で特別な割引価格を貰えている ため、全体としては、送料負担などの損失も充分カバーで きる余裕があるわけです。

我が社のやり方

以前ならば、「故障ではない返品の場合、Restocking Fee (返品手数料)XX%を頂戴します」というのが標準でしたが、 今ではたとえウェブサイト上にそのことをはっきり記載し ていても、顧客には全額返金でないことを簡単には納得し てもらえないという現実があります。

我が社が運営する2つのオンラインショップでも、返品は 悩みの種です。ただ我が社のカスタマーサービスは(手前 味噌になりますが)、顧客から対応がとても親切であるとよ く褒められるくらい、1つの強みになっており、よくやっ てくれています。

故障ではなく、単に気に入らないという理由での返品の際 に、手数料の関係で全額返金でないことに納得してもらえ ない顧客がいた場合、我が社のスタッフは、まず商品に満 足してもらえなかったことについて丁寧にお詫びします。 そして、返品されてくる商品は、新品としてはもう売れな いこと、いったん封が開けられた「オープンボックス品」 として価格を下げて売らなければならないこと、既にこち らからの送料負担が発生していたり、プロセスを完了させ るまでに関わる全てのスタッフの人件費が発生することな どを、丁寧に説明します。さらに、中小企業がビジネスを 続けていくためには1つの注文で簡単に赤字を生むわけに はいかないので、あくまでも返品手数料は、お店が損失を ぎりぎりに抑えて何とかプラスマイナスゼロにしようと努 力するためのものであるという切実な事実を説明すること で、だいたいは納得してもらっています。(汗)

ただし、前回から説明してきた通り、ユーザーのオンライ ン・ショップでのサービスの期待値は、大手ショップと変 わりありません。実店舗ならば、ユーザーも見た目からシ ョップの規模を判断できる上、複数の店を行き来するのは 時間も労力もかかるため、ある程度のユーザーの妥協も期 待できます。一方のオンラインでは、ワンクリックで店舗 を移動できるため、たとえ中小企業が運営するショップで あっても、そして自分たちにそのつもりがなくても、結果 的に大手ショップと競争していかなければならないという 厳しい現実があります。そのため我が社では、できないこ とは諦め、できることで何が大手と勝負できるのかを、常 にスタッフには意識させています。

次回は、中小企業の生き残り方について、私なりに考えて みます。

2013年5月3日金曜日

中小企業の行く末その①



(U.S. FrontLine誌 2011年4月5日号 掲載分)
言うまでもなく、オンラインビジネス市場は成長を続けて います。不況と言われる近年においても、オフライン市場 と比べれば圧倒的な安定感があります。ただし、オンライ ン市場の中でも確実に構造変革が起きており、資本主義の 原理の下、巨大資本の大手が市場を占めようという動きが、 近年恐ろしいほどのスピードで加速しているように感じて います。

Zapposという企業

オンラインショップの代表格といえば、やはり Amazon.comですが、彼らが靴のオンライン販売で有名な Zappos.comを2年ほど前に買収した時点で、こうした時代 の流れを強く感じずにはいられませんでした。

Zapposは、自らを「靴を売ることになった顧客サービス 企業」と称するほどの手厚いカスタマーサービスとユニー クな経営手腕で、非上場企業ながら、10年で年商10億ドル にまで急成長を遂げたオンラインショップです(ちなみに 2000年の年商は160万ドル程度)。同社のトニー・シェー 最高経営責任者(CEO)は、自らツイッター(個々のユー ザーが「ツイート」と呼称されるつぶやきを投稿し、それ を一般ユーザーが閲覧できるサービス)を積極的に活用し、 社員にも活用を勧めるほど、ソーシャル・ネットワークを 先駆的かつ最大限に活用してきたことでも有名なカリスマ 経営者。彼のツイッターを今確認したところ、フォロワー (彼のつぶやきを心待ちにしているファン)数が180万人を 越えているほどです。

アマゾンによる買収に関しては、シェー氏曰く「さらなる 急成長を目指すため」ということで、単に大手に中小が食 われたという話ではないのですが(売上げ的にも、完全に 大手になっていましたし)、私の中でZapposは、非上場企 業における小売ビジネスの中で希望の星であり、お手本の ような存在でした。ですから、私は「あそこまで強烈な成 功と力を手にした企業ですら、結局は大手に吸収されてし まうのか」と大きなショックを受けると共に、この先のオ ンラインビジネスの行く末において、不安を感じずにはい られませんでした。

業界スタンダードは 大手が規定してしまう

大手オンラインショップは膨大なユーザーベースを抱えて います。そのユーザーたちからすれば、大手ショップでの 買い物の体験値が蓄積されていくほど、結果的に、それが 今のオンラインショップ業界でのスタンダードとして、認 識されていくことになります。これは成り行きとして仕方 ないのですが、中小企業にとっては、かなり厳しい状況に 追いやられることになります。

