2010年8月12日木曜日

印刷業界が未だにアナログ志向である裏事情

前回、日本のクライアントから「数百ページの製品カタログの制作を効率化できないか」という依頼を受けたことをお話ししました。自社内システムに登録されている商品データを選択し、ボタンをクリックするだけで、DTP(デスクトップパブリッシングの略で、コンピュータを使い、印刷物を出版するための印刷用ファイルを作成する)ソフト側へデータを書き出すような仕組みを作りたいというのです。

日本語のカタログなので、とりあえず日本の既製ソフトを探しましたが、使えるものが見つからず、仕方なく、ITが日本よりは進んでいるであろうアメリカの既製ソフトを探すことにしたのでした。


役に立ちそうなのはわずか1社


しかし、5〜6万ドル以上出せば、確かにそれらしいことができるソフトがあるものの、それ以下では見当たりません。クライアントの予算もあるので、とりあえず既製ソフトの利用は見合わせ、独自開発に方針を切り替えることにしました。

まずはDTPソフトについて検討したところ、印刷業界で主流だったQuarkXPressは、こうしたプログラムの変更に対応させがたいようで、その対抗馬であるアドビ社のInDesignなら、それらしいことができそうだと分かりました。そこで、InDesignを使って似たようなことを行っているDTP専門業者をまず探そうと考え、LAエリアで40社くらいにあたりました。しかし、どこもそういった経験が乏しいところばかりだったのです。

まず圧倒的にQuarkXPress派が多く、InDesign派は少数という印象でした。また、システムと連動させるとなるとDTPだけでなく当然ITの知識が必要になるわけですが、印刷の知識はあってもITはちょっと……という業者ばかりでもあったのです。

正直これは全くの計算外でした。しかし引き受けてしまった以上、何とかせねばと必死で探してようやく1社、こちらがやりたいことをInDesignを使って実際にやっている業者を見つけることができたのです。その業者から基本部分のプログラムリソースを購入させてもらい、それを元に我が社でカスタマイズ開発するとともに、日本語にも対応させました。InDesignの開発マニュアルが不親切で多少苦労しましたが、とりあえず満足できるシステムができ、クライアントにも大いに喜んでもらえました。

以前は3人掛かりで3カ月費やしていたカタログ制作が1人で1カ月で済むようになりました。何より、販売管理システムの商品データと連動しているため校正作業が楽になったようです。そして、ウェブカタログも連動して作成できるようになり、ITを活用する威力を体感してもらえた仕事だったと思います。

DTP業者の本音はアンチ効率化?

それにしても、DTP業界は意外にもデジタル志向(ITによる効率化への志向)が弱いという事実には驚きでした。というよりアナログ志向が根強いのでしょう。例えば毎年、同じような印刷物を制作していても、データをコピー&ペーストする程度で、基本的にそれ以上の効率化を求めてはいないように見えます。

理由の1つは「何人が何時間を費やしたか」で料金を請求するというこの業界の旧態依然のビジネスモデルではないかと思います。つまり彼らからすれば、ITで効率化して作業時間が短縮されれば売り上げが減ることになり、ビジネス的にはマイナスなので効率化には前向きでないのでしょう。

逆に、社内にDTPの部署をもつ大企業などでは、積極的に効率化を進めているという話も聞きました。先に取り上げた5〜6万ドルの既製ソフトは正に、こうした大手向けに開発されたものだったのです。

今回紹介したのは数年前の出来事だったのですが、つい最近も、ローカルの米系PR会社より問い合わせがありました。そこも、同じような依頼をクライアントから受けてウェブで業者を探し、我が社に問い合わせてきたのです。話を聞くと、こうしたことが出来そうな業者はまだまだ少ないようです。改めてこの業界はIT化が進んでいないのだなぁと実感しました。

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