2011年12月12日月曜日

知らないってのは恐ろしい ホスティングの話④

前回は、ホスティング(ウェブサーバーのレンタルサービス)に要求される技術的な最低条件に触れるとともに、専用サーバーにはDedicated(ホスティング業者からサーバー環境を含め一式丸ごとレンタルする)タイプとCollocation(スペースと回線のみレンタルして自前でサーバー環境を用意する)タイプがあることを説明しました。そして実際に誰がどのようにホスティングサービスを提供しているのかについても触れました。

IT業者を経由させて利用する意味はどこに?

表の①以外は、IT業者がホスティング業者から何らかのサービス環境を間借りして、自分のクライアントにホスティングサービスを提供している形態です。ホスティング業者から直接レンタルする①より確実にコストは高くなるのに、②以降のIT業者系由のサービスを選ぶ意味がどこにあるのか考えてみましょう。

まずは、ホスティング業者が提供するサービスプランに、ちょうど良いものがない場合です。値段とスペックが自分の必要としている条件に合わない場合、IT業者がサービスプランをフレキシブルに用意できる②及び③のサービスは有効です。

実際、我が社は③の形態でホスティングサービスを提供していますが、それは必然性があったからでした。前々回、ホスティングの値段が決まる要素に、毎月の許容データ転送量と、利用可能なデータベースの容量があるとお話ししました。我が社が構築するウェブサイトは、SEOなどウェブマーケティングを万全に行うため、必然的にトラフィックの多いサイトになります。それ自体は良いことなのですが、その分データ転送量が増し、通常のホスティング業者の共用サーバーのプランでは、コスト的に合わなくなることがあるのです。

また、ウェブシステムでどうしても大量のデータを扱う必要がある場合に、データベース容量がかさみ、同じくコスト的に合わなくなることがあります。そうした際にホスティング業者の専用サーバーを検討するのですが、一つのサイトだけで専用サーバーを使うと、やはりコスト的に合わなくなりがちです。そうした場合、仕方なく我が社で専用サーバーをレンタルし、それをクライアント数をかなり限定して共用するという手法を取っています。

共用サーバーのリスクが全くないサービスとは

正直なところ我が社の場合、ホスティングサービスは必要だからやっているだけであって、コストをそのサーバーを共用しているクライアントとシェアしているに過ぎず、利益を出しているわけでもありません。また我が社が利用しているホスティング業者は、超有名サイトオーナーたちが憧れに思う優良企業で、どんな大量トラフィックでもダウンしない回線を有していることで有名です(その分、値段もかなり高いのですが……)。また、そこにレンタルを希望するサイトは、ビジネスの内容などを厳しく審査されます。言い換えると、クリーンな会社しかそのホスティングを利用できないため、安心です。

以前共用サーバーを利用する場合のリスクについてお話ししましたが、このやり方であればそのリスクは全くない上、極上の環境が手に届く価格で得られることになります。さらに我が社の場合、ウェブ&メールサーバーとデータベースサーバーを分けて用意するという徹底ぶりなのですが、これもやはり利益を出さなくて良いというスタンスだから実現できているだけで、こうしたサービスは一般的に存在するものでも、利用できるものでもありません。

次回は、より一般的なホスティングサービスを選ぶ上で、ヒントになることをお教えします。

2011年10月18日火曜日

知らないってのは恐ろしい ホスティングの話③

前回、ホスティング(ウェブサーバーのレンタルサービス)を選ぶ際に、許容データ転送量には特に気をつけるべきだとお話ししました。「データ転送量無制限」を売り文句にしている業者ほど、かえって十分な回線が用意されておらず、サイトが頻繁にダウンしたり、アクセスが遅くなるなど、粗悪なホスティング環境であることが多いのです。今回も引き続き、ホスティング選びのポイントをお話しします。

奥が深いホスティング

ホスティングは、本来ならとてもシビアで高い技術力を要するサービスです。なぜなら、ウェブサーバーもメールサーバーも、24時間365日安定稼動が、極めて当たり前に要求されるからです。アクセスが大量に集中したからといって、サーバーも回線も簡単にダウンさせるわけにはいきません。実際、信頼のおけるホスティング業者であれば、回線やサーバー状況に関して24時間の監視体制を必ず取っていますし、バックアップ回線などを完備しています。