例えば「カスタマーサービス」。たとえ土日祝日であって も、毎日24時間体制で対応してくれるのが大手です。また、 送料も以前なら「注文金額が××ドル以上なら無料」とい うのが暗黙のスタンダードだったように思いますが、最近 大手では「全品、注文金額に関係なく送料無料」というの は特に珍しくなくなりました。「アマゾン・プライム」とい う有料会員サービスに至っては、加入さえしていれば、い つでも「翌日必着」の発送が無料オプションになります。 その他、ストリーミングによるビデオ視聴もできるように なるなど、かなりお得なユーザー特典目白押しのサービス 体制を整えています。

一方、中小企業にとっては、同じサービスをまともに実現 するには、かなり無理があります。実際、我が社は2つの オンラインショップを運営していますが、週末に私が出社 して仕事をしていると(涙)、頻繁にカスタマーサービスへ の電話が鳴ります。もちろんウェブサイトには営業時間を 記載していますが、お構いなしのようです。私はそのよう な電話には一切出ませんので、必然的に対応は週明けとな ります。スタッフが月曜日に顧客へフォローの電話を入れ る頃には、「何ですぐに連絡がないんだ!」「なぜ発送にこん なに時間がかかるんだ!」と怒られることも、しばしばあ るようです。

中小企業が生き残るためには、とにかくオンライン業界の 現実をまず認識していただく必要があると思っています。 次回に続きます。

2013年4月26日金曜日

災害時のIT



(U.S. FrontLine誌 2011年3月20日号 掲載分)
東日本で起きた大震災における被災者およびその関係者の 皆様、救援・復興作業に携わっておられる関係者の方々に、 少しでも被害が少ないこと、できるだけ多くの方が救出さ れること、そして今後の生活で手厚い援助を受けられるよ うになることを、心より願っております。

多忙を理由に最近はニュースをほとんど見ておらず、人か ら今回の災害について伝えられ、その後周りのアメリカ人 たちがあまりにも「お前の家族は大丈夫なのか?」と聞い てくるので、逆に事の重大さを実感したぐらいでした。

計画停電への対応策

災害発生2日後に、東京に本社のある、我が社のクライア ントの社長から電話がかかって来ました。いつもならGTalk (Googleの無料インターネット電話)かSkypeで話すのです が、この時は通常の国際電話から、しかも日曜日の電話だ ったので、事の重大さを実感せざるを得ませんでした。

電話の第一声が「大変です…」。社員の方に何かあったの か、あるいはオフィスが地震で大きな被害にあったのかと 思ったのですが、幸いそうではありませんでした。話を聞 いてみると、「東京で計画停電が始まるらしい」という内容 だったので、実は正直かなりホッとしたのですが、よく考 えてみると確かに、少し大変な事態かもしれません。

そのクライアントの販売管理システムは、完全なカスタム 開発で我が社が導入・稼動させているのですが、物流倉庫 が名古屋にあり、VPN(暗号化により、インターネット回 線をプライベートな専用回線であるかのように利用し、ネ ットワーク接続を可能にする技術)を通じて、本社のサー バーと通信させています。

計画停電はどうやら毎日3時間強程度らしいのですが、そ の間、システムを通じた物流からの出荷・入荷作業ができ なくなるため、その時間帯に物流業務をストップさせない ための対応策を考えたいということでした。

咄嗟のことで私も今ひとつ冴えておらず、簡単に考えられ る方法として、一時的にサーバーを物流倉庫側に置くか、 ウェブサーバー側(現在アメリカのホスティング会社を利用) に既に同じタイプのデータベースがあるので、そこに役割を 移行することは簡単にできるでしょう、と答えました。

要するに、停電の影響を受けない本社以外のロケーション にメインサーバーを移行しては? という案だったのです が、東京地区の計画停電なので、そもそもISP(インターネ ット・サービス・プロバイダ)もダウンするのでは? と いう根本的な問題に気付きました。

そこで、とりあえずISPに確認してもらうことでいったん 電話を切ったのですが、確かに東京地区全体が停電する場 合、インターネットも使えなくなるわけで、VPNも機能し ないことになります。システム化した企業ほど、停電によ る日常業務への影響の大きさを実感しました。

ITの脆さを垣間見る

その後、やはりインターネットもダウンしてしまうことが 判明したのですが、社員の方から「こんな方法はどうでし ょう?」と提案されたのが、
① とりあえずジェネレータやUPS(無停電電源装置)な どでサーバーとPC用に最低限必要な電源を確保する
② システム上の出荷作業を本社側で代わりに行い、その 際に出力される伝票を全てPDF化する
③ 携帯キャリアのインターネット接続を通じて、それら のPDFファイルを物流倉庫に送り、それを印刷して出荷作 業をしてもらうというものでした。

もちろん、物流倉庫側にもサーバーを立てられれば、技術 的にはデータベースを同期させるなど、もう少し細かいオ プションもあるのですが、一番コストがかからず簡単にで きそうな方法として、「なるほど!」と開眼する思いでした。 特に画期的なわけでもないのですが、こういうフレキシブ ルな発想を、自分も忘れがちだと反省しました。

携帯キャリアのインターネット接続が計画停電の間に使え なければ元も子もないのですが、それはとりあえず問題なか ったようです。出力伝票が何百枚にもなるので、PDF化する 過程で作業が簡単になるプログラムを組む必要がありました が、結局、一時凌ぎとしてこの方法でやってみることになり ました。デジタルの時代にアナログ運用に戻ったような話で すが、今回はITの脆さを垣間見ることになりました。

今回は未曾有の震災が起こったことを受けて普段とは違う 内容になりましたが、次回からは、またITマーケティングに 話題を戻したいと思います。

2013年4月4日木曜日

アメリカ文化、 どこまで理解できていますか?



