SEO業者なのにSEOを依頼?!

前回、我が社が行ったセミナーでSEO(ウェブサイトを検索エンジンで上位表示させる手法)の存在を知った業者が、数週間後にセールストークだけを磨き、できもしないSEOサービスの営業を臆面もなく始めたことを紹介しました。SEOが騒がれるようになってずいぶん経ち、SEOサービスやコンサルティングを提供していると“謳う”業者がかなり増えたと思います。


しかし本当のSEOは、本やウェブからの情報収集だけで誰でもできるほど甘くはありません。SEO本来の目的である訪問者の獲得に大きな効果を望むとすれば、人々によく使われるキーワードで検索結果のトップ5以内に入る必要があり、これが実践できる業者は世界でもほんの一握りしかいません。にもかかわらず、今ではほとんどのホームページ制作会社や広告代理店が口を揃えて「SEOができる」と語ります。


できもしないSEOを宣伝する詐欺


以前、「自社サイトのSEOをして欲しい」と電話で依頼してきた会社がありました。事業内容を尋ねるとIT関連とのこと。ホームページのアドレスを教えてもらい、さっそく見てみると思わず絶句してしまいました。そこには、次のように書かれていたのです。


サービス:SEO対策コンサルティング

…(中略)…

ポイントはまだまだありますが、これらの基礎をマスターしている弊社コンサルタントが、売れるサイト構築を一からお手伝いいたします。




つまり、SEOコンサルティングをすると宣伝している会社なのに、自社のサイトのSEOができないため我が社へ依頼してきたわけです。絶句した後に私は「弊社と競合するサービスでなければ、SEOをご提供できる可能性はありますが……まずはちょっと検討させて頂きます」と言葉を濁して電話を切りました。


「自社のサービス内容に挙げているのなら自分でやれよ」と正直思いました(今確認してみると、このサービスは既にホームページから削除されていました)。電話してきたのは、アメリカの日系会社でした。競合するビジネスをやろうとしている上、できもしないサービスを「できる」と謳う同業他社のマーケティングを助けてあげようとするところがあるとは思えません。そんな依頼をしてくる相手の思考が不思議でなりませんでした。


実は日本からも、似たような問い合わせをかなり受けました。弊社のウェブサイトは日本でもよく知られているため、同業他社から技術提携の話もよく持ちかけられますが、ノウハウ流出を避けるため、全てお断りしています。確かに、SEOを正しく施したウェブサイトとそうでないものでは、見た目は同じであってもサービス料金が1桁違うことがざらにあります。ですので、業者ができもしないSEOサービスを「できる」と謳いたい心境は分かります。しかし、これは立派な詐欺だと思うのは私だけでしょうか?



あえて「ホームページ」と呼ぶ


以前、「ホームページ」という表現は正しくは、複数ページからなるウェブサイトの最初のページという意味であり、日本的な「ホームページ=ウェブサイト」という使い方は誤っていると指摘しました。そして私は、SEOを無視した、つまり訪問者のいない商用サイトは、その存在目的を考えれば間違っているとも思います。


そこで私は、SEOを無視し単なるオンライン・ブロシュアー化したサイトを「ホームページ」と呼び、SEOなど集客やマーケティングをしっかり考慮したものを「ウェブサイト」と呼ぶことで、両者を区別しています。


前者は何らかの広告を別に行わなければ訪問者は得られません。制作費はその分安く、10ページ程度なら相場は2000〜3000ドルでしょう。後者は、SEOで狙うキーワードの難易度やマーケットにもよりますが、相場は6000〜3万5000ドルとなります(ただし、データベースやシステムなどを含めずにこの値段というのが味噌です。システムなどを含めれば料金は一気に高くなりますが、どんなに素晴らしいシステムが組み込まれていたとしても、訪問者がなければ無価値です。ですので依頼者は制作費にSEOが含まれているのか必ず確認してください)。


IT業者は自社が提供するサービスがどちらに該当するのかを明確にすべきです。そしてその価値を顧客に正しく伝え、伝えた通りに実現できて初めて、プロなのではないでしょうか?

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