また、アクセスが集中した際には、負荷を分散するためのロードバランシングといった高度な技術も必要になります。停電への対策としては、無停電装置やバックアップ電源なども必要です。セキュリティについては、ファイヤウォールはもちろん、OS(基本ソフト)やアプリケーションソフトのセキュリティパッチの適用なども常に万全である必要があります。こうした環境を当然のように完備していることが「最低条件」とされる業界であることを、まず覚えておいてください。

次に、ホスティングサービスがどのように提供されるかについてお話ししますが、その前に、専用サーバーについて簡単に説明します。専用サーバーにはDedicated(ホスティング業者からサーバー環境を含め一式丸ごとレンタルする)とCollocation(スペースと回線のみレンタルして自前でサーバー環境を用意する)の2つのタイプがあります。

前者は、スペース代+回線使用料+サーバーなど機器のレンタル料が必要なので、かなり料金は高くなります。後者はスペース代+回線使用料のみなので、その分安いのですが、自分で用意するサーバーなど機器のスペック次第では逆に高くつくでしょう。もちろん安くもできるのですが、そうすると「安かろう悪かろう」の環境になり、わざわざ専用サーバーを用意する意味を失いかねません。

本当は誰がホスティングしているのか?

ホスティングサービスの形態を分類すると、表のように5つに分かれるでしょう。少しややこしいので補足しますが、私が「ホスティング業者」と「IT業者」を別物と考えていることに注意してください。前者はホスティングを専業にした企業で、後者はホスティングを付加サービスとして提供する企業です。そしてもうお気づきかと思いますが、ホスティングサービスにおいてIT業者は、ホスティング業者からサービス環境を間借りして、クライアントにサービスを提供しているに過ぎません。

表の①以外は、ホスティング業者からの何らかの協力を得たIT業者によるホスティングサービスとなります。
稀にIT業者自身が①の形態でやっていることがありますが、その場合、前述した「最低条件」をクリアしているとは到底思えないので、商用サイトのホスティング先としては、一番避けるべきだと思います。

また、①のホスティング業者のみによるサービス形態があるのに、なぜ②以降のようにIT業者を通じてホスティングサービスを受ける必要があるのかと疑問に思われるかもしれません。IT業者が間に入れば、当然その分マージンが乗せられるので、ホスティング業者から直接サービスを受けるよりも料金は高くなります。それでもあえて①以外を選択する理由はなんだと思いますか? その答えは次回で。

2011年9月5日月曜日

知らないってのは恐ろしい ホスティングの話②

前回は、ホスティング(ウェブサーバーのレンタルサービス)を選ぶ際の注意点について触れました。OS(基本ソフト)はWindows系またはLinux/Unix系のどちらかを適切に選ぶ必要がありますが、どちらかが決定的に優れているわけではなく、一長一短です。

ホスティング形態は、大きく分けてShared(共用)かDedicated/Colocation(専用)の2択になります。共用サーバーの場合、通常は何百から何万ものサイトが共同でホスティングされており、そのため料金は格安になります。しかし、共同でホスティングされているサイトの中に、Eメールや検索エンジンのスパム(違反行為)を行う輩がいて何らかの罰を受けると、無関係なあなたのサイトまで検索エンジンに全く表示されなくなったり、Eメールが相手に届かなくなったりするなど、悪質な第三者の巻き添えになるリスクを伴います。

それ以外にも、共同でホスティングされているサイトで使われているプログラムに致命的な不具合があると、サーバー機能自体が簡単にダウンしたり、全体のパフォーマンスに悪影響が及ぶことがあります。もちろん、共用サーバーを提供するホスティング業者にもいろいろなレベルがあるので、しっかりとした所を選べば、こうした初歩的なトラブルにそうそう見舞われることはないはずですが、信頼できるホスティング業者というのは全米で見てもかなり限られているように思います。

では専用サーバーにすれば問題が解決するかといえば、そう簡単でもありません。まず、ホスティング料が1桁は違ってきますので、費用対効果という面で、誰もが専用サーバーを使うべきとは言えません。また専用サーバーでは、借主側の責任範囲も大きくなるので、通常は、ウェブサーバー運営のためのIT知識も必要となります。専用サーバーの詳細については次回以降で触れますが、とりあえずそれ以前の問題として、ホスティング選びを失敗しないための重要なポイントを先にお話ししておきます。