(U.S. FrontLine誌 2011年3月5日号 掲載分)
以前、アメリカの実情を理解しようともせず、「日本では こう売れた」的な思い込みだけで突っ走ろうとする日系メ ーカーをよく見るというお話をしました。

特に日本で生まれ育った日本人が、アメリカの歴史的背景 や文化、慣習、価値観などを、アメリカ人並みに理解する には無理があると思います。アメリカは多民族国家ですの で、なおさら複雑なのです。

(もっと詳しくアメリカ進支について知りたい方はこちらも参照ください。 アメリカ進出サポートサービス )

仮に、アメリカに移住して20年以上住んでいる人だとし ても、それまで周りのアメリカ人とどの程度の関わり合い を持ち、どのような生活をしてきたのかが重要です。スム ーズに英会話をされているような方であっても、深層的な アメリカ文化の理解という意味では、意外にも危うい方々 をたくさん見てきました。文化・言語の奥の深さを本当に 実感できていれば、アメリカ市場におけるマーケティングは、 アメリカ人の協力が不可欠であることも理解できるはずで す。ただ残念ながら、未だに甘く見ているケースと遭遇し てしまうので、自分たちの認識不足が原因で市場で負ける べくして負けていることに早く気付いて欲しいものです。

「かわいい」は褒め言葉ではない?

以前に取り上げた、我が社が窮地から救った日本のあるメ ーカーも、アメリカ文化の理解という観点において、ター ゲットの選定と売り方の基本戦略から致命的な間違いをし ていました。最初に「なぜ自分たちの商品がアメリカで受 けると思っているのか? 何が優れているのか?」と尋ね たところ、「かわいい」デザインだからという返答でした。 そして、その商品は、日本では中学生くらいの女の子たち に「かわいい」という理由で受けているため、それがアメ リカにおいても、同じように通用すると考えていたのです。

アメリカの場合、まず「かわいい」という価値観自体が、 アジア圏とでは大きく異なっています。例えば、日本であ れば、成人女性に対する褒め言葉として、「美人だね」「かわ いいね」などが通用すると思いますが、アメリカの成人女 性に対して「Cute(かわいいね)」という表現を使った場合、 それは「年齢の割には未熟だね」といったニュアンスの、 むしろ当人も言われてあまり嬉しくないような意味に受け 取られる方が一般的なようです。大人に対して「かわいい」 という日本の価値観が通じるのは、アニメ好きのオタクと アジア系くらいだと考えておいた方が無難でしょう。

ティーンガールは大人の女性を目指す

そして、日本とのもう1つの決定的な違いとして、アメリ カのほとんどのティーンの女の子たちは、大人の女性が形 容されるような状態を目指しています。それは、例えば 「セクシー」「美人」「クール」といった路線で、決して「か わいい」ではないのです。もちろん、先に述べた「かわい い」に関する価値観の違いが大きく起因しているのだと思 いますが、一般的に中学生は高校生を、高校生は大学生を マネたがる傾向にあり、自分たちよりも年上の女性が目指 してもいないものを、若い年齢層が目指すことはないので す。

我が社は、まずそのメーカーの商品はアメリカにおいては、 「かわいさ」ではなく、「Funny(面白い)」という理由で受 ける可能性の高いものだということを指摘し、ターゲット 層も最初はティーンではなく、大学生以上の男女を狙うべ きであることを伝え、基本戦略から修正させました。仮に ティーンをどうしても狙いたかったとしても、先に大学生 あたりから浸透させ、徐々に購買年齢層が下がっていくと いう展開の方が現実的であり、数年後に達成させると考え るべきものなのです。

ブランド名も、我が社がその案件を担当する前に、既にそ のメーカーの現地担当が(つまりマーケティングに関して は素人が)考え出したもので展開していたのですが、基本 戦略もターゲット層も大きく間違った上で考えられたもの であったため、多くの男性からは敬遠されがちな名前にな っていました。

そのリスクや現状を最初は口頭で説明したのですが、なか なか理解されなかったので、既にあった販売店やフォーカ スグループのアンケート結果を突きつけることで、ようや く納得してもらうことができました。そのまま間違った方 向に突き進んでいたら、そのメーカーは今頃、アメリカか ら撤退しなければならなかったことでしょう。

