これは節約できる予算か? Web制作編

かなり昔の話ですが、教育関係のビジネスに携わるスター トアップ企業で、代表取締役をしている知人がいました。 資本金は1億円ほどだったと思います。当然、ウェブサイト が必要になるわけですが、この知人は「今の時代、ホームペ ージなんて誰でも簡単に作れるはずだ」と考え、経費削減 のため社員に作らせようと何度もけしかけていたそうです。

社員たちは本気で取り合いませんでした。ですので知人は、 自らパワーポイントを使ってラフのホームページを作成し、 「ほら見ろ! 素人がたった2日でここまで出来たぞ」と言 って周囲に見せたのですが、反応が今ひとつで不満だった ようです。「素人っぽい出来ですが、たった2日でここまで 出来たんですよ。見てください」と私にメールを送ってこ られました。ホームページなんて簡単なのに、うちの社員 は分かっていないと考え、同意を求めてこられたのです。

この方は、私がまだ日本にいた頃に全く別のプロジェクト で偶然知り合った人物なのですが、実は高校の先輩にあた ることが分かり、それ以来、交流を持っていました。優秀 な営業マンで、頭も切れ、論理的な思考にも長けている方 だっただけに、私はとても驚き、何と答えてよいのか悩み ました。その時どうコメントしたのか詳細は覚えていませ んが、多分私はこの頃、こうした致命的な考え違いをして いる方に、なぜそれが間違いであるか納得してもらうため の定型フレーズを確立していったように思います。

TVのCMとウェブサイト

そのフレーズとは、簡単に言うとこんな感じです。 「もしあなたの会社で、テレビにCMを出すと決まったら、 どうしますか? 自分たちでビデオカメラを回して撮影し ますか? それとも制作会社に依頼しますか?」

100人中100人が「制作会社に依頼する」と答えると思 います。

「テレビCMは、多くの視聴者に自社の広告を見せようと する行為ですよね。では、ウェブサイトを持ち、例えば検 索エンジンの検索結果の上位に表示させるなどして、多く のユーザーに見てもらえるようにする行為は、テレビCMと どこが違うと思いますか?」「そう、やろうとしていること は何ら変わらないわけです。でもなぜテレビCMにはプロが 必要で、ウェブサイトは素人でもOKだと思ったのですか?」

どちらも「会社の顔」となる広告であり、企業イメージに つながります。ましてや現在、検索エンジンのユーザー数 は、人気TV番組の視聴者数をも凌ぎかねません。そしてテ レビと違い、検索によって絞り込まれたターゲット層とマ ッチングできるメリットは大きく、近年、大手企業の広告 予算はTVからウェブへシフトしているのです(そのおかげ で、広告媒体という観点から見れば、ウェブもすっかりTV 化してしまいました……。この話は、いつかするつもりで す)。 それらしいものは誰でも作れるが

確かに、ホームページ作成ソフトやブログに代表されるCMS (コンテンツを管理画面から登録・編集できる仕組み)の普及 で、誰でもそれらしいものは、手軽に作れるようになりま した。個人の趣味サイトならば、これで問題ないと思います。

ただ、企業サイトとして通用するかといえば、答えは「No」 です。少なくとも、デザインやHTMLコードが素人レベルの 出来であっては絶対にいけません。適切でない画像1つ、 コードミス1つであっても、致命的な失敗を引き起こし得 るからです。素人が管理している場合、失敗に気づいてい ないことも多々あります。

最初に挙げた例について言えば、さすがにこの代表取締役 がおかしいと思われるでしょう。しかし、たとえごく少人数 のビジネスであっても、違いはないのです。資本金の多寡 に関わらず、ビジネスが切実なのはどこも同じはずですから。

最近は本当に、自称デザイナー、自称デベロッパーが溢れ ています。特にローカルのウェブ制作などでは、依頼主の 親戚、友人、友人の友人あたりの「自称プロ」が、どこか らともなく湧いてきます。そして、「安くやってくれるらし いから」との理由で依頼し、1、2度失敗してから、我が 社に来られるケースが少なくありません。何度も書いてき たことですが、業者ですら“なんちゃってプロ”がほとん どの業界です。安いのは、単にプロでないからという可能 性をまず疑いましょう。我々がやっているのは、そんなに 簡単なことではないのです。

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