「データ転送量無制限」のからくり

ホスティングの値段が決まる基本要素としては、サーバーやファイヤウォールなどハード機器のスペック、ウェブページや画像ファイルなどに使用できる容量、利用可能なデータベースの種類と容量、メールアカウント数と容量、毎月の許容データ転送量などがあります。

その中で特に気をつけたいのが、最後に挙げた許容データ転送量です。ユーザーがサイトへアクセスすると、ホスティング業者の回線を通じて、ウェブページや画像ファイルなどが必ずユーザーのPCへダウンロードされます。そのおかげでユーザ
ーは、そのサイトを閲覧できるのです。つまりユーザーがアクセスする度に、回線を使って何らかのファイルがPCへ転送されており、その転送量が、本来ならばホスティング料金に大きく影響してくるのです。なぜなら、ホスティング業者自体もインターネット通信事業者(ISP)へ回線使用料を支払っているからです。

回線が太ければ太いほど、それだけ大量のデータ転送に耐えられることになります。そして、優良なホスティング業者なら、たとえ一時的にアクセスが集中したとしても、回線がダウンしないだけの環境を維持できるよう計算しています。また、ホスティングしている各サイトに対して毎月の許容データ転送量を規定し、それを超過した場合は、別チャージをするのが通常です。そのようにして、回線がダウンしないよう配慮しているのです。

日本のホスティング業者などではよく、「データ転送量無制限」を、あたかも売り文句にしている所を見かけます。こういう業者には注意しましょう。おそらくは、ホスティングしている全てのサイトに十分な転送量を割り当てるだけの回線が元々用意できておらず、事実上は「データ転送量無制限(かもしれないが運が悪ければ回線はダウンします)」ということだと思うからです。少なくとも、毎月無制限で使い続けられるわけではありません。実際、こうしたホスティング業者は貧弱な回線しか用意していないことがあり、サイトがよくダウンしたり、アクセスが遅くなったりする理由の一つとなっています。

2011年7月22日金曜日

知らないってのは恐ろしい ホスティングの話①

前回、ドメインの簡単な注意点について触れました。今回はドメイン取得後、ウェブサイト公開に向けて、ホスティング(ウェブサーバーをレンタルするサービス)を探す際の注意点をお話しします。

OS選択には理由あり

まずは、サーバーのOS(基本ソフト)を選ぶ必要があります。これは大きく分けて、Windows系かLinux/Unix系かの選択になります。両者の違いは、使い勝手ならWindows系、コストが多少安いのはLinux系となるでしょう。それ以上に重要なのが、OSの違いにより、動作させられるプログラムやデータベースが変わってくることです。ウェブサイトにショッピングカートやコンテンツ管理機能など、何らかのシステムを追加する場合、それらが正常に動作するOSを選ぶ必要があります。

大量トラフィック(例えば1日に10万アクセス以上)があるサイトなら、Linux系を選ぶ方が、将来、コスト的なメリットを期待できるかもしれません。そこまで大量のトラフィックでなければ、多少コストが高くついてもWindows系を選ぶと、社内で使っているデータベースとの連携などがスムーズにできるというメリットが期待できます。いずれにせよ、どちらかのOSが決定的に優れているわけではありません。「うどん派か、そば派か」くらいの違いだと考えてください。

次にホスティング形態について選択します。Shared(共有)かDedicated/Colocation(占有)のどちらかを選ぶことになります。今回は共有サーバーについてお話しします。

共有サーバーが怖いのは……

共有サーバーでは、1つのサーバー内に他のサイトも複数ホスティングされるせいで、サービス料金は格段に安くなります(ひと月15ドル程度から)。通常は、何百から何万ものサイトが共同でホスティングされているものと考えてください。そして、IPアドレス(インターネットに接続する各コンピュータに割り当てられた独自の認識番号)を各サイトが独自に持てる場合と、1つのIPアドレスを各サイトが共有する場合があります。後者の場合は特に気をつけましょう。なぜなら、2月20日号(No.458)の本稿などで触れてきた「IPのブラックリスト入り」という懸念が生じやすいからです。

IPがブラックリストに載ると、そのサーバーから送信されるメールが全世界的にスパムだと認識され、送信先へ正しく届けられない事態になります。以前ご紹介したのはスパムメールでの例でしたが、他に「検索エンジンスパム」という問題も存在します。