もっと詳しくブランディングについて知りたい方はこちらも参照ください:ブランディングが必要な理由

2013年3月28日木曜日

勝ち組の今流マーケティング 口コミ編③



(U.S. FrontLine誌 2011年3月20日号 掲載分)
前回、バイラル(口コミ)マーケティングには大きく分けて2種類あることをお話しました。意図的なマーケティングとして口コミを起こしていることを完全に隠して行うタイプと、あくまでも面白・インパクト広告として展開するタイプです。 最近、アメリカ進出を試みるある日本のメーカーを、我が社が救ったケースで大成功させたバイラル・マーケティングは後者でした。実は、前者のアイデアもあったのですが、成功するバイラルほど、それに関わった人(特にスポットで雇われるモデルやエキストラの人々)の中からリークが起きる可能性があり、そのリスクを取るよりも、真っ向から面白・インパクト系広告として攻めても、充分に成功させられるだけの強いアイデアがあったため、後者を選択しました。

その内容は簡単に説明すると、ブランディング・サイト(商品やブランドについて、より多くの人々にその存在を知ってもらい、良いイメージを浸透させるためのサイト)の中に、ふんだんにアメリカの文化に根付いたジョークを商材とミックスさせ、ユーモア系サイトに仕上げたものです。企画段階から、強いユーモアのアイデアが次々と浮かび、「絶対にいける!」と社内では充分に手ごたえを感じていました。

ポイントは、まず「笑えるか?」。そして、それを「人に伝達したくなるか?」でした。動画は凝ったことができる一方で、しばらくユーザーの目を引き止める必要があり、単発の強いアイデアなら有効なのですが、今回のターゲット層の範囲と、アイデアの量、およびサイト全体でブランディングしていくという目的から、瞬発力のある静画(画像)とテキストをメインで使っていく手法をあえて採用しました。

そして、本当に受けるのかを客観的な視点から確認するため、ターゲット層に該当するフォーカス・グループに仮のバイラル・サイトを見せ、フィードバックをもらいました。結果は、ほとんどがこちらの意図した以上の良い反応だった上、頼んだ訳でもないのに、フェイスブックを中心に勝手に口コミが広がり始めていったのです。その時点で、このアイデアが当たることが確信となりました。

その後、本格的に広告も投入し、より多くの人の目に触れさせることで、口コミを爆発的に発生させ、意図通りのブランディングを成功させ、卸販売も直接販売も売り上げが予定通り獲得できるようにしました。同時にフェイスブックのファンもうなぎ上りで増えていき、以前この案件を担当した“なんちゃって広告代理店”が、フェイスブック開設後1カ月で17人のファンしか獲得できなかったのに対して、我が社が担当してからは1カ月で約3000人、2カ月で約6000人…と増えたのです。

口コミで一番すごいこと

実はこの案件を受ける前に、もらっていた情報を基に現状を軽くリサーチし、直販ショップで予想できる売り上げを試算して伝えていました。その時想定していたのはPPC(クリック課金型広告)を中心とした集客による売り上げだったのですが、以前(2010年11月5日号、第41回)でも触れたように、PPCのクリック単価の高騰により、費用対効果という面でとても割に合わないという現実がありました。コンバージョン(お買い上げ)に対する集客コストが高過ぎたのです。かといって、即効性のある集客方法は他にはあまり存在しません。

このメーカーは、このままではビジネス自体が存続できない上、他に打てる手も思いつかないと頭を抱えていたので、我が社はバイラル・マーケティングの併用を勧めたのです。もちろん、バイラルが成功したらという前提付きですが、口コミで周りに伝達されるようにできれば、結果的に集客コストは軽減できるからです。仮に1人を集客するコストに1ドルかかっていても、その人が3人に伝達してくれれば、$0.33/人で集客できたことになります。実際に、このバイラル・サイトでの統計を見ると、口コミなしでただPPCだけで集客した場合の数値と比較すると、10〜20倍のトラフィックを得られていたことが分かりました。

これが以前、私が示唆していた、割高になったPPCを企業がまだ活用できるようにする「奥の手」です。限られた予算であっても、1人の集客コストで何人分まで集客できるか? を追求するマーケティング手法、これがバイラル効果の真髄です。

2013年3月1日金曜日

勝ち組の今流マーケティング口コミ編②



(U.S. FrontLine誌 2011年2月20日号 掲載分)
前回、バイラル(口コミ)マーケティングで口コミのネ タとしてよく使われるバイラルビデオは、動画という意味 ではテレビCMと似ているものの、口コミを起こすための ネタでなければならないという意味では、CMのように企 業から消費者へ向けた単なる一方通行の広告とは、目指す ゴールが全く違う、別物であることを説明しました。

また、短期間で爆発的な口コミを起こすには、いくら強 いバイラルネタ(サイト・ビデオ・画像など)があったと しても、やはり広告などを活用して、最初は大量の人の目 に露出させなければならず、それに必要な広告費とバイラ ルネタの制作費にいくらかかり、どういうタイムフレーム で誰にリーチさせ、どのような口コミを発生させられるか までをプランニングしなければ、バイラル・マーケティン グは成立しません。

