知らないってのは恐ろしい① –痛い“英語”サイト編-

この不況下、各社生き残りをかけ、あるいは拡張を目指し、新たなビジネス展開を検討中のところも多いでしょう。例えばウェブサイトをリニューアルしようとか、オンラインショップを持とうなどと検討されているかもしれません。

ただこれらについては、デザイン云々以前に、サイトへの集客を考えなければ無価値に等しいことを、以前に我が社のレイアが連載していた「やさしく解説 ウェブマーケティング」(06年10月〜09年2月)の時から、そして本連載においても、何度も説明してきました。

サイトへの集客方法としては、PPCやSEOが真っ先に考えられます(脚注参照)。もしこれらをご存知ないようであれば、まず一度冷静になり、こうした基本から理解するようにしましょう。

「そんなのはお金を払って業者に任せればいい」と思われるかもしれませんが、そういうスタンスでは良いカモになるだけです。なぜなら、PPCやSEOなどウェブマーケティングを本当に実践できる「プロ」と呼べるIT業者は、全米でも一握りしかいないからです。もしそれが日系ともなると……(コメントは控えますが、業者全体における日系の比率を考えて頂ければ分かるかと)。

皆さんの新年の意気込みに水を指すことになるかもしれませんが、成功して欲しいからこそ、無意味な失敗を避ける術をお伝えできればと思います。

狙う市場によっては無力の業者

もちろん、皆さんが狙うマーケットがどこにあるかによって状況は大きく変わります。もしもアメリカ在住の日本人のみがターゲットであれば、日系のIT業者だけでも十分役に立つと思います。というより、どこがやっても大差はないでしょう。なぜなら、本誌のような日本語の雑誌やコミュニティーサイトへの広告の出稿が、皆さんのサイトへの主な集客方法になると思われるからです。ただし、ご承知の通りパイは極めて小さいわけです。大きなパイを求め、新しいマーケットを開拓しようとする場合のソリューションにはなりません。

日本人のみをターゲットとせず、英語圏がメインとなるローカルの新規マーケット獲得を目指すとします。全米レベルではなく、言わば地区大会ですので、本来の難易度はそれほど高くありません。こうしたローカルマーケティングに効果的かつ経済的な手法はいくつか存在しています。しかしこの場合、残念ながら日系業者には、致命的な問題があるのです。

その“英語”通用しません

日系のIT業者が作った“英語サイト”を目にすることがあるのですが、我が社の英語ネイティブたち曰く「意味がよく分からない。英語とは言えない。ひど過ぎる」といった印象が大半です(ごめんなさい。具体例を挙げるわけにはいきませんが……)。

非ネイティブが担当しているのだから当然かもしれませんが、大半は、そこまでひどい出来であることにも気づいていないのではないでしょうか。比較的ましな英語サイトでも、せいぜい文法的に正しいだけで、文章に魅力がなく、どうでもいい印象しか残らないそうです。文法の正しさはあくまでも基本であり、文化や商習慣などを理解した上で、文章力と創造力が問われるのです。競合相手は完全なネイティブです。ネイティブが文章を書くことで、ようやく同じスタート地点に立ったに過ぎません。競争に勝つには、そのネイティブ同士の間で、さらに抜きん出た表現力が必要なのです。

厳しい言い方かもしれませんが、米系のIT業者を押しのけ、米系企業からサイト構築を依頼されるくらいのレベルの日系業者でなければ、英語サイト作りをまかすべきではないと思います。もっとも、“多言語サイト”をポーズとして持つつもりなら話は別ですが。

とはいえ、こうした英語表現の質の問題は、我々日本人は、指摘されるまでなかなか気づかないものです。英語が大嫌いな私は論外として、在米何十年の方々であっても、ネイティブからすればやはり非ネイティブです。要するに、会話が通じるのと、ビジネスにおける魅力的な文章が書けるのは、全く別次元の話なのです。これが、恐ろしくひどい(らしい)英語サイトを持つ日系企業が多い原因かと思います。良し悪しを正しく判断できる人が、顧客である日系企業側にもいないため、その実態を知らないでいるということなのでしょう。

人気の投稿