ビジネスオーナーたちは今、自社サイトを検索結果のできるだけ上位に表示させることで集客数を上げようと躍起になっています。そのため、検索結果の表示順位を決める検索エンジンの非公開ルールを研究し、検索エンジンに気に入られるようサイトを構築するSEOは、やっていて当然の時代になりました。

ただし、SEOを正しく理解していないにわか業者や、検索エンジン側が禁止している行為があるにも関わらず、強引に好順位を獲得しようとして規則破りをする輩(やから)が存在します。そのため彼らは検索エンジンから罰を与えられ、サイトのIPがブラックリストに載り、以後、検索結果に一切表示されないという事態に陥ることがあります。典型的なのがアダルトサイトです。罰を食らうたびにIPを変え、懲りずに違反行為を繰り返します。

ここで怖いのが、IPも共有するタイプのホスティングの場合です。もしも、共同でホスティングされているサイトの中に、違反行為を行うサイトがあった場合、あなたのサイトも巻き添えを食い、ブラックリストに載ってしまいます。かといって、固有のIPを持てば大丈夫かといえば、必ずしもそうではありません。通常、IPは同じサーバー内であれば連番で割り当てられるため、前後のIPがまとめてブラックリスト入りすることもあるからです。違反行為をするサイトが、ご近所さんのIPを持っていたおかげで、巻き添えを食ってしまうわけです。

次回も、ホスティング探しの注意点をお話しします。

2011年6月15日水曜日

知らないってのは恐ろしい ドメインの話

インターネットの世界で使われる「ドメイン」をご存知ですか?ネット上のコンピュータ同士はIPアドレス(各コンピュータに割り当てられた独自の認識番号)によってお互いを識別し、通信を行なっているのですが、数字の羅列であるIPアドレスは覚え難いため、代わりにもっと分かりやすい別名として使われているのがドメインです。

例えば我が社のウェブサイトにアクセスする場合、利用者は実際にはIPアドレスをたどって来ているのですが、我が社のIPアドレス「140.174.71.219」を知っている必要はありません。「artisancrew.com」というドメインをタイプするだけで、ドメインをIPアドレスに変換してくれるDNSと呼ばれる仕組みが働き、サイトにアクセスできるわけです。

ちなみに、ドメインの頭にはよく「www.」が付いていますよね。あれは「サブドメイン」といい、必ずしも必要なものではありません。ただ、「www=ウェブサーバー」と見なす慣習があるため、誰もが付けているだけなのです。ですから、「samurai.artisancrew.com」なんてURLもサーバー側の設定次第では可能になるわけですが、ビジネスでは奇をてらわない方が良いことも多く、我が社もご多分にもれず「www.」を付けています。

ドメイン維持費用は各社ばらばら

ドメインは、いわば住所のような情報で、「.」(ドット)を区切りにした階層構造になっています。一番右がトップレベルの情報で、例えば「.com」(Commercialの略)や「.gov」(Governmentの略)といった組織の種類を表したり、日本でよくある「.jp」など国を表したりします。左に行くほど下層の情報になります。ドメインは重複しないよう、各国にドメイン管理機関があり、そこが委託したドメイン管理業者が登録・管理しています。

過去に自分でドメインを取得された方ならご存知かと思いますが、ドメインの取得・維持のため、この管理業者に費用を払います。ところが、料金がまちまちなんです。通常、ドメインを1年維持する費用は35ドルくらいなのですが、7ドルなんて安い所もあります。この値段の差がなぜ生じるのかは、実は私にも分かりません。分かっているのは、良いドメインほど、人に狙われているということです。

例えば、明らかに有名企業のドメインになりそうなものを前もって取得しておき、その企業に高額で売りつけるというビジネスが存在します。また、既に存在し、トラフィックが大量なサイトのドメイン乗っ取りを企て、トラフィックを一時的にでも盗もうとする輩も存在します。