ウェブをビジネスに生かすために不可欠な露出・集客と いう必須要件を無視し、素人が喜びそうな凝ったウェブデ ザインをただ見せて、顧客の満足を一時的にだけ得る、 “なんちゃってウェブ業者”が数多く存在するのと同様に、 “なんちゃって広告代理店”による“バイラル・マーケテ ィング”も予算や時間を浪費するだけなので、注意が必要 です。

実際、我が社へ助けを求めてくる中にも、そういった被 害にあったケースが多々あります。本コラムで何度も取り 上げたSEOやPPCなど、検索エンジンで上位表示をさせて 集客を図る検索エンジン・マーケティングが、実はいかに 難易度が高く、ほとんどの業者がこの手のサービスを意味 のあるレベルで実践する能力を持っていないにも関わら ず、提供できると臆面もなく謳っていることについて警告 してきました。

バイラルは、それ以上に難易度が高く、秀でた創造力と オリジナリティーが要求されます。SEOの場合、ウェブや 本から誰でも表面上の知識は得られるので、その初歩的な 知識を素人相手にもっともらしく語るだけでも、ある程度 相手を簡単に騙せてしまいますし、実際ほとんどの“なん ちゃって業者”はそうやって営業をしています。

バイラルの場合、小手先の技術の盗用では誤魔化し切れ ないという点でも、“なんちゃって業者”との線引きが分 かりやすいので、私は特に気に入っています。もっとも、 前に紹介したように、単なるCMにしかならないような内 容をバイラルビデオと称して制作しようとする業者を見抜 けないようでは、結局、騙されて終わるだけですが…。

バイラルには2タイプある

バイラルネタには大きく分けて2つのタイプがありま す。企業側が、そのバイラルがまるで自然発生したかのよ うに装うタイプのものと、広告の一環であることを全く隠 そうとしないタイプのものです。

前者はいわゆるハイリスク・ハイリターンで、広告であ ることを消費者に悟られないようにするので、消費者が持 つ心の中のバリア(人から売りつけられることへの抵抗感) を簡単に突き破っていける可能性が高く、口コミを爆発的 に発生させやすくなります。

このタイプは大手がよく試みる手法なのですが、意図的 なマーケティングだったとバレた時に、「騙された」と消 費者から反感を強く買ってしまうので、後で大きな痛手を 被る可能性があります。下手に成功してしまったバイラル ほど、制作に関わった内部の人間によるリークが起きます が、これを完全に防ぐのは難しいでしょう。

一方、後者は「面白・インパクト広告」として展開する ので、最初から消費者に広告として認識されるため、その 分無視される可能性も高いのですが、いったん消費者の心 のバリアを突き破ってしまえば、大きな口コミを発生させ られます。その場合、最初から広告だと分かっているので、 後から消費者の反感を買うことを恐れる必要はありませ ん。バリアを突き破っていけるだけの強いネタが作れる か? という課題はあるものの、ミドルリスク・ハイリタ ーンだと思います。

ただ、バイラルの成功例として人々が簡単に知りえるケ ースは、当然、後者のみになります。前者のケースでは、 最後まで売り手側の作為的マーケティングであったことが 絶対にバレてはいけない(バレた時点で失敗していること になる)ので、表には出てこないマーケティング手法とい えます。

2013年2月20日水曜日

勝ち組の今流マーケティング口コミ編①



(U.S. FrontLine誌 2011年2月5日号 掲載分)
前回、アメリカ進出を試みていたある日本のメーカーが、 “なんちゃって広告代理店”に大金を支払うも、成果がなく 途方にくれていたのを、我が社が救ったケースについてお 話ししました。救済の要因は大きく分けて2つで、1つは間 違った思い込みで設定されたターゲットと基本戦略の修正、 もう1つは、バイラル(口コミ)マーケティングを大成功 させたことです。

実はその悪徳業者もバイラルビデオの提案はしていたよう です。ただその業者が行ってきた、“なんちゃってSEO”や “1ヶ月で14人のファンしか獲得できないSNSマーケティン グ”を見ただけでも、広告代理店としての実践能力は極め て疑わしかったわけですが、バイラルに至っては、口コミ が何故起こるのか?という基本中の基本すら理解していな いことは提案内容から明白でした。

完璧なテレビCMでも無意味

大そうな予算を掛けてビデオを作る計画だったようです が、その内容は特に面白くもなければ、人がそれを見て誰 かに伝達したくなる要素も全く見当たりません。百歩譲っ てみても、せいぜいテレビCM的な内容にしかなり得ないも のでした。

そもそもバイラルマーケティングとは、バイラルネタ(サ イト・ビデオ・画像など)を見た人が、自分のまわりに 「これ(面白い・すごいから)見て」と勝手に伝達してくれ ることで、口コミを発生させるものです。皆さんのここ1ヶ 月の生活を思い出してみて欲しいのですが、思わず自分が 見たテレビCMを誰か他の人にも見るように勧めた経験がど れくらいあったでしょうか?

CMとは、あくまでも広告主が消費者に向けて放つ宣伝で しかありません。ですから期待できるのは、良いシナリオ でも、見た人がその宣伝内容に興味やポジティブな感情を 持ってもらえる程度の効果です。つまりテレビCMとバイラ ルビデオとでは、本来期待すべき成果も全く違う、別次元 のものなのですが、“なんちゃって広告代理店”ほど、この 違いを理解できていないように思います。

またこの業者は商品の特徴・用途を完全に無視して、人が その商品を欲しがる理由さえも損なうようなアイデアを提 出していましたが、このメーカーは業者のトークに乗せら れたのか、或いはよく内容を理解せずに契約してしまった ようです。

勿論「面白くない」というのは主観的な話なので、その内 容で本当に失敗するかどうかを私が決め付けるべきではな いのですが、それ以前に、まだこの業者がバイラルマーケ ティングを全く理解していないとはっきり分かることがあ りました。

バイラルでよくある誤解

それは仮にどんなに面白いバイラルネタでも、その存在を 積極的に人の目に触れさせなければ、爆発的かつ短期で広 まることはないという事実に対する不理解です。勿論口コ ミを起こすためのものなので、理論上は1人から始まっても ねずみ算式に広まっていくことを期待するわけですが、数 年掛けて広めてよいのならともかく、短期間で口コミを爆 発的に起こさせるには、最初の段階からある程度の人数の 目に露出させる必要があるのです。通常はバイラルネタの 制作と、露出させる手段を併せて行ってバイラルマーケテ ィングが成立します。

アメリカ進出1年である程度の結果を求めていたメーカー としては、現実問題として、数ヶ月でバイラルを成功させ る必要がありました。しかしこの業者は、制作に対する提 案には熱心だったものの、制作したものを露出させる戦略 も予算も全く考えていませんでした。素人が喜びそうな凝 ったウェブデザインをただ見せて、顧客の満足を一時的に 得る、“なんちゃってウェブ業者”の手口と何ら変わりませ ん。

勿論、それ以前にターゲットの選定からズレていたので、 そのまま進んでも焼け石に水状態でした。

後で現地の担当者から聞いた話では、最初はこの“なんち ゃって広告代理店”ですら、ターゲットの選定に関する間 違いを指摘しようとしていたそうです。アメリカを理解し ていないメーカーの社長が、聞く耳をもたないので業者も 途中から投げたのかもしれません。その後は業者も完全に Yesマンと化したそうで、言われたとおりの間違った戦略で、 間違った動きをとり、無価値なモノを作り、相応の散々な 結果になっていました。

2013年2月4日月曜日

成功例から学ぶ失敗の方程式



(U.S. FrontLine誌 2011年1月20日号 掲載分)
この連載では、“なんちゃって”IT業者や広告代理店があ まりにも多く存在することに対して、被害に遭った会社の 事例のほか、相手の嘘を見破るための予備知識を、何度と なく紹介してきました。我が社へ問い合わせてくる企業に は、過去の何らかのプロジェクトでこうした業者に依頼を して大失敗し、本来あるはずの予算を失ったうえで助けを 求めてくるところも多くあります。相手に同情し、厳しい 現状から救ってあげたいと思う一方で、「最初からしっかり 判断していれば、こんな失敗はせず、まともなスタートが 切れただろう」というフラストレーションを感じることも 多々ありました。

最近、悪徳業者に遭遇しただけでなく、依頼した側にも大 きな問題があったケースを経験したので、紹介します。

勘や思い込みでは成功しない

悪徳業者に仕事を依頼してしまったのは、日本で売れてい る商品をアメリカで販売展開しようとしていたあるメーカ ー。商品は確かにアメリカで売れる可能性の高いものでし たが、最初に想定していたターゲット市場と戦略を大きく 間違えていました。

せたレポートの「直販ショップをオープンして○カ月後か ら××くらいの売り上げが上がる」といった主旨の内容を 事業プランの核にしていましたが、このレポートの「なぜ その金額の売り上げが獲得できるのか?」という根拠はお 粗末なものでした。例えば、ショップであれば、何人の集 客をどのように行うという話が前提になければ、いくらの 売り上げを獲得できるという根拠にはなり得ず、市場規模 がいくらであっても、単に「いくらの売り上げが欲しい」 という希望を述べているに過ぎません。

実際にアメリカでの販売開始後、売り上げがほとんどなく、 不安になったそのメーカーが、我が社へ駆け込んできたの です。なぜ最初にその業者を選んだのかと尋ねると、「ウェ ブ検索して上位に出てきた」とのこと。しかし、その時点 で検索しても、その業者のウェブサイトは出てきませんで した。その業者のサイトを教えてもらってソースを確認す ると、検索エンジンスパムという、禁止されている手法を 使い、何とか強引に検索表示順位を上げようと試みていた ことがすぐに分かりました。