ドメインを侮ると痛い目に

まずドメイン名の決定から、ウェブマーケティングは始まります。素人考えで始めると、取り返しのつかない致命的なミスにつながりかねないので、ご注意を。

ただし、ドメインの取得手続き自体は通常とても簡単です。国が管理するドメインの中には、色々審査が必要なものもありますが、多くはオンラインで申請し料金を払えば取得できます。申請する際、自分の欲しいドメインが既に取得されていないか、ドメイン管理業者のサイトで検索することになりますが、検索した痕跡(ドメインの空き状況を知ろうとした痕跡)は、世界中に伝わる仕組みになっています。ですから、何度も同じドメインで検索していると、「誰かがこのドメインを取得したがっている」と察知され、一足早く取得して売りつけようとする輩が出てきかねないので、気をつけてください。

取得した暁には、管理用アカウントを作ることになると思いますが、その情報は無くさないようにしましょう。もし無くしてしまうと、更新や設定の変更ができなくなります(ちなみに、ドメインを取得したとしても、最低でもDNS設定をしないと活用できません)。

無くした場合、ドメイン管理業者に連絡し、本人認証を経て、再度アカウント情報を入手することになりますが、この本人認証が曲者です。いわゆる格安の、管理がずさんな業者の場合、正当なドメイン所有者ではなく、成りすましの第三者に情報を渡してしまい、ドメインが乗っ取られたという事件が過去にはあったそうです。商用目的でドメインを取得する場合は特に、例えばGo Daddyのような格安業者は避けるべきでしょう。

2011年5月18日水曜日

知っていても損しないスパムフィルタの話

前回、受け取ったスパムメール上にある配信中止依頼は不用意に行わない方が良いこと、そして、スパムメールを減らす方法として、地道にメールソフトに登録したり、ISP(インターネットサービスプロバイダ)へ報告したりすることに触れました。

実はスパムを減らす方法には他に、スパムメールが自社のメールサーバーに届く前にフィルタしてしまうというものがあります。要は、そうしたスパムフィルタサービスを提供する業者のサーバーを経由させ、ある程度スパムメールを除外したメール群のみが自社のメールサーバーへ届くようにするわけです。

ディッシュウォッシャーの不条理と同じ?

こうしたスパムフィルタサービスはいくつか存在しており、実は我が社も、自社で活用すると共に、代理店としてクライアントへ提供しています。スパムメールを判別する技術は各社でそれぞれ異なるようですが、もちろん、どこも完璧ではありません。つまり、スパムではない正式なメールが間違ってフィルタに引っかかることがあるのです。

たとえその頻度は低いとしても、重要な仕事のメールが間違ってスパム扱いされたら大変です。そのため、スパムフィルタに引っかかったメールの一覧を、結局一度は確認しなければならないという、何だか矛盾した作業が発生します。

これは例えるなら、アメリカに来て初めてディッシュウォッシャーを見て感動したのもつかの間、「一度手で洗わないと汚れはきれいに落ちないので、しっかり洗ってから食器を中に入れてね」と説明され、「何じゃそりゃ?!」と腑に落ちない思いをした時に似ていますね(笑)。

また前々回触れたように、日本のメールサーバーの設定は、セキュリティ的にまだ甘いところが多く残っており、もっと根本的なレベルでスパムと認定され、全世界で共有されているブラックリストにメールサーバーのIPアドレス(インターネットに接続する各コンピュータに割り当てられた独自の認識番号)が載り、そこから送信されるメールが一切届かなくなるというトラブルも結構起きています。これはスパムフィルタサービスに届く前に起きることなので、発覚するのも遅くなり、さらに厄介な話となります。

スパムフィルタの意義とは?

ではスパムフィルタサービスの存在意義とは何でしょう?1つ言えるのは、自社メールサーバーの負担軽減です。特に、大量のメールアカウントを抱えて自社でサーバーを運用している場合、こういったフィルタサービスを活用しなければ、毎日ものすごい量のスパムメールを受信することになり、サーバーパフォーマンスに無視できないほどの悪影響を与えかねないのです。実際、我が社を例に取れば、全メールの約65%をスパムとしてブロックしています。

2つ目のメリットは、フィルタと同時にウィルス駆除なども行ってくれることです。スパムフィルタサービスからメールを受け取る際にもウィルス駆除を行っているため、二重のセキュリティと言えます。

そして3つ目は、中間サーバーの存在です。自社のメールサーバーがダウンしてしまった経験はありませんか? 例えば我が社の場合、近辺に停電が頻繁にあるため、自社のメールサーバーがたまにダウンします。そういう時、この中間サーバーの存在がありがたいのです。仮に我が社のメールサーバーがダウンしても、中間サーバーが最初にメールを受けて保存しておいてくれるため、我が社は復旧後にただ受信すればよく、対外的には何ら問題がないのです。