ただし、それも初歩的なスパム手法だったため、その程度 の技術では今の検索エンジンでは上位表示できないので、 お金を払えば誰でも検索エンジンに広告を上位表示できる PPCを使っていただけだと思います。いずれにせよ、自然 な検索結果で上位表示させるSEOの技術など全くないこと は明らかだったのですが、そのメーカーはSEOのサービス 費用をその業者に支払っていました。当然ですが、そうし た業者が開設したショップでは、ビジターがほとんど来な いので、売り上げも皆無です。

また、このメーカーはSNSマーケティングの費用も支払 っていたのですが、facebookにページ開設後、1カ月で獲 得できたファンはたった14人。その業者が行った内容を確 認してみると、全くでたらめなことをやっていたのは一目 瞭然でした。

そのメーカーを救えた要因は2つ

ちなみに、我が社がそのメーカーのマーケティング全般を 請け負ってから最初の1カ月で、facebookで3000人弱のフ ァンを獲得したほか、売り上げも理想的に上がり、ブラン ディングも意図通りの大成功を収め、その商品を取り扱い たいという代理店希望も多数獲得できました。結果的にそ のメーカーを救ったわけですが、その要因は大きく分けて2 つありました。

アメリカの実情を理解しようともせず、「日本ではこう売 れた」的な思い込みだけで突っ走ろうとするメーカーをよ く見るのですが、この会社も正にその類でした。ターゲッ トの選定と売り方の基本戦略から間違っていたので、その ような選択の根拠を問い詰めると、最終的には「成功した 会社も結局は理論ではなく勘でやっている」と主張する始 末(汗)。年商数億円規模のビジネスなら、確かにオーナー 社長のセンスだけで持っている会社も多々あると思います。 しかし、まずそのセンスさえ疑わしい上、「業界×位を目指 す」と豪語していた相手だけに、いっそお断りしようかと も思ったのですが、悪徳業者に騙されて気の毒という一定 の同情があったので、とりあえず間違っていることを説得 し、適切なターゲット選定と戦略に軌道修正したのです。

そしてもう1つは、バイラル(口コミ)マーケティングを 大成功させました。これについては、次回に続きます。

2013年1月21日月曜日

勝ち組の今流ウェブマーケティングSNS編④



(U.S. FrontLine誌 2011年1月5日号 掲載分)
前回、Facebook.comにおいてファン(Like)を獲得する には、ある程度のファン数を確保してからの方が、口コミ がより広く発生する可能性が高いため、その先のファン獲 得が短時間で可能になること、そしてページ(コミュニテ ィ)の個性、面白さに惹かれて、ユーザーがファンとして 参加することで盛り上がるのがSNS(ソーシャル・ネット ワーキング・サービス)であるのに対し、大手のように汎 用性や合理化を追求し、無機質になりがちな企業の場合、 ユーザーに受けるための要素が相反しているため、ファン 数も伸び難いケースがあることをお伝えしました。

今や利用者数がGoogleをも上回るようになったほど、大 量のユーザー数を誇るFacebookですが、大手企業も含め、 ファンがほとんどいないページも多々あります。

ファンを獲得できる要素は何か?

Facebookでは、営利目的の公式ページとして、ビジネス やブランド、組織、アーティストなどのタイプが存在しま すが、ファンを少なくとも数千人以上獲得するには、例外 なくユーザーの興味を惹き付ける「何か」が必要です。そ の「何か」は何でも良いのですが、例えば、単に優れた商 品であるという理由だけで、ブランドのページが大量のフ ァンを獲得できるわけではありません。ただし、これが知 名度の高いブランドであれば、話は全然違ってきます。

また、俳優やミュージシャン、あるいはTV番組などのペ ージの場合は、人気があれば大量のファンが付くでしょう。 ほかにも、愛用していることを自慢したくなるようなブラ ンドや、ユーザー同士で共通の趣味・趣向を持つことに喜 びを感じられるようなものも、ファン獲得に向いています。

大量のファン獲得に成功しているページの例としては、 2000万人以上のファンがいるコカコーラを始めとして、ス ターバックス、オレオ(クッキー)、レッドブル(エナジー ドリンク)、ビクトリアシークレット(下着)、マクドナルド などがあります。要するに、知名度があり、それが個性や ステータスの象徴になりえるもの、ライフスタイルの一部 になっているもの、あるいはユーザーがその相手と関わ り・つながりを持ちたがっているものが受けているのです。

ファンになってくれても取り消されたらお終い フェイスブックでは、ユーザーが気に入ったページをLike 登録すると、そのページで発信された情報やコメントがユ ーザーのページに表示されますが、ユーザーがLike登録をす る時、通常は深い意味はなく、「あっ、これ好きかも」とい う程度の軽い気持ちから始まっています。そのため、Likeし たページから発信される情報が多くなり過ぎて、自分のペ ージに表示される内容を整理したくなることも多々あり、 そのページへの興味を失った、あるいは発信されてくる情 報が煩わしくなったといった理由で、一度はLikeにしたにも 関わらず非表示にしたり、Unlikeする(Likeを取り消す)こ ともあります。