もっとも、スパムフィルタサービスを行っているサーバー自体がダウンすれば意味はありませんが、一般のメールサーバーよりはずっと強固に構成されているため、なかなかダウンしないと思います。

そのように考えると、自社で運営するサーバー環境を抱える企業であれば、スパムフィルタサービスにメリットはあると思います。ただ、個人での活用となると、そんなにメリットはないかもしれませんね。我が社は一応代理店の立場ではあるのですが、このサービスのメリットを享受できるケースは限定されるため、強くお勧めはしていません。ただ大量のスパムメールに悩まされていたり、メールサーバーのパフォーマンスに問題がある場合は、導入を検討されてもよいでしょう。

2011年4月18日月曜日

知らないってのは恐ろしい④ –スパムメールの対応編-

前回、大量にメールを送信する際には、スパム(迷惑)メールと認識されて、ISP(インターネットサービスプロバイダ)のブラックリストに載せられないよう注意する必要があることをお話ししました。今回はスパムメールを受け取る側の話です。

そもそもスパムメールとは何でしょうか? 前回取り上げたE-FlyerやEmail Blastなどと呼ばれるダイレクトメール(DM)のようなチラシをEメールで送信したものや、雑誌のようなコンテンツを定期的にメール送信するメールマガジン(メルマガ)などがそれに当ります。ただし、それらのメールの受信を、予め承諾(オプトイン)していたのであれば、スパムメールとは呼びません。スパムメールとは、未承諾なのに勝手に送りつけて来るメールを指します。そして、その量がとにかく半端ではなくなってきています。

皆さんは毎日、どのくらいのスパムメールを受け取っていますか? 特にビジネス用途のメールアドレスの場合、取引先との重要なメールが大量のスパムメールの中に紛れてしまうため、受信したメールがスパムなのかどうかの仕分けが、煩わしいながらも欠かせない日常の作業になっていることでしょう。


スパムメールの弊害は年間3億円!


しばらく前の統計ですが、1000人規模の企業では、スパムメールにより年間3億円以上の売上損失が出ているという調査結果がありました。その調査によると、1日平均で従業員1人当たりおよそ3分間がスパムメールの処理に費やされており、年間250日勤務する場合は、年間で計約13時間となります。そして1人1時間当たり約2万5000円(平均年商÷平均従業員数÷年間労働時間)の売り上げがあると仮定すれば、年間13時間は、計3億円もの損失に相当するという計算です。

もちろん、社員の作業時間が必ず全て売り上げに直結するわけではありませんし、ビジネスの種類によっても随分と計算結果は違ってくるとは思いますが、1日平均3分の作業時間というのはうなずけます。もしかすると、もっと時間を費やしている場合もあるのではないでしょうか?

売り上げではなく、人件費というコストだけで考えた場合でも、仮に時給15ドルの従業員が、1日平均3分間のスパム処理作業をしていれば、年間で約13時間、195ドルの給与に相当します。これが10人の会社なら2000ドル、20人なら4000ドル近くになります。ぜひ皆さんも、ご自分のケースに当てはめて計算してみてください。意外にコストが掛かっているのではないでしょうか?


スパム拒否のはずが、やぶへびに


スパムメールの処理作業をできるだけ短縮するために、いくつかの方法が考えられます。まず1つは、スパムメールだと思ったら、地道に一つずつメールソフトに登録したり、ISPへ報告するという方法です。この場合、同じ送信元から再び送られてくれば、少なくともスパムメールとして自動的に仕分けできるため、通常のメールとは別に管理ができます。

ただ、ここで絶対に気をつけなければならないことがあります。よくメールの終わりに「もしも今後このメールを受け取りたくない場合は、こちらをクリック(または返信)して下さい」というような指示が書いてあります。本当にそういう主旨の場合もあるのですが、スパムを送った先のメールアドレスが生きている(有効である)か確認するための罠であることも多いので、注意してください。

過去に自らメール受信を承諾し、今後はもうそのメールが不要になった場合なら、上記のような指示に従って意思表示してよいのですが、未承諾なのにいきなりメールを送りつけてくる全く知らない送信元であれば、あなたのメールアドレスの有効性を確認するために利用している可能性があります。まんまとひっかかり、うかつに返信などしようものなら、スパムメールが届かなくなるどころか、次の日から倍増することでしょう。

世の中には、様々な手法でメールアドレスを収集しメーリングリストとして転売するビジネスを行う悪徳業者がたくさんいるので、充分に気をつけてください。

2011年3月20日日曜日

知らないってのは恐ろしい③ –ある日、メールが全く届かなくなる編-

Eメールマーケティングをご存知ですか? 要は、ダイレクトメール(DM)のようなチラシを、郵便ではなくEメールで送信するマーケティング手法のことです。米国では、よくE-FlyerやEmail Blastなどと呼ばれています。できるだけ安上がりのマーケティングをご希望であれば、既にこのEメールマーケティングを検討もしくは試行されているところもあるかもしれません。今の時代、Eメール環境はたいていの企業に備わっていますし、極めて低コストな手法だと思われているかもしれません。うまく活用すれば、それなりの成果が得られるのも事実です。

「Eメールマーケティングをしたいので、ウェブからの問い合わせメールを集めて、送信先リスト(メーリングリスト)を作りたい」という依頼を頂くことがあります。ウェブ側でそうしたデータベースを作る仕組みは簡単にできますし、仮に仕組みがなくても、実はOutlook(Microsoft社製メールソフト)自体に自動的に作成してくれる機能があります。つまり、多くの企業で使われているOutlookさえあれば、ノンコストでそうしたデータベースが作れるわけです。そして、このデータベースを元にメーリングリストを作成し、BCC(非表示での複製送信)欄に入れて送れば、一瞬でDMが送信できます。メールの開封率を上げるために、送信先の氏名などを件名に入れたいのであれば、簡易的なカスタムシステムを開発すれば済みます。そういうソフトも存在します。いずれにせよ、技術的には難しいことではありません。


スパムメールだと認識される恐怖


原則としては、こうした大量送信メールは、オプトイン(受信者が受信を承諾すること)された送信先でなければ、送ってはいけないはずです。しかし現実には、未承諾であっても勝手にメールを送りつけてくる、いわゆるスパム(迷惑)メールが氾濫しています。そしてこのスパムメールを撲滅しようと、ISP(インターネットサービスプロバイダ)やホスティング各社は、規制をどんどん強化しています。

その結果、規制に沿った設定になっていないメールサーバー(送信元)を介して送信された場合、その時点でスパムとして認識されることがあります。困ったことに、アメリカの基準が必ずしも日本と同じではないため、しばしば日本からのメールがスパム扱いされてしまいます(日本側のメールサーバーの設定の甘さが原因だったりもするのですが)。

また、メールを受け取ったユーザーが「このメールはスパムだ」とISPへ報告することもできます。その報告に基づいてメールがスパムだと認定された場合、その送信元がスパムの元凶だと見なされます。この仕組みを悪用しようとする輩(やから)が現れ、見込み客に成りすまして競合他社のメーリングリストに入りこみ、送信されてきたメールに対してスパム報告をしたら、どうなると思いますか?

スパムメールの元凶と見なされた送信元のIPアドレス(インターネットに接続する各コンピュータに割り当てられた独自の認識番号)はブラックリストに載り、その情報は全世界的に共有されます。いったんブラックリストに載ってしまうと、たとえそれが誤りであっても、かなり厄介です。その送信元から送られてくるメールは全てスパムと見なされ、ブロックされてしまうのです。もしもその送信元が、貴方の社内のサーバーだったとしたら、どうですか? かな〜り恐ろしいですよね? 通常の業務メールが相手に一切届かないという事態になるのですから。


「もしもの時」を考えないで、本当にプロですか?


ですから本来であれば、大量送信を行うメールサーバーは、通常のメール用とは別に用意します。送信代行の業者が存在するのもそのためです。通常のメール用のサーバーで大量送信をしていたら、もしもの時に、ビジネスに致命的な支障を来すからです。繰り返しますが、メールの大量送信は技術的には極めて簡単です。ただし、簡単だけれども、あえて実行しない方が良い理由もあるわけです。

Eメールマーケティングサービスを謳っている日系業者をたまに見かけると、送信元が、自社もしくは顧客のサーバーだったりします。つくづく、知らないってのは恐ろしい……と感じさせられます。もしもの時には、そのツケを顧客に回すのでしょうから、目も当てられません。