そうなった場合、マーケティングという観点から見れば、 完全に失敗したと言えるでしょう。ちなみに1万人以上の ファンがいる我が社が運営するショップでは、LikeをUnlike にしたユーザーはまだ全体の約2.4%程度なので健闘してい る方だと思います。この数を抑えつつ、どのようにファン 数を伸ばしていけるかが、本当の鍵となってきます。

ユーザーにとっての存在価値の成立

SNSマーケティングでは、ユーザーの関心の先が何であ れ、「好き」という感情をかき立てつつ、ファンがページに 参加し続ける意味も常に創出し続けなければならないこと が、お分かりいただけたと思います。

扱う商材・サービスによって、SNSの向き不向きははっ きりしてくるのですが、通常は知名度が低いほど、素材の 良さだけでは不十分で、創造力を発揮し、「存在価値を成立 させられる何か」を考える必要があります。逆に言えば、 アイデア次第ではSNSに不向きな商材でもうまく扱えます。 次回は、その手法の一つであるバイラル(口コミ)マーケ ティングについてお話しします。

2013年1月4日金曜日

勝ち組の今流ウェブマーケティングSNS編③



(U.S. FrontLine誌 2010年12月20日号 掲載分)
前回、ユーザー数がGoogleをも上回るようになった Facebook.comでSNSマーケティングを行うには、ページ を持つだけでは意味がなく、より多くの人目に触れるため に、Like(ファン)をいかに募っていけるかが非常に重要だ ということをお話ししました。

また、SNSマーケティングは、我が社の経験上、最低で も数千人以上のファンがいないと、その効果を実感するの は難しく、やはりプロのノウハウとアイデアを駆使してよ うやく実践レベルになるマーケティング手法の一つでもあ ると言えることも、前回お伝えした通りです。

我が社にウェブ制作やウェブマーケティングについて問い 合わせてくる米系企業ですら、ほとんどはFacebookをうま く活用できておらず、SNSマーケティングがどういうこと なのかを理解しているかどうかも疑問です。逆に言えば、 簡単そうに見えて実は結構奥が深いという点では、ウェブ マーケティングで使われるSEOやPPCといった手法とも共 通していると思います。

我が社のショップはファンが1万人以上

開設してちょうど1年になる、我が社が運営するレッグウ ェア専門のオンラインショップがあります。本業の方がか なり忙しく、あまり手が掛けられなかったため、ビジネス 的にきちんと取り組んだのはここ2カ月くらいですが、それ でもFacebookのファンは1万人以上います。

我が社のクライアントのケースでも言えることですが、同 じ1000人単位のファンを増やすのでも、ファンの総数が数 百人の頃よりも数千人になってからの方が、明らかに簡単 です。つまり、ある程度のファンの数を確保してからの方 が、そこから先のファン獲得は短時間で可能になります。 これは、Facebookでの口コミ効果が、母数が多いほどより 広い範囲で発生するからだと思います。

また、全く客のいないレストランと、行列のできているレ ストランとでは、全く印象が異なるように、ある程度人気 (ファン数)がある方が、消費者の側に安心感が生まれやす く、好感を持たれる傾向にあるからかもしれません。 我が社のショップでは、ファンが5000人を超えた頃から、 1日の注文数が大きく増えた気がします。広告費をほとんど 削っても、注文数がこれまで以上に獲得できるようになっ たことはとてもありがたく、「Facebook様様」といったと ころです。

ちなみに、同業界のおそらくトップを走る、10年以上の 歴史を持つよく知られたショップがあるのですが、1年前、 彼らのファン数は6000~7000人くらいでした。我が社が ショップを始めるころ、「この王様ショップといつか競い合 ってやる!」と息巻いていたのですが(笑)、うちが1万人 のファンを達成した頃に、敵は1万3000人(敵もさすがに やりますが)。王様の背中が、ようやく見えてきました。

大手は不得意。だから中小にもチャンス!

ウェブマーケティングの王道であるPPCやSEOに、大手 企業がかなり積極的に参入しており、資本主義的な様相を 呈してきていることは、以前お話ししました。そんな中、 新しい宣伝媒体として注目を集めるようになったFacebook では、その潜在性の高さから、多くの大手企業がページを 持っていますが、ファンの数は意外に少なかったりします。

それはなぜか? ずばりFacebookがコミュニティを楽し むためのSNSであることに所以すると思います。人がどこ かのコミュニティに参加するのは、そのコミュニティの個 性や特徴、面白さに共感し、支持したいという感情を持つ からです。自由な発想や社風を持っている中小企業ならば、 こうした感情をかき立てるのは得意分野といえるでしょう が、汎用性や合理化を追求し、無機質になってしまった大 手企業には、コミュニティとして受けるための要素が相反 しているのです。

SNSの本質を理解しない大手企業が、下手にファンを募 ろうとしても失敗するのはそういう理由だと思います。つ まりFacebook内では、少なくとも資本主義(お金)だけで は支配できない要素があり、創意工夫で面白い戦い方がで きるところが、私はとても気に入っています。次回も、続 きをお送りします。