2011年2月13日日曜日

知らないってのは恐ろしい② –本物は一握りしかいない編

前回、ウェブマーケティングを本当に実践できるIT業者は、全米でも一握りしかいないことに触れました。そして日系業者の作る“英語サイト”の痛さにも言及しました。もしも新規にローカルの米市場開拓を目指すのなら、米系競合他社とやり合えるだけの英語力が必要最低条件になりますが、その時点で既にほとんどの日系IT業者は落第だと思います。日系コミュニティー内では充分な競争力を発揮しても、非日系マーケットに対しては無力に等しい業者は少なくありません。


本当にできるなら、なぜ自分でしない?


これは以前、我が社のレイアが連載「やさしく解説 ウェブマーケティング」で書いていたポイントですが、もし本当にマーケティングを実践できる業者であれば、自らのビジネスでまずその能力を活用しているはずです。例えばウェブ制作業者なら、自社のサイトを使って客を集めていてもよさそうなものです。ところが実際は、電話や飛び込み営業、雑誌広告といった昔ながらのマーケティング手法で集客している業者がほとんどです。それ自体が悪いわけではないのですが、自社の集客にサイトを活用できないウェブ制作業者が顧客のサイトを作っても、いったいどう貢献出来るのかという疑問が浮かびます。皆さんが業者の力量を測る上でヒントになるのではないでしょうか。

これは日系に限ったことではなく、米系の競合他社と我が社がコンペになるケースでもよく見られます。効果的なウェブマーケティングを顧客に提案しているのに、自社のサイトは誰も存在すら知らなかったりする業者がいるわけです。またよくあるケースとして、米系で特に多いのですが、「御社のウェブサイトを調べたところ、改善すべき点がたくさん見つかりました。検索ランキングをアップさせたければ、私どもにSEO(検索エンジン最適化)をお任せください」という主旨のEメールを送り、営業を仕掛けてくる業者がいます。

我が社がSEOを手掛け、既に検索結果のトップに表示されているサイトにもこうしたメールを送りつけてくることから、信憑性が薄いことはうかがい知れます。「どんな業者なんだろう?」と思い調べてみると、検索エンジンではほとんどヒットしない自社サイトを持っていたりします。だからこそメールで集客しようとしているのでしょう。逆に言えば、こういう業者はウェブマーケティングは不得意でも、Eメールマーケティングなら得意なのかもしれませんね(笑)。


全国大会ならどうなる?


さらに広い市場を求めて、全国規模でマーケティングを展開する場合、それが例えば非日系マーケットあるいは日本本国だとすれば、手っ取り早いのはやはりウェブの活用でしょう(テレビCMなどを打つ予算がない場合は特に)。ただその場合、戦いは全国規模になるため、競争のレベルが上がり、そこで戦えるだけのスキルが必要になります。集客には色々な方法があり常に進化していますが、やはりまだPPC(クリック課金型広告)やSEOを超えるものはありません。つまり、PPCやSEOを駆使し、検索エンジンの少なくともトップ20以内、実質トップ5以内入りを競うことになります。こうした狭い門を突破できるIT業者が一握りしかいないことは、実感していただけるかと思います。

検索エンジンをマーケティングの軸にした場合、全国規模を狙えば確かにパイは大きいのですが、集客という面では結局トップ5以内に限られてしまうため、一握りの勝ち組と大多数の負け組という図式になります。ここがローカルマーケティングとの大きな違いでしょう。ローカルマーケティングなら「サービス・商品名」+「地域」を限定するキーワードでの上位表示で集客することになります。言い換えると「地域」毎に皆にチャンスがあるわけです。一方全国の場合、「サービス・商品名」だけでの検索で上位表示させて集客しなければならないことが多く、勝ち組に入れる条件が非常に限定されてしまうわけです。

たまに「全国規模で1ワードのみのSEOをして欲しい」という依頼を受けることがあります。つまり、全国テレビ放送のCMに匹敵する効果のあるマーケティングが求められているわけですが、その予算がローカル誌への広告掲載程度な場合も少なからずあり、困惑します。

なお近年、PPCやSEOと異なり、検索エンジンを軸にしないマーケティング手法が出てきています。メインにはできなくとも、併用すれば面白い手法があるので、いつか本連載で触れたいと思います。